デジタル化を成功させたリテール企業が行っていた6つのポイント
2022.04.21
2020.08.07
株式会社Donuts
2020年2月に発表された『企業IT 動向調査2020』によると、7割の企業が業務プロセスのデジタル化を実施、あるいは検討中とのこと。中でもSaaS(Software as a Service)を導入済みの企業は6割を超え、システムを活用したビジネスのデジタル化が進んでいる様子がうかがえます(※1)。
一方で、特にリテール企業においては複数の拠点や店舗があるためか、「システムを導入したのに、なかなか上手くデジタル化が進まない」という声も。そこで今回は、数多くの企業のデジタル化を成功に導いたシステム導入コンサルタントに、ポイントを聞きました。
①明確な定量目標を設定する
「とにかくデジタル化する!」というざっくりとした目的でシステム導入を進めた場合、上手くいかずにとん挫してしまう企業が多いようです。経理や総務、人事、法務、財務など、それぞれの業務で「デジタル化によって達成したい明確な定量目標」を設定しましょう。
たとえば、採用業務においては「〇月までに×名(人数)に内定を出す」「自社のホームページ(採用サイト)からの応募を1.5倍に増やす」、勤怠管理業務においては「店舗の残業時間を約30%削減する」など。
「『自社の採用ホームページ』を持って、そこからの採用を強化したいと考えるようになりました。(中略)
(システム導入後、)求人を公開したその月から50名弱の応募がありましたし、ご入社いただいた方もいらっしゃいます」(株式会社夢や/管理部 総務・労務マネージャー櫻井さま)(※2)
定量目標を設定すると、「オペレーション設計が進みやすい」「効果が見えやすい」「ベンダーのサポート担当やコンサルタントとのやり取りがスムーズになる」といったメリットも考えられます。
②社内でシステム導入推進役(担当者)を決める
システム導入においては、1~数人程度の「システム導入担当者」を決めることをお勧めします。担当者の主な役割は、各店舗やベンダー・サポートセンターとの連絡における固定窓口です。各店舗の要望を集約できるので、運用改善のスピードがアップします。
もし固定窓口がない(たとえば勤怠管理者と給与計算担当者、店舗説明担当者が異なる)場合、「店舗からの質問が各担当者間でたらい回しになる」「ベンダーとのやり取りが重複する」「各店舗で説明会を行う必要がある」など、工数増加につながってしまう可能性も。
「本社では説明会を実施しましたが、全国にある拠点に出向いて機材設置や説明会を行うのは難しいですよね。そこで、各営業拠点で1名ずつ担当を決めてもらいました。その担当がメンバーに操作方法などを教えてくれたので助かりました」(ディップ株式会社/商品開発本部 次世代事業統括部 dipRobotics 西野さま、以下同)(※3)
株式会社ローソンエンタテインメントでも、人事部のご担当者様が窓口となりシステム導入を推進されたことで、採用業務のデジタル化を成功されました(※4)。
③テスト運用で「デジタル化の妥協点」を明確にする
ほとんどのシステムには、「無料試用期間」が設けられています。こうした期間を利用して運用テストを行い、「デジタル化したい部分にきちんと対応できるか」「必要なデータが数値化できるか」を確認しましょう。
本格的に導入をしたあとで「対応できない」ことが分かっても、すぐにシステムを変更するのは非現実的です。うまく運用できずに、デジタル化自体がとん挫してしまうかもしれません。
逆に、「この情報はデジタル化しなくてもいい」部分をはっきりさせ、取捨選択することも重要です。全てに対応できるシステムはなかなかありません。「いる or いらない」「できる or できない」をきちんと把握し、必須業務からデジタル化を進めるといいでしょう。
④スモールスタートで運用する
テスト運用を経て本運用を開始する際は、まず部署や店舗、または業務内容を限定してスモールスタートすることをお勧めします。
たとえばワークフロー(稟議・経費精算申請システムなど)の場合は、いきなり全ての書類をデジタル化するのではなく、「特定の申請書」に限定してシステム運用を開始し、徐々に対象を広げていくなど。
「まず特定の営業拠点でテスト運用を行いました。使用した営業メンバーからの反応が良く、全社導入することになりました。(中略)いきなり全ての申請書を移行すると混乱するので、まずは交通費精算からスタートしました。徐々にその他の申請書を追加していきました。」(同※2)
特に従業員数が100人を超える企業での勤怠管理システムについては、スモールスタートが必須です。万が一、欲しいデータ(労働時間や休暇日数など)がうまくエクスポートできなかった場合、大幅な設定変更が必要になるからです。しかし、スモールスタートし、早い段階でデータの取得方法や設定を変えられれば、工数を最小限に抑えられます。
導入初期は、一定の期間ごとに成果や運用状況を検証しながら進められるとなおいいですね。
⑤マニュアルや説明会では「簡単、かつ詳細を」伝える
デジタル化を成功したほとんどの企業は、独自のマニュアルを作成し、説明会を行いながらで店舗へのシステム展開を進めています。いずれもポイントとなるのは、「システムやパソコンに詳しくなくても分かるようにする」こと。説明会でざっくりと重要点を解説し、詳細はマニュアルで伝えるといいでしょう。
各店舗からの質問については、問い合わせ窓口(ポイント②の「担当者」)に集約してください。従業員側にとって分かりやすいですし、担当者側にもナレッジがたまります。もし解決できない質問やエラーがあれば、担当者を通してベンダーに問い合わせてください。
⑥カスタマーサポートを活用する
ほとんどのベンダーには、カスタマーサポート制度があります。無料で利用できることが多いかと思いますので、ぜひ積極的に活用してください。カスタマーサポートは、使えば使うほど知見が得られますし、運用も推進できます。
「勤怠管理から導入し、初期設定は1~2日で完了しました。マニュアルやヘルプページが充実しているため、主にそれらを参照しながら設定を進めました。
どうしても分からない部分があるとメールサポートを使用しましたね」(有限会社エルドシック/代表 棗田様)(※5)
「初期設定時は、分からないところがあればまずヘルプページを確認しました。それでも解決できない場合はチャットサポートで問い合わせていました」(株式会社arma bianca/人事総務部部長 齊藤様)(※6)
これら6つのポイントを押さえるだけで、かなりスムーズにシステムの導入・運用ができます。リテール企業において、システム導入によるバックオフィスのデジタル化を推進する際の参考になれば幸いです。
【出典・参考】
※1 『企業IT動向調査2020』(2019年度調査)(JUAS) https://juas.or.jp/cms/media/2020/05/it20_ppt.pdf。アクセス日:2020年7月20日。
※2 株式会社夢や | 導入事例 | ジョブカン採用管理 https://ats.jobcan.ne.jp/case/yumeya/。アクセス日:2020年7月16日。
※3 ディップ株式会社 | 導入事例 | ジョブカンワークフロー https://wf.jobcan.ne.jp/case/case22/。アクセス日:2020年7月16日。
※4 株式会社ローソンエンタテインメント | 導入事例 | ジョブカン採用管理 https://ats.jobcan.ne.jp/case/lawson/。アクセス日:2020年7月16日。
※5 有限会社エルドシック – 導入事例 | No.1勤怠管理・シフト管理システム「ジョブカン」https://jobcan.ne.jp/cases/eld-chic/。アクセス日:2020年7月17日。
※6 株式会社arma bianca | 導入事例 | ジョブカン経費精算 https://ex.jobcan.ne.jp/case/armabianca/。アクセス日:2020年7月20日。