強さの源泉を最新旗艦店「ヤオコー所沢北原店」の売場から探る!散りばめられた工夫を見る。
2022.04.21
2021.02.10
2020年11月20日、ヤオコー所沢北原店がリニューアルオープンした。
662坪だった売場は約800坪に拡大。改装前の年商は約40億円だったが45億円を目指すという。営業時間は9時~22時。「豊かで楽しい食生活」をテーマに店づくりを行っている。
即食系の商品を入口付近にまとめたレイアウト
入口付近にインストアベーカリー、イートインコナー、青果、惣菜、鮮魚、精肉と「インストア加工部門」をまとめてゾーンニングした。チルド商品、冷凍食品、ドライ食品、非食品の「アウトパック部門」との売場比率は約1対4である。
生鮮食品、惣菜ばかりに目が向くがヤオコーが高利益を挙げる秘密はこの比率にある。コンコースには冷蔵多段ケースと冷蔵平ケースを配置し、壁面はチルド、冷凍多段ケースを配置した「フロア部門強化型」の店である。
新コーナーは6カ所、①ミートデリカは、ローストビーフ、生ハム、馬刺しなどおつまみ、オードブルを豊富に準備。壁面のチーズ売場の前にミートデリカを新設。
②精肉冷凍ミールキット。手間のかかる料理を時短でおいしく食べられるアイテムをラインアップ。精肉売場の平冷凍ケースで冷凍ミールキットなどを販売。
③「あんまる」。自社製粒あんをたっぷり入れた郷土料理。ヤオコーカフェの前に「あんまる」専門コーナーを新設。
④デイリーセレクションは、お薦めのワインと相性のよいナチュラルチーズを取りそろえた。奥主通路突き当たりのワインコーナーの前にナチュラルチーズ、ワイン、チーズ、ミートデリカをまとめてゾーンングした。
惣菜:最大級の売場と品揃え
大型店であるため「惣菜の可能性」に挑戦しているように見える。ヤオコーの生鮮部門は揚げ物や焼き物などの「惣菜」は扱っていない。その分、惣菜部門が野菜惣菜(カットフルーツは青果部門)、魚惣菜、肉惣菜を販売している。
入口付近にはカットフルーツ、フルートデザート、サンドイッチ、ベーカリー、サラダ、ローストビーフ、米飯、温惣菜、冷惣菜などのレディ・トゥ・イート(即食)をまとめてゾー二ングして買いやすい売場をつくっている。さらに価格コンシャス(意識)で買いやすい価格を設定している。
果物売場ではインストア加工、アウトパックを含め、杏仁フルーツやホイップクリームのかかったカットフルーツなどに挑戦している。カットフルーツだけでなく新鮮な果物を使ったデザートを販売し、新しい需要の掘り起こしを図っている。
また、インストア加工、自社センターでの和菓子の商品開発に踏み込む。インストア製造の「あんまる」は、たい焼きや今川焼きのような商品だが「古い伝統を生かしつつ新しい商品」を開発する「モダン・ノスタルジー」の商品だ。
将来は焼きたてのみたらしだんごなどの温かい和菓子があってもよい。さらに焼きまんじゅうや焼きおやきに広がるかもしれない。自社センターでは大福餅なども可能性がある。共通点は自社開発の小豆餡を使っていること。
また、自店製造の卵焼きは単品で販売するだけでなく。寿司、弁当、サンドイッチにも流用可能だ。卵焼きを大量生産することで生産性も高まり、利益にも貢献できる。おはぎで使われていた小豆餡も、インストア製造、自社センターの商品に流用可能だ。ローストビーフは3カ所で販売。
日配:冷凍食品の品揃えが充実
冷凍食品は主通路最後にL字型にレイアウトしている。
冷凍のカツ丼(258円)、天丼(258円)、のり弁(220円)やカツカレー(258円)、ハンバーグカレー(258円)や肉巻き、角煮入りちまきなど冷凍米飯が充実している。
お好み焼きの種類も多い。惣菜部門では出せない「価格」を冷凍食品がカバーしている。米飯類の3温度帯(常温、冷蔵、冷凍)品揃えが広がりつつある。
「チェーンストアの惣菜はどこを見ても同じ」と思われがちだが、ヤオコーの惣菜は新しい商品に挑戦し、「新しい付加価値」「新しいライフスタイル」の提案を行って、お客の「豊かで楽しい食生活」を実現しようとしている。(取材・文/城取フードサービス研究所代表・城取博幸)
酒その①ワイン:圧倒的な直輸入ワインの売り込み
ヤオコー所沢北原店の酒売場はドラマチックである。メインの入口から入店したお客は、主通路を時計回りに、青果・惣菜、鮮魚、精肉、和日配の売場を進む。そこで真正面に現れるのは、壁面いっぱいに天井まで伸びる直輸入ワインコーナーだ。産地国別に棚割りされ、「直輸入ワインが勢揃いしました」とばかりに出迎える。
手前には生ハムやローストビーフ、馬刺しが並ぶミートデリカ、続くナチュラルチーズコーナーはワイン売場と一体化したように配置され、ワインが充実した海外の店舗のような雰囲気である。
さらに右手には「NEW DISCOVERY(新しい出会い)」と名付けられたワインコーナーを設けた。まだあまり知られていない産地、オーガニック、低価格などの切り口で括りだしたワインをブロック陳列でアピールする。
お客の目線で見ると通路を数m歩く間、進行方向のすべてがワインとなり、意図せずしてワイン売場に入り込んだような形になる。
このソーンで販売されるミートデリカはこれまでヤオコーが戦略的に売り込んできたローストビーフに加えて、生ハムを豊富に品揃えし、さらに馬刺しをコーナー化した。ナチュラルチーズに続いてヤオコーがターゲットにしたことがうかがわれ、直輸入ワインとともに強く売り込んでいく意志が感じられた。
ワイン売場を抜けた壁面には冷ケースが並ぶ。クラフトビール(扉2枚)、ビール・新ジャンル・発泡酒(扉8枚)、レディ・トゥ・ドリンク(RTD)(扉8枚)、清酒(扉2枚)、ノンアルコール酒類(扉2枚)という構成だ(スパークリングワインはワインコーナーの冷蔵ケースで別途展開)。
扉にフレームのない冷蔵ケースは視認性が高く、オープンクーラーのような開放感がある。扉があるため効率的に冷蔵でき、消費電力も抑えられるだろう。
もう一工夫欲しいのはRTDだ。ローカルブランドをそろえ、扉1枚で展開するなど、商品で他店と差別化を図るのはよいが、昨今の消費動向からはアルコール度数別のゾーニングを取り入れたいところ。
ノンアルコールやローアルコールの商品を好んで選ぶ消費動向が目立ち始めている他、ストロングチューハイのアルコール摂取量に関心が寄せられている。ユーザーに先んじてこの変化に適応していくとよい。
酒その②清酒・焼酎:清酒は新潟中心、本格焼酎は統一感が欲しい
ワインの充実ぶりに比べると迫力に欠けるものの、和酒もチャレンジが随所に見られる。清酒では「八海山」「久保田」「越乃寒梅」など、これまで地酒専門店の限定流通だった銘柄と正規取引を開始した。
清酒は消費構造の変化や地酒専門店の高齢化など転換期にある。発信力のある売場をつくる力のあるスーパーマーケット(SM)では、今後も地酒専門店銘柄の正規取引が広がるのは確実だ。
こうした銘柄が新潟清酒に多いからか、あるいは関越自動車道が通っていて新潟にアクセスしやすいからか、清酒は新潟県産がとても多い。今後の売れ行きを見ながら、産地、酒質、価格帯、サイズなどの観点でマーチャンダイジングのブラッシュアップを期待したい。
焼酎では甲類はレモンサワーベースの酒として端的に分かりやすく展開されている。料飲店でのレモンサワーの実態に合わせて、あえてジンや本格焼酎のハイアルコール商品をここに持ってきてもよいだろう。本格焼酎はSMとして商品のバリエーションは十分だが、棚割りの意図が分かりにくく、香味タイプ別、原料別、産地別などのゾーニングは要検討である。
近年、所沢は商業施設が充実し、住民からは池袋まで買物に出る必要がなくなったという声が聞かれる。ヤオコー所沢北原店の酒売場は、一般の方のそうした期待に応えられるレベルになっている。
そして直輸入ワインを酒類販売の柱にしようと、ハムやチーズと連動させながら複合的に売り込むことで、酒売場全体に活気をもたらしている。試行錯誤を繰り返してさらに磨きをかけて欲しい。(取材・文/酒文化研究所・山田聡昭)