「ニューリテール(新小売り)」とは何か?アリババが提唱する新戦略から学ぶ。

2022.04.21

2021.01.21

近年、中国ベンチャー企業の成長は著しく、その勢いはとどまることを知らない。中でも2016年に登場して以降、世界から注目の的となっているのがアリババが推進する「ニューリテール戦略」だ。

ニューリテール(新小売り)とは何か? ビジネスに精通した人以外はなじみのない言葉だろう。ニューリテールの概念は、世界の小売業界を駆け巡り、新時代のムーブメントとなった。この記事では、ニューリテールの基礎的な意味から、ニューリテール戦略を提唱し、その代表的存在となっているアリババの成功事例をピックアップし、具体的にご紹介する。

ニューリテールとは何か?

未来を見据えた新たな小売システム

リテール(Retail)とは、個人の消費者、一般の消費者に向けた小売りを意味する。対義語として、同業者や小売業者に向けた卸売り(ホールセール、Wholesale)がある。つまり、ニューリテールとは直訳すれば「新たな小売りの形」となる。

ニューリテール戦略は、16年に中国の世界的IT企業アリババグループ(阿里巴巴集団)によって提唱された。当時のアリババ会長、雲馬(ジャック・マー)氏が作り上げた自社企業の中核的な独自戦略理念である。

アリババが考える、10〜20年先に訪れるであろう小売りの販売形態を指すコンセプトのことで、具体的には、テクノロジーやデータをフル活用することでオンラインとオフラインを融合させ、より満足度が高く優れた顧客体験を届けるための小売りの新しいビジネスモデルだ。

中国企業アリババとは?

アリババグループは1996年に創業され、中国のEC(電子商取引)産業で最も大きな影響力を持つといわれている企業である。BtoB(企業間のモノやサービスの取引)、BtoC(企業と個人間のモノやサービスの取引)、CtoC(個人間のモノやサービスの取引)のECサイトをそれぞれ展開し、それらECサイト上で使用できる決済サービスAlipay(アリペイ)も開発した。

オンラインとオフラインの融合をめざす

ネット通販は消費者に大きな利便性をもたらし、いまや誰もが好きな時にオンラインショッピングを楽しめる時代だ。一方で、ネットが普及し消費者が商品を手に入れやすくなっても、オンラインとオフラインの買物の間には一定の隔たりが存在する。両者が円滑に行き来し交わることは少ない。

例えば、ネットショッピングでは、実店舗のように実際に商品を手に取って試すことができない不自由さがある。また、実店舗を運営するためには従業員を常駐させることや、在庫を常時ストックしておくことが必要となり、コストや場所の確保が懸念材料となる。

このようなオンライン・オフライン双方のデメリットを解消する独自戦略がニューリテールである。ネットとリアルを上手く融合させるシステムを再構築することで不自由さを打ち消し、飛躍的な顧客利便性をもたらすのが目的だ。

すでにデジタルコンビニ、スマートカフェなど、デジタルと日常が混ざった小売店がアリババグループから幾つも登場している。実際の成功事例を詳しく見ていこう。

ニューリテール成功事例①「盒馬鮮生

最先端の注文・配送システム

まず紹介するのが、アリババグループが運営する生鮮食品スーパー「盒馬鮮生(フーマーフレッシュ)」である。フーマーの店内の商品はすべてアプリと連動しており、気になる商品のバーコードを専用アプリで読み取ることができる。

その場で商品の詳細を調べたり、オンライン注文後の配送も申し込み可能だ(3〜5km程度の距離なら最短30分で配送してくれる)。支払いは基本的にセルフレジで、アリペイを使って電子決済を行う(少数だが現金レジもある)。

リアルな体験を重視

最先端技術を駆使する一方で、実店舗ならではのリアルの体験も重視しているフーマー。店内には大きな生け簀があり、魚やカニなどの生きた商品が自由に泳ぎ回っている。

消費者は商品を実際に目で見て、手に取り、吟味するという鮮やかな現実を体験する。一方で、たくさんの荷物を抱えて支払いのレジに並んだり、重たい荷物を家に持ち帰ったりといった負担部分はオンラインで済ますこともできる。まさにオンラインとオフラインの良いとこ取りだ。

購入した素材型の商品は、商品によってはその場で調理してもらうことも可能で、イートインコーナーで食事もできる。そのためフーマーをレストランとして利用するお客も多い。

また、商品は店に行かずともオンラインで注文することができ、一度行って気に入った商品は、次回以降は直接アプリからオーダーすることができるなど、リアルでの体験とオンラインの利便性を双方提供する。

スーパーマーケットの枠を超えたマルチストアへ

つまり、フーマーはスーパーマーケット(SM)の実店舗であると同時に、ECサイトでもあり、レストランでもあり、デリバリーサービスでもあるのだ。このように、オンラインとオフラインの利点を抽出し、テクノロジーによって円滑なフローを実現させるのニューリテールの考え方である。

このオンラインとオフラインの融合店のモデルは話題を呼び、実際、中国IT企業の売上高トップの京東の「7フレッシュ」など、同様のモデルを採用する企業が中国国内には多数登場している。

京東の「7フレッシュ」

ニューリテール成功事例②「銀泰百貨」

百貨店の商品をオンラインで注文できる

銀泰百貨(インタイムリテール)は、アリババグループが17年に買収した百貨店チェーンだ。銀泰百貨の独自アプリ、喵街(ミャオジェー)を使えば、百貨店内の商品をいつでもECサイト上で購入できる。店内で買物した商品を持ち帰るのが面倒なときには、アプリ上で自宅までの配送手配を頼める。

銀泰百貨の発表によれば、実店舗が閉店する22時以降に最もアプリが活用されているという。銀泰百貨CEOの陳暁東(チャン・シャオドン)氏は、これを「銀泰百貨は世界初の眠らないデパートになった」と例えた。

実店舗に行きたくなる仕掛けが満載

また、銀泰百貨の化粧品売場には「ARミラー」という大きな端末が備え付けられている。この端末内でコスメを選択すれば、カメラを通して画面に映った自分にメイクが施される仕組み。実物の化粧品をあれこれ試さなくても、商品が自分に似合うかいくらでもチェックすることが可能だ。

デパート経営のニューモデル

日本と同様、中国でも百貨店の経営は苦しく、「2018年中国百貨店発展報告」では対象企業の対前年比42%が減収との報告がされている。そんな中、銀泰百貨は対前年比37%の増収を記録。アリババのニューリテール戦略における成功事例の1つと言ってよいだろう。

ニューリテール成功事例③「零售通」

独自ネットワークで中国と世界を連携

零售通(リンショウトン)とは、卸売先を探す企業(サプライヤー)と、仕入れ先を探す小売店をつなぐ、アリババが提供するBtoBのマッチングプラットフォームである。

中国も日本と同じく、地方都市を中心に多数のパパママストア(夫婦や家族のほか、パートタイマ―1、2人で運営されている小規模な小売店)が存在する。デジタルに弱いと言われてきたパパママストアだが、リンショウトンのネットワークを通じてサプライヤーとつなぐことで、世界中から仕入先を見つけられるグローバルショップへと昇華させたのだ。

こうしてアリババは、IT化にほど遠いと思われていた地方の小規模小売店までもオンライン上へ取り込み、中国と世界を連携させる巨大なシステムを作り上げてしまった。

日本企業のビジネス拡大事例も

さらに、リンショウトンは日本企業にも恩恵をもたらしている。大手菓子メーカーUHA味覚糖は、サプライヤーとしてリンショウトンに参画。導入からわずか3カ月で、前年同期の売上げの5倍以上を記録した目覚ましい実績を持つ。

このように、日本企業はリンショウトンにサプライヤー登録することで、これまで直接営業が困難だった中国の小売店へのビジネス拡大が見込めるのだ。

デジタル時代の小売業者の生き残り競争

アリババ元会長のジャック・マー氏は、「オンラインビジネスは今後10年から20年でなくなり、オンラインとオフラインを融合したニューリテールが誕生する」と公言している。

デジタル化著しい中国では、すでに現金よりもモバイル決済が一般化し、完全キャッシュレス社会などと呼ばれている。それらデジタル化のメリットを取り込んだ上で、小売業の形として提案されたのものの1つがニューリテールである。

現在、小売業界でデジタル技術を用いたさまざまな取り組みが行われている。次第にオフラインとオンラインを隔てる壁は取り払われ、垣根を越えた融合による小売形態の中での生き残りが模索されている。アリババが提唱したニューリテールはまさにその代表的な事例といえる。

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