越境ECとは?市場規模や最新の事例を交えて解説
2022.10.25
2021.04.21
国境を越えて国際的なEC(電子商取引)を行う「越境EC」が近年注目を集めている。また昨今の新型コロナウイルス蔓延によって、ECサイトの需要が増加し、並行するように越境ECに力を入れる企業も増加傾向にある。
本記事では、改めて越境ECとは何か?その市場規模や成長性、さらに、主に小売企業を中心に、越境ECに参入している企業の事例を交えつつ解説していく。
越境ECの成長性や市場規模
越境ECとは、国外に向けたECサイトでの取引のことを指す。つまり国外に向けたオンラインショップのことだ。ITテクノロジーの発展と共に、近年急成長しており注目されているビジネス形態の一つ。
ここでは越境ECとはどのようなビジネスか、その市場の成長性について解説していく。
越境ECの市場規模とは?
経済産業省が発表した資料によると、2019年における、越境EC(BtoC)の日本・米国・中国の3ヶ国の取引額は下記の通り。人口が多いというのもあるが、中国の消費者の越境ECにおける購入金額は米国の2倍以上となっており、中国市場は越境ECにおいては最も大きな市場となっている。
消費国/販売国 | 日本 | 米国 | 中国 | 計(購買額) |
日本 | ー | 2,863億円 | 312億円 | 3,175億円 |
米国 | 9,034億円 | ー | 6,535億円 | 1兆5,570円 |
中国 | 1兆6,558億円 | 2兆94億円 | ー | 3兆6,652億円 |
令和元年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(電子商取引に関する市場調査)
米国の調査会社ZION Market Researchの調査によると、2020年における世界の越境ECの市場規模は9,123億ドルだが、それが2027年には4兆8,561億ドルまで上昇すると予想しており、越境ECのビジネスにおける存在感はより高まっていくと考えられる。
中国における越境ECについて
上述の経済産業省の資料によると、中国消費者が日本から越境ECによる購入額は1兆6,558億円で前年の購入額と比較すると7.9%増、米国からは2兆94億円で前年に比較して16.3%増だ。中国の消費が年々増加傾向にあることがわかる。
中国にはKOL(Key Opinion Leader)と呼ばれるインフルエンサーがおり、中国の消費者に対しては、KOLの影響力が非常に大きいとされている。中国の国内向けECサイトでもKOLの利用が常識になっており、中国への進出ではKOLとの関係を上手に利用する必要がある。
また中国では独自のSNSがある。Weibo(ウェイボー)やWeChat(ウィーチャット)などの利用者数は膨大だ。中国ではFacebookやTwitterが禁じられていることを忘れてはいけない。中国独自のSNSを利用して自社の製品をアピールすることが、中国での越境EC成功の鍵だ。
つまり、中国の消費者に商品をアピールしていくには、インフルエンサーのKOLとWeibo(ウェイボー)やWeChat(ウィーチャット)などの独自SNSの活用が重要になってくる。
越境ECの取り組み事例
中小企業も含め越境ECに取り組む企業が増加中だが、その中で特に成功している事例をピックアップして紹介する。
越境EC × Japanコンテンツ
日本のアニメが世界的に人気だということは有名だ。アジア圏ではアニメを見て育った人たちが30代になり、アニメグッズの熱心な顧客となっている。アジアだけではなく、ヨーロッパでもポケモンなどのレア商品が人気だ。
その中でも特に顕著な、BEENOSが運営する日本の通販サイト・オークションサイトの海外向け代理入札・代理購入サイト「Buyee」における「EVANGELION STORE(エヴァンゲリオン・ストア)」に注目したい。エヴァンゲリオンシリーズは、25年以上人気が続くアニメ。日本のアパレルブランドなどとの公式コラボアイテムが多い。
新型コロナウイルスの影響でインバウンド需要は大幅に減少したが、越境ECが好調で「Buyee」での注文件数はコロナ前と比較して2.3倍に増加(2020年5月~2020年11月の前年同期比)。
また、海外需要を取り込むため、2020年11月より海外向けTwitterとWeibo(微博)のアカウント運用を開始しており、5%ほどだった「Buyee」内の「EVANGELION STORE」への流入経路としてTwitterの比率が10%以上に増加したとしている。
資生堂:中国や米国に進出
資生堂は、ヨーロッパのデパートでも展開している世界的に有名なコスメメーカーだ。中国のイベントや中国人ユーザーについての知見もあり、的確なアプローチを行う。
例えば中国の「独身の日」に向けて日本から生配信をした。視聴者数は40万人以上という配信への出場者は有名人ではなく、ブランド責任者など社員たちだ。自社の製品についての生の声が好評だった。
資生堂は中国語の自社ページを運営するとともに、中国の企業「アリババ」が運営するECモール「天猫国際(Tモール・グローバル)」に出店している。「天猫国際」には資生堂の他、ヤーマン、花王、SmoothSkinといった日本メーカーの売上が多い。いずれも美容に関係ある製品を扱っている。
百貨店|東急百貨店や小田急百貨店
百貨店も越境ECに参画している。東急百貨店は既存のサイトeBay(イーベイ)を、小田急百貨店は中国の「WeChat/微信(ウィーチャット)」のミニプログラム「橙感(チェンガン)」をそれぞれ利用している。
eBayはアメリカ合衆国のEC企業で北米、ヨーロッパ、アジアと世界中190ヶ国を網羅する。eBayを利用した東急百貨店は、切子ガラスや箸、五月人形(兜)といった日本の伝統的なアイテムを紹介する。
一方、小田急百貨店は中国をターゲットに、アクセサリーやアパレル、リビング雑貨を中心に展開する。コロナの影響で訪日する中国人の減少による売上を、越境ECで補うことを目的としている。
今後も越境ECの市場は成長していく
人口減少によって内需が縮小していく日本において、企業が成長性を維持するには海外市場への参入も視野に入れていく必要がある。その中で、実店舗を構えず、ECサイト上で国外に向けて商品を販売していく越境ECという取り組みは、ビジネスメリットの大きい有力な選択肢の一つとなり得る。
2020年の9,123億ドルから、2027年には4兆8,561億ドルまで越境ECの市場が成長すると予想している米国ZION Market Researchの調査にもあるように、越境ECのビジネスにおける存在感はより高まっていくと考えられる。