第1回「マーチャンダイジング(MD)」
2022.11.09
2020.09.23
小売企業で働くビジネスマンはメーカーで働くビジネスマンより言葉を曖昧に使う人が多い気がします。
そんな中、「マーチャンダイジング」という言葉を小売企業ではよく聞くのですが、得体の知れない言葉です。使う人によって意味が違う言葉の代表格だと思います。今回はこのマーチャンダイジング(MD)について定義し、考察していこうと思います。
マーチャンダイジングの定義をしてコミュニケーションを円滑に
小売企業の人とコミュニケーションしていると、「わが社のMD(マーチャンダイジング)は…」という表現が出てきます。そのときの意味はほとんどの場合、「品揃え」の意味です。
その他に「商品部の仕事」「商品計画」「仕入計画=仕入実務の上位概念」「商品の組み合せ」「商品部の上司役」などいろいろな意味があり、微妙に違ってきます。また、何となくマーチャンダイジングという言葉を使っている人が多数いるのも事実です。
最近では消費材メーカーの人も「わが社のMDは…」と言い始めているので、気をつけてコミュニケーションしなくてはいけないなと思っています。
この語源はマーチャンダイズ(Merchandise)=商いにingをつけてマーチャンダイジング(Merchandising)=商いをすることとなります。マーチャント (Merchant)=商人という言葉からも、小売業独特の言葉であることが分かります。
私の現在のマーチャンダイジングの定義は「小売企業のマーケティング目標を実現するために、品揃え、展開時期、展開場所、提供価格、提供数量、売場づくりツールの6つの要素をマネジメントすること」です。
すると、マーケティングの定義が必要になります。「自社の事業領域、ライバル、顧客を分析し、競争優位、顧客満足獲得のための提供価値をつくり続けること」と定義、また、マネジメントとは「予算達成に十分な問題を明確にし、その問題を解消するための計画を立案、計画を実行するに当たり、実行を阻害する問題を解消すること」と定義します。
マーチャンダイジングの6要素をマネジメントする
従って、マーチャンダイジングは以下の6つの要素をマネジメントすることとなります。
①品揃え
「品揃え」とは売場に陳列するアイテムの種類です。そのアイテムはどんな商品規格がよいのか、品質、容量、形、包装形態や仕入先、仕入形態などをマネジメントします。
また、所属する分類の中でのアイテムのバランス、主力品、品揃え品、比較購買品などの位置づけや定番、特売、スポットなどの売り方をマネジメントします。
②展開時期
品揃えすると計画したアイテムの導入、育成、継続、終了の時期をいいます。週別、店別に顧客が買いやすいと思える、また常に競争優位立てるタイミングで導入、継続、終了をマネジメントします。
また、地域のイベント、旬などに最適なタイミングで商品導入、終了をマネジメントします。
③展開場所
品揃えすると計画したアイテムの展開店舗、売場の陳列場所をいいます。顧客が買いやすい売場をつくるため、売場の棚割りをマネジメントします。売場分類ごとに主力品と「一丁目一番地売場」の関係、陳列数量と販売数量との関係、売り方と陳列位置の関係、フェースバランス、「仕入先分類」ではなく「買いやすい売場分類」、新カテゴリー売場開発をマネジメントします。
④提供価格
品揃えすると計画したアイテムの販売価格です。そのアイテムの価値に合致し、競争優位に立つ販売価格設定をマネジメントします。また、売場分類ごとの中心価格ライン、スタート価格ライン、終了価格ラインをマネジメントし、顧客が比較購買しやすい売場づくりをマネジメントします。
⑤提供数量
品揃えをすると計画したアイテムの仕入計画数量、値入計画数量、販売計画数量、売場計画数量、発注数量、製造数量、陳列数量、販売数量、在庫数量、ロス数量をマネジメントします。顧客が買いやすく、競争優位に立てる売場を実現するため、売場分類ごとにアイテム数バランス、フェーシング数バランス、価格ライン数バランスをマネジメントします。
⑥売場づくりツール
品揃えすると計画したアイテムの視認性を高くするためのツールです。プライスカード、POP、ショーカード、メーカー提供販促ツール、仕切り板など売場づくりの道具やその使い方をマネジメントします。特に、顧客の視認性を高めるために「売場の統一感」をマネジメントします。
マーチャンダイジング活動は、これらの要素を商品部、店舗が切磋琢磨して売場のレベルを上げていくことになります。
注)消費材メーカー:小売業へ消費者が直接使用する製品を販売しているメーカー、生産材メーカー:メーカーへ製品の素材、部品などを販売しているメーカー