withコロナで経営による取組み事例「本部機能のテレワーク化」を推進。ホームセンター「グッデイ」から学ぶ

2020.09.10

MD NEXT

新型コロナウイルスが感染拡大するなか、世の中が急速にデジタルに移行。動きが鈍かった小売業も、オンライン商談が始まるなど業務のオンライン化が加速しそうな気配だ。九州を中心に65店舗(2020年6月現在)のホームセンター(HC)を運営する株式会社グッデイはいち早く本部機能のテレワーク化を成功させた。同社がどのようにオンライン化を進めたか。代表取締役社長の柳瀬隆志氏に聞いた。

テレワーク化を迅速に決断。まず店長会議をオンライン化

グッデイが毎月開催する100人規模の店長会議をオンラインに切り替えたのは2020年2月26日のこと。このとき福岡県の新型コロナウイルス陽性患者が2人であったことを考えると、同社がいかに早い段階から危機意識を持っていたかがわかる。翌月、3月27日には福岡県内を含むすべての取引先との商談を電話かオンラインで行うよう通達、3月31日には本部従業員全員が在宅勤務に移行した。

本部機能のテレワーク化にあたっては、在宅勤務を決断する1ヵ月前から、経理や財務の限られたパソコンからしかアクセスできないアプリケーションをどうやって運用するかが検討されていたが、Google Chromeのリモートデスクトップ機能を使うことで、本部でパソコンを立ち上げておけば社外からもアクセスできることが検証されたため、業務をストップすることなくスムーズにオンライン化に移行できたという。

「3月30日にテレワーク化の意思決定をして翌日に開始できたのは、弊社がここ4、5年のあいだに蓄積してきたノウハウがあったためです。本部業務がすべてオンラインで完結するよう、オンライン会議はGoogleMeetで、ほかにチャット、カレンダー、Google Driveなど、Googleのプラットフォームで統一できていたことが大きいですね」

テレワーク化に移行後は本部に3、4人、必要最低限の従業員が出勤しているが、代表である柳瀬氏が出社したのは1ヵ月に3度ほどだ。「経営者が進んでテレワークをしなければ、従業員に浸透しません」(柳瀬氏)

グッデイの柳瀬隆志社長。今回は自宅から取材に応じていただいたが、自宅感を消すためにバーチャル背景を用意してくれた。キャラクターの「良日出来太(よいひできた)」くんが印象的

勤怠管理はチャットで実施 回線問題はルーター貸し出しで回避

グッデイではテレワーク化にあたって、勤怠管理をチャット上で行うようにした。タイムカードの代わりに出勤・退勤をチャットで報告するだけだ。出勤したら一日の業務予定を報告し、退勤時には実際に取り組んだ業務を箇条書きにする。これは、グッデイのグループ会社であるカホエンタープライズが先行して取り組んでいたテレワークの方法だ。

「従業員は日ごろからチャットを活用していたので、抵抗はなかったとおもいます。ほかに、ツールが使えない、オンライン会議に参加できないという人もほぼいませんでした。」と柳瀬氏。むしろ、チャットでコミュニケーションを取ることで会話の記録がすべて残る、文章を短くまとめるといった効率化につながっているという。

しかし、なかには問題もあった。たとえば、自宅にインターネット回線がない従業員がいたり、あったとしてもオンライン会議や画像編集で回線容量をオーバーしてしまうようなケースだ。

また、今回のコロナ禍では家族全員が外出自粛となり、在宅勤務やオンライン授業を余儀なくされた家庭もある。その結果、家庭内で一斉にネットワーク回線が必要となり、接続スピードが落ちるという問題もあちこちで起きている。同社では、こうした事例に対し、従業員にWi-Fiルーターを貸与することで対応した。

一方で、社外とのやりとりについては、メーカーを含め300社ほどの取引先とオンライン商談を進めている。取材時はZoomやSkype、ベルフェイスなど、取引先に合わせて異なったツールを使用してきたが、今後は取引先の理解も得ながら、GoogleMeetに統一していく手はずだという。

テレワーク化でスピード感ある意思決定が可能に

社内のテレワーク化は、おもわぬ副産物を生み出した。グッデイでは、コミュニケーションツールとしてGoogleMeetとチャットを使うことで、いままでよりもスピーディに意思決定できるようになったという。「これまで部長会議を開催する場合、各部の部長が会議室に集まる時間を確保しなければいけませんでした。しかし、オンラインならその日のうちに会議を開催することができます」と、柳瀬氏はオンライン会議のメリットについて言及する。議事録は全員に共有されたGoogle Docsでリアルタイムに記録されるため、メンバーは普段の会議よりも集中して議題に取り組むことができるという。

写真1 「緊急事態宣言下でホームセンターは営業自粛の対象外」という発表があった日のチャット。代表者が自分の言葉で、きちんと数字に基づいて今後の方針や注意すべき点を明確にすることは、従業員にとって前向きなメッセージになるだろう

政府の緊急事態宣言が発出された際、HCが自粛対象となるのかどうか、事態は流動的だった。こうした場面ではことさら、スピード感ある意思決定が必要となる。グッデイでは緊急事態宣言が出されるなか、いち早く営業継続を決定した。4月7日の店舗営業開始前、8時45分から15分ほどGoogle Meetでオンライン朝礼を行い、全店長に営業継続の方針を伝えた(写真1)。その際のやりとりでは、感染防止策としてどのような対応をすればよいか、従業員の安全を確保するために何をすればよいかなど、その場で質問を受け、即決した事柄もあったという。

「たとえば、感染防止のためお客さまへの車両貸し出しを中止するなど、各店舗の店長から寄せられた質問に対して、対応する・しないをその場で決定していきました。実際に顔を合わせているわけではありませんが、画面越しに対面しながら話をすることができるのです」

全店長が参加する「店長チャット」には現在137人のメンバーが参加している。そこでは、安全対策について情報共有をしたり、従業員から上がっている不安の声に本部スタッフが対応。感染を防止するためレジ前にアクリル板を施す、フェースシールドを導入するなど、現場スタッフの不安を取り除くための施策を指示したり、柳瀬氏自らが福岡市の新型コロナ感染状況を分析し全従業員に発信するなど、詳細な情報を提供してきた。「情報を整理、分析し指針を示すのは本部の役割です。取引先やほかのHCは休業しているのに、『どうしてうちだけが』と従業員は非常に不安になっているので、なぜグッデイは営業するのか、なぜ大丈夫といえるのか、根拠を示すことが大切です」

本部と店舗の業務分担を適切に行わなければ、従業員の中に不公平感やサボタージュを引き起こす原因となる。柳瀬氏は、本部が店舗をサポートするという姿勢を示すことが重要だと考え、行動してきた。

コロナ禍で再認識したHCの役割

このコロナ禍にあっては、「自粛要請が出ているのになぜ店舗を営業しているのか」という近隣住民やお客からの苦情も覚悟していたという柳瀬氏だが、ふたを開けてみれば「営業してくれてありがとう」という声が多かったそうだ。店舗を営業するか、しないかを判断するにあたっては、次のように考えたと話す。

「こうした場面では、店の営業を取るか、従業員の健康を取るかという図式に捉えられがちですが、それは間違っています。店を営業するかどうかは『必要とされているかどうか』ですし、健康を守るかどうかは『きちんと安全対策が取られているかどうか』なのです」

営業を継続しながら、いかに従業員とお客の健康を守るのか。同社では、ソーシャルディスタンスを保つ、アクリル板を設置する、フェースシールドを導入するなどさまざまな施策を取ってきた。店舗の状況は文字情報だけでは把握しにくいため、店内に設置されているセーフィー社のカメラを活用。レジや通路の状況を常にモニターしながら「密」になっていないかどうかを判断してきた。同社が運営する工房「ファブラボ太宰府」の存在も大きい。

3Dプリンターやレーザーカッターなどの最新のデジタル工作機械を備えたファブラボ太宰府では、現場スタッフが着用するフェースシールドの製作を行っている。地域の医療機関の要請に応じ、これらの感染予防アイテムの製造・提供も行った。

写真2 グッデイが運営する「ファブラボ大宰府」のスタッフから柳瀬氏へのフェースシールド製造についての相談のやりとり。小さな組織とはいえ、代表者に現場から直接提案ができ、その場で判断が下せれば、機動力はより高まるはずだ

新型コロナと共存する時代。今後のカギは「オンライン化」

安全に配慮して営業を続けるなか、グッデイでは当初のマスクやアルコール消毒液から、木材や園芸用品、DIY関連用品へと売れ筋商品が移り変わってきたという。長引く外出自粛によって、お客の関心が「いかに自宅での時間を充実させるか」に移ってきたことを実感した同社では、ゴールデンウイークにYouTubeのライブ配信を開始した。動画には、DIY道具の使い方など自宅で過ごすためのヒントが詰まっている。

グッデイの公式Youtubeチャンネル

「ライブ配信ははじめての試みでしたが、店舗で商品を販売するだけでなく、メディアを使って商品を使うための知識や技術を伝えるのもサービスのひとつになり得るという新たな発見でした」

物づくりの体験を重視してきたグッデイでは、これまで工作ワークショップに積極的に取り組んできた。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大が懸念されるあいだは当面、「密」の状況をつくり出すワークショップを見合わせるほかない。そこで同社では、先述のYouTubeによるライブ配信を含め、今後さまざまなコンテンツをオンライン化しようと考えている。

「売場の実感としては、このコロナ禍でHCをはじめて利用していただいたお客さまは増えていると感じます。さまざまな物資が不足する状況で、自分の手で何かをつくろうという人が増えている印象です。HCとして、新しく物づくりに興味を持ってくれた人のフォローをしていきたいですし、オンラインであれば九州でも関東でも関係がないので、今後はオンラインによる発信を増やしていきたいとおもっています」

今回の新型コロナウイルスの流行は、多くの場面ではマイナスの影響をもたらしているが、半面、プラスの効果も表れていると柳瀬氏はいう。

「歴史上、何度も伝染病が発生していますが、過去の例ではそれによって進歩したこともあります。今回も、新型コロナウイルスによって業務や教育のデジタル化が進むというとても興味深い現象が起きています」

これまで遅々として進まなかった働き方改革や業務のテレワーク化、授業のオンライン化が、半ば強引に時計の針を進めるように必要不可欠なものとなっている。「そうした流れについていけるようにオンライン化を推し進めていくことが、今後の大きなカギになるのではないかとおもいます」

新型コロナウイルスの陽性患者数は全国で日に日に落ち着いてきているが、しばらくは「3密にならない」「ソーシャルディスタンスを保つ」といった新しい生活様式が続いていくものとおもわれる。同社ではこれまで新型コロナウイルス感染拡大を防ぐためのリアル店舗での対策を発信し続けてきたが、今後はそれに加え、G Suite(業務に必要なグーグルのクラウド上で使えるアプリを1個にまとめたもの)の活用法などテレワークのノウハウを小売の現場に広めていきたいと意欲を示す。

情報提供:MD NEXT https://md-next.jp/15328

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