注目の「スポーツニュートリション」とは何か? 最新トレンドと併せて解説

2021.05.26

イノーバ・マーケット・インサイツ  田中良介

現代の消費者はスポーツ栄養食品に何を求めているのか? 2021年以降の未来で、スピード感を持って商品開発を進めていくためのグローバルスタンダード視点を、事例を交えて紹介する。キーとなるコンセプトは次の4つだ。

1 クリーンラベル
2 植物性プロテイン
3 心と身体の両面アプローチ
4 パーソナライズ

それでは順に見ていこう。

クリーンラベル

クリーンラベルとは、出どころが明確で、「身体に良い原材料を使いましょう」という世界的なトレンドのことをいう。はっきりした定義があるわけではないが、 代表的な考え方としては、「無添加」「ナチュラル」「オーガニック」「Non GMO(遺伝子組み換えでない)」のいずれか1つを含む食品を指すことが多い。

「Free From」にも近しい考え方だ。世界ではこのトレンドが10年以上にわたり成長を遂げてきた。今ではグローバルスタンダードだ。しかしこれは一般的な食品飲料に対してであり、スポーツニュートリションにおいては、このクリーンラベル概念の導入が比較的遅れていた。

しかしここ最近、ついにこの波が、スポーツニュートリションの分野に押し寄せてきた。次のグラフは、スポーツニュートリション製品全数に対して、クリーンラベル訴求をしているものの割合変化を示したものだ。

急成長を遂げていることが分かる。栄養成分の魅力だけでなく、添加物を使わない取り組みであったり、オーガニック原料で差別化を図ったり、それら原材料の産地を明確に提示することが、今の時代の消費者ニーズを満たすことにつながるのだ。

クリーンラベル訴求をしている、スポーツニュートリションの新製品点数の割合(Global, 2015 vs 2019)

こちらのイギリスのプロテインバーを見て欲しい。タンパク質のグラム数だけでなく、「ナチュラル」や「GMOフリー」など典型的なクリーンラベルの表記がされている。商品名にも「CLEAN」という文言が使われている。

グラフ, 棒グラフ

自動的に生成された説明
Nuzest Vanilla Almond Clean Lean Protein Bar(United Kingdom, Feb 2020)。「グルテンフリー、大豆フリー、GMOフリーで、人工的なものは一切使用していません。」

植物性タンパク質

次の商品はヨーロッパで売られているプロテインパウダーだ。主原料はエンドウ豆プロテインアイソレイト。このようなプラントベース(植物性)の本格スポーツ栄養食品が世界的に急増している。

ダイアグラム が含まれている画像

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Scitec Gym Plant Bro Zero Dark Chocolate Flavored Vegan Protein Powder With Stevia(Spain, Jan 2020)

大豆プロテインだけでなく、エンドウ豆プロテインの活用が広がるなど、原材料の多様化が進んでいるのが最近の大きな特徴だ。

幾つか注目すべき原料を紹介しよう。パンプキンシードプロテインはニッチではあるが、成長の兆しが見え始めている。またソラマメを適切に処理すると、そのタンパク質は「自然な明るい色、ニュートラルな味、良好な食感」を保つことができ、他原料と比較しても利点があるといわれている。

微細藻類(びさいそうるい)は必須アミノ酸を豊富に含み、二酸化炭素の排出を最小限に抑えて生産することができ、事実上農地を使用しないという、サステナブルの観点で有望視されている。

1点だけ注意点がある。このトレンドはホエイプロテインなど動物性原料を否定しているわけではない。ホエイはアミノ酸スコアが高く、アスリートにとって欠かせない栄養素でもある。

要するに、視野を広げあらゆる原材料の特徴、利点から、ターゲット顧客に対して最適な配合の製品を開発することが求められているのだ。

心の身体の両面アプローチ

身体のパフォーマンスを高めるためには、モチベーションと集中力が欠かせない。身体と心は切っても切り離せない関係だ。

どんなに優れたトレーニングに取り組み、栄養を摂取していようと、ストレスは誰にでもあるもの。見落とされがちだが、ストレスレベルは、身体組成、気分、エネルギーレベル、健康状態全般に影響を与え、そのままにしておくと、望ましくない脂肪の増加、不規則なメンタル、疲れなどにつながる。

アメリカのドラゴンファーマ社が、これらの問題に正面から取り組むサプリメントを販売している。コルチゾールレベルを調整し、テストステロンを含むホルモンレベルを最適化し、リラックスしながらも集中力の高い精神状態をサポートする商品だ。その結果として、体質改善(筋肉量を増やし、脂肪が減らす)を促進するのだという。

また集中力という観点では、e-スポーツ向けのサプリメントが昨今注目を集めている。ゲーマーのエネルギーレベルを高め、血流を良くし、眼精疲労を軽減するなどの有効成分が配合されていることが多い。この分野はこれから大きく伸びる可能性が指摘されている。

パーソナライズ

現代の消費者は自分の好みやニーズに合わせて、商品を選びたいと考えている。特に若い世代にその傾向が強い。スポーツニュートリションとて例外ではない。事例を幾つか挙げよう。

次の商品はインドで発売されている女性向けのプロテインだ。よりスリムで引き締まった体、健康的な髪、爪、肌をサポートする製品コンセプト。パッケージデザインもその目的を意図したものとなっている。

文字が書かれている

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Mydaily Lean Women Whey Protein Powder With Chocolate Flavor(India, Nov 2020)

次に挙げるのは子ども向けのバナナココア味のホエイプロテインスムージー。便利なスクイーズ式パウチであるため、小さな手でも持つことができ、子どもでも飲みやすいという訴求をしている。

Fuel For Fire Kids Protein Smoothie With Banana Cocoa(United States, Feb 2020)

次の商品はランナーのために作られたエナジーバー。ランニングで必要な栄養を考慮し、厳選された10の原材料を使用しており、素早く持続的にエネルギーを補給することができる。またリカバリーをサポートする原料も配合されている。

例えばオーツ麦が入っているが、これは持続的なエネルギーと筋肉のリカバリーを意図している。オーガニックアガベネクターは、クイックエナジーとミネラル、ビタミン。すべての原料に意味があり、その組み合わせがランナーにとって最適というわけだ。

Crafted Energy Runner Cherry Walnut Functional Energy Bar(United States, May 2020)

免疫サポートのためのビタミンや抗酸化物質、腸の健康のためのプレバイオティクスやプロバイオティクス、ハーブやその他の気分を高める成分などを上記の商品に掛け合わせることも、差別化を図る上で有効な手段になるだろう。

さらに近未来の方向性としては、DNA解析結果を基に、スポーツ栄養を最適化するなど、さらに特定用途や個人レベルでの身体機能を高めるサービスが次々に出てくると考えられる。スポーツニュートリションは、なんとも奥が深い。

※記事中の画像・グラフは、当社Innova Database及びInnova Reportsより引用

たなか りょうすけ イノーバ・マーケット・インサイツ(Innova Market Insights Japan)のカントリーマネージャー。世界の食品トレンドを読み解き、日本へその知見・視点を伝え、企業の商品開発やマーケティング活動を支援している。自身もかつては食品企業で、苦労しながら商品開発と販売をしていた経験あり。日本と世界をつなぐ懸け橋となり、食産業の発展に貢献することがミッション。INNOVAでは90カ国以上をカバーし、新製品情報、消費者動向、原材料トレンド、市場規模データなど、多様化が進む現代の食品産業を、あらゆる角度から深いレベルまで分析できるデータベースや、コンサルティングを提供している。

HP:https://www.innovamarketinsights.com/

世界の最新食品トレンド情報:https://55auto.biz/innovami-japan/registp.php?pid=1

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