フーコット飯能店、オープン1週間後の生鮮売場を販売政策、オペレーションの視点から分析する

2021.08.13

アズライト代表 榎本博之

オープンからちょうど1週間後の8月10日、火曜日に訪店した。3連休明けの平日であったが、客入りはまずまずである。

第3弾チラシがこの日から始まっていた。表面は日替わり(4日間)アイテム、裏面は4日間の通しアイテムとエブリデーロープライス(EDLP)での各部門の推奨商品の紹介である。今後、さらなるEDLPでの対応を進めるのであれば、チラシの配布は必要なくなるだろう。この辺りの検証と対応も楽しみである。

生鮮売場レイアウトは、青果→鮮魚→精肉→惣菜の順に売場トップから第2主通路最後までを占めている。ただし、加工肉は精肉から外れた場所で展開。洋日配のヨーグルト売場の対面に位置している。

1本隣りの副通路にレイアウトせざるを得なかった和日配への回遊性を高めるためのマグネットとしての役割も期待されていると思われるイレギュラーな配置である。この辺りは、新店としてオープン予定の2号店での対応を含めて、意図が見えてくるのではないか。

シャインマスカットを980円で販売

商品全般をチェックして感じたのは、価格訴求一辺倒ではなく、1品単価向上を狙ったアイテムの拡大やこだわり商品の差し込みが各部門で行われており、「安さ」のみを追求する店づくりを目指しているわけではない点だ。

青果でいえば盆休みを意識し、野菜盛りのかごセットをはじめ、お供えやごちそうを意識したアールスメロンやシャインマスカット、生の本ワサビ、精進料理向けの材料などが用意されていた。

特に、シャインマスカットはチラシ掲載でありながら980円(本体価格、以下同)と、1品単価としては高い水準であるものの、競合他店の価格設定を考えれば、十分競争力のある価格であり、実際多くのお客が手を伸ばしていた。

980円と破格といえる売価で販売していたシャインマスカット

アールスメロンの他にも、巨峰の高質品など1000円前後の価格を設定したアイテムを複数展開しており、価格と質とのバランスを取ろうとする意識を強く感じる。

また、売り込み商品として訴求していたモモについても、目玉は4玉499円の手頃なアイテムであるが、その他にも3SKU展開し、2玉799円の高質品などを加えながら構成するなど、客単価アップを意識した展開となっている。これは、バナナやトマトなど、部門の中でも売上高構成比と購買頻度が高いアイテムにおいても、同様な展開であった。

「フーコット」のブランドで商品化した「もてもてミニとまと」(199円)

次に果物における売場展開について説明したい。平台2台と特設の一部、売場右側の常設冷蔵ケースの3分の1を使用しており、青果売場の中でかなりのスペースを割いている。季節感を意識し国産果物をメインにしているが、輸入果物も豊富に取りそろえている。

これは、取り扱い、保存がしやすく、販売にめりはりを付けやすいからであろう。輸入アイテムとしては、トップで展開する購買頻度の高いキウイフルーツやバナナから、平台の突き出しでブドウ、常設冷蔵ケースのリンゴに加え、ミカンがあった。

ペルー産ミカン。日本原産の品種を現地に持ち込みを栽培したもので、5個入りで299円

大振りで若干甘味に欠けるが、ジューシーさがあった。この時季は国産ミカンはハウス栽培が中心で価格も割高なものが多い。輸入ミカンは店頭で見かける機会が少なく、新たな需要の開拓をディスカウント形態から始めるというのも、注目すべき出来事である。

一方で、レギュラーのバナナ79円や先ほど紹介した4玉499円の桃というように価格訴求が強いアイテムをボリューム陳列で訴求し、立寄率を高めているのが目立つ。

売場先頭で大量陳列され、エキサイトメントを作り出しているバナナ(79円)。エイヴイとの共通点を感じる売場、商品だ

それに加えて、季節性の高い旬アイテムの高質品や値頃感が出しやすく、販売の手間をかけずに済む輸入アイテムを組み合わせ、部門全体の集客に結び付けようとするところにフーコットのチャレンジの姿勢が見て取れる。

1品単価1000円前後の商品群が鍵に

鮮魚では、刺身の盛り合わせはないが、マグロのサクの品揃えを強化している。本マグロの中とろをユニット価格で1200~1400円の価格帯で展開。その他に、本マグロの赤身やビンチョウマグロも取りそろえ、品揃えのバラエティを出していた。

それ以外のアイテムは、カツオやサーモン、タイ、イカが単一の商品化で展開されており、刺身売場として全体的なめりはりを付けていた。

精肉では、売場トップで鶏肉や豚肉のボリュームパックを、インパクトのある陳列によって目立たせていた。中心の価格帯を300~400円とし、割安感を実感できる設定だけでなく、ボリューム感もあった。

これらは、売場トップに加えて、売場奥でも多箇所陳列されており、売り込みの推奨度合いが伝わってくる。印象に残ったのは、売場中央辺りで展開した牛肉である。国産、輸入を織り交ぜつつ、ステーキ、焼肉用のアイテムを1000~1500円程度の価格帯で数多く用意していた。豚肉や鶏肉のような価格インパクトは弱いものの、商品化の完成度は高く、見栄えがする。

量目については、ファミリー向けの大容量だけでなく、高齢者でも手軽に購入しやすい小分けのものが用意され、客単価のアップが狙いやすいと感じた。

このように生鮮全体で1品単価1000円前後の強い商品群、カテゴリーを育成していけば、客単価のアップに加え、来店頻度、集客力の向上につながっていく。めりはりのある品揃えを進めながら、安定的な売上確保に向けた運営ノウハウを蓄積しているのが分かる。

青果については、鮮魚、精肉と異なり、一部アイテムについては、カットや袋詰め、小分けの店内加工が行われているようである。

例えば、切り口の色味変化が早いカボチャは、当日加工のみを定番で展開しているが、それ以前のものは見切りコーナーで処理されていた。

店内加工でカットされているカボチャ。右は通常の99円の売価。左は見切り商品。「50円」と売価が書かれたテープを巻き付けている。レシート上でも「見切品 50円」となっている

青果のアイテムについては、多くが見切り後の売価を表示したテープを巻き付けるだけにしていた。鮮魚や精肉は値引きシールを貼付する対応であるが、青果については厳密なロス管理よりも効率的な運営を目指しているのが分かる。

さらに効率的な面として、小分け商品などでもシーラーやテープ止めをしないで、そのまま提供するなど、割り切った商品化が目立つ。

シーラーやテープ止めを割り切ってしないことで、効率化を進めている

売場のスペース配分においても、取り扱い、保存がしやすいキノコアイテムを大きく割いて展開しており、ここからも効率性重視の姿勢が伝わってくる。キノコは、夏場に需要が増えるカテゴリーではないが、天候に左右されず安定的な栽培が可能なため、売場を埋めすい。

当然、秋冬に向けてこのレイアウトは大幅に手を加えられるはずで、この辺りもトライアンドエラーを積み重ねて、どのように売場レイアウトを組み立てるか、方向性が明確になってくるだろう。

ディスカウントによって価格志向の高まりに対抗?

素材提供メインではあるものの、簡便商品やカットアイテムは用意されている。青果では炒め用、サラダ用カット野菜、精肉では味付け肉などが展開されていた。カット野菜は外部調達で、ヤオコーの商品とは異なるアイテムであるが、ボリューム感があり、価格とのバランスでも買い得感の高いアイテムになっている。カットフルーツは、アソートのようなセットアイテムはなく、訪店当日はカットスイカのみであった。

訪店の時間帯は昼過ぎで、売場には欠品が目立つ箇所が複数あるなど、物流体制と陳列タイミングなどオペレーションの安定化にはこれから対応をさらに進めていくようである。鮮度的には、夏場でやむを得ない部分があるものの、ローコストオペレーションを志向する中にあっても一定レベルは維持できる状態であった。

まずは、埼玉エリアを中心に展開するとされているが、フーコット自体で新たな客層の開拓を拡げながらヤオコーとの併用を促し、すみ分け、使い分けを誘導していくのだろう。顧客シェアを高めることで、相乗効果と商圏シェアの拡大を目指していることになる。

店舗ブランディングの面で考えてみても、ヤオコー色を極力出さず、フーコットブランドでの展開にすることで、あくまで「ディスカウントはフーコットブランドで」という位置づけとしている。

アフターコロナを見据えて、価格志向は一段高まりながらも、現状の固定費負担、コスト増大下で、これ以上の価格対応が難しいところは少なくない。

特にローカルチェーンでは、食の低価格化を強く推し進める食品強化型のドラッグストアが競合として直面する脅威になっている。EDLP型のローコストオペレーションフォーマットとして、ヤオコーがどのようにフーコットを育成するのか、業界内でも、特に地方からの注目度は高いであろう。(8月10日訪店)

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