コストコ木更津倉庫店開業、日本事業にますます勢い
2022.04.21
2020.08.10
コストコは米国生まれのメンバーシップ制ホールセールクラブ。548店舗の米国(プエルトリコ含む)をはじめ、カナダ100店舗、メキシコ39店舗、イギリス29店舗、韓国16店舗、台湾13店舗、オーストラリア12店舗など合計789店舗、年間売上高1493億5100万ドル(2019年9月期)のウォルマートに次ぐ世界2位の小売業だ。
食品、日用雑貨、衣類、家電、家具など幅広いジャンルの商品を取り扱う。年会費を払い会員になると低価格で購入できるなど、コストパフォーマンスが評価され、肉、スイーツ、パンなどアメリカンサイズの大容量のアイテムも人気の倉庫型の大型店だ。
日本では1999年4月に福岡県久山町に1号店を出店以降、全国に店舗を展開、7月30日、千葉県木更津市に27店舗目、千葉県では3店舗目となるコストコ木更津倉庫店がオープンした。
新型コロナウイルス感染防止と予防を目的に、オープン日の7月30日と8月1日は苗字がローマ字のAからM、7月31日と8月2日はNからZで始まる会員のみ入店可能とした混雑緩和策を実施した。
さらに、同伴者も家族1人並びに18歳未満の子どもに限定、店内の買物は2m程度のソーシャルディスタンスを維持し、マスクの着用も求めた。
アクセスの良さで広域からの集客見込む
木更津倉庫店は、川崎から木更津まで東京湾を横断する東京湾アクアラインの木更津金田インターチェンジから車で約2分のところに位置する。
周辺に人家は少ないが、今後、宅地開発が予想され、しかも来店客の大半が車客で、商圏設定は車で1時間以内、川崎など対岸地域からの集客も見込める。「三井アウトレットパーク木更津」も車で5分程度で、相互に送客も予想される好立地だ。
駐車場は800台を用意し、全て平面。店舗面積は1万3790㎡、ガスステーションを併設し、タイヤも販売する。
総取扱SKUは約3400。「WOW(ワオ)」商品と呼ばれるユニークな商品の提案や季節商品も投入、およそ2000万円のダイヤモンドのリング、8Kテレビ、プレミアムブランドのバッグといった高額な商品も販売し、エキサイティングな売場を実現させている。
全体の3分の2を占める食品は、生鮮、惣菜、酒、菓子、グロサリーを取り扱う巨大な売場。
精肉と鮮魚は国内外から仕入れ、青果ではシードレスグレープやチェリーなど農産物を世界に広がるコストコのネットワークを駆使して仕入れることにより、1年間を通じて商品を提供、木更津産や県産アイテムも展開している。
ロティサリーチキンをはじめとする人気アイテムのある惣菜売場においては、炊飯ルームを設けてその場でご飯を炊いている他、インストアベーカリーやフードコートも設け、人気を集めている。
ドライグロサリーやスナック、菓子ではナショナルブランド(NB)以外に、直輸入などコストコでしか取り扱っていないものもあり、魅力の1つになっている。
さらに国内外の冷凍食品の品揃えも豊富で、食卓や弁当用といった一般家庭の需要に加え、レストランなどの業務用にも対応している。
ノンフードアイテムにおいては日用消耗品が人気で、大量パックのトイレットペーパー、ティッシュペーパーなどが品質も評価されよく売れており、洗剤、キッチンクリーナー、漂白剤、掃除用具などを展開するランドリーコーナーも支持率が高い。
キッチン用品売場では「ヘンケルス」「ストウブ」をはじめとする世界的な有名ブランドの輸入食器やキッチン用品を数多く取り扱い、米国NSF認証を取得している「TRAMONTINA(トラモンティーナ)」ブランドの商品など業務用に最適な包丁、鍋なども用意し、幅広いニーズの取り込みを図っている。
家電は最新大型家電から、電気式コンパクトピッツァ窯などちょっとユニークな小物家電まで展開している。
プライベートブランド(PB)の「カークランドシグネチャー」の商品も展開。食品では、飲用水、ワイン、ウオッカ、ナッツ、ベルギーチョコレートなど、日用雑貨ではトイレットペーパー、衣料用洗剤、衣料ではジーンズやメンズシャツが人気で、調理器具や寝具、補聴器も売れている。
日本では60店舗体制目指す
一般客と飲食店・再販業者など双方の需要に対応するコストコ。業務用対応も力を入れている。
飲食店で使う、ブレンダー、電子レンジなどの調理器具、ワインクーラー、業務用冷凍庫といった業務用電化製品も用意し、オフィス向けにコピー用紙や文房具など、ビジネスで必要な商品も大容量で販売する。
一品大量陳列が基本で 売場レイアウトは標準化しており、入口付近には「フェンス」と呼んでいるコーナーがあり、売れ筋商品や季節アイテムを展開、ワオ商品も売場各所に差し込み、変化を持たせている。
また、木更津倉庫店では、メガネ売場の接客においてテーブルを導入、ソーシャルディスタンスを保ちながら個別に対応できるようにし、新型のレジも導入した。
日本に進出して20年あまり、着実に店舗網を拡大してきたコストコ。来年には、北海道石狩市、熊本県御船町、愛知県名古屋市に店舗をオープンする予定だ。
運営するコストコホールセールジャパンのケン・テリオ代表取締役は、「カナダは人口3700万人で100店舗ある。日本は1億2500万人で現状は27店舗。60店舗をめざしたい」と、今後も出店に意欲的だ。
さらに、販売機会を増やすために、昨年12月10日から既に米国をはじめ、カナダ、イギリス、メキシコ、韓国、台湾などで展開している、オンラインショッピングサイトを開始した。
日々の生活に欠かせない日用雑貨、家電製品からアウトドア用品、ジュエリーにいたるまで幅広くそろえ、PBのカークランドシグネチャーやワオ、店頭では展開をしていないオンライン限定の商品も取り扱っている。
こうした取り組みによる販売量の増加に対応するために、物流態勢も増強する。現在、物流センターは兵庫県三木市と千葉県市川市にあるが、市川市の施設を閉鎖し、市原市に新たな拠点を設け、11月から稼働させる計画だ。
カルフール、テスコといった有力外資チェーンが日本では受け入れられず、撤退していった中で、コストコは低価格はもちろん、他店では見られない海外商品、前述した大容量アイテム、大量陳列などにより、エンターテインメント性でも来店に結び付き、オンリーワン的存在として根強い支持を得てきた。
直近はコロナによる緊急事態宣言で一時的に客足が遠のいたが、その後回復し、食品はよく売れており、全体の売上げも堅調に推移している。
「新型コロナウイルス感染被害拡大によって需要が高まるなかで、マスクや消毒薬などは海外の調達網も活用して対応している。店内での清掃、除菌、消毒も一層強化して行っている。これからも変わることなく高品質の商品とサービスを会員の皆様に継続して提供し続けていきたい」(テリオ代表取締役)
日本では1店舗当たりの売上げは100億円程度と推定される。全社では3000億円規模となり、一定の存在感を示している。今後も店舗網が拡大し、オンラインショッピングの売上の伸長も予想されることから、さらなる躍進が望めそうだ。
取材・文/西川立一(ラディック代表)