CDPとは?マーケティングにおける役割や意味、DMPとの違い、導入のメリットなどを解説

2024.03.27

2023.12.19

デジタルテクノロジーが急激に発達した現代には、類似した商品・サービスが世の中に溢れ返っている。商品・サービスの購買を促進するには差別化戦略を図ることも重要であるが、顧客の潜在ニーズを把握してマーケティングを展開することも必要不可欠。

顧客一人ひとりに寄り添ったマーケティングを図る際、有効とされているのがCDPだ。本記事では、CDPの概要から必要性、基本的な機能、DMP・MAツールとの違い、導入メリットまで解説していく。

CDPとは?

CDP(カスタマー・データ・プラットフォーム)とは?

CDPとは、Customer Data Platform(カスタマーデータプラットフォーム)の略称で、直訳すると「顧客データ基盤」。顧客一人ひとりのデータを統合・管理・分析するためのデータプラットフォームを指し、デジタルマーケティングの最適化や新しい顧客体験の実現などビジネスに貢献していく。

管理する顧客データとしては、属性データから行動データまで多種多様。属性データの例には、年齢・性別・家族構成・居住地・職業・年収・ライフステージなどが挙げられる。

CDPは社内システムやMA・CRM・アドテクノロジーツールといったシステムと連携するケースも多く、マーケティングツールと連携することで顧客理解を深化し、効果的なアプローチを行っていける。

CDPの必要性

デジタルマーケティングの領域において導入が進むCDP。ここでは、CDPを導入する必要性や重要性を解説していく。

データのサイロ化を防止してDXを促進できる

サイロ化とは、業務システムが組織や部門間で連携できておらず、情報が孤立している状態を言う。縦割り組織に起こりやすく、サイロ化が生じていると生産性の低下、サービス品質の悪化、経営層の意思決定スピードの低下などさまざまなデメリットをもたらす。

サイロ化が進む組織において、積極的に導入したいのがCDP。CDPは個人をキーとして、データの収集・統合を行えるため、サイロ化の解消を見込める

その結果、促進できるのがDXだ。DXは一組織・一部門だけで実現する取り組みではなく、組織・部門間で連携する組織横断が一つのポイントとなっているが、CDPを導入することで組織横断的なデータの収集・分析が可能に。

また、組織・部門間でデータが統合されていなければ、全社的に統一したシステムへリプレイスするのが難しくなり、DXの実現に向けた先進テクノロジーの導入も阻害されてしまう。CDPは先進テクノロジーの導入を促進し、企業のDX推進につなげていけると言えるだろう。

One to Oneマーケティングの重要性の高まり

デジタルテクノロジーが加速度的に進化する現代において、重要性が高まっているマーケティング施策がOne to Oneマーケティング。One to Oneマーケティングとは、顧客一人ひとりに個別に展開されるマーケティング活動を指す。

従来は、全ての顧客に対して同様のマーケティング活動を行うマスマーケティングが主流であった。しかし、商品・サービスの差別化が困難となっている現代では、顧客一人ひとりに寄り添ったアプローチ法で関係性構築・リピーター創出につなげていくことが重要となっている。

このOne to Oneマーケティングに活かせるのがCDP。例えば、顧客の閲覧履歴・購買履歴などをCDPに蓄積していけば、顧客ごとのニーズを掘り起こすことも可能。

顧客一人ひとりのデータを統合・管理し、顧客ニーズを分析できるCDPは、One to Oneマーケティングの促進に最適と考えられる。

販売チャネルの多様化

これまで消費者が商品・サービスを購入する主たる経路は実店舗であったが、昨今ではインターネットおよびスマホの普及に伴い、ECサイト・SNSなど多種多様な経路から商品・サービスが購入されるようになった。さまざまな販売チャネルを構築する場合でも、意識したいのがデータ連携。

各販売チャネルに顧客データが散在してしまうのは非常にもったいないと言えるが、顧客データを統合しておけば多くの行動データが蓄積されていき、より深くニーズを追求可能となる。その結果、役立つコミュニケーションを提供して売上が向上したり、最適なマーケティング施策を打ち出すことも可能となるだろう。

CDPの基本的な機能

CDPの基本機能としては大きく分けると、データ収集・データ統合・データ分析の3種類が存在する。ここでは、各機能の詳細を解説していく。

データ収集

CDPのデータ収集の機能では、属性データおよび行動データの収集を行う。

例えば、アプリ内における顧客データ。年齢・性別などの属性データはもちろん、どのページへアクセスしたか、どの商品ページの滞在時間が長かったか、どの商品を買い物かごに入れたかなどを収集することで、顧客の行動を可視化してマーケティング施策に落とし込める。

また、オンライン・オフラインを統合してデータを収集できるCDPツールも多い。例えば、アプリの会員IDと実店舗の会員証IDを統合し、共通のIDとして発行しておけば、後の分析に活用できるより多くの顧客情報を取得可能と言えるだろう。

データ統合

CDPのデータ統合の機能では、顧客IDをキーとして収集したデータの紐づけを行う。データを統合することで、詳細な顧客情報を作成可能となり、マーケティング活動に活かせる。

例えば、顧客の属性情報とオフライン・オンラインの購買情報を結合すれば、全ての購買履歴を可視化可能。類似商品の広告出稿を制限したり、どのような商品ジャンルに興味を示しているか消費傾向を探ることもできる。

顧客の真のニーズを把握し、よりパーソナライズされた情報を提供することで、売上の向上にも大きく貢献すると考えられるだろう。

データ分析

CDPのデータ分析の機能では、これまでのステップで収集・統合したデータの分析を実施していく。データを分析することで顧客理解を深化し、的確なマーケティング施策の立案につなげられる。

例えば、同じ30代女性であっても、高級コスメを求める人もいれば、プチプラコスメを求める人もいるため、画一的なマーケティングを行うのは非効率。そこで、30代女性という属性データに、購入履歴や閲覧履歴といった行動データを紐づけて抽出することで、個々に最適な商品提案が可能となる。

広告出稿を行う際もCDPは有効。取得した顧客データを基に、より明確なターゲット像を設定しておけば、高いコンバージョン率で費用対効果の改善も期待できるだろう。

CDPとDMP、MAツールとの違い・関係

CDPと意味を混同しやすいマーケティング用語に、DMP・MAという用語が存在する。ここでは、CDPとDMP・MAの違いおよび関係性について解説していく。

CDPとDMPの違い・関係性

DMPとは、Data Management Platform(データマネジメントプラットフォーム)の略称で、インターネット上に蓄積された情報データを一元的に管理するためのプラットフォームのことを言う。データを収集して管理するという特徴から、CDPとDMPは同義のように思えるが、データの種別が大きく異なる。

まず、CDPで収集されるデータは、第三者を経由せずに自社で収集されたデータを指す。このようなデータはファーストパーティデータ(1st Party Data)と呼ばれ、自社サイトのアクセスデータや顧客アンケートで収集したデータなどが該当。

一方、DMPで収集されるデータは、自社以外の第三者が提供するデータを指す。このようなデータはサードパーティデータ(3rd Party Data)と呼ばれ、国や自治体が提供するオープンデータなどが該当。特に、サードパーティCookieではドメインを横断したトラッキングが可能であり、インターネット広告業界ではリターゲティング広告やアトリビューション分析などで活用されている。

DMPはデータの透明性こそ低いものの、外部のビッグデータを利用することで、新たな顧客セグメントの発見を期待できる。対して、詳細な顧客データを収集できるCDPは、顧客一人ひとりの趣味嗜好を深堀りする際に最適。CDPとDMPでは、収集方法や扱うデータの種類、マーケティングの活用方法が異なると言えるだろう。

なお、DMPはしばしば、パブリックDMPとプライベートDMPの2種類に分けられるケースもある。パブリックDMPはサードパーティデータを蓄積・管理するプラットフォームを意味し、プライベートDMPはCDPとほぼ同義で、自社独自の顧客データを蓄積・管理するプラットフォームということも覚えておいてほしい。

CDPとMAの違い・関係性

MAとは、マーケティングオートメーション(Marketing Automation)の略称で、顧客データの収集や見込み顧客の育成といったマーケティング業務を自動化・半自動化するツールの総称を指し、CDPとの親和性は非常に高い。

例えば、MAツールでは見込み顧客のスコアリングを実施し、確度の高い顧客へメールを自動で配信することもできるが、このスコアリング時に活用したいのがCDPの顧客データ。あらかじめCDPとMAツールを連携しておくことで、Webのアクセス履歴やメールへの反応率といった行動データを基に、確度の高い見込み顧客を選別することも可能。

結果、効果的なマーケティング活動を行えるだけでなく、業務効率を高めて社員の負担軽減にもつながると言えるだろう。

CDP導入のメリット

ここでは、CDPを導入することでどのようなメリットを享受できるのか、解説していく。

データの一元管理

CDPは様々なソースから収集したデータを統合し、単一の顧客ビューを提供する。この一元化されたデータベースの存在により、顧客データが複数のシステムやサイロに散逸することなく、一つの場所で管理できるようになる。

また、データを一見管理できるようになることで、それぞれのデータ管理で使用していたシステムのコストや、データ分析における工数の削減の効果も期待できる。分散していたデータをまとめて分析できる形に成形するには多大なコストがかかる。それが、CDP上で一元管理・分析ができるようになれば、それまで発生していた管理・成形コストの削減効果も期待できる。

顧客情報共有の簡易化、精度向上

データを統合して管理するCDPでは、情報共有を容易化できる点がメリットとして挙げられる。

例えば、Web上で顧客から問い合わせがあった際、その内容を共有しておけば、実店舗に来店があっても問い合わせ内容を考慮した接客でコミュニケーションを取ることが可能。結果、顧客満足度や顧客ロイヤリティを高め、リピーターの創出も見込める。

また、部門間で分析結果を共有しておくことで、分析手法に関するノウハウも共有できる。リアルタイム性が高く、スピード性のある情報共有で、マーケティング活動も一層加速すると言えるだろう。

マーケティング・営業活動の精度向上

CDPによって顧客データの蓄積と分析を行うことで、マーケティングや営業活動の精度向上が期待できる。

WEBサイトやアプリ上での行動履歴などオンラインのデータや、実店舗における購買行動などオフライン問わず、顧客の行動データを分析することで顧客一人ひとりの状況をより正確に把握できる

顧客の解像度が上がった状態であれば、広告やPR、商談などにおいて、より効果的な打ち手を出しやすくなる。

また、一元化された顧客データは、オムニチャネルあるいはクロスチャネル戦略を推進をより容易にする。異なるチャネル間で一貫したメッセージを伝えることで、顧客エンゲージメントを高めるといった効果も期待できる。

PDCAサイクルを高速化できる

業務改善や品質管理のフレームワークとして、長く用いられているPDCAサイクル。ビジネス環境が刻々と変化していく現代においては、高速でPDCAを回して時代の変化に追従することが重要となっている。

そこで、CDPを導入しておけば、Check(評価)の効果検証が容易化され、次のAct(改善)のフェーズにも早い段階で移行可能。顧客データが散在する場合と比較して、データの分析スピードが格段に向上し、市場の変化に沿ったマーケティング活動を実現できると考えられる。

CDPのまとめ

縦割り構造が主たる組織体系の日本では、コミュニケーション不足や部門間のシステム未連携などが影響し、ITの老朽化が進んでデータのサイロ化に陥る企業も少なくない。しかし、データが散らばる中では、分析に入る前のデータ収集段階から多くの工数が発生してしまい、非常に効率の悪いマーケティング活動となってしまう。

その点、CDPにはデータを一元管理し、顧客データを収集・統合・分析できる機能があるので、データの収集・分析の効率性を高められるだけでなく、外部ツールとの連携で業務の自動化も図れる。政府が推奨するDXの推進にもつながるCDPの導入を、この機会にぜひ検討してみてほしい。

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