コロナ禍で改めて注目を集める『EDLP』とは?成功に導くポイントや導入事例を解説

2021.01.22

更新:2021.03.30

小売業界では一般的に、期間を定めた短期的な値下げなどによって客数を増やし、売上げを高める手法が採用される。一方で、価格が変動すると販売数量も変化するため需要が安定しにくい上、価格変更に伴う作業が発生するため必要人時が膨らむ。また、価格を動かすため販売予測の精度も上がりづらく在庫過多が発生したり、それを値下げして処分することにかかわる作業コストがかかったりするのが難点だ。

そうした価格変動によるデメリットを解消する価格戦略として登場したのが「エブリデーロープライス(EDLP、毎日低価格)」である。売れ方が安定するので、店頭情報と生産計画の連動もしやすくなる。製造、流通、販売といったサプライチェーン全体の効率アップが図れるのもメリットだ。EDLPとはどんな戦略なのだろうか。実際に導入している企業の事例を見ていこう。

「EDLP」がもたらすメリット

そもそも「EDLP」とはどんな価格戦略なのだろうか。その他の戦略との違いやお客に与える影響を整理してみた。

●「High&Low」と「EDLP」の違い

小売業界で一般的に導入されているのは、「High & Low(ハイアンドロー)」と呼ばれる価格戦略である。一定期間の値下げを行い、チラシなどの広告を利用してそれを周知し、集客を狙う手法である。訴求期間が終わると元の価格に戻るため、値下げしている間は買上点数が増加して売上げが増えるのがメリットだ。

一方で、値下期間に合わせて在庫を確保するために、店頭では商品陳列だけでなく、売れ数に合わせて補充もしなければならない。定番とエンドの複数展開やPOP掲示などの作業人時が必要となり、コストが膨らむリスクがある。

「EDLP」は、「Everyday Low Price(エブリデーロープライス)」の略語だ。ハイ&ローの戦略と異なり、基本的に価格を変動させずに、いつも同じ値段で販売する。ハイ&ローの場合にかかる作業のコストを抑えられるのがメリットである。また、販売予測の精度が上がるため、適正在庫につながりやすい。

「毎日安く買える」ことでお客が定着

確かに、ハイ&ローによる特売は強いアピール力を発揮する。まず、集客の即効性がある。しかし、特売で集まるお客は価格が下がったときを狙って購入しているともいえる。需要の先食いにもなるため、平常時の売上貢献にはあまり期待できないともいえるのだ。お客は特売の価格に慣れてくることで、定番価格では購入しなくなってしまう可能性がある。

一方で、特売による価格変動が生じないEDLP価格戦略は、「いつ買っても安いと」いうことから、お客に安心感を与え、お客を定着させることが可能である。特売から定番価格に戻したときに、高くなったと感じさせるリスクがない。「いつ店舗を利用しても安く買える」と感じるため、固定客の獲得につながりやすいのだである。

メーカーにとっての「EDLP」のメリット

EDLP戦略は価格が上下しないため、メーカーにとっても販売予測の精度が高まるというメリットがある。ハイ&ローのように一時的な売上げをあげることはできないが、生産量を増減させるために発生するコストがかからない。

生産の平準化が可能なので、生産効率を上げられるのもメリットだ。また、特売イメージがつくことによるブランドロイヤリティの低下も防げるというのもメリットになるかもしれない。

「EDLP」を成功に導く3つのポイント

ただし、「EDLP」を導入するだけで結果につながるとは限らない。逆に、EDLPを維持し続けること、さらにお客に定着させることは非常に難しいこととなる。

まず、EDLPは即効性がない。当然のことながら、常時その売価を維持しなければならないため、その売価水準はハイ&ローのそれより高くなりがちだ。つまり、「いつ店舗を利用しても安く買える」の「安く」の部分はハイ&ローの特売価格よりは劣ることを前提にしつつ、「いつ店舗を利用しても」の部分でお客にメリットを感じてもらう必要があるのだ。

そして、それが広がっていくことで客数が増える。つまり、EDLPはじわじわと客数を増やしていく戦略でもある。

その上で、EDLPを成功に導くにはどんなポイントがあるのだろうか。

ローコストオペレーションの実現

EDLPの成功には、ローコストオペレーションが不可欠だ。ハイ&ローは一時的であるがゆえに、相当の低価格を打ち出す。常時打ち出す必要があるEDLPの価格でそれに打ち勝つためには、EDLC、つまりエブリデーローコストを実現するための抜本的な経営改革が必要となる。チラシ訴求の減少による販促費の削減や店舗におけるオペレーションの標準化、売価変更に伴う作業の削減はもちろん、あらゆることを見直してローコストを徹底することが求められる。

買上点数をアップする施策

EDLPでは、買上点数をアップすることも成功のポイントになるだろう。売れ筋商品をいつでも安く買えるEDLPの強みを利用して、カテゴリーの主力商品にスポットを当てて買上点数を稼げるようにしていく。

売れ筋商品が増えてくると、関連商品の動きへと広がっていくのがメリットである。例えば、主力商品の麺類と共に、組み合わせて使うつゆやソース、関連商品となるトッピング類を陳列することで買上点数が増えるイメージだ。

ストーリー性のある、お客にとって便利な売場づくりで買上点数アップにつなげることがポイントとなる。また、お客の期待を裏切らないためには、欠品を起こさないようにすることも重要だ。

●時代に適したマーケティング戦略

EDLPを成功させるには、時代に合ったマーケティング戦略もポイントとなる。スマートフォンの普及に伴い、新聞折込広告を利用するケースは徐々に減っている。マーケティングにおいても、スマホユーザーへのアプローチがより重要になっていると思われる。

例えば、アプリなどを活用することによって、お客の購買履歴を把握してお客の傾向にマッチした商品を提案するといったことも、現代ではよりやりやすくなっている。ローコストを維持しつつ、販売効率を高めるための新たな技術については、常にアンテナを張っておきたい。

EDLPを導入する企業の事例

EDLPを実際に導入している企業はどんな取り組みをしているのだろうか。

ウォルマート

実は、EDLPを生み出したのは世界一の小売業として知られる米国のウォルマートである。ハイ&ローが盛んに行われた中、EDLPによってお客の信頼を勝ち取り、チェーンストアとして大成長を果たした。業務の効率化やテクノロジーの導入も、このEDLPの実現の助けとなった。ウォルマートの傘下となった日本の西友もEDLPを実践している。

オーケー

スーパーマーケットのオーケー(店舗はオーケーストア)もEDLPを続けている企業だ。「高品質・Everyday Low Price」をコンセプトに、常に取り扱う商品の見直しを繰り返している。品質や売価を念入りに調査したり、品種を絞り込んだりすることで売価の引き下げへとつなげている。

結果として競合店が打ち出す特売価格に負けないような通常売価を実現。高い成長率を実現してきた。さらに最近でも物流センターを整備することで、店舗作業まで考慮に入れた最適なサプライチェーンの構築を図るなど、常に低価格に磨きをかけている。

コスモス薬品

メガドラッグストアのコスモス薬品は、商圏人口1万人の小商圏をターゲットとするビジネスモデルを構築している。小さな商圏に医薬品や化粧品、日用品、食品がそろう大型店を展開することで、地域で暮らす人に利便性が高い店舗を実現した。

コスモス薬品は本社を置く九州エリアを中心に全国へ拡大展開している。そのコスモス薬品もEDLPを採用。同社の強みの一端となっている。日替わりや特売、ポイントカードを廃止し、毎日安い価格を継続することでお客との信頼関係を築いてきた。作業の簡素化などによって低減したコストを、商品価格に反映させている。

コロナ禍でEDLPに注目が集まる

EDLP戦略は、チラシなどの特売でお客を集めるハイ&ロー戦略とは異なり、毎日同じ価格で商品を提供する手法だ。商品価格が変動しないため、お客はいつもの商品をいつもの値段で購入できるのがメリットである。値下げにかかわる作業が不要となり、在庫コントロールも容易になるというメリットもある。

業務の効率化や物流費の最適化によるEDLCは、EDLPの成功に欠かせない要素である。EDLPを導入している企業では、削減したコストを価格に反映することでお客に還元している。

コロナ禍となり、特定日や特定時間の集客は避けるべきものとなった。つまり、ハイ&ローの施策が打ちづらい状況になってしまったということになる。集客や売上げの平準化につながるEDLPはその意味で、目下、コロナ禍でその存在意義を高めている。まさに現在、EDLPを成功させることは、お客が毎日、安心して利用できる店となることにつながるといえるだろう。

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