ショールーミングとは?意味やメリット、今後の対策や取り組み事例などを解説
2023.04.19
最近ショールーミングが増加している。ショールーミングとは、消費者が商品やサービスを実際に見るために店舗へ足を運ぶが、購入はオンラインで行うことを指す。ショールーミングが普及している背景とは何か、またショールーミングが消費者側と店舗側にもたらすメリットについて解説する。さらに店舗側が取るべきショールーミング対策や具体的な事例なども紹介する。
ショールーミングの意味とは
シュールーミングとは、消費者が商品を選定し購入するまでに行う行動の一つである。購入を検討する場合、多くの人が商品やサービスを手に取って実際に試したり色や形、サイズを確認したりしてから購入するかどうかを決めたいと思うだろう。
ショールーミングは、商品の購入はオンラインで行うが、その前に実店舗に消費者が出向き、商品やサービスを確認することを指す。実店舗をいわばショールームと捉えているのだ。
最初からECサイトで商品を購入すると、届いたものがイメージと違っていたり、サイズが合わなかったりする場合もある。実店舗で欲しいものをしっかり自分の目で確かめれば、安心してオンラインで購入できるのである。
ショールーミングが増える背景
ショールーミングが増えてきた背景は、インターネットやスマートフォンの普及にあるといえるだろう。多くの人が、インターネットやスマートフォンを使って欲しいものを検索できるようになった。またインターネットの普及に伴いECサイトも増えたため、手軽にスマートフォンを使ってショッピングが楽しめるようになったのだ。
さらにコロナ禍における外出自粛やテレワークの普及も影響しているだろう。商品を購入する際、実店舗で購入するよりもECサイトから注文する方が安くなるものも少なくない。そのため、実店舗で下見や試着をしてからECサイトで購入するショールーミングをする人が増加傾向にある。
ウェブルーミングとショールーミングの違い
ショールーミングに似た言葉にウェブルーミングがある。ウェブルーミングとは、インターネットで商品やサービスに関する情報や価格の比較などを行い、実店舗に行って購入する消費者の行動のことである。ショールーミングとは逆の流れで商品購入に至るのがウェブルーミングだ。
ウェブルーミングを好む消費者の心理は、ECサイトで購入すると送料がかかる、オンラインだと配送に時間がかかるがすぐに商品を手に入れたいなどがあるだろう。
ショールーミングもウェブルーミングも、消費者は商品を購入するまでに1度は実店舗に出向く。そのためどちらを好む消費者にも、オンラインとオフラインを含めたハイブリッドなサービスを提供する必要があるだろう。
ショールーミングのメリット
ショールーミングのメリットについて詳しく解説しよう。商品やサービスを購入する前に実際に店舗で確かめられるのは、消費者にとって大きなメリットであるだけではなく、店舗側にもショールーミングを行うメリットがあるのだ。コロナによってオンラインショッピングが定着してきているため、今後もショールーミングにフォーカスした戦略を取る企業はますます増えるだろう。
消費者側のメリット
まずは消費者側のメリットから見ていこう。消費者にとってのショールーミングのメリットは、なんといっても実際に商品やサービスに触れられる点である。
実物を確認しないままオンラインで商品を購入してしまうと、商品が手元に届いた後で購入前にイメージしていたサイズ感や質、色の違いに気づく場合がある。特に衣類や靴などは、サイズが表記してあってもメーカーや商品によって大きさが異なることも少なくない。気に入ってオンラインで購入したのに、想像とは違って返品した経験がある人も少なくないだろう。自己都合の返品の場合、送料を負担しなければならないケースがほとんどだ。
ショールーミングを行えば実際の商品を確かめてから購入できるので、オンラインショッピングの失敗を減らせる。
店舗側のメリット
店舗側にもショールーミングを行うメリットはある。消費者に実際に店舗に足を運び商品を確かめてもらうことで、商品の品質やブランドに対する信頼を高めてもらえる。
また、消費者は店頭で商品を購入するつもりはないため、スタッフは会計や商品の梱包などの作業に追われることがなく接客に注力できる。
十分に商品の価値を消費者に確かめてもらうサポートができるので、顧客満足度の向上も期待できるだろう。さらに、店舗に足を運んでくれた消費者とコミュニケーションを取ることで消費者の好みや傾向、自社を選んだ理由などをマーケティングできる点も、大きなメリットといえる。
ショールーミング専用の店舗なら在庫は必要最低限で済み、商品の在庫を余らせることもない。
店舗が取るべきショールーミングへの対策
ショールーミングを行う消費者が増えてきているのに、通常の店舗経営のままショールーミングをする顧客にも対応すると、実店舗が赤字になる可能性がある。消費者は店舗では商品を見るだけで購入するつもりがないからだ。
ECサイトの売上を伸ばすためにも、店舗側はショールーミングに対する対策を取る必要がある。店舗が取るべきショールーミングへの対策をお伝えしよう。
ショールーミングショップを設ける
まずは、ショールーミング専用のショップを設けるといいだろう。顧客を見ただけでは、店舗で商品を買うために来たのかショールーミングのために来店したのか見極めが難しい。そのため商品の在庫を一定数抱えておかなければならず、レジや複数の顧客に対応するためのスタッフも必要になる。
しかしショールーミング専用ショップなら、顧客は最初から購入するつもりはなく商品を見にくるだけということがわかっているため、商品の在庫は最低限で済む。また、レジの設備や、商品を入れるショップの袋なども必要ない。人件費も抑えられるのでショールーミングショップを設けた方が店舗にとってもさまざまなメリットがある。
サービスや体験を提供し店舗のメリットを感じてもらう
ショールーミングショップを設置し、商品を揃えておくだけでは、ECサイトの売り上げには繋がらない。消費者に実店舗に足を運ぶ価値を見出してもらう必要がある。
例えばアパレルのショールーミングショップの場合、商品を実際に試せるだけではなく、スタッフから同じブランドの別のアイテムを使ったおすすめのコーディネートなどを提案されれば、消費者はオンラインショッピングでは得られない体験やサービスに魅力を感じるだろう。スタッフが直接接客を行えるのが、実店舗の強みである。その強みを活かして、来店するメリットを消費者にも感じてもらおう。
O2Oを導入する
O2Oとは、Online to Offlineの略語で、オンラインから実際の店舗(オフライン)へ顧客を促す販売戦略のことをいう。商品購入までオンラインだけで完結せずに、店舗に足を運んでもらう施策である。たとえば、ECサイトで手に入る実店舗で使える割引券やクーポンの発行、来店した際にポイントを付与するなどの手法が考えられる。
また、Instagramや公式LINEなどのSNSを使って実店舗への誘導を行うのも効果的である。ショールーミングを考えていなかった消費者にも、店舗に出向いてもらう戦略を展開しよう。
オムニチャネルを戦略に組み込む
オムニチャネルとは、さまざまな販売経路を準備し、それらを一元管理してマーケティングを効果的に行う手法である。顧客が購入経路を意識せずとも、スムーズに商品の購入ができるようにする。オムニチャンネルを実施することで、自社のECサイトと実店舗の連携を強められるため消費者との接点が増え、顧客の囲い込みができる。
例えば店舗には欲しい商品の在庫がなかった場合、ECサイトから購入できるよう情報提供する。またアプリやSNSなどで検索した商品を店舗で支払い、自宅で受け取ることも可能だ。
オムニチャネルを行えば、他社のECサイトなどで購入しないよう、顧客をしっかり繋ぎとめておける。
OMOを取り入れる
OMOはOnline Merges with Offlineの略である。オンラインでのショッピングと、実店舗でのショッピングをボーダーレスにするマーケティング戦略をいう。OMOを展開するショールーミング例としては、オンラインで購入した商品を実店舗で受け取れる、ECサイトで貯めたポイントが実店舗で使えるなどがある。
OMOの戦略によって、オンラインのみで買い物を済ませる消費者を店舗へ誘導できるため、ショールーミングショップで顧客から情報収集できてマーケティングも行える。
ショールーミングを展開する企業事例
ショールーミングを展開する企業の具体的な事例を紹介しよう。大手企業では、通常の実店舗以外にもショールーミングを取り入れる動きが加速しているようだ。期間限定のショールーミングショップや、実験的なショールーミングショップ設置だけではなく、常設のショールーミングショップを開始する企業も少なくない。
丸井グループ
丸井は、バレンタインに合わせて期間限定のショールーミング型ポップアップストアを開催した。大手のインターネット通販サイトに出店している全国の18店舗の人気和菓子店やチョコレートメーカーのバレンタインデー向けの商品約35点を展示。
店頭ではそれぞれの商品を試食できるので、比較検討しやすい。通常、インターネット通販サイトで食品を買う場合は、試食は当然できずメーカーや出品者の紹介文や実際に購入した人の口コミしか参考にできない。
しかしショールーミングショップがあれば、試食してからどれを購入しようか選べる。このバレンタイン向けのショールーミング型ポップストアでは、インターネット通販のみでしか購入できない店舗の出店もあり、消費者が実店舗に出向くメリットや魅力を感じられるようなアイデアが取り入れられている。
大日本印刷とJR東日本クロスステーション
大手印刷会社とJRの子会社は、駅構内に期間限定でショールーミング店舗をオープンさせた。このショールーミングショップでは、売ることを目的とせず、消費者が企業ブランドや商品の魅力に触れる機会を作り、新しい体験価値を実感できる次世代型店舗を作ることを目的としている。
店内には飲料や加工食品、調味料などの約30点の商品を展示。商品の試食や試飲ができる。実際の商品の魅力に触れられて、一部の商品は持ち帰りも可能だ。駅構内なので、オフィスワーカーや旅行客などさまざまな客層をターゲットにできる。エキナカの特性を活かしたショールーミングショップといえるだろう。
またこのショールーミングショップでは、接客に慣れたスタッフが来店客に商品やサービスの説明を行うことで興味を喚起し、定期的に出店している商品に対する意見や感想、要望などを収集する。店内のイートインスペースで接客しながらヒアリングを行えるので、その場の来店客との自然な会話を記録できる。
髙島屋とトランスコスモス
髙島屋とトランスコスモスの合弁会社であるTAKASHIMAYA TRANSCOSMOS INTERNATIONAL COMMERCE PTE. LTDは、合同でショールーミングストア事業を開始することを発表している。
ブランド力やきめ細やかな接客サービスを強みとする髙島屋、デジタルトランスフォーメーションの豊富なノウハウを有しデジタルサービス・システム構築を得意とするトランスコスモス、海外への卸・小売販売事業を行う中で構築したさまざまなD2C企業との接点を強みとするTTICの3社で、ショールーミング事業のスキームを構築した。
百貨店ならではの満足度の高い接客サービスとギフト機能が充実している専用のオンラインサイト、百貨店にはないD2C企業中心の品揃えを実現させる。このショールーミングショップでは、百貨店にあまりなじみのない消費者もターゲットにしていく。
専属のスタッフは、店頭での展示商品の説明や専用のオンラインサイトの利用方法などをアドバイス。また、店内にオンライン接客専用のブースを設けオンラインによる顧客にも対応する。
商品の品揃えは、食・グルメ、ライフスタイル、ビューティー、日本アート&クラフト、エシカルなど、多岐にわたる。また商品の一部はそれぞれのテーマに精通した5人のキュレーターがセレクト。
出店した企業には、店内に設置したAIカメラから取得データ、販売員が接客して得た来店客の購買意欲や動機、専用オンラインサイトやSNSで得る閲覧データなどを提供する。
ショールーミングで時代のニーズに合うサービスを
ショールーミングは、オンラインでの購入前に消費者が実際にある店舗に足を運んで、商品やサービスを体験してからオンラインで購入する消費者行動をいう。インターネットでさまざまな情報を得られる現代では、ECサイトを通してショッピングを楽しむ人が増えているため、ショールーミングを行う消費者は今後も増えていくだろう。
ショールーミングに対応するために、店舗側もさまざまな変革を行う必要がある。オンラインだけで完結できるショッピングではなく、店舗でしか得られない新しい価値を提供できるような工夫が必要だろう。”