シリーズ_改めて考えたい「よく使っている言葉」の定義 第7回マーケティング

2021.03.25

KMAきむらマーケティング&マネジメント研究所 木村 博

マーケティングは人によって色々な定義がありますね。普遍的な定義としては「市場(market)での企業活動(ing)」とすることは誰も異論のないところでしょう。

この市場での企業活動=マーケティングにおいて、「何を中心に考えるか」は、時代によって変化してきました。

①生産志向

まずは、「需要量に応える製品量を生産できる」ことを目指しました。言い換えると工場を建設し、市場に製品を流せば、作っただけ売れるというものです。背景には好景気が続いたことがあります。「消費は美徳」という風潮がありました。各企業はこぞって工場地の確保に走り、各地で工場団地が造成され、道路が整備されました。

②製品志向

次に登場したのが「製品志向」。「良い製品を作れば売れる」というものです。良い製品とは、今までにない新しい製品、品質の良い製品、新しい技術を使った製品です。

各企業は新製品開発、品質管理、新技術の研究に力を入れました。いわゆる、研究開発部門の強化です。企業の花形が工場から研究開発に移り始めました。

この志向は盲目的技術信仰を生み、世の中に必要のない製品の誕生につながります。

③販促志向

好景気が落ち着き始めると、大量に生産する、良い製品を作るだけでは売れない時代が到来しました。ラジオ、テレビの普及と相まって、「販促志向」が生まれました。

テレビでCMを流す、低価格販売をする、大量陳列するなどして、「積極販売する」ものです。この辺りから、過剰在庫、リベートなど販売に関する問題が発生してきます。

④顧客志向

徐々に「作れば売れるのか?」「良い製品を作れば売れるのか?」「店舗に製品を押し込めば売れるのか?」という疑問が出てきました。そこで、「顧客志向」が生まれます。「消費者が望んでいる製品を提供する」ということです。

消費者のニーズ、ウオンツの研究、CS(顧客満足)、CRM(Customer Relationship Management)など顧客研究の技術は進展しています。特にコンピュータ技術の深化のおかげで、顧客の一人一人の情報は広く、深く、早く分析できるようになっていますね。

⑤社会志向

そして「社会志向」。「社会へいかに貢献するか」ということです。所属する業界、立地する地域、社会全体に対し、企業としての存在意義を問い続け、企業活動する考え方です。

これはネットワーク社会の影響が大きいですね。今まで見えていなかった事実が見えるようになり、また、手に入り難かった知識が簡単に手に入り、そして情報の伝達速度は増すばかりです。これでは企業は社会に目を向けざるを得ないですね。

プロダクトアウトとマーケットインの発想

マーケティングは生産志向、製品志向、販促志向、顧客志向、社会志向と変遷してきました。日本では前半3つの志向をプロダクトアウトの発想、後半2つをマーケットインの発想と呼んでいます。

「プロダクトアウト」とは、「自社の生産工場ありき、自社の技術ありき、自社の在庫ありきの発想で、自社の都合で企業活動する」というもので、「回りを見ていない、内向きである」という悪いイメージの発想と言われていました。「あなたはプロダクトアウトの発想が強すぎる」という使われ方をしました。

この反省から、「もっと回りを見る、外向きになる」という意味合いで、マーケットインの発想が求められるようになりました。

しかし、「お客さまは神様です」の言葉が出てきてしまったように、何が何でも顧客の要望に応えるという極端なマーケットインの発想が生まれたのも事実です。

高学歴者の余裕時間の拡大、各種サービス現場の増大、マーケットの事実の見える化などいろいろな要素が絡んでいますが、行き過ぎたマーケットインがモンスタークレーマーを生む要因の1つになってしまったようです。

新しいプロダクトアウトとマーケットインのバランスが大事

自社の強みをしっかり自覚するという意味合いで、プロダクトアウトの発想は大事だと思います。自社が大事にしていること、お客さまに伝えたいこと、ライバルに負けないことを曖昧にせず、社内で共有することは大変大事なことです。

具体的には、先ず自社の事業領域を認識することです。多くの企業はこの事業領域(言い換えると「戦う土俵」)を認識していません。認識できていたとしても間違っていることの方が多いのです。

次に競争相手の認識です。こちらは認識をしていない企業はまずないのですが、間違って認識している企業が見受けられます。いま一度、事業領域、競争相手の確認をする必要があると思います。

その上で、マーケットインです。やみくもに「お客さまは神様です」と認識するのではなく、現在、自分の事業を支えてくれている顧客は誰なのかを明確にし、その顧客を守る戦略を立てます。

そして、その顧客だけで将来の事業状態が発展するかを想定し、問題発生が予想できるときは、新たな顧客創出戦略を考えます。

これが、プロダクトアウトとマーケットインのバランスです。「自分の事業領域はどこか」「自分のライバルは誰か」、そして「自分の顧客は誰か」です。これがよく言われる3C分析です。

きむら ひろし 1954年千葉県生まれ。早稲田大学卒。83年日本能率協会コンサルティング入社、90年チーフ・コンサルタント。2005年きむらマーケティング&マネジメント研究所を設立。小売・流通企業、サービス企業における企業理念・中期経営計画策定、マネジメントシステム構築、マーチャンダイジング革新、店舗オペレーション革新、ストアマーケティングなどを指導。次世代の売場づくり、買物行動分析、店長現場力アップ、チーフの改善スキルアップなどに取り組んでいる。

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