イオンとキャンドゥが「五ヶ年計画」発表、キャンドゥの成長と高収益化、イオングループの商品力強化見込む

2022.04.12

2022.01.19

吉田昭夫イオン社長(右)と城戸一弥キャンドゥ社長(左)

1月5日、イオンの株式公開買い付け(TOB)によって子会社となり、グループ入りした本体価格(以下同)100円均一ショップ業態のキャンドゥが、イオンと共に「五ヶ年計画」を発表した。

事業計画の方針は「イオングループとの協業によるお客さま満足の最大化」。その上でそれを実現するための具体的な戦略として「販路の拡大」「商品・ブランドの差別化」「企業価値の向上」の3つを掲げる。キャンドゥの城戸一弥社長は、「この3つの戦略を採ることで、イオンとのシナジーを最大化する」と力を込める。

イオンの吉田昭夫社長は100円均一ショップについて、次のような認識を語る。「100円ショップはコロナ禍でエッセンシャルの業態として、お客さまの支持を集めた業態の1つ。ワンストップで何でもそろう便利なお店から、日常の生活を支える生活インフラともなってきた」

イオンとしては、100円均一ショップの非食品の品揃えに着目。既存業態との親和性が高く、ラインロビングの武器となると捉えている。各業態の利便性を高め、集客力を高めることに貢献するとみている。

もともと、グループが展開する商業施設のテナントとしても支持を得ているというが、実際、吉田社長は、100円均一ショップが総合スーパー(GMS)のみならず、スーパーマーケット(SM)、ドラッグストア、ホームセンターなどさまざまな業態との組み合わせで、ショッピングセンター(SC)などさまざまな商業施設から誘致を受ける例が増えてきているという。

そうした背景もあって同業態を手がけるキャンドゥをグループ化し、この事業領域をグループ内に持つことは、イオングループにとっても柔軟かつスピード感のある展開につながるとの期待がある。

イオングループの国内店数に占める100円均一ショップの出店比率はまだ低いと捉えており、出店余地は大きいと考えている。

キッズターゲットの商品開発から着手

イオンとしては同時に、100円均一ショップが得意とする非食品分野の商品開発力の強化にも期待しているという。キャンドゥは商品企画、製造、卸売事業を行うアクシスを子会社に抱えることからこの機能を生かし、「100円価格帯以外の、通常価格帯において日用雑貨、ファンシー雑貨などをグループとして活用できればと思っている」(吉田社長)。

吉田社長は、キャンドゥの出店と併せ、グループの非食品の商品力強化も見込んでいるとする

実際、キャンドゥでは2020年7月から200円、300円、400円、500円と、100円以外の価格帯の商品の展開を開始。直近では直営店で売上高の10%を占めるまでになっている。

すでにグループのドラッグストアであるウエルシア薬局のプライベートブランドのエコバッグを手がけるといった取り組みも始まっている。

今後については、「イオンのお客さま層を鑑み、ファミリーの中でもキッズをターゲットにした商品企画を検討している。コンセプトは『オシャレで楽しいキッズ向け雑貨・知育玩具』を想定している」(城戸社長)。コロナ禍ということもあって、100円均一ショップの知育玩具の需要は伸びたという。

知育玩具はコロナ禍で需要が伸びた。イオンとのシナジーでもキッズをターゲットにした商品に期待がかかる

イオンのGMSやSCの強力なコンテンツの1つに子ども関連の商品を集積した「キッズリパブリック」売場があるが、そこにこうしたキッズをターゲットにした商品を展開したり、いっしょに来店した親に向けてファンシー雑貨をコーナー化するといった取り組みを進めていく意向だ。

「これから、われわれは若い客層を増やしていかないといけない。小さなお子さまをもったお母さま方が集うような施設にしたい。キャンドゥを子会社化することで新たな客層の呼び込み、そしてキャンドゥ自体の事業成長はもとより、グループ全体の波及効果をスピーディに出していきたいと思う」(吉田社長)

キャンドゥとしても、商品開発におけるシナジーについては、特にイオンが得意とする食品分野におけるスケールメリットなどに期待を寄せる。

また、キャンドゥとしてはイオングループの電子マネー「WAON」を導入することで「イオン生活圏」に参入することにも、買物行動におけるシナジーやビッグデータといった面で大きな効果を期待している。

キャンドゥの店数、売上高を5年後に1.7倍に

キャンドゥは国内だけでも1180店ほど出店し、売上高は約730億円ほどになっているが、ここ数年の売上高の伸びが前年比100~102%前後で鈍化。「いま直面している最大の経営課題は、売上げ、利益ともに硬直化していること」(城戸社長)だという。

「今回のTOBを決意した1つの理由は、この課題を解決するためだった。今後、さらなる成長を実現するためにはキャンドゥ独自の経営努力に加え、外部の経営資源をも活用することが有益だと考えた。これからはイオングループの力を最大限活用したい」(城戸社長)

城戸社長はイオングループ入りの狙いに、売上げ、利益の「硬直化」の打破もあったと明かす

イオンとしても、グループがキャンドゥにさまざまな出店機会を提供することで、早期の多店舗出店、売上拡大が可能となるとみている。

これまで同様、直営店とフランチャイズ店など商品供給の両方を組み合わせながらイオングループ内はもちろん、イオングループ以外の商業施設への出店、路面店の出店も引き続き行いながら、5年後の26年11月期末に現在の店数の約1.7倍となる2000店体制を目指すとしている。純増する約820店のうちおよそ半数となる約450店がイオングループ内への出店になると想定している。

同時に売上高でも26年11月期に直近の約1.7倍となる1250億円を計画、営業利益も直近の約9億6000万円、売上高対比1.3%を62億5000万円、同5.0%まで高めたい意向だ。

キャンドゥは路面店から小型フォーマット、コンセッショナリー、コーナーといった形態までさまざまなフォーマットを持っている。出店機会ごとにそれらを組み合わせることで地域ごとのドミナントを形成し、それによってオペレーションなどのコスト削減も期待している。

その効果も併せ、グループシナジーによるキャンドゥの高収益化も可能と考えている。リアル店舗だけでなくオンラインショップへの出店、あるいはIT、サプライチェーン、資材調達などの面でもイオンのアセットを活用することでスケールメリットを出すことで経営効率を高めていきたいという。

チェーンストアの先進国のアメリカでは1万7000店以上展開するダラーゼネラル、同じく1万5000店以上展開するダラーツリーといった1ドル(約115円)程度の商品を主力とする勢力が、バラエティストアとして大きな存在感を放っている。

日本でも今回のキャンドゥのイオングループ入りといった再編をへて、ダイソー、セリアなど他のプレーヤーの動きも併せ、本格的なバラエティストアとしてその位置づけはさらに高まっていくだろう。

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