シリーズ_改めて考えたい「よく使っている言葉」の定義 第9回問題

2021.06.02

KMAきむらマーケティング&マネジメント研究所 木村 博

問題とは「解決すべき不具合なこと」です。チェーンストアの現場で働く人に、「現場の問題は何か?」と問うと、「発注改善すべきです」など、対策が返ってきます。対策とは「問題を解消するためにやること」です。チェーンストアの現場で働く人は問題と対策をごっちゃにしています。

「問題を明確しない」という失敗

問題を解決できない人は対策ばかり考えています。「問題」を考えていません。例えば、売上高が不足すると、「平台で売り込みます」「エンドで売り込みます」「がんばって売ります」と根拠のない対策を言い始めます。

いまの時代、「売り込む」と決めただけで、売上高が変化するわけがありません。根拠のない売り込み策で売上数値が動いたのは、モノ不足の時代、バブルの時代だけです。

現場で、「いまの若い人は…」の声がよく聞こえますが、「根拠がなくとも売れた時代」を経験したベテランと「売れない時代しか経験したことがない若者」では、「売る」ことへ認識が違うのは当り前です。この認識が違うことを前提にコミュニケーションしなくてはいけないのです。

「対策」を考えることの弱点は2つあります。1つ目は問題を明確にしていないため、思い込みの対策を実施しても問題が消えず、良いことが起こらないということです。2つ目は過去にやったことがあること、上司から命令させることをやるため、それ以上の対策を生み出せず、成果がほとんど出ないのです。

問題を明確にせず、対策ばかり考えていると何もいいことが起きないのです。

「問題を明確にする」ために必要なこと

問題を構造的に説明すると「差の概念」であるということができます。把握した事実と比べる対象との「差」が問題なのです。

例えば、あるカテゴリーで100万円の売上高実績があるとします。前年の売上高105万円と比べた場合、その差、ショート分5万円が問題となります。比べる対象を予算売上げ110万円とした場合、10万円の差が問題です。チェーン内のベンチマーク店舗(成績の良い店舗)の売上高120万円と比べた場合、差の20万円が問題となります。

このように、比べる対象によって問題の見え方が変わります。比べる対象をたくさん持った人には、多くの問題が見えてきます。

売上高数値で問題が明確になったら、自店の前週、自店の前年、ベンチマーク店舗、ライバル店舗、バイヤー提案、取引先情報などの売場と、自分の現在の売場を比べ、その違いを探します。その違いが売上高を不足させる原因となる問題なのです。

問題を明確にするためには、事実をつかむスキル、そして、比べる対象をたくさん持つスキルが必要なのです。

同じPOSデータや売場を見ても、問題を多く発見できる人とまったく問題を発見できない人がいますね。この違いは比べる対象と視点を多く持っているか、いないかの違いなのです。マネジメントの始祖P.F.ドラッカーが「あなたの職場の問題は何か?」と問い続けていることを思い出してください。

「問題」と「問題点」の違い

問題解決スキル向上の研修を実施していると、問題を曖昧に考えている人が多く、そのために問題解決のスキルを上げられないでいます。そんなとき、問題と問題点の違いを認識してもらいます。

問題とは「解決すべき不具合なこと」と定義しています。問題は困っていること、解決したいことです。

問題表現のあるべき姿は、問題の原因と結果の因果関係を明確したものとなります。「○○という原因のために●●という結果が発生している」という表現です。具体的には、「備品の定位置管理が行われていないため、備品の探し作業が発生している」となります。

原因も結果も不具合なことです。そこで、私は「結果としての不具合なこと」を問題点と定義しています。

「問題」と「問題点」を分けて考えるメリット

問題解決に慣れていない人はいろいろな場面で混乱しますが、致命的な混乱が問題を特定する場面で混乱することです。

例えば、「定位置管理ができていない」「段取りができない」という不具合なことがあります。どちらも問題です。これら問題の因果関係をはっきりさせて表現しようとすると混乱が起きます。

「定位置管理ができていないために段取りができない」ことが問題なのか、「段取りができていないために定位置管理ができない」ことが問題なのかの議論です。これは不毛な議論となり、放置しておくと何時間でもこのような議論をしてしまいます。

こんなとき、問題と問題点の違いを説明し、「問題点は結果となる問題で、経営数値に悪影響与えるもの」、つまり、売上高に悪影響を与える、荒利益高に悪影響を与える、経費に悪影響を与えるものであることを理解してもらいます。

「定位置管理ができていないために段取りができない」「段取りができていないために定位置管理ができない」。どちらも結果となる不具合なことが、経費に直接、悪影響を与えて「いない」こと、つまり「問題」の方になってしまっていることを理解するのです。

そうすると、結果としての不具合なことである「問題点」を当てはめて考えなければならないことが分かります。結果、「備品の定位置管理が行われていないため、備品の探し作業が発生している」ことが問題なのか、「前日の必要備品の段取りが行われていないため、備品の探し作業が発生している」ことが問題なのかという議論となり、現場で調査しようということになります。

「問題点の理解」が問題解決スキルを上げる

問題点を売上高に悪影響を与える、荒利高に悪影響を与える、経費に悪影響を与えるものであることを理解すると、「だから何なの?」「何が問題なの?」と突っ込みなくなる問題特定がなくなり、問題解決プロセスが迅速となります。

きむら ひろし 1954年千葉県生まれ。早稲田大学卒。83年日本能率協会コンサルティング入社、90年チーフ・コンサルタント。2005年きむらマーケティング&マネジメント研究所を設立。小売・流通企業、サービス企業における企業理念・中期経営計画策定、マネジメントシステム構築、マーチャンダイジング革新、店舗オペレーション革新、ストアマーケティングなどを指導。次世代の売場づくり、買物行動分析、店長現場力アップ、チーフの改善スキルアップなどに取り組んでいる。

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