オープン価格とは?定価や希望小売価格との違いやメリット・デメリットを解説
2023.12.08
2022.06.17
オープン価格とは、メーカー側が商品の価格を定めずに、小売業者に販売価格を一任する制度、価格のことを指す。定価と実売価格の乖離が大きい家電製品やカメラ、食品などを扱う業界では、オープン価格が多く採用されている。
オープン価格の他にも、商品の価格表示にはいくつか種類があり、それぞれ異なる特徴や意義を持つ。この記事では、オープン価格の意味や他の価格表示との違い、採用するメリット・デメリットを紹介する。
オープン価格とは何か?意味や他の価格表示との違いを解説
商品の価格表示には、オープン価格の他に、定価や希望小売価格、参考小売価格などがある。それぞれメリットやデメリットがあり、価格表示のルールが存在する。価格表示を行う際には「景品表示法」に従う必要があって、販売に携わるものであれば、理解しておかなければならないルールである。
特に近年用いられることの多いオープン価格は、家電製品やカメラなどを扱う販売店が広く採用している。ここでは、オープン価格の意味や特徴、他の価格表示との違いをわかりやすく解説する。
メーカーが小売価格を提示しない価格表示方式
オープン価格とは、メーカー側が出荷価格や卸価格だけ決めて、商品の定価や小売価格を提示せずに、流通各段階の業者に販売価格を任せる価格表示のことを指す。主に家電製品やカメラといった耐久消費財、食料品などの業界で多用される価格表示である。オープン価格を採用した流通システムのことをオープン価格制と呼んでいる。
商品を扱う販売店ごとに自由に小売価格を決めることが可能で、市場の動向を見つつ、卸値や仕入れコスト、利益率などを考慮して販売価格を設定している。
1970年代に生産中止の製品や型落ちの製品を中心に導入され、1980年代に広く用いられるようになる。1990年代からは新製品でもオープン価格で販売される商品が急増したとされている。
オープン価格と定価との違い
定価とは、メーカーが決定した価格、前もって定めた売値のことで、値上げや値引きは基本的に認められず、全国一律の値段で商品が販売される。メーカーの拘束力があり、小売業者は必ず従わなければならない。
拘束力を持つ定価を販売価格として小売業者に守らせることは、自由な価格競争や価格設定を阻むことに繋がるため、独占禁止法における再販売価格の拘束にあたるとされ、現在は書籍や新聞、音楽CDなど一部の例外を除いて、この価格表示は用いられていない。
オープン価格と希望小売価格との違い
希望小売価格とは、メーカー希望小売価格とも呼ばれ、メーカーや卸売業者が小売業者に希望価格として設定する小売価格のことを指す。小売店に拘束力のある定価に対し、希望小売価格には拘束力がなく、販売価格はこの価格を参考に小売業者が決定できる。
希望小売価格と販売価格に差が出ることがあり、値下げ価格を表示して、消費者にお得感を与えられるが、安く売ることでブランド価値の低下を招く恐れがある。公式サイト以外のカタログやパンプレットなどに参考として公表する参考小売価格や参考価格、標準小売価格なども、同様の意味を持つ価格表示である。
小売店間の値引き競争激化で生まれた二重価格表示
オープン価格が生まれた背景には「二重価格表示」という問題があった。長らく定価や希望小売価格が主に利用されてきたが、1980年代中頃より、家電やカメラを扱う大型量販店などが急増し始め、「15%引き」「20%引き」「三割四割は当たり前」というような表現で、消費者を引き付ける値引き競争が激化。
希望小売価格を利用する小売業者の多くが、メーカー希望小売価格の15%や20%以上の値引きをするのが常態化したことを受けて、値引きを強調する行為を問題視した公正取引委員会により、二重価格表示となる基準が設けられた(15%以上の値引きが市場の2/3以上・20%以上の値引きが市場の1/2以上)。
二重価格表示を適切に行っていれば適法であるため、その後も基準内で「〇%引き」と表記する販売合戦が続いた。2000年代に入ると、メーカーは割引率や割引額が表記できないよう、希望小売価格からオープン価格へと移行することとなる。
オープン価格を採用するメリット
定価や希望小売価格といった具体的な金額を提示しないことで、享受できるメリットがいくつかある。
わかりやすい価格を表示する代わりに、オープン価格が導入されたのは、不当な値引き表示を取り締まるためであるが、オープン価格が導入されると、どのようなメリットが得られるのだろうか。メーカー、小売業者、消費者、それぞれの立場から、オープン価格を採用するメリットを見ていこう。
メーカー側のメリット
メーカーがオープン価格を採用するメリットは、希望小売価格を表示しないことで、ブランドイメージが損なわれない点にある。
大幅な値下げ価格で商品が安売りされることが多くなると、消費者にいつも安売りされているメーカーだという印象を植え付けることになり、結果的に商品イメージ、ブランド価値が悪くなる恐れが生じる。
オープン価格であれば、二重価格表示がされなくなり、価格競争による消耗を抑えることに繋がり、小売業者と同様に、相場価格を意図的にコントロールできるようになる側面がある。
小売業者側のメリット
小売業者のメリットとして考えられるのは、まず価格設定を自由に決められる点だ。オープン価格によって自由に価格が決められれば、仕入れ価格に利益を十分に乗せて商品を販売できるようになる。
基準となる小売価格がない分、他店よりやや安くしても十分な利益に繋がる販売価格に設定できるため、商品が売れやすくなり、利益が自ずと出やすくなるだろう。反対に売れにくい商品であれば、値崩れで販売しているという印象を持たれずに、販売価格を安くできるわけだ。
このように市場の動向を見ながら、ある程度、市場価格をコントロールできるのも小売業者にとってのメリットといえる。希望小売価格があると、大幅な値下げにより小売店間の価格競争が激化して、消耗戦になりやすくなるのを防ぐ効果もある。
消費者側のメリット
オープン価格が採用されることで消費者が得られるメリットとして、小売業者によって相場感覚が狂わされる心配がなくなる点が挙げられる。商品を購入する際に、メーカー希望小売価格と販売価格が並べて表記されていると、商品の実際の値打ちがわかりづらくなり、消費者を混乱させてしまうケースが考えられる。
小売業者の独自の値引きなのか、相場価格と希望小売価格にもともと差がある商品なのかがわかりやすくなり、冷静に商品の価値を見定めながら、信頼できる小売店の価格表示で買い物ができるようになるだろう。
オープン価格で考えられるデメリット
日本では長らく、メーカーが希望小売価格を設定する建値制が採用されるケースが多く、大型量販店やスーパー、ディスカウントショップなどで価格競争が頻繁に発生したことで、うまく機能しなくなった背景がある。
建値制で発生するリベート制は日本の流通業界特有の制度であるが、オープン価格が導入されても、小売業者の交渉力が高まる中、リベート削減に至っていないのが現状だ。誰にとってもメリットが多く、都合の良い価格表示に見えるオープン価格だが、採用することで生じるデメリットを確認しておく。
メーカー側のデメリット
オープン価格では販売の基準となる価格がなく、卸値のみの提示となるため、小売業者に商品を卸す際に掛け率の交渉が難しくなるデメリットがある。交渉の際には参考価格が用いられることが多いが、一般には公表されないことで、新規開拓の機会を狭めてしまう恐れもある。
また、カタログなどにオープン価格のみ記載されていても、消費者からは実際の販売価格が見えにくいため、実際の商品の価値がわかりにくく、メーカーに対して不透明な印象を与える要因になる。
商品の値段が曖昧だと、消費者は各店舗に問い合わせる必要ができたり、販売日まで待たなければならなかったりなど、時間や手間が生じることになり、店舗への客足が減少して利益に繋がらない可能性も出てくるだろう。
小売業者側のデメリット
小売業者はオープン価格を用いることで、安売りをアピールしづらくなる点が挙げられる。希望小売価格による割引率や割引価格の表示は、消費者を引き付ける大きな販売戦略であった。
わかりやすく「希望小売価格から〇%引き」というような表記ができなくなり、オープン価格では安売りの効果が薄れてしまうため、消費者にアピールできる新たな戦略を考える必要が出てくる。
一目瞭然の価格表示でない場合、消費者からの信頼がなければ、効果的に販売を促進できなくなる懸念があるだろう。また、メーカーのデメリットでもあるが、仕入れ価格の交渉もパターン化できないので、希望小売価格の何%といったわかりやすい交渉が難しく、複雑化しやすい。
消費者側のデメリット
オープン価格だけ表記されていて、定価や希望小売価格がわからないと、実際どのくらいの値段で購入できるかが不明で、販売店などに足を運ぶまでおおよその値段の予測がつけられないデメリットがある。
店舗によってそれぞれ販売価格が設定されているので、相場がわかりにくく、小売店間で価格の比較ができなくなる。消費者にとって価格が見えにくいのは不安要素でしかなく、小売業者が定めた販売価格を信用するしかなくなるだろう。そのため、リサーチをせずに商品を購入した結果、市場相場よりも高い値段だったというような事態も起こりうる。
市場価格を安定させる効果のあるオープン価格だが、リサーチをしっかり行わないと、高値で買わされてしまう危険性もあることを認識しておく必要があるだろう。
オープン価格の意義や価格表示のルールを理解しよう
オープン価格は、小売業者だけではなく、メーカーや消費者、それぞれの立場によってさまざまなメリットがあり、広く用いられている価格表示方式である。定価や希望小売価格を採用する方がメリットがあるケースも存在するが、相場ごとに適正な価格になるよう調節する役割を担っていることは大きい。
ただ、希望小売価格を設定しない分、相場が不透明になってしまうので、オープン価格の商品を購入する際には情報収集が必須となるだろう。オープン価格の意義や定価、希望小売価格など、価格表示のルールを理解して、適正な価格を見極める知識を身に着けることが大切である。