東急ストアが信用金庫と協業、信金の建て替えに際し、小型店フードステーションを出店

2026.05.18

東急ストアは5月15日、川崎信用金庫が所有する「かわしん住吉ビル」の1階、地下1階の2フロアに小型店フォーマットである「フードステーション元住吉店」をオープンした。東急東横線、東急目黒線の元住吉駅の西口から100m強のモトスミ・ブレーメン通り商店街沿いに立地するなど駅近物件で、駐車場はない。

川崎信用金庫が1963年に建築された住吉支店の建物建て替えたのに際して出店した。川崎信用金庫は2階に出店したが、同金庫にとっては東急ストアが出店することで、建物の有効活用ができたということになる。地域の活性化や新規顧客の獲得も見込んでいるという。

五差路に面した細長い建物。区画内にはモトスミ・ブレーメン通り商店街にちなんだ「豚飼いの像」(ドイツ・ブレーメン市に設置されているもののレプリカ版)を設置されている

東急ストアによるとスーパーマーケット(SM)と信用金庫が協業しての出店は全国初となる。「信用金庫とSMの協業により、地域活性化に取り組む店舗として開業した」(三田祐人・東急ストア店舗企画部店舗企画課長)。東急ストアとしてもドミナントである東急線沿線でありながら、元住吉駅付近には未出店であったため、ドミナントを強化する出店となった。

また、同ビルでは再エネ電力供給事業を手がける川崎未来エナジーが再エネを活用した電気を供給することで環境に配慮したサステナブルな店舗運営を目指すとしている。市処理センターのバイオマス由来の電気などを活用し、実質再エネを100%活用してビルを運営。川崎市が推進する脱炭素社会の実現への取り組みとして屋上には太陽光発電システムを導入している。電気代は通常と同等か、同等以下での運用を想定している。

環境に配慮した取り組みとしては、東急ストアでもAI(人工知能)を活用した需要予測発注システム
導入による食品ロス削減や、厨房への節水機器導入による水道水使用量抑制などを実施していく。

地域活性化に向けた取り組みでは2階部分の会議室を活用し、信用金庫、川崎未来エナジー社とも協業しながら食育や環境活動のワークショップ、健康相談会などを実施し、地域住民に向けて学びや交流の場となる企画、イベントを積極的に開催するなど「地域住民にとってのコミュニティとしての役割」(三田課長)を担うことを目指す。

2階の会議室は東急ストアとしても活用に参画する

売場内には大型のサイネージを設置している他、アナログのコミュニケーションボードも設置し、情報発信やコミュニケーションを促進。商店街では年間計画で各種イベントを開催していることから、商店街の年間催事の案内などもしていきたいという。エスカレーターの壁などには同店が立地する「モトスミ・ブレーメン通り商店街」の歴史や取り組みなどが掲示されている。

売場内には大型のサイネージが設置され、情報を発信する
エスカレーター脇の壁面には、商店街の歴史を写真付きで紹介する「ブレーメンヒストリー」を掲示

東急ストアは2層に渡って、フードステーションとしては標準的な規模となる約120坪の売場を確保。フードステーションとしては2層の売場は初めてとなる。周辺は30代~40代の世代が多く、かつ単身世帯が半数以上を占めるという特性を持つため、駅を利用する単身者や有職主婦をメインターゲットに即食商品である惣菜や手作りおにぎりなどデリカの他、簡単に調理できる商品などを強化。

売場レイアウト図
部門別SKU数と売上高構成比計画

デリカは1階の入口すぐの場所で展開する他、1階にはその他、パン、デザート系の洋日配、菓子、飲料を展開し、即食商品とその関連商品をショートタイムショッピングで買えるような構成としている。レジは1階のみに設置で、フルセルフレジ7台、セミセルフレジ2台の構成とした。

「醤油の旨み際立つ!薄衣の若鶏もも唐揚」などこだわりのデリカを売り込む。第17回からあげグランプリの「東日本スーパー総菜部門」で金賞を受賞。3種のしょうゆをブレンドした上で、超特選しょうゆでこくとうまみを引き出したという
「結び屋」のブランド名で店内で手作りしたおにぎり各種を展開。小型店であってもデリカの店内製造を差別化要素とする
小型店ではあるが、厨房に鉄板を導入し、お好み焼きなど鉄板で焼き上げた商品を展開
「国産豚肉・野菜使用!薄皮仕立ての肉餃子」など店内で製造した中華惣菜や点心をコーナー化して売り込む
デザート系の洋日配は即食文脈で1階での展開となっている
酒を含む飲料も1階での展開。レディトゥドリンクは冷蔵販売
菓子も1階での販売。米粉やおからを素材とした商品をコーナー化するなど、商品構成にめりはりを付けている

一方で生鮮食品、和日配、調味料など調理を必要とする素材系の加工食品、冷凍食品については地下1階で展開。鮮魚、精肉は全てアウト供給とし、店内加工も多用する強化部門のデリカとめりはりを付けた運営としている。スペースの関係で、デリカの作業場は地下1階となっているが、鉄板なども導入し、フードステーションとしては最大の32㎡の厨房とした。

運営面ではその他、小型店であり、さらに売場が2層に分かれていることもあって効率的な運営を目指す目的から、デリカを除いて部門横断でマルチタスクで業務ができるように研修も実施したという。

生鮮食品など素材系は地下1階にレイアウトされた。SMとしての買い回りは地下から始めた方が便利であることからその旨を床に掲示し、エスカレーターに誘導
青果から始まる生鮮食品は地下1階に集約。素材系ではあるが、即食商品として店内加工を含むカットフルーツも品揃え
生産者の想いがこもった「手紙」の付いた野菜、果物を展開している。手紙は商品に印刷されたに二次元バーコードを読み取ることで見ることができるが、返事も書けるようになっている
「手紙のついた野菜と果物」は、冷凍食品での展開も始まった
鮮魚は全てアウトパックだが、魚種にあったチップを使って長時間じっくり燻すこと
でうまみを引き出したという「王子サーモン」ブランドのスモークサーモントラウト切り落としなど、こだわりの商品を取り扱う。特にサーモンは生食用から加熱調理用まで品揃えを深めている
鮮魚では刺身盛り合わせも取り扱うが、売場は鮮魚売場ではなく、1階のデリカ売場に隣接した場所で展開。刺身については東信水産の供給
「レンジで簡単 骨取りさばみぞれ煮」など簡便商品についても、デリカ売場に隣接した場所で販売。用途に応じた柔軟な売場づくりといえる
生の素材からの調理が電子レンジで加熱するだけでできるレディトゥクック商品をコーナー展開。こちらもデリカ売場に隣接した場所での展開。「レンジdeラムのジンギスカン」「レンジde房総ポークの和風蒸し」「レンジde地養鳥のちゃんちゃん焼き」などをラインアップ
精肉はコンパクトな売場で全てアウトパック
冷凍食品については、即即強化につながるようにワンプレートなどの品揃えを強化すると共に同規模店の約2倍の売場スペースで展開
和日配は素材系ということもあって地下1階での展開
コーヒーなども地下1階での展開。私鉄系SMなどが加盟する八社会のプライベートブランド賞品「Vマーク」では、高付加価値ラインの「グルメテーブル」も開発。コーヒーは小川珈琲の製造

また、地域活性化の文脈では野菜や納豆、菓子では立地する川崎市ゆかりの商品も取りそろえる。

地場野菜として「川崎野菜」を展開
菓子では1958年創業の和菓子店である「菓心桔梗屋」、近隣の新丸子に店を構える「パンと焼き菓子のPapapapa-n!」の他、江戸時代から続く川崎大師の老舗飴店の「評判堂」、契約農家からの厳選した素材にこだわる洋菓子店の「パティスリーPION」など川崎市ゆかりの商品やバイヤーお奨めの逸品を多数展開

特に首都圏では、出店する物件の争奪戦のような状況になっている中、東急ストアとしては独自の小型店フォーマットを持つことも強みとしながら、今回は信用金庫との共同出店を実現した。出店の可能性を広げる取り組みとして注目の事例といえる。

東急ストアフードステーション元住吉店概要

所在地/神奈川県川崎市中原区木月1-25-8

オープン日/2026年5月15日

営業時間/9時~23時

売場面積/395㎡(119.4坪)

店長/吉村恵行

従業員数/正社員5人、パートタイマー・アルバイト19.5人(8時間換算)、合計24.5人

目標年商/8.7億円

目標日商/240万円

お役立ち資料データ

  • noimage

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