どうする? 2023年の商品と売場 日配編|発注、配送頻度、物流、さらにソーシングや包装まで見直す余地を探す

2022.12.12

2022年10月の主な食品の平均価格上昇率ランキングが11月28日の日本経済新聞に掲載されている(『「値上げ力」が強い食品』日本経済新聞2022年11月28日)。

ここには日配品では前年同月比伸び率で食パン(10.6%)、かまぼこ(9.9%)、豆乳類(9.3%)、プロセスチーズ(7.7%)、冷凍総菜(7.7%)、生麺・ゆで麺(6.9%)などが掲載されている。

このデータは出典が日経POSなので店頭価格を反映したものとみてよい。これらの商品群を含め22年の食品値上げ品目は2万SKUを超えるとされている。

さらに23年値上げ分もすでに発表が各社から行われている。アイスクリームではロッテが3月1日出荷分および4月1日出荷分より19品目の値上げ(希望小売価格で6.6%~28.5%)を発表している。

また、冷凍食品ではニチレイフーズが2月1日納品分より家庭用冷凍食品のほぼ全品を約6%~約20%アップさせると発表している。

さらにマルハニチロでは2月1日納品分より価格改定を行うとしており、冷凍食品106品、約2~17%、すりみ食品39品、約4~22%、カップゼリー23品、約7~15%と幅広い商品が値上げ対象となっている。

この他日本水産(冷凍食品、魚肉練り製品)、ニップン(冷凍食品)なども来春の値上げを発表している。

これらの値上げのニュースリリースを見ていると、値上げの理由として①急激な為替変動を含む原材料費の高騰、②原油価格の高騰や人員不足による物流費の高騰、③包装資材の高騰、④動燃料費等上昇や人件費の上昇による製造コストの上昇などが共通して挙げられている。

商品は毎日入荷しなければいけないのか?

こういった複合要因による値上げは何か1つを解決してもなかなか対応できない。一方では過去30年あまりほとんど大きな値上がりを経験してこなかった小売業としては大胆な構造改革を行うチャンスでもある。小売業の最も大きな支払い項目は「商品仕入れ」である。

スーパーマーケット(SM)であれば売上げのおよそ70%が仕入れに充てられる。人件費はおよそ10%前後であろう。もちろん現在の数値を考えると何の項目が上昇しても影響はあるが、仕入価格が上がることは全体に与える影響は最も大きい。従ってバイヤーの仕入れや店舗での発注に目を向け直すことは非常に重要である。

まず、「日配」という表現であるが、あえて疑問として「商品は毎日入荷しなければ営業できない」のであろうか?

日配品でも多くの商品が2週間以上の賞味期限を持ち、製造日表示ではなく、賞味期限表示のみの場合、お客はそれほど日付を意識するだろうか? こういったことを考えると日配品のチルド商品の多くは毎日入荷する必要はあまりないように感じる。

例えば週末、重点店舗で入荷日は月水金土日の週5日で考えてみたらどうだろうか。こうすれば元の工場は完全週休2日となり変動費が抑えられる。工場からの物流も週5便となり物流費が抑えられる。逆に物流費などは4t車主体が8t主体に変わり生産性が上がるかもしれない。

余談ではあるがアメリカのトラックドライバーの年収は1400万円程度という。日本の同400万円との差は基本的に生産性の差といわれている。4t車中心で小まめに配送する日本と20tトレーラーなどで配送するアメリカとの差ということである。

話を戻すと店舗でも同一日付が2日続くと先入れ先出しをする必要があまり多くなく作業が楽になる。もちろん荷受けや荷さばきの作業が集中するので作業の生産性も上がる。問題は発注が30年前と変わらないパートタイマー任せだということと、まだパンなどのように消費期限商品が残る点であろう。

発注面はそろそろ多くのチルド日配商品でも自動化をしていく必要があるのではないだろうか。冷凍食品やチーズ、バターなどの在庫型商品はすでに在庫起点の自動発注がなされているSMもあるだろうが、販売起点(幾つ売るという発想)での自動発注はあまり聞いたことがない。これをそろそろ実現化して精度を上げていかないとチャンスロスや見切りや廃棄のロスから逃れられないであろう。

冷凍食品やアイス、チーズ、バターなどは週2日の納品でよいかもしれない。事実、筆者が店舗担当者だったころは冷凍食品やアイスは火曜発注の土曜店着と土曜発注の火曜店着の週2回であり、基本的にそれで運用できていた。システム的に過去より進んでいるのであるから不可能なことではないはずだ。これで問屋からの物流コストなどは大幅に削減される。

商品はどこから、どのように店に届いているのか

もう1つの視点は、もう一度工場の製造から店舗に届くまでを細かく分析してみることである。実は工場がどこにあるかも知らず、物流もどこを通って来ているかも知らないのではないだろうか。

例えばニチレイフーズの千葉県船橋工場では売れ筋の「本格炒め炒飯」が製造されているようであるが、ここからどうやって自店に配送されているかをさかのぼって分析する必要がある。大手メーカーの場合、すべての工場ですべての商品を製造していることはほとんどない。どこかで集約して全国物流をかける幹線物流と各問屋の倉庫に運ぶ末端物流が存在し、そこから個店に配送されると思うが、この距離をいかに短くするかということ考える必要がある。

そこで現状どういった流れで商品が店着しているかという分析が必要になり、改善できるポイントがないかを研究することが重要になる。

一方で冷凍食品のような賞味期限が長い商品であればこういった物流も耐えられるがチルド商品では多くのロスが出てしまう。やはり店舗からいかに近い工場を選んで仕入れるかという「地産地消」の考え方が必要になる。

また、輸入原材料は為替の影響や現地のインフレの影響で大幅に上がっているものが多いので、ソーシングをしていく必要があるかもしれない。

例えばスペイン産ニンニクやウルグアイ産牛肉といった、過去あまり取引をしていない地域や国でのソーシングを広げれば原材料コストを少しでも下げられる可能性がある。また、小麦粉の政府売渡価格が値上げされることも予想されるので米粉など国産品に目を向けることも必要ではなだろうか。

容器、包材の問題は脱プラスチックの問題とも重なって複雑ではあるが、流れとしては簡略化と生分解性プラスチック化であろう。簡略化はすでに一部メーカーでも行われているが、箱に入ったレトルト商品の箱をなくすとか、巾着袋をやめて資材量を減らすとかさまざまな視点があると思う。

プラスチック容器の問題は環境問題も入ってくるので生分解プラスチックの方のコストが高くてもそちらの方向へ流れていき、いずれこれが主体となることでコストが下がるという循環を期待したいところである。

商品価格が上がり、買上点数が下がるという恐怖は過去30年間変わらず起きているが、本来は価格が上昇し、それに伴って給与所得も上がっていけば良い循環となる。このような時代は各商品の品質にあった値付けというものを意識したい。

お役立ち資料データ

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