連載:
改めて考えたい「よく使っている言葉」の定義

第3回「重点商品と主力商品」

2022.11.09

2020.11.25

チェーンストアの方とコミュニケーションしていると、「重点商品」と「主力商品」を同じ意味で使用し、分けて考えていない人を見かけます。重点商品と主力商品をごっちゃにしているとそれぞれのメリットを発揮できる可能性が低くなります。

重点商品と主力商品を分けて考えましょう。そして、良い売場づくり、予算達成に貢献しましょう。

重点商品と主力商品の違い

「重点商品」は重点管理する商品で、マネジメントのための呼び名、「主力商品」は品揃えのための呼び名で、マーチャンダイジングのための商品です。

このシリーズ第1回目で、マーチャンダイジングは「チェーンストア企業のマーケティング目標を実現するために、品揃え、展開時期、展開場所、提供価格、提供数量、売場づくりツールの6つの要素をマネジメントすること」と定義しました。

マネジメントは「予算達成に十分な問題を明確にし、その問題を解消するための計画を立案、計画を実行するに当たり、実行を阻害する問題を解消すること」と定義しました。

重点商品はマネジメントするため

重点商品は重点管理するための商品です。従って、重点管理を理解しなくてはなりません。重点管理の反対側に位置する管理手法が「総花管理」です。総花管理は現場を一律的に漏れなく管理しようという手法です。一方、重点管理は全体に一番影響ある部分を選定、そこに集中して管理します。

店舗で言えば、店舗全体の予算売上高達成に一番影響ある部門を探すこと、部門で言えば、部門全体の売上高予算に一番影響あるカテゴリーを探すことになります。

その時期の売上高予算達成に最も影響を与える商品(または予算割れに大きく影響を与えている商品)が重点商品なのです。たとえば、12月の農産部門であればイチゴ、ミカンが重点商品で、その売上高が全体売上高の30%を超える発注、売場をつくることができれば、農産部門全体の売上高予算達成もしやすいと言われます。

このように、重点商品での取り組みではその時期ごとに、売上高予算に大きく影響与える商品(または予算割れに影響を与えている商品)、そして目標売上高構成比(または挽回額)という3つの要素を明確にし、その精度を高めていくことが求められます。腕前のよい売場責任者は時期ごとの重点商品とその目標売上高構成比(挽回すべき額)を知っています。

主力商品はマーチャンダイジングするため

主力商品は商品部のバイヤーが決める商品で、その時期の商品動向、取引先動向、顧客動向情報から決まった、お客さまにとっては「絶対買いたい商品」、小売業にとっては「最も強い商品」です。その時期、絶対欠品していけない商品となります。また、主力商品の購買を促進する「比較購買商品」も必要となります。当然、主力商品は各部門の一丁目一番地の場所に陳列されなくてはなりません。

通常、重点商品は品種単位で決まり、主力商品はアイテム単位で決まりますが、結果的に重点商品と主力商品が重なるときもあります。

重点商品と主力商品を分けて考えるメリット

重点商品は重点管理するための商品ですから、予算売上高に大きな影響ある商品です。その商品に現場の時間資源を最大投入し、総花管理をしません。言い方を変えれば、仕事を楽にして、予算売上高を達成するための商品です。仕事を楽にするための商品なのです。

一方、主力商品はマーチャンダイジングのための商品ですから、主力商品選定はその企業の腕の見せどころとなります。最も強い商品のはずですから、売場の中で最も視認性の高いところに陳列されなくてはなりません。売場での視認性を高め、すべてのお客さまにその良さを常に分かっていただきます。

視認性を高めるためには、同一品種売場の中ではフェースが一番多く確保されています。同一品種売場の中では中央に配置されます。

また、その左右に反対色が配置され、目立たせます。目立つPOPも添付されています。主力商品の隣りには比較購買商品があり、買いやすい状態を作ります。その品質と価格からお値打ちのはずですね。

言い換えると、重点商品は売上予算達成のため問題解決する商品、主力商品は買いやすい売場をつくるため売場づくりを事前に考える商品なのです。

主力商品の力を発揮するには売場の統一感が大事

そして、主力商品を目立たせるためには、売場全体に統一感があることが条件となります。売場全体に統一感がないまま、フェース、カラーコントロール、POPなどの工夫をしても視認性アップにはならないのです。

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