フーコット飯能店で圧巻の酒売場分析、ヘビーユーザーに応える大衆酒特化戦略を解説する

2021.09.02

2021.09.03

酒文化研究所 山田聡昭

ヤオコーのディスカウントフォーマットとして注目されるフーコット飯能店。決済は現金のみ、冷蔵什器の使用を極力抑えるなどコストを削減して低価格を実現する。

フーコット外観

酒売場にもこの方針が貫かれ、酒のヘビーユーザーの支持を集めそうな売場に仕上がった。その特徴をフロアレイアウト、什器、品揃え、価格設定の順に見ていこう。

酒売場は第3主通路突き当たりのベストポジション、売場全体の1割を配分

酒売場の売場位置はワンウエーにコントロールされた第3主通路の突き当たりで、入店したお客は青果、鮮魚、精肉、惣菜、日配と進んで、最後に酒売場と出会う。この位置は一般的なスーパーマーケット(SM)の酒類販売には最適だ。

理由は2つ。1つは自家消費用の酒を購入するお客は3分の1しかいないからである。飲酒習慣者(週に3回以上、1回に日本酒換算1合以上飲む人)は男性で34%、女性で9%しかおらず、お客の7割弱は酒に関心がないと言える。そうした商品群を通過客数の多い客動線の上手に配置するのはもったいないということだ(図表①)。

もう1つは酒ユーザー視点で見ると、プラス1アイテムの酒の購入は、酒売場に立つ前までに買物かごに入れた食品が左右するからだ。酒飲みは、おいしそうなステーキ肉をかごに入れたら赤ワインも買おうと考え、お値打ちの刺身をチョイスしていればうまい日本酒を探してみようと思うのである。

だから、普段、新ジャンル6缶パックと缶酎ハイ、それにリーズナブルな焼酎を買っているお客が、「ワインや日本酒も」と思った時に酒売場に入るようにするには、食品をかごに入れた後の位置に売場を配置するのがよい。

ちなみに酒売場を主導線の上手に置く手法は、酒類、特にワインのもつ豊かな食イメージによって売場全体に上質感を演出し、ローストビーフやナチュラルチーズなどワインランク上の商品やデザートをプラスオンさせる狙いがある。ミールソリューションを重視した店舗では有効な施策で、フーコットのような素材中心のハードディスカウント業態にはマッチしない。

酒売場は70坪ほどのスペースで、店舗全体の1割ほどを充てた。SMでは酒類売上高が店全体の売上高に占める割合は5~10%で、酒類をハードディスカウントした場合には10%を超えることは珍しくない。酒類の売上目標を総売上げの1割として、応分に売場面積を配分したのであろう。酒類売上げを年間3~3.5億円(1坪当たり400~500万円)とすると、店舗全体で30~35億円を狙っているのかもしれない。

約70坪の酒売場は通路幅をたっぷりとってあり、動きやすく買いやすい。フロアレイアウトはお客を酒売場の奥まで引き込むため、ユーザー数が多く購買頻度が高いビール類を一番奥の壁面沿いに置いている。近年2桁増を続け勢いのあるレディトゥドリンク(RTD、缶酎ハイ類)は、さらに壁面沿いを進んだ最終位置で、客動線を伸ばす工夫が感じられる。

基本は常温販売、圧巻の日本酒コーナー

ゴンドラは常温のハイゴンドラを使用して天板部分にストックを置くことを許し、陳列作業の負担を軽減している。冷蔵什器は第3主通路の壁面の最終位置の4尺オープンクーラー2本のみで、冷蔵管理が必要な清酒を並べた。

ビール類はケースで棒積みし、一番上の箱を崩して6缶パックやばらで販売する。ドラッグストアやホームセンターなどハードディスカウント型の売場でよく採用されている手法である。

酒売場を強く印象づけるのは第3主通路を進んで酒売場に入った時に目にする日本酒コーナーである。

3尺ゴンドラ12本のうち6本に1.8ℓ瓶が並び、4本に720㎖、残り2本に小瓶が陳列されている。その対面に前述の冷蔵販売コーナーがある。商品は酒類卸経由で広く流通する全国各地の地方酒が中心で、720㎖で1000円を切る純米大吟醸酒などの卸の留め型商品も多い。

「李白」「龍力」「天狗舞」などの地酒専門店銘柄は限られたアイテムながら数点あり、「獺祭」「黒龍」「九頭龍」は若干のプレミアム価格で販売されている。ゴンドラの背面側はパック酒がゴンドラ6本を使い、残り6本は本格焼酎のパックだ。

通路を挟んだ本格焼酎、泡盛コーナーには、1.8ℓ瓶がゴンドラ6本で、中容量瓶も同じく6本で展開されている。「黒霧島」「いいちこ」をはじめ九州各県の主要銘柄が並び、地酒専門店銘柄はプレミアム価格である。中通路沿いながら本格焼酎の瓶製品がゴンドラ12本に並ぶ姿は圧巻で、お客は和酒が充実していると思うだろう。

実際、ゴンドラの本数で見ても和酒の比率は高い。86本ある常温ゴンドラのうち、半分強の44本が和酒(日本酒と焼酎)である。洋酒(ワインとウイスキー・スピリッツ)は24本と3割弱、残りはRTDだ。

ターゲットは中高年の酒ヘビーユーザー

和酒にウエートをかけた展開になる理由は、酒のヘビーユーザーが中高年に多く、ビールとRTD以外の酒の消費は彼らによるところが大きいからだろう。図表②は2020年の世帯主年齢層別の酒類消費支出金額である。日本酒、焼酎、ワイン、ウイスキーの消費支出は50代以上で大きいことは一目瞭然で、和酒(日本酒と焼酎)は特に60代、70代の支出金額が大きい。

酒類のハードディスカウントは、酒類のヘビーユーザーが多い50代以上のお客を吸引し、和酒を強化することで60代、70代以上の強い支持を得ることができる。

そしてワインを手抜きしなければコアユーザーである50代を離さない売場にできるのだ。実際、ワインは常温ゴンドラ15本を使い、主要な産地のワインをそつなくそろえている。

マニアは追わずふだんの酒ニーズを満たす

酒類の売上高構成比で6~7割を占めるビール類とRTDは、ユーザーのすそ野が広く消費サイクルも早い重要な商材だ。商品特性は賞味期限が長い上にナショナルブランドが強く、ハードディスカウントによって強い集客が期待できる。

フーコット飯能店のビール類の販売価格は地域最安値レベルであり、店舗全体の価格訴求力と相まって酒類ユーザーをしっかりと集客するのは間違いない。

すそ野の広い商品とヘビーユーザーをつかむ商品を強化している点を指摘したが、一方でまったく手を出そうとしないのはマニアックな商品群である。例えばクラフトビールは常温ゴンドラ1本だけで商品数もごく限られている。

ワインの品揃えは価格の上限を2000円程度に抑え、ウイスキーは商品供給がタイトなこともあろうが700㎖4000円程度までであった。和酒も商品数は豊富だが、極端に高価なものや異常なプレミアム価格のものは見当たらない。この点は酒専門店でもある酒のディスカウンターと品揃え方針が異なるところで、酒類ヘビーユーザーに応える大衆酒特化型の売場という割り切りが見える。

おそらく今後はこの方針をぶらすことなく、日本酒の品揃えをブラッシュアップすることになるであろう。売れるものを伸ばし、普段の酒のニーズを深掘りすることが課題になる。

もっとも、これは見えにくいだけで焼酎やワインやウイスキーにも共通する課題である。

「純米 加賀纏」(石川県・福光屋)は伝統製法の純米酒で1800㎖899円(本体価格)。酒類ヘビーユーザーに応える大衆酒の典型的な商品だ

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