BLΛNDE三郷店がオープン、カスミ新フォーマットの900坪超の大型パターンはより滞在型に進化
2024.06.21
2024.06.20
カスミは2022年から手掛ける新フォーマットの「BLΛNDE(ブランデ)」の3号店を6月20日、埼玉県三郷市にオープンした。前日の19日にソフトオープンした。
ブランデは、「カスミが提案する新たなスーパーマーケットのカタチ」として、「人」「食」「生活」「文化」が、商品、サービスを通じて交じり合う店を目指すとしている。
地元の食材、逆に世界からのめずらしい食材など多様な食材と同様に広域から集まる多様な人が店に集まることで、その「出会い」を提供する役割を担うというわけだ。
また、店内飲食機能を強化した「グローサラント」については、特に2号店の研究学園店(茨城県つくば市)で強化されたが、今回、それをさらに進化させたメニュー提供、ワインバーの設置など「居心地の良い空間」作りについても、より踏み込んだ取り組みが見られる。
ショートタイムショッピングだけでなく、「滞性」にも適した要素を配置することで、商圏内の多様な需要に対応する店となっている。実際に三郷店では特にターゲットを定めず、あらゆる客層にできるマーチャンダイジングを志向している。
既存繁盛店の建て替えリニューアルで出店
もともと同じ場所にあったショッピングセンター内にフードスクエアとして出店していたが、建て替えのため21年に閉店。今回、デベロッパーもカスミが担う形で新たなショッピングセンター「BLΛNDE MISATO」となった。ブランデ三郷店はその核店の位置付けとなる。

テナントは1階に飲食店のモスバーガーなどが出店する他、3階にはフィットネスや美容室の他、小児科、歯科、内科、外科、眼科、耳鼻科、調剤薬局からなるクリニックモールが入る。テナントは順次オープンしていく。
カスミが出店する2階にはドラッグストアのココカラファイン、また、カスミの売場と融合する形で100円均一のダイソーが出店。ダイソーはテナントではあるが、カスミのレジで、一括で精算できるようになっている。

JR武蔵野線三郷駅から徒歩数分の駅前立地だが、駅周辺にはスーパーマーケット(SM)がそもそも少ない上、カスミが出店している南側には2kmほど離れたつくばエクスプレス三郷中央駅付近までSMが存在しないため、ある意味、周辺の需要をごっそりすくうことができる大きなポテンシャルのある店といえる。
旧フードスクエアがオープンしたのは05年であるが、それ以前はマイカルのサティが営業していたため、古くから商業施設がある場所としての認知も高く、周辺のお客の行動習慣も出来上がっていたものとみられる。
実際、建て替え前のフードスクエアは年商26億円ほど売上げていた他、建て替え中に南側に標準店の「フードマーケット」の形で仮設店舗として営業していた店も高い売上げを挙げていたという。
売場面積は約921坪と、カスミの店舗として最大級となるだけでなく、既存ブランデの600~700坪と比べてもかなり大きな売場となっている。こうした大型の売場を構え、かつ年商目標も32億円というハイレベルに設定されているのには、こうした商圏状況も影響している。
今回、「ブランデ化」を果たしたことで、さらなる広域からの集客が期待できる。さらに隣接して建設された7月入居開始のマンションについては196戸がすでに完売しているという。
「ブランデは3年目で、お陰さまで売上的には継続して、ずっと順調に進んでいるし、商品の提供についてもカスミとしてはいままでにない商品、商品化を、やり方を含めてずっと継続できた。ただ、実際にはつくば(市)というもともと一番のドミナントの中で、いままでできなかったことや提供し切れなかったことを補完する意味で2店舗を出した。レイアウトや売り方、もしくはそのマーチャンダイジングの一部を変えながら、どういう形でお客さまにそれを受け入れてもらえるのかを試しながらやってきたが、結果、やはりちょっと遠いところから来ていただけるということが分かっている。有料の会員制プログラムを展開しているが、これもお陰さまで全体的には1万8000人くらいになり、つくば市外からも来ていただけるなということが分かった」(塚田英明社長)


立地する三郷市は人口約14万2000人、世帯数は約6万8000世帯で、食品のマーケットは約492億円と見ている(1世帯当たり年間72万円強)。一方で市内にはカスミとしては今回の店の他はディスカウントフォーマットのフードオフストッカーが1店あるのみで、ブランデ三郷店によるマーケット深耕が期待される。
敷地面積は全体で約2210坪、建物は3階建てで、ピロティ形式のためカスミの売場は2階。ピロティによる限られたスペースではあるが、駐車台数127台、駐輪台数276台を確保している。
延べ床面積は1階、2階、3階合わせて4313坪。カスミが出店する2階部分の面積は1695坪で、直営売場面積は前述のように約921坪の大型店だ。売場だけでなく、同店にはさまざまな実験を実施したり、従業員を教育したりする役割も期待されているため、バックヤードも調理など店内作業がしっかりとできるように従来の3倍ほどのスペースを確保したという。
また、店内で製造した商品を急速冷凍し、冷凍の状態で販売できるようにプロトン凍結による冷凍設備も導入。カスミとしてはつくば市のつくばスタイル店、千葉県茂原市の東茂原店に続く3店目の導入となった。鮮魚の刺身やサク、寿司、精肉でも焼肉用やステーキ用などの店内で加工した商品を凍結させ、冷凍の商品として販売していく。
ブランデの商品だけでなく、カスミの通常店の品揃えもカバー
マーチャンダイジングについては、大きな面積を生かし、ブランデの商品だけでなく、一部、カスミの通常の店が置いている商品も同時に置く。既存のブランデ2店では売場面積の関係もあって、ブランドの商品を広げる代わりに従来の商品はかなり絞り込んでいた。その意味では大型の売場を生かし、品揃えの幅を広げた。
既存のブランデはドミナント内の出店ということで、他の自社店とすみ分ける構造にあったことから尖った品揃えができたが、今回の場合、近隣に自社店はなく、また、そもそもSM不在の地で、日常の需要を担う部分も大きいこともある。前述のようにあらゆる客層を想定しているのにはそうした事情もある。
総SKUは1万3746SKU。
SKU数、売上高構成比

カスミがオリジナル商品として従来のプライベートブランドとは別に開発を進めているMiiL KASUMI(ミールカスミ)の商品は1063SKU品揃えしている。
さらに総SKUうち、新規商品というのが約2000SKUに及ぶ。オープンから2年以上を経ても、ブランデの商品開発が進化し続けていることが分かる。ただし、ミールカスミについては今期、見直しを図っていてアイテムはあまり増やしていないともいう。



売場レイアウトは、オーソドックスなSMに近い形で、メインの入口近くの青果から始まり、続いて鮮魚、精肉と続き、惣菜へとつながる。

青果は入口正面に中に作業場のあるケースを設置。丸の果物を販売する他、カットフルーツ、スイーツなどを製造する様子をアピールしながら売り込む。

スイーツについては、フルーツタルト、笠間栗を使用したモンブラン、飲むスイーツなど彩りを意識しながら展開。

また、野菜では、産地の集出荷拠点から野菜を運ぶ「野菜バス」を使い、茨城県内のさまざまな集出荷拠点で集荷した商品をコーナー化して販売している。


続く鮮魚では、あえて日本全国から種類豊富に魚介類を集めることに注力。基本的に毎日40種以上の品揃えを鮮魚の対面販売コーナーで展開するようにする。

産地、鮮度に加え、輸送方法や切り方に至るまでこだわり、生のたねに特化した鮮魚部門の寿司などを「BLΛNDEならではのおいしさ」として提供する。鮮魚の寿司は、海鮮丼や海鮮巻きなどの新商品を新たに投入した。

寿司については、カスミの場合、鮮魚と惣菜の両方で手掛けるが、寿司はどちらかというとたねを含む鮮魚の方を強化していく。一方の惣菜は、寿司は継続するものの、どちらかといえば揚げる、焼く、煮るといったさまざまな調理方法を生かしながら商品を展開していくことで売上げをカバーしていく。逆に鮮魚が揚げる、焼く、煮るといった調理法には踏み込まず、あくまで寿司に特化する方針。

また、加工品では、富山県の名産品としてホタルイカなどの昆布〆の商品や、白エビやアオリイカなどの冷凍の加工品を投入。

また、前述のようにプロトン凍結の設備を用いて鮮魚の寿司、刺身、サクを冷凍し、販売。「自宅で鮮度の高い状態で食べられる」ことをアピールしながら売り込む。

精肉は既存店では対面販売を含むコンセッショナリーを導入し、直営については全てアウトパックの店が多いが、ブランデでは牛肉を中心に店内で加工して商品化している。さらに対面販売も行い、牛肉では茨城県土浦市の飯村牛や「亜麻仁の恵み」ブランドの牛、豚、鶏などを販売。これらはトレーでのセルフサービスとしても販売されている。



また、鮮魚と同じく、精肉に関してもプルトン凍結の設備で冷凍した商品を販売している。

惣菜では、地元野菜を中心に旬の食材をふんだんに使用した商品などさまざまなコンセプトの弁当、多数の商品を品揃えするおにぎりなどの他、「デリセクション」との名称で和洋中多様な主食とサラダ、おかずを組み合わせて買うことで、単品より安いセット料金となるオリジナル弁当を展開するなど、食事を意識したラインアップが充実している。



「ライスボウル」のコンセプトによるカフェのメニューのような商品も新規開発した。


インストアベーカリーは「DELY BREAD」のコーナー名でインストアベーカリーを超えたカフェ&バーの位置づけとして展開。57席設けるイートインコーナーと併せ、グローサラントの機能を果たす。ベーカリー、コーヒーなどの提供の他、店内飲食のみに対応するメニューも用意している。


また、時間帯によって異なるメニューを楽しめる「Morning(モーニング)」「Afternoon tea(アフタヌーンティー)」「Bar Time(バータイム)」を設定。それぞれモーニングが7時30分から11時、アフタヌーンティーが11時~16時、バータイムが11時~21時30分(ラストオーダー21時)といった形で、時間帯を分けてメニューを展開。こちらでも、あらゆる客層をターゲットにすることが可能かどうかを実験する意味合いがある。
バータイムではノンアルコールを含むビール、ワイン、日本酒、ウイスキーなど酒も提供する上、7月以降は、仕事終わりの人を想定したハッピーアワーも実施する。

さらに注文の仕方についても、ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングスのアプリである「Scan&Go」アプリを使用することで「Order&Eat」を実現。カフェメニューについて、イートインの席から注文できるだけでなく、注文可能なエリア内であれば自宅などからも注文でき、配送もする態勢を敷いた。

加えて新たなサービスとして鮮魚、精肉、惣菜の商品の焼きたて、作りたての商品を注文できるサービスも今回初めて導入。単に即食にとどまらず、自宅で調理が難しい食材の加工にも対応する。調理加工や受取時間を指定することで、出来たての状態で受け取ることができるサービスだ。これらは7月中旬ごろから順次展開予定となっている。
「これぐらいの面積であれば、通常のお買物とブランデの価値を提供できるのではないかということで、ここを選んだ。売場面積が大きいこともあるので、既存の2店でできなかったことにチャレンジしている。デリカから即食系のところ。ベーカリーからレストランにどう持っていくか。あとは酒を提供できるバーカウンターなど、新しい形のSMの即食性を高めたいということが品揃えの特徴の最大のものだ」(塚田社長)

グローサラント機能を大幅に強化した三郷店ではあるが、既存のブランデでも、いわゆる持ち帰り商品とは異なるグローサラントの機能を強化した。しかしながら売上高構成比に換算すると現状は2%ほどにとどまるという。
「デリカの商品をイートインで食べられる方も多いし、まだまだ(形が)でき上がっていないと思っているので、三郷店で試したいと思っている。三郷店はカフェメニューで5%くらいの売上高構成比を目指したい」(塚田社長)としている。
「食のシェア」を向上させるという文脈もあって、一時期ブームのような様相を呈していたグローサラントだが、新型コロナウイルスの影響で取り組む企業はほとんどなくなったと言って良い状況になっている。
恵まれたマーケットで十分なハードを兼ね備えた三郷店で、ここまで踏み込んだ取り組みを見せたカスミのブランデがどのような反響を得るのかは、需要を探るという面からも業界全体としても注目に値するものといえる。まさにブランデがR&D(研究開発)拠点であることを如実に物語っている。
ブランデについては今年中に4号店の出店が予定されている。「全く違う形で試したいと思っている。4店を展開しながら、もう一度検証したいと思っている」(塚田社長)







BLΛNDE三郷店概要
所在地/埼玉県三郷市三郷1-3-1
オープン日/2024年6月20日(プレオープン6月19日)
店長/中山 太
営業時間/10時~22時
売場面積/3044㎡
駐車台数/127台
駐輪台数/276台
年商目標/32億円
従業員数/正社員32人、パ-トタイマー、アルバイト108人(7.75時間換算)
主要商圏/3万5638世帯、7万9914人(0~2km圏)
商圏人口/1次商圏2662世帯、5137人(0~0.5km)、2次商圏1万121世帯、2万3554人(0.5~1km)、3次商圏2万2855世帯、5万1223人(1~2km)、4次商圏4万1375世帯、8万9811世帯(2~3km)、合計7万7013世帯、16万9725人(0~3km圏)