問屋業とは?意味や歴史、卸業や商社との違いを解説

2023.04.14

メーカーや製造元から消費者へ商品がわたる流通経路の中にあるのが「問屋業」だ。「商品を仕入れる」などのイメージを持っている方も多いと思うが、問屋と似た業種である「卸業」や「商社」との違いが分からないという方もいるだろう。この記事では、問屋業の概要と歴史とともに、問屋業と似ている業種との違いを解説する。問屋業の理解にぜひ役立ててほしい。

問屋の概要

実は問屋業には「とんや」と「といや」の二通りの読み方が存在し、読み方によって意味も異なる。問屋業の読み方別の概要と、問屋業の歴史について解説する。

問屋(とんや)とは

問屋(とんや)と読む場合は、製品を商品としてメーカーから仕入れ、小売業へ販売する業種を指す。仕入れる商品の種類や仕入れる目的は問わず、広義の「問屋業」として使用されるときには、問屋(とんや)と読むことを覚えておこう。

問屋(といや)とは

問屋(といや)と読む場合も、問屋(とんや)と読む場合と同じく、製品を商品としてメーカーから仕入れ、小売業などへ販売する業種を指す。ただし、問屋(といや)の場合は法律的な定義があるのが特徴だ。商法第551条にて「問屋(といや)とは、自己の名をもって他人のために物品の販売又は買入れをすることを業とする者をいう」と定められている。

問屋(とんや)が自社の利益のために商品の仕入れ・販売を行うのに対して問屋(といや)は他人のために商品の仕入れ・販売を行う業種ということになる。問屋(といや)の代表的な業種には証券会社の売買仲介がある。利益のために有価証券の売買をするのではなく、有価証券の仲介を行い、委託元の投資家から手数料を得て利益としているため、問屋(といや)に該当する。

問屋の歴史

鎌倉時代に、船を使用して物資の保管や運送、販売といった商業活動を行っていた「問丸(といまる)」が問屋の由来と言われている。鎌倉時代末期から室町時代にかけて、問丸の名称が問屋(といや)へ変化した。

問屋業が盛んになったのは江戸時代からとされている。江戸時代の街道の宿場で人馬の継立、助郷賦課などの業務を行うところとして、問屋場などが設置された。また江戸時時代、中期には、問屋の専業化が進み、木綿問屋・唐薬問屋のように特定の商品のみを扱う専業問屋も発展したとされている。

江戸で生産された商品を水上物流する仕組みが整ったため、水陸の交通の要衝である日本橋は問屋街として発展した。たとえば当時の大伝馬町一丁目(現・日本橋本町二・三丁目)は伊勢・松阪出身の商人が経営する木綿問屋が集まり、「木綿店」と呼ばれる問屋街を形成した。日光・奥州道中沿いは、繊維、薬などの問屋街として発展している。

諸説あるが、鎌倉、室町、江戸にかけて徐々に問屋業の形態が形作られていったのである。

問屋業と似ている業種、業態との違い

問屋業と似ている言葉に「卸業」「商社」「小売業」がある。それぞれの業種や業態の特徴を問屋業との違いとともに解説する。

問屋業と卸業の違い

卸業(おろしぎょう)とは、問屋業と同じく製品を商品としてメーカーから仕入れ、小売業などへ販売する業種だ。卸売業とも呼ばれる。ただし、問屋のように読み方によって法律上の定義が変わることはない。

総務省の「日本標準産業分類」によると、以下の業務を行う事業所を卸業と定義している。

・小売業または他の卸売業に商品を販売するもの

・ 建設業、製造業、運輸業、飲食店、宿泊業、病院、学校、官公庁などの産業用使用者に大量または多額の商品を販売するもの

・主として業務用に使用される商品として事務用機械および家具、病院、美容院、レストラン、ホテルなどの設備、産業用機械(農業用器具を除く)、建設材料(木材、セメント、板ガラス、かわらなど)を販売するもの

・製造業の会社が別の場所に経営している自己製品の卸売事業所(主として統括的管理的

事務を行っている事業所を除く)

・他の事業所のために商品の売買の代理行為を行い、または仲立人として商品の売買のあっ

せんをするもの

また、業態や業務によって以下の種類に分けられる。

卸業の分類特徴
卸売業卸売商、産業用大口配給業、卸売を主とする商事会社、買継商、仲買人、農産物集荷業、製造業の会社の販売事務所、貿易商など
製造問屋自らは製造を行わず自己の所有に属する原材料を下請工場などに支給し、作らせた製品を自己の名称で卸売するもの
代理商、仲立業エイジェント、ブローカー、コミッションマーチャントとも呼ばれる。手数料を得て他の事業所のために商品の売買の代理または仲立を行うもの。商品の所有権を持たないため、価格の設定、商品の保管、輸送などの業務は一般に行わないもの。問屋(といや)に当たる

問屋業と商社の違い

商社とは、原材料などの買い付けを行い製造業へ販売する会社を意味する。問屋・卸業と商社の違いは、物流機能を持っていないことだ。問屋・卸業は商品の保管や配送などの物流業務を行うが、商社が行うのは商流業務のみとなる。

商社は幅広い分野の物品やサービスを取り扱う「総合商社」と、特定の分野の物品やサービスを取り扱う「専門商社」に分けられる。物流業務を行わない代わりに、原材料のほかにも金融商品、事業投資など幅広い商品を取り扱っているのが特徴だ。

問屋業と小売業の違い

小売業とは、消費者へ商品を販売する業種のことだ。代表的な小売業にはスーパーやコンビニエンスストア、ネットショップなどがある。小売業も問屋業と同じく商品を仕入れて販売することを業務としているが、小売業の顧客は消費者だ。一般的な分類では顧客が消費者なら小売業、顧客が企業なら問屋(卸業)となる。ただし、近年では問屋の業態も多様化しているため、問屋が直接消費者へ販売することもある。

問屋業の役割

物流の仕組みは、製造業→問屋(卸業)→小売業→消費者となっている。そのため、「製造業から小売業(または消費者)へ直接販売した方が効率が良いのではないか」と考える人もいるかもしれない。

問屋(卸業)が仲介しないと、製造業は多数の小売業または消費者と同時に取引することになるため、その分逆に手間やコストがかかってしまう。間に問屋(卸業)を入れることで、問屋(卸業)が製造業からまとめて商品を仕入れて在庫として管理し、小売業や消費者と取引を行う。製造業は販売業務の負担がなくなり製造や開発に専念できる、小売業は必要な分だけまとめて仕入ができるため、問屋(卸業)は消費者へスムーズに商品を届けるために必要不可欠な存在と言えるだろう。

問屋業は物流を担う重要な立場の業種

問屋業の概要と似ている業種である卸業や商社、小売業との違いを解説した。製造業と小売業の間に立つ問屋業(卸業)は流通が適切に進む中でも大切な役割を担っている業種だ。時代の流れとともに問屋業の業務の手法は変わりつつも、今後も多くの商品の仕入れと販売を通じて、流通における役割を果たしていくだろう。

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