余剰在庫とは?意味や滞留在庫との違い、問題点や減らす方法など紹介

2024.05.28

余剰在庫とは、企業や店舗が保有する在庫のうち、すぐに販売が見込まれない在庫のことを指す。

「余剰在庫」の定義

メーカー、卸、小売業問わず、在庫の中で、本来の生産や販売計画において予測される需要よりも過剰に保有されている在庫のことを指す。同じ意味で、「過剰在庫」といわれることもある。

この在庫は、今後、売れる見込みはあるものの、直近にその予定がなく、長期間に渡って倉庫に保管されたり、処理されずに残ったりする場合もある。余剰在庫は必ずしも不良在庫とは限らないが、その存在が企業にとってはしばしば問題となる場合もある。

余剰在庫が発生する原因

余剰在庫が発生する主な原因は幾つかあり、それぞれに異なる背景と経緯がある。これらの原因を理解することで、余剰在庫の管理と削減に向けた対策を立てやすくなる

一般的な原因として「需要予測の誤り」が挙げられる。企業は製品やサービスの需要を事前に予測し、それに基づいて生産計画や仕入計画を立てる。しかし、需要予測が不正確であると、本来必要とされる量以上に商品の在庫を抱えることになる。需要を過大に見積もってしまうと、結果として過剰な在庫が積み上がり、逆に過小評価すると欠品を防ぐために急いで追加仕入れをし、その結果、余剰在庫が増えることもある。

「生産・仕入過多」も大きな要因となる。生産ラインが一度に大量の製品を効率よく製造するよう設計されている場合、需要に見合った量を細かく生産するのは効率が悪いことから、結果として余剰在庫が発生してしまうケースがある。同様に、仕入れにおいても、大口の取引による割引を狙って過剰に仕入れる場合があるが、これが裏目に出て在庫過剰となることもあり得る。

「在庫管理の不徹底」も考えられる。在庫管理のルールがあいまいだったり、適正な在庫数を把握できていなかったり、在庫の状態を正しく可視化できていないと、商品の過剰発注が発生し得る。

余剰在庫を抱えるリスク・デメリット

余剰在庫が発生すると、企業にとってさまざまなリスクやデメリットが生じる。

まず、最も直接的なリスクとして「キャッシュフローの悪化」が挙げられる。余剰在庫は販売されて現金化されることなく倉庫に眠るため、いわば企業の資金が固定化されてしまうことになる。本来なら新しいプロジェクトや事業拡大、その他の運転資金にあてられるべき資金が在庫として留まり、資金繰りに支障を来すことにもなりかねない。

次に、「保管コストの増加」も無視できないデメリットだ。在庫は保管するために倉庫スペースが必要であり、そのための賃料や光熱費、人件費などが発生する。特に、長期間に渡って大量の在庫を保管する場合、そのコストは企業にとってかなりの負担となる。また、スペースを圧迫することで新たな在庫の受け入れが難しくなる場合もあり、柔軟な在庫管理が困難になることもある。

さらに、「価値の減少」も大きな問題だ。余剰在庫として長期間保管される商品は、その間に市場価値が下がるリスクが高まる。ファッションやテクノロジー商品など、商品サイクルが短い業界では特にこのリスクが顕著となる。需要が低下したり、新しいモデルやデザインが登場することで、既存の在庫の価値は急速に減少する。最悪の場合、完全に売れなくなり、廃棄するしかなくなる商品も出てくる可能性がある。

また、これは価値の減少に近いが、「品質の劣化」も余剰在庫のデメリットだ。特に食品や化粧品、医薬品などの消費期限、賞味期限がある商品は、保存されることで品質が劣化し、最終的には販売できなくなるリスクがある。

また、「オペレーションの効率低下」も重要な問題だ。余剰在庫が多いと、在庫管理業務が煩雑になり、時間とリソースが余分に取られることになる。在庫確認や棚卸しの作業が増え、効率的な業務運営が難しくなるばかりか、人的資源の浪費にもつながる。これにより、他の重要な業務への集中力が散漫になるリスクが考えられる。

最後に、「機会損失」のリスクが挙げられる。余剰在庫によって資金や倉庫スペースが固定化されることで、新たな製品の開発や導入、マーケティング活動などの機会が失われる可能性もある。これによって企業は、市場の変化や新しいチャンスに対する迅速な対応が難しくなり、競争力を失うリスクもある。

以上のように、余剰在庫は企業にとって財務面、運営面、品質面で多くのリスクやデメリットを引き起こす。そのため、効果的な在庫管理と予測精度の向上が不可欠であり、適切な対策を講じることでこれらのリスクを最小限に抑えることが重要となる。

余剰在庫を防ぐには

余剰在庫の発生を防ぐために、企業は多面的な対策を講じる必要がある。

まずは、「需要予測の精度向上」が挙げられる。需要予測の精度が向上することで、実際の市場ニーズに即した生産計画や仕入計画を立てることが可能になる。そのためには、過去の販売データや市場トレンド、消費者の購買パターンを詳細に分析し、AI(人工知能)やビッグデータの分析ツールを活用することなどが検討材料となる。

「在庫管理システムの導入」も有効な対策となる。在庫管理システムにはリアルタイムで在庫の状況を把握できる機能などがあり、適切なタイミングでの仕入れや生産をサポートするものが多い。これによって在庫の過不足を防ぎ、需要に応じた在庫レベルを維持することがしやすくなる。また、バーコードスキャンやRFID(無線周波数識別)システムを利用した在庫管理を行うことで、在庫の流れをよりリアルタイムに、正確かつ迅速に追跡することも可能となる。

「滞留在庫」との違い

余剰在庫と似た言葉で、「滞留在庫」という言葉がある。

余剰在庫は主に計画のミスや需要予測の誤りなどから生じ、売れる見込みがあるものの現時点では過剰である在庫を意味する。

一方、滞留在庫は、すでに市場に投入されたものの需要が減少、もしくはほとんどなくなり、売れ残ってしまった在庫を指す。つまり滞留在庫は、「市場での需要が実際に見込まれなくなった段階の在庫」といえる。例えば、シーズン終了後の季節商品やトレンドが過ぎ去ったファッションアイテムなどが該当する。

滞留在庫が発生すると、商品の価値が時間の経過と共に減少し、最終的には値引きにとどまらず、廃棄処分をせざるを得なくなることも多い。また、倉庫スペースをむだに占有し、運営効率を低下させる要因となる。

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