ヤオコー最新旗艦店「所沢北原店」を大改装オープン、食シーン深掘りと生産性向上で年商45億円目指す

2022.04.12

2020.11.21

売場面積800坪超の「超大型店の新モデル」として生まれ変わった所沢北原店。もともとショッピングセンターの核店として大きな売上げがあった

ヤオコーの最新のマーチャンダイジング(MD)が盛り込まれた旗艦店がオープンした。2002年6月にオープンし、この間何回かの改装をしていた店舗年齢18年の所沢北原店を11月20日に大改装、売場面積は従前の662坪から806坪に大幅に拡大した。以前ツタヤがあったスペースを含めヤオコーの売場とし、ショッピングセンターの核店として高い年商規模にあった同店をさらにパワーアップさせた格好だ。

背景には競争状況の変化の他、特に周辺3㎞圏内に、ヤオコーが積極的に取り込みを図るヤングファミリーが多いこともあって、商圏シェアをアップする目的もある。また、1㎞圏内に多いシニア層のリピート利用によるシェアアップも狙う。今後、ネットスーパーにも取り組み、シェアアップを図っていく。

改装初年度の売上高は45億円という高い水準を目指す。カテゴリーの売上高構成比見込みでは、生鮮が35%、デリカが12.7%、グロサリーが52.3%といった形で、加工食品もしっかりと販売する設計となっている。

これまでの多くの旗艦店がそうであったように、同店も生鮮とデリカ(惣菜)を第1主通路に一体型とした売場レイアウトを採用。入店の際の解放感、ダイナミックな商品展開で、お客に選ぶ楽しさ、品揃えの多さを感じてもらい、活気あふれる空間、圧倒的なにぎわいを創出する。その上で、お客が楽しく集い、記憶に残ることで「また来たい」と思ってもらえるような売場づくりを目指すという。

ヤオコー大型の旗艦店で採用される生鮮デリカ一体型を踏襲

一方、第1主通路に生鮮と惣菜をまとめると反対側の第3主通路側にお客が回遊しなくなるという問題があるが、今回は柱回りにプロモーションコーナーを設け単品量販やEDLP(エブリデーロープライス、毎日低価格)を打ち出すことでお客を引っ張る方針。

お客に回遊してもらうかが大きな課題となる第3主通路側最後には多くの企業で売上げが伸びている冷凍食品をゾーニング。ゴンドラ側には銘店とホールセールパン。価格コンシャスの位置づけも担う
柱回りをプロモーションとして活用

旗艦店を進化させるヤオコーの店づくり

売場づくりとしては、同様に生鮮デリカ一体型で2012年3月オープンの川越的場店(埼玉県川越市)からの旗艦店の課題を踏まえ、「未来の旗艦店に向けたモデル」店として今後のヤオコーの旗艦店の布石となる取り組みを行っていく。モデルは2013年6月オープンの東大和店(東京都東大和市)を進化させた。

具体的には、3つの重点取り組みを行った。

まずは「素材の強化」。「記憶に残る美味しさ」として、専門店に負けない豊富な品揃えと圧倒的な鮮度を実現したカテゴリーの構築、単品量販によるお勧めの明確化。

2つ目は「新提案」。「ヤオコーならではの提案」として、お客の食シーンを想定した提案強化など、新しい店づくりに向けたチャレンジ、グループの輸入会社である小川貿易輸入商品や自社のデリカ・生鮮センター開発商品など、ヤオコーが自信をもってお勧めする商品の量販。

3つ目は「価格コンシャス」。「遠く(3㎞圏内)のヤングファミリーに向けた安さ」として、ヤングファミリーに刺さるカテゴリーのEDLPの取り組み。

これら3つによって「ミールソリューションの充実」をより深化させ、同店のストアコンセプトである「美味しさ、こだわりが伝えられ、楽しく豊かな食生活を提案する店」の実現を図っていくとしている。

特に今回は、お客の「食シーン」にこだわり、商品のグルーピングや売場のゾーニングを行っていることが特徴だ。類似カテゴリーを整理することでお客にとっては複数の売場に移動せずに買物ができ、かつ売場での選択肢の幅が広がるような店づくりとしたという。

具体的には、たとえばデリカでは「食シーン」としての「昼食・夕食」「軽食・デザート」2つの提案の強化を掲げ、入口すぐの場所にゾーニングするなど、「食シーン」による売場づくりの深掘りを図っている。

デリカ以外では、「素材市場」「素材と使う・調理する」「価格コンシャス」ゾーンなどMDにめりはりを付け、提案力の最大化を狙う。

また、特にヤングファミリーに向けた安さの部分で、今期から全社的にも踏み込んだEDLP施策に取り組んでいることも踏まえ、さまざまな取り組みを行っていく。売場の補充作業の負担や頻度を減らすことで生産性を向上させるために、金かごの什器への陳列やスライド棚なども積極的に導入。

レジ回りにもEDLPのためのかご型の什器がある。EDLPで粗利益率を下げる分、生産性を上げることで利益を確保する仕組みを構築するための実験の位置づけとなる。

また、特にデリカでは、原料の共通化を行っていることもあって、バックヤードについて、デリカ3部門(惣菜、寿司、ベーカリー)の作業場を初めてウオークスルーにすることで行き来しやすい設計とし、効率化を図っている。

入口すぐにはデザートのシーンによるコーナーを設置。青果のカットフルーツの裏側にはベーカリーのスイーツを展開するなど、生鮮デリカ一体型だからこそ、シーンに沿った売場づくりが可能になっている
プリン、チーズケーキ、フルーツ杏仁豆腐などベーカリーの店内製造のスイーツ、さらにローストビーフサンドなどさまざまなサンドイッチを集積させ、軽食シーンの売場も隣接
デリカではローストビーフなど「肉」を前面に打ち出している。ローストビーフ丼やローストビーフ寿司を集積して「肉+DELI」の打ち出し
栃木県足利市の郷土菓子にヒントを得た「あんまる」とヤオコー那須牛乳を使用したソフトクリームをバイオーダーで提供。あんまるは焼いた生地に餡が入った店内製造のスイーツ
デリカ・生鮮センターで製造しているどら焼きを販売。おはぎに次ぐ和菓子の大型商品として提案
鉄板は3台導入するなど注力。新規鉄板焼ブランド「SACHI」を立ち上げ、既存のお好み焼きや焼きそばなどに加え、厚焼き玉子、炒めパスタ、牛ステーキやハンバーグなどを導入。出来たてのおいしさを訴求すると共にライブ感ある鉄板売場を実現する。デリカは3部門のバックヤードの行き来が容易な設計とし、原料の共通化などの効率化を図っている
唐揚げなど鶏を集積させた「幸唐」。焼き鳥はばら売りができず、パック販売
サラダはアウト化を進めてきた
売場での存在感を高めている冷惣菜。電子レンジ加熱前提の商品だけでなく、冷製で楽しむ商品も登場している
青果で販売する「ミゲールさんのあぼかど」をデリカで商品化するなど一体感のある売場づくりを行う。今回「ミゲールさんのあぼかど」使用商品を拡充
寿司売場でも、ローストビーフ寿司を販売。多カ所販売が行われている
生鮮デリカ一体型のため、デリカの寿司に隣接して鮮魚の刺身盛り合わせをレイアウトするなど、関連性を高めた展開が可能になっている。寿司は「国産生本マグロ」を使用した握り寿司なども展開し、「ハレの日にはヤオコーで」といったように、お客に頼りにされることを目指す
鮮魚では切り身を充実させるなど「素材販売」に注力
鮮魚では専門店に負けない地域一番の品揃え鮮度実現を目指す。丸物は、壁面ではなく平ケースでの展開
精肉では希少銘柄の沖縄県産もとぶ牛などをコーナー化。調理を前提とした「素材」提案も強化
精肉ではミートデリカを強化。鮮馬刺しや和牛のヒレを使った生ハムなど新商品を開発・導入
生鮮デリカ一体型のため、第2主通路突き当たりの売場づくりも重要となる。所沢北原店では直輸入ワインのディスプレーでインパクトがある。ワインは直輸入やオーガニックワインの品揃えを充実させるなど強化。隣接してピザやチーズ、ミートデリカと言ったように関連性も考慮されている
グループ会社の小川貿易がイタリアから直輸入する商品の売場を拡充。写真はワイン売場と隣接して展開している冷凍のピザ
小川貿易の商品は大量陳列で大々的に展開。オリーブオイルやパスタなど、強力なイタリアン提案の売場になっている
洋風、ミル付きなどスパイスの品揃えを拡充。新型コロナウイルスの巣ごもり需要によって、関心が高まった商品分野だ
生鮮デリカ強化とはいえ、グロサリーは売上高構成比でも過半を占めるなど重要な分野。一部中通路側のエンドは定番エンドとなっている

ヤオコー所沢北原店概要

所在地/埼玉県所沢市北原町1415-1

改装オープン日/2020年11月20日

営業時間/9時~22時

延べ床面積/3838.93㎡(1161坪、ヤオコー床面積)

店舗面積/2664.03㎡(806坪、ヤオコー売場面積)

店長/山田重行

従業員数/正社員30人、パートナー・ヘルパー・アルバイト180人(延べ人数)

年間売上高/改装後初年度45億円(予定)

商圏人口/1km圏内1万2000人(5000世帯)、3km圏内14万人(6万2000世帯)

お役立ち資料データ

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