木村 博

KMAきむらマーケティング&マネジメント研究所代表。1954年千葉県生まれ。早稲田大学卒。83年日本能率協会コンサルティング入社、90年チーフ・コンサルタント。2005年きむらマーケティング&マネジメント研究所を設立。小売・流通企業、サービス企業における企業理念・中期経営計画策定、マネジメントシステム構築、マーチャンダイジング革新、店舗オペレーション革新、ストアマーケティングなどを指導。次世代の売場づくり、買物行動分析、店長現場力アップ、チーフの改善スキルアップなどに取り組んでいる。

  • 2021.06.30

    第10回「ロジカルシンキング」

    積み上げアプローチ=ボトムアップアプローチとデザインアプローチ=トップダウンアプローチ。 いま、流行の「ロジカルシンキング」の要素に「ボトムアップアプローチ」と「トップダウンアプローチ」がありますね。この言葉から、大昔に勉強した「積み上げアプローチ」と「デザインアプローチ」を思い出しました。 在りし日の積み上げアプローチとデザインアプローチ 積み上げアプローチはFACT FINDINGが肝、現場で事実情報を漏れなく収集し、改善の取り組み策を積み上げていきます。「現場百回」という言葉があり、「分からなくなったら現場に行け」と先輩からよく言われたものです。 積み上げアプローチは新人コンサルタントが…

  • 2021.06.02

    第9回「問題」

    問題とは「解決すべき不具合なこと」です。チェーンストアの現場で働く人に、「現場の問題は何か?」と問うと、「発注改善すべきです」など、対策が返ってきます。対策とは「問題を解消するためにやること」です。チェーンストアの現場で働く人は問題と対策をごっちゃにしています。 「問題を明確しない」という失敗 問題を解決できない人は対策ばかり考えています。「問題」を考えていません。例えば、売上高が不足すると、「平台で売り込みます」「エンドで売り込みます」「がんばって売ります」と根拠のない対策を言い始めます。 いまの時代、「売り込む」と決めただけで、売上高が変化するわけがありません。根拠のない売り込み策で売上数…

  • 2021.05.06

    第8回「CS(CUSTOMER SATISFACTION、顧客満足)」

    顧客満足を経営の中心に考えたCS経営では「顧客期待」と「提供価値」の2つの要素しかありません。このことが理解出来れば、CS経営は結構簡単なのです。 顧客期待と提供価値の関係 「顧客期待」とは商品、サービスに対して「こうあってほしい」という「お客さまの気持ち」です。一方、「提供価値」は店舗がお客さまに提供した商品、売場、サービスなど「仕事のレベル」です。CS経営の世界にはこの顧客期待と提供価値の2つの要素しか存在しないのです。 CS経営の善し悪しを不等式で表すことができます。「顧客期待≦提供価値」「顧客期待>提供価値」の2つです。 前者は提供価値が顧客期待を上回っている、もしくが同等ですから、店…

  • 2021.03.25

    第7回「マーケティング」

    マーケティングは人によって色々な定義がありますね。普遍的な定義としては「市場(market)での企業活動(ing)」とすることは誰も異論のないところでしょう。 この市場での企業活動=マーケティングにおいて、「何を中心に考えるか」は、時代によって変化してきました。 ①生産志向 まずは、「需要量に応える製品量を生産できる」ことを目指しました。言い換えると工場を建設し、市場に製品を流せば、作っただけ売れるというものです。背景には好景気が続いたことがあります。「消費は美徳」という風潮がありました。各企業はこぞって工場地の確保に走り、各地で工場団地が造成され、道路が整備されました。 ②製品志向 次に登場…

  • 2021.02.25

    第6回「検証」には2つの検証がある

    PDCAサイクルという言葉があります。そのため、「検証」は実施後の検証だけに目を向けがちです。実は、検証には「計画段階の検証」と「実施後の検証」があります。皆さんは実施後の検証だけをやろうしていませんか? 「これをやればいいんだ!」と対策が出てきた瞬間、油断せず、即座に以下の検証をして、発想できた対策の精度を上げます。これを「計画段階の検証」といいます。 計画段階の検証は【納得性】【十分さ】【実現可能性】の3つの視点で行う 計画段階の検証は次の順番で検証します。慣れてくるとこれらを瞬時に行えるようになります。ごく当たり前の自然の流れです。 ①納得性の検証 よい対策のはずですから、納得してどんど…

  • 2021.01.29

    第5回「生産性」と「効率」は意味が違う

    小売業、チェーンストア企業の方々と長いこと付き合ってきて、不思議だなと思っていることがあります。それは言葉の定義が曖昧なまま会話して、コミュニケーションが成立していないことに「気が付かない」ことです。そのために起きた問題をたくさん見てきました。しっかり、言葉を定義して使いましょう。これから、その認識が混同される言葉を紹介していきます。 小売業、チェーンストア企業の人が言葉の意味が曖昧でも平気な理由 小売業、チェーンストアのお客さま層の特性がその理由ではないかと常々思っています。 小売業、チェーンストアのお客さま層は不特定多数という特性を持っています。従って、小売業、チェーンストア企業は長年に渡…

  • 2020.12.30

    第4回「2種類の販売計画と売場計画」

    店舗には売るための計画がいろいろありますね。それらは大きく3つに分類されると考えています。「販売計画」には特定の商品の売りたい数量の計画、売らねばならない数量の計画があり、「売場計画」は全商品の売れる数量を予測する計画です。販売計画には強い意志が必要で、売場計画には的確な予測が必要になります。 販売計画では重点商品、または売り込み商品が対象となります。重点商品はその目標売上高構成比を達成する数量を割り出し、その数量を売るのに必要な売場展開を計画します。売り込み商品では売りたい数量を通常の2〜3倍と決め、必要な売場展開を計画するのです。 売場計画では、全商品について欠品、在庫過多が発生しないよう…

  • 2020.11.25

    第3回「重点商品と主力商品」

    チェーンストアの方とコミュニケーションしていると、「重点商品」と「主力商品」を同じ意味で使用し、分けて考えていない人を見かけます。重点商品と主力商品をごっちゃにしているとそれぞれのメリットを発揮できる可能性が低くなります。 重点商品と主力商品を分けて考えましょう。そして、良い売場づくり、予算達成に貢献しましょう。 重点商品と主力商品の違い 「重点商品」は重点管理する商品で、マネジメントのための呼び名、「主力商品」は品揃えのための呼び名で、マーチャンダイジングのための商品です。 このシリーズ第1回目で、マーチャンダイジングは「チェーンストア企業のマーケティング目標を実現するために、品揃え、展開時…

  • 2020.10.28

    第2回「インダストリアル・エンジニアリング(IE)」

    インダストリアル・エンジニアリング(IE)は「よく使っている言葉」というより「使っていた言葉」と言った方が正確かもしれません。業務改善で有名なトヨタ、イトーヨーカ堂、サミットにはIE部(室)という部署がありました。 IEは思考力を鍛える、業務を効率化する、そしてマネジャースキル向上を支援してくれる技術です。 IEはIndustrial Engineeringの頭文字です。日本語では科学的管理技術や管理工学と呼ばれています。IEは業務の効率化、コスト削減には不可欠な技術で、業務のIT化、そしてDXの前提技術となります。 現在ではIEというとインターネットエクスプローラをイメージする人が多いでしょ…

  • 2020.09.23

    第1回「マーチャンダイジング(MD)」

    小売企業で働くビジネスマンはメーカーで働くビジネスマンより言葉を曖昧に使う人が多い気がします。 そんな中、「マーチャンダイジング」という言葉を小売企業ではよく聞くのですが、得体の知れない言葉です。使う人によって意味が違う言葉の代表格だと思います。今回はこのマーチャンダイジング(MD)について定義し、考察していこうと思います。 マーチャンダイジングの定義をしてコミュニケーションを円滑に 小売企業の人とコミュニケーションしていると、「わが社のMD(マーチャンダイジング)は…」という表現が出てきます。そのときの意味はほとんどの場合、「品揃え」の意味です。 その他に「商品部の仕事」「商品計画」「仕入計…