リベートとは?意味や似た言葉との違い、メリット・デメリット、会計処理の方法を解説

2022.10.05

2022.07.28

おもに流通の商習慣に「リベート」がある。おもに自社の商品の販促のために行われる習慣だが、場合によっては違法となることもある。

また、会計上での処理方法や仕訳に悩む人も多いだろう。この記事では、リベートの概要や種類、似ている言葉との違いやメリット、デメリットとともに、リベートの会計処理方法について解説する。

リベートの概要と似ている言葉との比較

リベートの意味や概要

リベート(rebate)とは、手数料、謝礼、賄賂という意味の英語。おもにメーカー側が自社商品の販促を目的に、一定期間内の売上高や取引高に応じて販売奨励金として支払う(代金の一部を払い戻しする)商習慣のこと。

あらかじめ取引金額や商品の代金を割引するのではなく、支払金額の一部を払い戻すのがポイントだ。

リベートとキックバック、バックマージンの違い

リベートと似ている言葉にキックバックやバックマージンがある。キックバックとバックマージンはほぼ同じ意味だ。リベートと同じく、販促目的でメーカーが売上高に対して報奨金として小売店や卸へ支払う。

リベートがメーカー側、小売店や卸側が使用する言葉であるのに対して、キックバックやバックマージンは営業職がおもに使用する言葉だ。「今月〇円売上れば、〇%をキックバックします」のように使用する。

リベートは違法となることがある

リベートは販促や競合との差別化を測るために行われる戦略のひとつとして認められている。そのため、リベートそのものは違法ではない。ただし、以下に該当するリベートは違法となることがあるため注意が必要だ。

・契約書、チラシなどの書面でリベートの内容を通知または明確にされていない

・会計処理が不適切(仕訳が違う、会計上隠ぺいするなど)

・公務員や政治家などの公的な職種がリベートを利用する(職権を用いて便宜をはかったと見なされるため)

・担当者個人が独断でリベートを受け取る、支払う

特に公的な職種によるリベートは双方ともに賄賂罪、収賄罪に問われる可能性も高い。適切なリベートを行うためには、コンプライアンス上の懸念となる行き過ぎたリベートとならないことと、適切な会計処理が求められる。

リベートの種類

リベートは、支払い条件やシーンによってさまざまな種類がある。リベートの種類を解説する。

支払リベート

支払リベートとは「売上割戻」のことで、商品の売上高をベースにして支払われる手数料を指す。

受取リベート

受取リベートとは「仕入割戻」のことで、さらに以下の種類に分類される。

仕入リベート…仕入れ商品ごとの実績がベースとなって条件が決められるリベート

累進リベート…仕入れ額に対するリベートで、仕入れ額×リベート率で算出される。仕入れ額によってリベート額が増えるため、大量仕入れをする小売店などには有利

個人商談リベート…歳末、周年などの個別イベントにおいて発生するリベート。メーカーと取引先の個人商談によって条件が決められる

導入リベート…メーカーなどが特定の新製品の販促時設定するリベート

達成リベート…契約上など双方で取り決めた条件を達成したときに発生するリベート

リベートのメリット・デメリット

リベートが日本の商習慣として定着している背景には、双方にメリットがあるためだ。その一方でデメリットもある。知っておくべきリベートのメリットとデメリットを解説する。

リベートのメリット

リベートには以下のメリットがある。

・小売側は売上高以外の利益を得られる

・メーカー・卸側は小売側に対して発言やコントロールができる

小売側は売上や定められた条件を達成することでリベートが受けられるため、売上高による利益のほか、リベートによる利益も得られる。

リベートを設けることで、メーカーや卸側が小売店に対して発言力を持ったり、コントロールができたりするだろう。

良い商品を卸しても、小売店をはじめとした販売チャネル側の見せ方、売り方によっては商品の魅力が発揮できないことがある。リベートによってメーカーや卸側が小売店側の良いスペースに商品を置いてもらえる、販促をしてもらえる、販売シェア拡大などを申し入れできるなど、商品を売るための働きかけに有効となる。

リベートのデメリット

メーカー・卸側、小売側両方にメリットのあるリベートだが、デメリットもある。

・経理処理やコスト面で負担が大きい

・コンプライアンス抵触や違法のリスクがある

・慣例的なリベートではメーカー・卸売側のメリットがない

リベートは払い戻しするためのコストが発生するのと同時に、適切な経理処理が必要となる。コストがかかるのはもちろん、経理業務上での負担が大きくなるデメリットがある。

リベートの条件や金額などは企業側が一括して決めているのではなく、現場や営業担当者の裁量に任されていることがある。

立場上断れない取引先に言い値でリベートを決めさせる、不適切な内容のリベートを受け入れさせるなどコンプライアンスに抵触する、または違法となるリベートが発生するリスクもあるだろう。場合によっては企業としての信頼を大きく失う可能性もある。

リベートは商習慣として継続されている背景があるため、慣例的にリベート込みでメーカー・卸側と小売側が取引をしていることもある。慣例的なリベートの場合は小売側が売り場や売り方の配慮をすることがないため、メーカー・卸側はコストが発生するだけでメリットが得られない。

リベートの会計処理方法や気を付けるポイント

リベートの会計処理の方法や気を付けるポイントを解説する。

リベートの仕訳方法

リベートは「売上割戻し」として処理するが、契約による定めの有無によって処理方法が異なる。

契約によってリベートの定めがある場合は、売上を計上するタイミングで処理する。リベート額が6万円だった場合は借方が「売上割戻し:60,000」、貸方が「売掛金:60,000」と仕訳する。

リベートについての契約がない場合には、仕入先に割戻しを通知した日または実際に支払った日に計上する。「商品100万円を取引先が掛で購入、割戻し(リベート)として6万円割り戻した」場合は借方が「売掛金:940,000、売上割戻し:60,000」、貸方が「売上高:60,000」と仕訳する。

リベートが損金として認められないケース

リベートは支払った分だけ売り上げが減る=税務上は全額損金として取り扱われ、益金から支出として差し引ける。

リベートを損金とすることで節税効果が得られる一方、損金として認められるにはリベートが社会通念上合理的であると認められた場合のみだ。以下のケースではリベートが損金として認められないため注意しよう。

・リベートの算定基準が明確ではない

・リベートが社会通念上合理的でない金額

・支払う相手によってリベートの金額を変える

リベートが違法とみなされた場合は、当然損金としては認められない。また、支払う相手によってリベートの金額を変えている場合は損益ではなく交際費として判断されることが多い。

交際費は私的な支出と混同されることが多いため、税務上計上できる額が制限されている。リベートが交際費として認められると支出から差し引かれる金額が減ってしまうため、リベートに関する要件は整備しておくことが重要だ。

リベートは適切な取り決めと会計処理が必須

リベートの概要や種類、メリット、デメリット、会計処理上で気を付けるべきポイントを解説した。

リベートはもともと商品の販促のためにもちいられた商習慣だが、慣例的にリベートありきの取引もあり、メリットが活かされてない場合もある。リベートを含んだ取引は、適切な仕訳や会計処理を行うことで、損益として認められる。違法なリベートは論外だが、税務上でもリベートのメリットを活かせるようにしよう。

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