希望小売価格の意味とは?定価やオープン価格などの違いと併せて解説

2022.10.05

2022.03.24

商品を購入する際、「希望小売価格」という表示を見たことがあるだろうか。その他にも「定価」や「オープン価格」など価格表記にはさまざまな種類がある。

本記事では、この「希望小売価格」とはそもそもどのような価格で、実際に販売されている価格とは何が違うのかを解説していく。また「定価」や「オープン価格」についても比較しているので、いま1つ用語の意味が分からないという方は参考にしてほしい。

希望小売価格とは? 

希望小売価格」とは、文字通りメーカー側が希望する小売価格のこと。あくまでもメーカー側が提示する参考値であり、小売店側は幾らで販売しても構わない。そのため、希望小売価格と実際の販売価格に差が出る場合がある。例えば、希望小売価格が2000円の商品を小売店が1500円で売ることができる。

メーカーは希望小売価格を設定することで、販売価格と生じた差額により消費者が得に感じることもあれば、安く見えてしまうといったブランド価値の低下につながるケースもある。

定価との違い

定価とは

価格表示には他に「定価」がある。希望小売価格と定価は何が違うのだろうか。同じ意味に思えるが、実は大きな違いがある。

希望小売価格は、先ほども述べたようにあくまでもメーカー側が提示した参考値であり、そこから小売店が自由に販売価格を決められる。しかし、定価は、定価の価格から変更をしてはいけない

メーカーが希望小売価格ではなく定価として価格を定めてしまえば、希望の価格で販売がされるのでは?と疑問が湧くかもしれない。

しかし、小売業者に対し、商品の販売価格を定めてしまうことは独占禁止法で禁止されている。この行為を許してしまうと、例えばメーカーが指定した金額以上でないと小売店に出荷しないなどのケースが出てきてしまう。

再販売価格維持制度

それでは、何に定価が用いられているのか。それは、たばこや新聞、書籍、CDなどだ。書籍やCDなどは著作権保護の観点から定価での販売が可能となっている。

例えば本は、何県で買っても、コンビニでも、書店でも価格が変わらない。このように書籍などの価格をあらかじめ決定し、小売店側に維持させる制度を「再販売価格維持制度 」という。

書籍など決められたものにのみ「再販売価格維持制度」が適用されているため、その他の製品は希望小売価格を提示するか、出荷価格の設定しかできなくなっている。

オープン価格との違い

オープン価格とは

販売価格の参考値を示す希望小売価格に対し、「オープン価格」は、メーカーが販売価格の設定を小売業者側に完全に委ねることだ。メーカーは小売業者への出荷価格のみ決定する。希望小売価格は実効性が薄いこともあり、1970年代以降に小売業者に販売価格を委ねるオープン価格が広がった。

希望小売価格と販売価格の「二重価格表示」

「希望小売価格○○円の○%オフ、〇〇円」のような表記を見たことがあるだろうか。この表記は、ある価格と実際の販売価格を比較した「二重価格表示」と呼ばれるもの。希望小売価格もこの二重価格表示に用いられることがある。

二重価格表示には、希望小売価格以外にもこれまで長期で販売していた価格や、将来販売予定の価格を、実際の販売価格と比較して併記するケースがある。二重価格表示そのものはNGではないが、景品表示法により細かく基準が定められているため注意が必要だ。

景品表示法に抵触しないようにするためにも、希望小売価格を設定した場合は、小売業者だけに希望小売価格を伝えるのではなく、カタログや商品本体への印字など、公表されていなければならない。また、あくまでも希望小売価格は参考値であるため、小売店の意向を受けて高めに設定してはいけない。 

オープン価格の広まり

過去に家電業界で値下げ競争があった際、「希望小売価格○○円の60%オフで○○円」などの表記がされており、大幅な値下げのように見えるなど、二重価格表示が問題視されたことがある。

また、希望小売価格の設定を行うことで景品表示法に抵触する可能性が他にもある。

例えば希望小売価格を取り下げたのに、店頭での価格表示にそのまま使用されていた場合や、希望小売価格を実際より高い金額で表示していた場合などだ。このような二重価格表示を行うと、消費者は販売価格が安いと誤認することにつながってしまう。

さらに、希望小売価格と販売価格を両方表示されることにより、消費者側はどの価格がその商品の本当の価格なのか分からなくなるという不信感にもつながりかねない。

このような理由から、現在は景品表示法により定められている二重価格表示に抵触しないようにするためにも、オープン価格のみ設定するケースがある。

希望小売価格のまとめ

改めてそれぞれの用語の意味をまとめてみよう。

・「定価」は金額変更できないもので、書籍やCD等対象が決まっている

・「希望小売価格」はメーカー側が提示する参考金額

・「オープン価格」はメーカーが販売価格を小売業者に委ねること

これらの用語は日常の買物でもよく目にする言葉だ。意味が理解できると買物をする際に本当に安い商品なのかの判断に役立つかもしれない。

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