スケールメリットとは?意味やビジネスにおけるメリットや注意点、具体例などを解説
2023.03.23
ビジネスにおけるスケールメリットとは、生産や販売などの事業規模が拡大することで生じる競争優位性などビジネス上のメリットのことである。この記事では、スケールメリットの特徴やシナジー効果との違い、効果や注意点について詳しく解説する。スケールメリットを実際に導入した具体例についても紹介する。スケールメリットを効果的に活用して、自社の事業拡大に活かしたいものだ。
スケールメリットとは?
ビジネスの場面で、「スケールメリット」という言葉を聞いたことがある人も多いだろう。スケールメリットとは、事業や企業の規模拡大に伴って生まれる効果のことである。今回は、このスケールメリットについて、意味と特徴、似た意味の言葉と認識されやすい語との違いを解説していく。
スケールメリットの意味と特徴
スケールメリットとは、企業が成長するに伴い、競合他社との競争面や収益面において生じるメリットを指す言葉である。ビジネスのスケールアップによって、小規模や単体の場合よりも大きな効果を出すことを示す。なお、スケールメリットとは和製英語で、別名としては「規模効果」「規模のメリット」と呼ばれることがあるので覚えておきたい。
スケールメリットを得られるケースについては、同じ製品を大量に生産したときに得られるメリットを考えるとイメージしやすいであろう。
シナジー効果・ボリュームディスカウントとの違い
スケールメリットに似た意味を持つ言葉に、「シナジー効果」と「ボリュームディスカウント」がある。だが両者は完全に同じ意味を有する言葉ではないため、使うときに注意が必要だ。
まずシナジー効果とは、事業を行う中で複数の要素を組み合わせることで、単体で得られるよりも大きな効果が生じることを指す言葉である。この場合、規模が拡大するかどうかには注目していないので、スケールメリットとは意味が異なる。
また、ボリュームディスカウントとは、まとめ買いをすることで単価を抑えられることを指す。そのため、こちらもスケールメリットとは異なる意味を持つ語であることを確認しておきたい。
スケールメリットの効果
続いては、スケールメリットの効果について見ていこう。規模が拡大することで得られる効果は主に4つある。
生産の拡大・効率化、コスト削減、企業の知名度・信頼度アップ、経営の効率化である。それぞれのメリットに関して詳しく解説するので、自社の規模拡大によって得られるメリットを知りたいと考えている場合には、ぜひ参考にしていただきたい。
生産の拡大・効率化
スケールメリットの効果の1つ目は、生産の拡大・効率化である。例えば、事業として商品の製造や販売をする場合、生産数や販売数が増えても光熱費や人件費などの固定費はあまり変化しないため、1個あたりを製造・販売するのに必要な費用は安くなる。結果として収益性が高まるため、自社の事業をより拡大することにつながるのだ。これがスケールメリットである。
コスト削減
コスト削減も、スケールメリットの効果の1つである。同じ製品を大量に製造・販売することでコスト削減が可能になる。また、作業工程をルーティン化・機械化することで工数を削減し、さらに作業速度がアップできる。これによりコスト削減ができることも、スケールメリットなのだ。
また、製品を配送する場合でも、同じ場所に送るなら複数の製品を混載させることで輸送費を削減できる。製品の製造や販売だけではなく、固定費を削減することも、スケールメリットの1つの形といえる。
企業の知名度・信頼度アップ
スケールメリットは、企業の知名度・信頼度アップにもつながる。店舗数や製品の販売数が増えることで、企業やブランドの認知度が向上するだろう。より広く認知されることは、ユーザーに会社や商品への親しみやすさや安心感を与えることにつながる。
そのため、知名度がアップすることは、企業やブランドの信頼度アップにも直結するのである。また、信頼度が上がると企業の優位性がアップするため、より集客しやすくなり、売り上げ向上にも効果が出ると期待できる。
経営の効率化
経営の効率化も、スケールメリットの1つとして挙げられる。グループ会社内に同じような事業を展開している複数の部門があれば、1箇所に統合することで効率化が図れる。
また、事業拡大をスムーズに実施したいなら、フランチャイズシステムの導入も経営の効率化に有効であろう。いずれも、事業規模を拡大することで、より効率的に事業を実施できるというスケールメリットが実感しやすいシーンだ。
スケールメリットの注意点
スケールメリットはよい面ばかりが注目されがちであるが、恩恵を享受する上で注意すべき点もある。
スケールメリットを念頭においた上で、経営・事業推進を図る場合、在庫は適正かどうか、販路の確保を事前にしっかりと確認しておくべきである。また、適切な事業運営は可能かどうかにも注意したい。
在庫は適正か
スケールメリットを活用する場合、在庫は適正かどうかが、事業を安定拡大させるためのカギとなる。スケールメリットの念頭に製品の増産が実現しても、在庫を抱えすぎることは企業にとってマイナスとなる場合があるためだ。そのため、短期だけではなく中長期の販売計画についても慎重に検討し、生産調整をしつつ事業規模を拡大していくことが必要だ。
企業や事業の拡大による効果がデメリットとして生じることは、スケールデメリットと呼ばれることがある。せっかくの事業拡大が、スケールデメリットにならないよう注意したいものだ。
展開するサービスや事業の特性
スケールメリットを得ることで競争優位を築くことができるが、あらゆるビジネスで活用できるわけではない。規模が拡大することによって、商品あたりの製造コストが下がることがスケールメリットの利点であるが、規模を拡大してもコストが下がらない場合や、そもそも固定費などのコストが発生しないビジネスであればスケールメリットの恩恵は享受できないだろう。
商品やサービスの品質維持
規模の拡大は、同時に品質低下を招く恐れがある。規模の小さいビジネスであれば、細かいところまでサービスや商品の質をチェックすることも難しくはないが、規模が拡大するにつれて、目が行き届きにくくなる。規模を拡大したことで、商品の品質が低下すれば、悪評もより広まりやすくなり、顧客離れも発生しやすい。
商品やサービスの大規模展開と併せて、いかに商品やサービスの品質を維持するか、企業努力や体制・仕組み作りが求められるだろう。
スケールメリットの具体例
最後に、スケールメリットの具体例を業種ごとにいくつか確認しておきたい。まず、飲食業や小売業においては、店舗数を拡大することで認知度がアップすることがスケールメリットである。また、複数店舗の仕入れを一括化することで、コスト削減が可能となる。
製造業では、原材料を大量に仕入れることでボリュームディスカウントが発生して仕入コストの削減が期待できる。また、大規模な製造においては、機械化や自動化が進み、1商品あたりの生産コストの低下が期待できる。初期投資は発生するが、軌道になればスケールメリットの効果を享受しやすいのが製造業の特徴ともえいる。
物流業界もスケールメリットによる恩恵が大きい。燃料代やトラック購入費用のコスト圧縮、大規模システムの導入よる配送効率の向上を図ることができる。また、ネットワーク構築による共同配送によって1車あたりの積載量が増加し、生産性の向上も期待できる。
スケールメリットを効果的に活用しよう
スケールメリットは、経営効率化やコスト削減だけでなく、生産量の拡大にも効果が期待できる。自社の事業拡大を効果的に行うために、スケールメリットの効果と注意点を確認したうえで、スケールメリットを活かした経営をしていきたいものである。