コロナをきっかけに加速する「世界の食品トレンドTOP5」とは?未来は予想以上に早くやってくる
2022.11.09
2020.09.21
コロナ時代の食品トレンドの方向性として、重要なトピックを5つ挙げたい。あらかじめ断っておくが、これらはコロナ以前から伸びているトレンドだ。当社の食品データベース(Innova Database)やトレンドレポート集においても、ここ数年、頻繁に目にする内容だし、世界的には何も目新しいことではない。
ただし、見逃してはならないことがある。私は仕事柄、世界中の食品トレンドを常にウオッチしているのだが、ここ数カ月、気になることがあるのだ。
トレンドが予想以上のペースで加速している…。
何となく5年後にやって来ると思っていた未来が、日本ではまだまだ本格化しないと高をくくっていたグローバルトレンドが、あっという間に、押し寄せてきている。コロナに端を発した時代の変化が、トレンドに拍車をかけているのだ。だから、うかうかしていられないし、アンテナを高く世の中の変化を感じ取らなければならない。
見方を変えれば、果敢に新しいことへ挑戦する意志のある個人や企業にとっては、面白い時代に入ったということだ。
それでは順に見てみよう。
①免疫の健康
コロナによる食品トレンドへの影響の1つは、免疫力への関心の高まりだ。先日、日本の健康食品業界において、画期的な進展があった。機能性表示食品で、キリンホールディングスとキリンビバレッジの、「キリン iMUSE(イミューズ)水」など5品が、免疫機能の表示で消費者庁に受理されたのだ。アメリカでもヨーロッパでも「免疫」表示は一般的。日本もついにこの分野で世界の仲間入りをしたといえる。
当社の調査によると、世界の45%の消費者が、コロナ禍が影響して、免疫機能を高める食品を、より摂取するようになったと回答している。サプリメントでは、ボタニカル/ハーバル原料を使ったものが各国で人気だ。また斬新な切り口のものも見られるようになってきた。
たとえば、子供向けの免疫機能を高めるチョコレートや、麻の一成分であるCBDを使った免疫サポートドリンクなどが挙げられる。「免疫の健康」をうたった食品やサプリメントの市場が、今後一段と伸びていくことは間違いない。
②心の健康
現代人は忙しい。健康的なライフスタイル維持に努める一方で、キャリア、家庭、社会生活にも対応しなければならない。このように多忙で複雑な社会において、メンタル面での不調を訴える人が増えている。
それに呼応して、リラックス、ストレス低減、睡眠促進などを目的とした食品が、この数年急増。さらにパンデミック下で、精神的な癒しを求める人が増え、このトレンドに拍車をかけているのだ。
人々は自宅にこもっている間、インターネットやSNSに時間を費やし、メンタルに効果的な栄養情報を、今まで以上に入手していると考えられる。
加えて見逃せないテーマは、心と身体の両面からのケア。消費者は、全体的なバランスを重要視しているのだ。
「心の健康」については、少し前に詳細に書いたので、そちらの記事も参考にして欲しい。
③クリーンラベル
クリーンラベルは過去10年に渡り大きく伸びたトレンドであり、食品業界の「新ルール」であるといわれている。これは身体によく、出どころの明確な原材料を使うトレンドのことであり、たとえば、無添加食品もこの流れの1つ。コロナによる社会不安から、安全安心の意識が高まり、今まで以上にクリーンラベル商品が求められるようになっている。出どころが明確であることは、安心感につながるからだ。
安心感という観点でいえば、自分にとってなじみのある食やブランドを選ぶ傾向が出てきていることが、当社の調査で分かっている。ローカル商品もその1つだ。イタリアでは30%以上、中国では50%以上の消費者が、コロナ以降、地元の食品をより消費するようになったと回答している。
伝統食への回帰も1つの傾向。慣れ親しんだ食品や、子供時代を思い出させるような懐かしい味が、心の安定につながる。
④サステイナビリティ
近年、食品企業は「サステイナビリティやフェアトレードに取り組むべきだ」というプレッシャーにさらされてきた。現在のコロナ状況下においては、従業員、地域社会、チャリティといった社会的/人間的な側面で、責任ある行動が特に求められている。
昨今、市場が急成長しているプラントベース食品も、サステイナブルの観点から、重要性がますます高まると考えられる。高価格帯ラインアップについては、経済不安から一部買い控えも見られるが、この分野は参入企業も多く、継続して伸長すると考えるのが必然だ。
また当社調査よると、多くの消費者が「ナチュラルであることは、地球環境にもよい」と考えている。これも見逃せない事実だ。すなわち「健康」「クリーンラベル」「サステイナビリティ」を、関連付いたイメージとして捉え始めているということ。全てが連動して伸びると予想される。
⑤食体験
当社が毎年発表している「世界の食品トップ10トレンド」の、2019年版ナンバーワントレンドは、「ディスカバリー:冒険好きの消費者」である。未体験のフレーバーや、海外の珍しい食品、また意外性のある食感など、目新しい食を求める傾向が、世界的に高まっている。
背景として挙げられるのが、ソーシャルメディアなどであらゆる情報が飛び交う現代社会。普通では物足りず、常に新しい刺激を求めてしまうのだ。
このような冒険好き消費者は、ステイホームであったとしても、味、食感、レシピなどに刺激的な食体験を求める。行動制限の反動が、そのニーズをさらに助長する。
自分にとってご褒美となるプレミアム感を求める傾向は変わらず存在するが、失業や経済悪化の懸念から、予算内で楽しめる小さなぜいたくを好む消費者が増えると考えられる。
自宅でクッキングを楽しむ流れはあるものの、もう少し落ち着きを取り戻せば、ミールキットなど時短トレンドに改めて意識が向くはずだ。レストランテイストなどちょっとしたぜいたく感を付加することが、消費者を魅了することにつながるだろう。
消費者の「感情」理解が、商品戦略の鍵に
これら5つのトレンドは、多かれ少なかれ、全て消費者感情に起因している。人の感情は複雑で、イケイケのときもあれば、スローダウンしたいときもある。食品企業にとって、消費者の感情を繊細に理解することが、コロナ時代の商品戦略の鍵となるはずだ。
※記事中の画像・グラフは、当社Innova Database及びInnova Reportsより引用