チャネル戦略とは?チャネルの種類や目的、戦略構築のポイントを解説

2023.03.10

インターネットの普及により、実店舗だけでなくWeb上でも販売取引や物流が行われるようになった。顧客との接点が多様化したことを受け、マーケティングの施策として「チャネル戦略」の重要性が高まっている。この記事では、チャネル戦略に用いられるチャネルの種類、チャネル戦略の役割やメリット、チャネル戦略を行う流れと方法を解説する。

チャネル戦略の軸となる「チャネル」とは

チャネル戦略で用いられる「チャネル」とは、集客や流通、販売のための経路や媒体、業者や組織を指す。なお英語では”Channel”と表記し、テレビなどの「チャンネル」と同じ単語となるが、異なる意味で使用されていることに注意しよう。

マーケティングにおいて活用されるチャネルには「販売チャネル」「流通チャネル」「コミュニケーションチャネル」の3種類があり「マーケティングチャネル」と総称されている。それぞれのチャネルの概要や具体例を解説する。

販売チャネル

販売チャネルとは、商品やサービスの販売経路、販売方法、販売場所を指す。直接商品やサービスが購入されるシーンや場所と考えると良いだろう。おもな販売チャネルには、以下のようなものがある。

・ECサイト

・SNS

・アフィリエイト(ASP)

・実店舗(直販、代理店)

・テレビショッピング

・マスメディア(新聞など)

従来の販売経路や方法、場所に加えてインターネットの普及により販売チャネルも多様化してきた。たとえば広報や認知度アップ、ブランディングなどのために運用しているSNSにショッピングカート機能を追加すれば、集客だけでなく販売チャネルのひとつとしても活用できる。販売チャネルの選択肢が増えたことで、近年顕在顧客はもちろん潜在顧客も含めて幅広い層へアプローチできるようになった。

同じ販売チャネルでも、ビジネスモデルや商材のターゲットにより手法や傾向が異なる。そのため、企業向けBtoBと個人消費者向けBtoCのそれぞれでアプローチするターゲットに合わせた適切な販売チャネル戦略を実行する必要がある。

流通チャネル

流通チャネルとは、顧客や消費者へ商品やサービスが届くまでの手法や経路を指す。おもな流通チャネルは以下のとおりだ。なお商品を直接顧客へ届ける流通業者のほか、中間業者である小売り・卸業者も流通チャネルに含まれる。

・流通業者(配送業者、運輸業者など)

・卸売業者(問屋業者など)

・小売業者

流通チャネルは「直接流通チャネル」と「間接流通チャネル」に大きく分けられる。直接流通チャネルとは、企業から顧客へ直接的に流通を行う方法だ。直販やDtoCとも呼ばれる。間接流通チャネルは、企業と顧客の間に卸売や小売を挟む手法で、従来の一般的な流通方法にあたる。

さらに、以下のように流通チャネルに置いて企業と顧客の間に挟んだ業者の数を「段階」で考える方法もある。

・ゼロ段階…企業から顧客に直接販売(直接流通チャネル)

・1段階…企業→小売業者→顧客(間接流通チャネル)

・2段階…企業→卸売業者→小売業者→顧客(間接流通チャネル)

・3段階…企業→卸売業者→二次卸売業者→小売業者→顧客(間接流通チャネル)

商品やサービスによっては、顧客の元に届くまでに3段階や4段階の経路を踏む場合もある。

利用する中間業者の範囲を「」と考え、以下のように定めることもある。

・開放的流通政策…特定の業者に限定せず、広範囲の流通を行う

・選択的流通政策…特定の流通業者を選択して流通を行う

・排他的流通政策…特定の流通業者(メーカーと契約を結んだ代理店)に独占販売権を与えて流通を行う

基本的に中間業者の数が増えるたびに中抜きやマージンが発生するため、消費者の元に届くまでに商品の値段が段階的に上がり、届くスピードも遅くなる。流通チャネルを最適化することで流通コストの削減や顧客の満足度や利便性向上につながるため、最適な流通チャネルの選定と設定が重要だ。

コミュニケーションチャネル

コミュニケーションチャネルとは、顧客とコミュニケーションを取るための手法や場所のことだ。顧客への認知のために商品やサービスの情報を伝達する手段のほか、顧客からの問い合わせや相談、意見を受ける経路も含まれる。

おもなコミュニケーションチャネルは以下のとおり。

・SNS

・アプリ

・ダイレクトメール・メッセージ(DM)

・メールマガジン(メルマガ)

・チャット

・電話

・Web広告

・Webサイトやページ

・マスメディア(テレビ、雑誌、新聞)

・キャンペーン

・動画

マーケティング活動やビジネスを成功させるうえで、顧客とのコミュニケーションは必須となる。コミュニケーションチャネルも多様化しているため、目的に応じた手法を選ぶことが重要だ。

チャネル戦略の役割

チャネルを活用したマーケティング戦略が、チャネル戦略だ。マーケティングの基本的な考え方にマーケティング・ミックスの4P「Product(商品戦略)」「Price(価格戦略)」「Place(流通戦略)」「Promotion(プロモーション戦略)」)があるが、チャネル戦略は「Place(流通戦略)」にあたる。

チャネル戦略の持つ7つの役割を順に解説する。なお各役割は、独立しているのではなく「調査とプロモーション」「プロモーションと接触」「物流とコスト」のように密接に関係しているものもある。

調査

販売する商品やサービスに対する調査の役割を果たす。顕在顧客や潜在顧客が持つ商品やサービスへのイメージやニーズを探るために、チャネルによってアンケートやヒアリング調査を実施し、意見や感想を集めてマーケティングに活かしている。

プロモーション

販売促進のための広告出稿やプロモーション活動を指す。間接流通チャネルによるマーケティングの場合、自社と顧客の間にいる小売業、卸売業などの中間業者も一緒にプロモーション活動について検討すると、より販売促進の効果が高くなるだろう。

接触

顕在顧客や潜在顧客へアプローチする手段として、チャネルが活用される。代表的な接触手段に「広告」があるが、広告にもテレビCMや新聞広告などのマスメディアを通じたものから、SNS広告や動画広告などWeb上のものまである。

ターゲットの属性や年齢層などを踏まえて、適切な接触手段を検討するのが重要だ。なお必要に応じて、接触手段は複数を組み合わせる方法もある。ただし広告出稿のコストやWeb広告運用の手間なども考えて、採用する接触手段を選ぼう。

交渉

小売業者や卸売業者など、流通で関わる中間業者との間で行う交渉にもチャネルが用いられる。商品やサービスの価格、取引条件、保証などが交渉される内容だ。自社と交渉相手両者の合意を取ることで販売チャネルや流通チャネルが正しく機能する。お互いに納得できる交渉を進めるのが重要だ。

適合

販売チャネルと顧客のニーズが合致するように調整する工程が、適合だ。ターゲットとなる顧客のニーズと販売チャネルが合致していないと、商品やサービスの販売機会が失われることになる。たとえばターゲットが若年層ならSNS、さらに年齢に合わせたSNSのプラットフォーム選び、というように細部まで顧客ニーズに合わせて販売チャネルを調整する。

ターゲット層のニーズと販売チャネルを合わせるためには、小売業者や卸売業者などの関連業者とのやり取りやすり合わせが必要となる場合もある。

物流

販売対象がサービスではなく商品の場合は、輸送ルートや手段、商品在庫の管理や保管手段の検討が必要だ。配送業者や運送業者などの関連組織も含めて、物流経路や手段を詳細まで決めたい。

コスト

流通にかかるすべてのコストの確保と管理、資金の確保、流通に関する工程や場所それぞれに対する資金の分配などが該当する。

チャネル戦略のメリット

チャネル戦略を行うことで得られるメリットを解説する。

売上の向上や拡大

チャネル戦略を行うことで、ターゲット顧客への適切な販売チャネルの提供や、各チャネルの拡大にもつながる。その分販売機会が増えるため、売り上げの向上や拡大に直結するだろう。売上の最大化は、チャネル戦略の最大の目的ともいえる。

潜在的な顧客の発掘と獲得

チャネル戦略を行うことで、多様なチャネルから潜在的な顧客へのプロモーションや、接触によるニーズの発掘にもつながる。新規の顧客獲得にも有効だ。

顧客満足度の向上

チャネル戦略を行うと、既存顧客の利便性も向上する。たとえば販売チャネルを実店舗だけでなくECサイトにも広げることで、顧客は時と場所を選ばずに買い物ができるようになる。

複数のチャネルを組み合わせる「マルチチャネル」や、チャネル間のシームレスな運用を行う「オムニチャネル」などを取り入れることで「ネットで注文した商品を実店舗で受け取る」「アプリを通じてECサイトと実店舗で獲得したポイントを共有できる」などといったサービスの展開も実現可能だ。

チャネル戦略を構築する流れとポイント

チャネル戦略を構築するときの流れに沿ってポイントを解説する。

ターゲットを明確化する

チャネル戦略でもほかのマーケティング施策と同じく、ターゲットを明確にする必要がある。BtoBとBtoCではターゲットが異なるため、当然適切なマーケティング施策が異なる。性別・年齢・職業・趣味などの要素でターゲットを決めよう。

決定したターゲットに合わせてチャネルの選定を行うことで、チャネル戦略の成果が得られる。たとえば設定したターゲットが「20代の女性、スマートフォンを使ってSNSから情報収集を行う」の場合、チャネルとして選ばれるのはInstagramなどのSNSになるだろう。「60代の男性、ネットリテラシーは低く、テレビや新聞から情報を得る」場合は、チャネルとして選ばれるのはテレビCMなどのマスメディアとなる。

チャネルの段階と幅を決める

自社と顧客との間に挟む中間業者の数である「段階」と、取り扱う中間業者の範囲である「」を決める。チャネルの段階が増えれば増えるほど、より多くの顧客に商品を届けられるのがメリットだ。しかし中間マージンが発生するため、商品価格が高くなるデメリットもある。商品やサービスの販売や流通のスタイルによって適切な段階を決めることが重要だ。

チャネルの幅によって、以下のようなメリットとデメリットがある。商品やサービスの方向性やシェアなどを考えて幅を決めよう。

・開放的流通政策…商品やサービスのシェア拡大が見込まれる。一方取り扱い業者が増えると管理が難しくなる、ブランドイメージが低下する場合がある。

・選択的流通政策…取り扱い業者のコントロールがしやすい。一方で一定の業者しか取り扱いができないためシェアは拡大しにくい。

・排他的流通政策…商品やサービスの管理がしやすい。ただしチャネル維持のコストが高い。

各チャネルの一貫性を踏まえて構築する

チャネル戦略を構築する順序は「販売チャネル→流通チャネル→コミュニケーションチャネル」となる。販売チャネル構築後は、流通チャネルとコミュニケーションチャネルと一貫性があるかを踏まえたうえで次のチャネル構築に移るのが重要だ。たとえばターゲットに最適な販売チャネルが構築できても、流通チャネルと販売チャネルにつながりがなければ顧客に商品を届けるのが難しくなる。

顧客ファーストを前提とする

チャネル戦略のなかでも販売チャネルは、ターゲットした顧客にとって最適なものでなければ、商品やサービスは売れない。顧客の希望やニーズに沿った販売チャネルを提供することで、顧客満足度や売上の向上につながる。コスト削減や業務効率化のみを考えるのではなく、顧客ファースト(顧客第一主義)を前提にチャネル戦略を進めよう。

チャネル戦略で売上の最大化や潜在顧客の発掘につなげよう

チャネル戦略のチャネルの種類やチャネル戦略の役割、施策の流れと方法、ポイントを解説した。目的やターゲットに合わせた適切なチャネルを選定し、戦略を行うことで売上アップや業務効率化、顧客満足度の向上など、多くのメリットが得られる。

複数チャネルを展開する場合には、各チャネル間での連携をスムーズに行える仕組みを導入するなどして、戦略の成果を最大化しよう。

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