カインズがプロ特化フォーマット「C’z PRO」を開発。3SBUに基づく3つのフォーマットが出そろう

2020.09.29

更新:2020.09.30

カインズは2018年から商品部を3つのSBU(ストラテジックビジネスユニット、戦略的事業単位)制とし、「ライフスタイル」「日用雑貨」「プロ」の3SBUをそれぞれ1つの経営体として事業を推進してきた。

従来のホームセンター(HC)を担当する日用雑貨SBUに加え、ライフスタイルSBUは「スタイルファクトリー」という新フォーマットをオープンさせている。そして、今回、いよいよプロSBUが新フォーマットをオープン、3つのSBUのフォーマットが出そろうこととなった。

8月29日、神奈川県横浜市瀬谷区に会員制の建築プロ専門ショップの1号店としてC’z PRO(シーズプロ)東名横浜店をオープンし、建築プロ向けに特化した会員制卸売事業を開始した。先立つ7月1日からは会員募集を開始、オープン前の事前予約で会員数1000人が目標だったが、目標をクリアするなど期待の持てるスタートを切った。

フォーマット名のC’z PROは、運営会社であるカインズ(CAINZ)を意味する「C’z」と種を表す「Seeds」という2つの意味を持たせた「シーズ」に「プロ」を掛け合わせた造語。カインズが、「プロ」のより良いワークライフを実現するための「種」をまく意味を込めた。また、「C」にはカインズのCの他、Creative(創造)、Community(コミュニティ)、Connected(つながる)などの意味も込められている。また、「z」にはカインズと同様、アルファベットの最後ということで「究極」の意味も含めている。

黒をベースとした落ち着いた外観。随所で用いられるデザインのロゴはシンプルなモノトーンとし、場所によってはシルバーメタリックの色を使い、「プロの店」であることが一目で分かるようにした。HC業界にはカラフルな色を使ったイメージも多いが、そうした競合と差別化する意味もある。工具、道具の「メタル感」「機械感」を出しながら、プロが志向する「本格」「本物」「品質」「信頼性」「格好良さ」「プライド」などのイメージを表した。他、アパレルとしてデザインしたときにフォットするようなデザイン性とすることも重視。実際に従業員の制服にも使用している

プロ特化だからこそ、「早く」「確実に」が重要に

シーズプロは建築プロのための完全会員制の卸売フォーマットだが、大きな特徴はリアル店舗とデジタルの融合によって、「いままでにない顧客体験」を提供するという点にある。コンセプトは、「すべては建築プロの『明日』のために」。

プロSBUは、「早く」「確実に」を基本コンセプトに掲げる。お客が「プロ」ということもあって、「早く買える」「確実に手に入る」ことを大前提に、「確実な作業ができる」「早く作業が終わる」、結果的に「効率が良くて、安全な作業が保障される」ことにつながるなど効率性、安全性などさまざまな切り口でそれを実現しようという方針である。

商品、サービス、店舗に加えEC(電子商取引)を含めたデジタルサービスなどを推進することを通じて、「早く」「確実に」を実現し、プロのお客にとってもカインズが唯一無二の便利な存在になることを目指している。その1つの形として、具体的なフォーマットとして開発されたものが今回のシーズプロということになる。

ただし、今回のシーズプロは、プロSBUとしての単なる新フォーマットの1店という位置づけにとどまらない。お客のニーズに寄り添いながら、急速に普及するデジタル技術を分かりやすく活用したサービスの拡充によって、「便利さの革命を起こす第一歩」と考えているというのだ。

今回のプロ特化卸売事業のビジョンは、「プロひとりひとりが、ワークライフの充実、やりがいを実感。」。ミッションは、「プロのよりよい1日(Better Days)を提供する、究極のサービス・プラットフォーム。」となっている。カインズのHCにも資材館などをはじめとしてプロのお客がいるが、今回はそうしたノウハウを投入しながらターゲットをプロに「特化した」フォーマットとして、プロの需要を徹底的に深掘りする。

ターゲットを「広く、浅く」ではなく、あえて「狭く、深く」定める上で、カインズが重視したのは「リアル店舗とデジタルの融合」である。それによって、プロという特定のターゲットで想定されるあらゆる需要に応えることで、便利さの革命を起こすそうというわけだ。

「プロはいろいろな顔を持っている。資材調達するときの顔、個人事業主としての顔、職人としての顔、仲間の中での親方としての顔、こういったプロのあらゆる顔に寄り添ったサービス、ユーザーエクスペリエンスを提供していきたいと考えている」と赤堀 洋・商品本部 プロ事業部新規事業開発部部長は語る。

そのために、仕事に必要なモノ・コト、生活に必要なモノ・コトが全てそろう、ワンストップのサービス、「プロあらゆる『欲しい』が揃う、究極の会員制のコミュニティ」を目指していきたいとしている。

アプリ、ロッカーの活用で、いつでも注文、受け取りができる

会費は無料であるものの、完全な事業者限定の会員制の卸売業にしたのも、需要を深掘りした上でワンストップを実現するためだ。会員制を採用したのは、プロの「仕入れ」を重視し、ワンストップ機能として必要なものが全て、確実にそろうということを考慮した結果だという。そのため、会員獲得や日中の営業を行う外商の担当者を1人以上配置している。

また、卸売業であるため、価格はカインズのHCよりも低くしている他、表示も本体価格併記など少し変えている。

最大の特徴ともいえる「店舗だけでなくデジタルを融合させた統合的なプラットフォーム」(赤堀部長)としての機能を果たすため、会員専用アプリを用意。アプリを介して会員にサービスを展開することで新たな顧客体験を提供することを目指す。

アプリでは「キャンペーン」情報の発信などを行う他、「お知らせ」機能もある。現状は店からの情報を配信しているが、将来的にはSNSとしての活用を想定している
商品の検索はフリーワードの他、カテゴリーからも検索できる。価格での絞り込みなどもできる。店舗検索では周辺店舗の検索ができる他、店舗詳細の表示もできる
アプリで商品の購入までできるが、その際、店に取りに来るか、配送するかを選択できる。購入後、店側で準備ができたら通知が行くようになっている
アプリでは店舗での買物の際に利用できるQRコード支払いも導入。商品の合計金額が出た段階でレジにあるQRコードをスキャンする
金額入力画面が出るため、合計金額を入力し、従業員が確認し。終了という流れとなる

アプリでは各種サービスの案内を行う他、サービスの予約や申し込みなどの手続きが、仕事場や自宅など遠隔からでも可能。また、コミュニティ機能として掲示板を設けた。

店舗の全商品をリアルタイムに検索、購入することができる他、商品の受け取り方法を利用シーンに合わせて①営業時間内に店頭受け取り、②店外設置の「ピックアップロッカー」に預けて受け取り、③現場に直接配送の3つから選ぶことができる。

たとえば翌日使用する部材を、前日に現場や自宅からスマホで注文し、翌朝店舗で受け取るといったことが可能だ。その際、事前決済を選択すれば、キャッシュレスで商品をピックアップすることもできるため、手間と時間を大幅に短縮することも可能となる。

店舗の営業時間内に商品の受け取りが難しい場合は、店外に設置した「ピックアップロッカー」から24時間受取可能。従業員が商品をロッカーに入れ、準備ができると通知と共にQRコードが送られてくるので、それをロッカーにかざすと商品が取り出せるようになっている。

店外のピックアップロッカー。営業時間外でも24時間受け取りが可能。最大で180㎝×60㎝×45㎝のロッカーが3つあるなど、ある程度大型の商品までカバーできる
荷物の受け取りボタンを押し、所定のセンサーに送られてきたQRコードをかざすと該当するロッカーが開き、商品が取り出せるようになっている

さらに、店舗に立ち寄る時間がないとき、あるいは現場で部材が足りない場合は、「現場最短当日配送サービス」(有料、店舗から半径5kmまで)を利用することで、直接現場で商品を受け取ることも可能だ。

現場への配送サービスは、バイク便などを展開するセルートと提携して実施。同社が提供するマッチング機能を活用して配達が依頼できるDIAq(ダイヤク)のアプリを活用し、5時間後以降、午前の注文は早くて午後、午後の注文は翌日といった配送時間で展開する。

約2万5000アイテムの再定義+6つのサービスを提供

シーズプロの1号店となる東名横浜店は、2層で売場面積1154㎡(約349坪)だが、最小で300坪程度からが標準規模となる。HCとしては小型だが、デジタルのサービスを並行して展開するため、この大きさでもよいという言い方もできる。駐車台数は20台前後、営業時間は6時~21時を標準とする。

東名横浜店のアイテム数は約2万5000。新規取引先の開拓を含め、2割程度は新規取扱商品だという。カインズの既存店の資材館の数値を参考にしつつも、完全にプロのお客に対応する店として、品揃えはゼロベースから再定義し直した。

1号店の東名横浜店の売場は2層で、1階では主に建材など大型の商品を販売
1階では作業着や靴、手袋なども販売。プロ特化の店だけあって、各カテゴリーの品揃えは深い
2階は塩ビパイプなど大型の商材もあるが、基本的に小型の金物、資材などがメインとなっている
金物なども、細かくアイテムが分かれていて、品揃えは深い
プロカウンターは2階に設置。工具のレンタルなども行う。C’z PROの店舗には、豊富な実務経験を持つ元建築プロや工具などのメーカー、専門商社出身の「PROスタッフ」を配置。部材選びの他、特注品の注文やカスタマイズの相談も受ける。プロ特化だからこそ、こうした人材の配置が重要になる

メインターゲットは建築大工、内装、設備、電気工事、土木に従事するプロ職人の個人事業主で、東名横浜店の場合、ターゲットは4万軒ほどに上るという。出店エリアとしてはまずは首都圏の1都3県の幹線道路沿い、もしくは近接エリアをターゲットとしていく。

東名横浜店が立地する場所は卸売業者が集まった卸売団地。東名高速道路の横浜町田インターチェンジから約900mで交通の便が良く、職人が朝仕入れを行って都内に向かう、あるいは仕事を終えた職人が帰りに買物をするという動線を想定している。そのため、営業時間は平日、土曜日については朝の6時のオープンとなっている。

「お客さまのカスタマージャーニーとして、プロのニーズに寄り添ったサービス、朝から晩まで、いろいろなシチュエーションでお客さまをサポートできるサービスを提供していきたい」(赤堀部長)。サービスを全方位で提供することで「プロの仕事をよりスマートに!」することを目指す。

サービスは6つのカテゴリーに分けて考えている。1つ目はプロ職人に特化したナショナルブランド中心の「プロの品揃え」。2つ目はボリュームディスカウントなどで実現する「卸価格」。3つ目は「選べる決済手段」。現金、各種カードはもちろん、業務用ということで請求書による売掛の後払いにも対応。これら3つは既存のプロ業態でも導入しているものだが、次の3つは初のサービスとして提供する。

まずは、4つ目の「会員向けサービス」。前述のアプリによる検索から受け取りまでの一連のサービスの他、電動工具については3年の保険を提供。5つ目の「コミュニティ」は、アプリの他、会員専用で、お客同士や店長とお客が交流するソーシャルネットワーキングサービス(SNS)、相談、ハウツーの提供、動画での情報提供といったソフト面の他、ハード面として店内にクリエイティブスペースを設置。「事務所のように、あるいは休憩所のように会員の方に使っていただく」(赤堀部長)ことを想定している。

クリエイティブスペースは、会員専用のスペースとして無料の飲料の提供、タブレット、携帯電話の充電器の貸し出しなどの他、無料Wi-Fiも完備。また、有料ではあるがコピー機、プリンターも設置している。各種カタログや資材サンプルなどをそろえ、検討したり注文したりできる「カタログスペース」「商談スペース」「休憩スペース」などを整備。

さらに専用の案内係としてコンシェルジュを配置して相談を受けたり、カタログの注文を受けたりする。お客は自分の事務所、拠点のように商談をしたり、図面を見ながら仕事の手順を考えたりと自由に使うことができるため、コミュニティの場になることが期待できる。

最後の6つ目は「経営・営業支援」。確定申告から現場にかかわる各種申請などの申告支援、仕事の紹介、あっせん、あるいは保険加入、資金調達などのファイナンス支援など、外部の事業者とパートナーシップを組んで提供していく。

サービスの拠点となる「クリエイティブスペース」が特徴

このクリエイティブスペースという「リアルの設備」は、シーズプロの大きな特徴の1つで、各種サービス提供の拠点となる重要な場所となる。

「お客さまは、本業以外にやらなければいけないことがたくさんあり、本業に費やす時間が非常に取りづらくなっている。たとえば、仕入れでも探したものがないといったことが多々ある。あるいは仕事だけではなく、事業主としての顔で、確定申告の作業などが重なって困っている。また、基本的に1人で事業をしている人が多いので、仲間でつながって、いっしょに仕事をしたり、仕事を融通しあったりといったことをスマホのネットワークを介してやっていきたいというニーズがある。職人の技術的なサポートも含めて、プロのニーズに寄り添って、あらゆる手間から解放して時間を作って、現場に集中してもらうことのお手伝いしたい」(赤堀部長)

他、受発注のサポートとして、登録社数約1万8000社(20年6月時点)を誇る発注企業と工事会社のマッチングプラットフォームのCraftBank(クラフトバンク)を活用し、オンラインで希望の条件から工事案件を探すこともできるため、閑散期の対応や新規の元請け(発注企業)の開拓のニーズにも応えられる。さらにクラフトバンクのマイページには自身の対応エリアや詳しい工事内容、施工実績を掲載でき、自社ホームページ代わりになるため、クラフトバンク上で発注企業から問い合わせやスカウトメールが来るといったことも想定できる。クラフトバンクについては、将来的にカウンターを設置することも視野に入れている。

「われわれがつくりたいのはリアルのコミュニティスペース。会員さん同士、店員と会員がアプリの中のSNSでもつながるが、リアルでもつながる。お互いにコミュニケーションをしながら、いままでなかったつながりの中から新しい仕事を『つくっていく』という意味で『クリエイティブ』という思いを込めた」(赤堀部長)

クリエイティブスペースは動画撮影などのスタジオとして使うことも考えている他、会員同士の交流の場としても活用してもらえるようにイベントなども実施。工具メーカーの新商品発表会なども、このスペースで飲料を飲みながら実施してもらうことを想定している

今回、シーズプロの開発によってプロ特化フォーマットの出店に踏み切ったカインズだが、背景にはリフォーム市場の伸びがあるという。

赤堀部長は、「特に都心のマンションなど中古の住宅が圧倒的に伸びつつあり、それに伴ってリフォーム系の建築需要が伸びているし、将来性も大きい。一方で、大手はともかく建築プロは特に個人事業主が多く、なかなか仕入れる場所がないのが実態。われわれのHCの資材館をお使いになっている一方で、都心に近いところに店がない、あるいは朝早くに店が開いていないということで困られている。便利な立地にきちんと品揃えし、スピーディに仕入れられる品揃えを徹底することで、市場である程度シェアを取って行けると思う」と力を込める。

今後、積極的に出店をしていきたいといしている。

C’z PRO東名横浜店概要

所在地/神奈川県横浜市瀬⾕区卸本町9279-28

グランドオープン/2020年8月29日

営業時間/平日6時〜21時、土曜日6時〜18時、日曜日9時〜18時

敷地面積/1207㎡

駐車台数/22台

売場面積/1154㎡

店長/月岡伸浩

従業員数/21人(正社員4人、専任社員4人、パート社員3人、アルバイト社員10人)

WEBサイト/https://czpro.jp/lp/

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