スケーラビリティを背景に新SMモデルを構築、首都圏のインフラであり続ける ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス 井出武美社長

2026.03.02

 首都圏のスーパーマーケット(SM)有力企業のマルエツ、カスミ、マックスバリュ関東によるSM連合として長らく存在感を発揮してきたユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(U.S.M.H)は一昨年から今年にかけて大きな変革の時期を迎えている。

 一昨年の2024年11月30日には4社目の事業会社となるいなげやがグループ入りした他、昨年5月にはイオンリテール、イオングループを通じて長らく食品事業に携わってきたイオンリテール前社長の井出武美(いで・たけみ)氏が、初めて傘下事業会社外から社長に就任、さらに今年3月1日には事業会社の一角を担うマックスバリュ関東がダイエーの関東事業、イオンマーケットと統合し,新たな社名となるイオンフードスタイルとして始動する予定となっている。

 井出社長は3月1日付の再編を発表する記者会見で、「マックスバリュ関東の31店舗、ダイエー関東事業の62店舗、そしてイオンマーケットの33店舗が合流し、店舗数126店、売上高約1800億円規模の首都圏における新たなSMチェーンが誕生することとなる。この新会社は単なる組織改編ではなく、首都圏におけるグループの事業基盤を抜本的に変革すると共に、お客さまへの提供価値を飛躍的に高めるための重要な一歩となる」と今回の統合の意義を強調した。U.S.M.Hグループ全体では761店、売上高1兆円超。存在感を飛躍的に増すことになるU.S.M.Hのこれからについて、イオングループとのシナジーを含め井出社長に聞いた。

フォーマットは店舗サイズによって3つに集約

 これまでSM連合として、各事業会社はフォーマットを含め、比較的独自性の高い経営をしてきたといえるU.S.M.H。現在、フォーマットでは事業会社のマルエツ、カスミ、マックスバリュ関東、いなげやがそれぞれ複数フォーマットを展開している他、今後グループ入りするダイエー関東事業、イオンマーケットもそれぞれ独自のフォーマットを複数持つ。

 これらフォーマットについては今後、U.S.M.Hグループとして統合していく方針が発表されている。

 「そうですね。首都圏ですから、1つはエリアドミナンスと考えれば、(東京都)23区を中心としたわれわれが『ダウンタウン』と呼ぶところと、その周辺の都市部の『アーバン』、それから茨城や神奈川、千葉の房総半島など『ルーラル』地方と分けていますが、基本は店舗サイズで分ける考え方です。

 例えば一番小さいのがマルエツで100坪ぐらい。その上が250坪、300坪のイオンマーケットとかダイエーの店、それでアーバンからルーラル寄りになると、500坪、600坪のレギュラーがあります。レギュラーサイズにも2つあって、ショッピングセンターの中に入っている、もしくはビルインのフォーマットと、駐車場が150台、200台ぐらいある(フリースタンディング)の店、プラスそこに立地ですね。駅前なのか、街中なのか。

 基本的には100坪、300坪、500~600坪、この3サイズでフォーマットをつくろうというのが基本です。バナーも変えようと思っていますが、それはまだ全然決まっていないですし、いまの段階では(統合する)『イオンフードスタイル』以外は、いまのバナーは残します。これについてはまだ、検討に入っていません。

 それぞれの会社に歴史があります。『マルエツが好き』『いなげやが好き』『カスミが好き』という人が多いです。屋号(バナー)はブランドですから、そこはやはり慎重にお客さまと向き合いながら、考えていかなければなりません」

 一方で、イオングループの主力事業であるGMS(総合スーパー)事業の中核会社はイオンリテールであるが、日本では衣食住総合品揃えのGMSは衣料、住居用品の売上低下によって業態の意義が問われている他、そもそも出店余地も減ってきているといわれる。実際、イオンリテールの出店については比較的近隣をターゲットとしたショッピングセンター(SC)である「そよら」フォーマットでの食品プラスドラッグや衣料といった形の食品主体の出店がメインとなっている。

 また、地方に目を転じればイオングループ内では北海道、東北、九州、中四国など各地方では以前、別会社として運営されていたSMとGMSが、1つの企業の下で運営されるようになっている。こうした流れを踏まえると、U.S.M.Hとイオンリテールが統合してもおかしくないように思えるが、その辺りはどうなのか。

 「それはいまのところありません。どちらかというといまは自前SCの『そよら』型が多くなっていますが、そよらは(ネイバーフッドショッピングセンターの)『イオンタウン』よりも少し小さいサイズの都市型コミュニティSCです。これはわれわれのフォーマットではないということです」

 イオンリテールでは、そよらなど中心に比較的小商圏をターゲットとしたフォーマットを中心に食品と、医薬品や化粧品を中心としたヘルス&ウエルネスが商品構成上の主力となっている。また、イオングループのドラッグストアの主力企業の1社であるウエルシア薬局では「ドラッグ&フード戦略」として生鮮食品、惣菜を含む食品強化型の店舗の出店を強化するなど、グループ内で「フード&ドラッグ」のシナジーを追求する動きがある。

 フードを主力とするSM企業として、「ドラッグ」に対してはどのようなスタンスを取るのか。

 「一部事業会社に残ってはいますが、われわれはいまドラッグはやりません。いまは食に特化していくことを考えています。グループ視点で言うと、ウエルシアがあり、ツルハがあり、まいばすけっとがあり、そしてわれわれがあるということで、多様なフォーマットがあっていいと思います。その中でわれわれは『新SMモデル』と呼んでいますが、SMに徹するということで、いまは新モデルを規模別とエリア別につくっていくことに集中していくというのがスタンスです」

 今年3月にはイオンフードスタイルに社名変更するマックスバリュ関東が、イオンフードスタイルとしての新フォーマットをオープンすると発表されている。ポイントは生鮮強化と価格強化になるということだが、その具体的な姿はどのようなものなのか。

 「3月にオープンする店舗は300坪程度の、レギュラーサイズではない小サイズのフォーマットになります。これまでは、どちらかというと300坪の店は都市型で、結局、生鮮については商品のグレードは松竹梅の上の方を取り扱うわけではなく、非常に一般的な商品で埋め尽くされていたと思います。それで、どちらかというとトップバリュを中心にグロサリー、デイリーの一般食品を強化してきました。

 これをもう1回、見直してやはり鮮度、魚もそうですが、生鮮品の52週のMDも含めて強化をしていきたいと思っています。都市型の300坪のお店に、北関東のイオンモールみたいにすごい(広域の)商圏からお客さまが集まって来るわけではありません。どうしても足元の商圏、1kmとか10分商圏などの足元商圏内のお客さまに、『いつでも』楽しんでもらえるような店にしたいということですね。

 ハレの日も、ケの日も。都心で、今日はパーティをやろうと思ったとき、もしかしたらデパ地下に行ってしまうかもしれない。もしくは少し足を延ばしてイオンリテールに行ってしまうかもしれない。(そうではなくて、ハレの日も含めて)365日、お客さまのライフスタイルに対応できるお店にしていきたいということです。当然、(ケの日に)冷蔵庫代わりのように、まいばすけっとのような使い方もしてもらいたいです。

 それを300坪の中で実現するということですから、当然、坪売り(坪効率)を上げなければいけない。最終的には(既存店を)改装して、収益を上げなければいけないので、坪売りを飛躍的に上げる仕掛けづくりをしていきます。

 どうしても生鮮デリカの面積が多少広がります。もしくは増床できないか。例えば古い店で、有効活用できていない空白スペースを少し改装して売場面積をしっかり取っていくとか、壁面では高さを使うとか、やはり店舗価値を上げていくようなMDと売場づくりです。

 私は専門的にずっとやってきていますので、そのノウハウをぶち込んで、平田(炎・マックスバリュ関東)社長を含めてプロジェクトチームをつくっていますので、われわれの持ってきた知見、ノウハウを何とかそこで実現して、23区での新しいモデルをつくっていきたい。300坪の中にどれだけできるか、イオンリテールのように700坪、あるいは1000坪ではないので、できないこともあるとは思いますが、それをやっていきたい。

 MDについては、いったんU.S.M.Hをベースに、そうは言ってもダイエー、ピーコック、マックスバリュ関東ですから、それぞれの強みのMDがあると思うんです。昔、ピーコックは弁当がすごく良いと思っていました。もう1回、それぞれのMDを、それぞれの視点で見直して、残された期間はあまりないのですが、3月までの間にできる限り、やりたいなと思っています。

 もう1つの大切なことはプロセスセンター(PC)です。U.S.M.H全体でPC改革をやっていきます。例えば、マルエツにPCがある。いなげやにもある。カスミにおいては(子会社の)ローズコーポレーションがある。イオンの傘下にはイオンフードサプライがある。それぞれの会社がホールディングスも含めてPCを有しています。

 それをいまから全部つくり直すのではなく、もう1回、そこの製造機能や製造キャパシティ、設備などを見直して、PCを首都圏でどういう風にフォーメーションをつくったら良いのかを、いまプロジェクトをつくって検討しています。

 だから、どこかには投資をしなければいけないかもしれない。例えば、弁当を強化するためにこことここに製造拠点をつくると決めてそこに投資をかけるだとか、こちらでは魚をやろうとか。いま持っている資産をうまく活用する。PCでの製造は店舗の作業軽減にもなりますから。新しい商品開発がそこで生まれるような、PC改革も同時にやっていきたい。3月には間に合わないかもしれないですが、それを見越して推進していくということです。

 フロントだけではなくて、サプライチェーン全体をこれから中期で変えていくということをいっしょにやらないといけない。売場だけを変えれば良いというものではないです」

 カスミやマルエツでは低価格帯を強化する実験もしている。価格志向に応えるディスカウントについてのスタンスをどのように据えるのか。

 「われわれはやはり(ディスカウントストアではなく)SMをやりたい。イオングループではディスカウントストアを標ぼうしてやっている企業もあるので、それはそれ。われわれは首都圏において、SMを中核とした企業群であるというのが私の認識です。

 そうは言っても、価格に対して無視はできないということもあります。非常に厳しい経済、インフレの中でお客さまはやはり価格重視です。私はいつも「V=Q/P」ということを言っています。Vは価値(Value)ですが、やはりお客さまは価値で商品を買います。分母はPで、これは価格(Price)、分子のQはクオリティ(品質、Quality)です。だから、Vを上げるにはQを上げるか、Pを下げるかしかないわけです。Vを上げるために、両方できたら一番良いのですが、それをカテゴリーごと、商品ごとに考えていきます。

 例えば、KVI(Key Value Item)という言い方をして、少し価格を重視した商品を設定したり、あるいは生鮮デリカのような商品は価格も大事ですが、おいしさだとか、鮮度だとかも大事なので、それを重視したりする。

 一言で『二極化』と簡単に言ったりしますが、V=Q/P、いわゆる品質と価格についてしっかりバランスを取りながら、お客さまにフィットさせていく。そういうフォーマットにしていきたいと思っています。ただ、価格についてはカスミ、マルエツの新しい実験モデルなどはかなり成果が出ています。やはり客数にヒットします。

 一方で生鮮デリカを強化すると来店頻度と客単価にヒットします。客数を上げながら、同時にお客さまにたくさん買っていただけるような収益モデルをつくっていきたい。こういう考え方です。首都圏に非常に優秀なアセットを持っていますので、このアセットをうまく使えれば、首都圏は客層が幅広いですので、あらゆるお客さまがいらっしゃいます。全てのお客さまと言ってはおこがましいですが、限られたお客さまではなく、多くのお客さまに支持される店にしたいということです。ターゲットは当然、ファミリー層かもしれないですが、私としてはオールターゲットです」

事業会社のカスミ、マルエツはそれぞれルーラル立地において低価格帯を強化する実験をしている。写真は25年10月に低価格帯強化の「新スタンダードモデル」1号店としてリニューアルオープンしたカスミ松ヶ丘店(茨城県守谷市)

PBはトップバリュとイータイムに集約、NBもイオン共通に

 マーチャンダイジング(MD)については、やはり一部を除いてこれまで事業会社がそれぞれ取り組んできている傾向が強い。例えば新フォーマットで核部門となるデリカについても、現在では個社で取り組んでいる色彩が濃いが、今後、MDの統合をどのように進めていくのか。

 「U.S.M.Hとしていま考えていることは、今春に向けていま準備しているところですが、U.S.M.Hとしてデリカのチームをつくろうと思っています。U.S.M.H共同開発商品のようなものを出していきたい。その先にあるのはデリカに使う共通の原材料の集約です。そうするとスケールメリットが出ますし、シーズンごとにいろいろなこともできます。ある程度のスケーラビリティを実現すると、コストも下がりますし、コストだけでなく品質として良いものを売っていくということにも舵を切っていけます。

 簡単に言うとU.S.M.H統一商品とローカル商品の形です。やはり、茨城と神奈川では違うところもあるので、ローカル性も残しながら強い単品を作っていくということです」

 プライベートブランド(PB)商品についても、イオングループの「トップバリュ」、U.S.M.Hとして開発する「eatime(イータイム)」、さらにマルエツ、カスミ、いなげやの各事業会社が個別に開発するPBが共存する形になっている。これらのPBについてはどのような方向性を考えているのか。

 「1つはやはりトップバリュ。あとは各社のPBは基本的にイータイムに集約していきます」

 ナショナルブランド(NB)の調達については帳合の統合に取り組んでいるが、その先にどのようなシナリオを描く。

 「共通仕入れ、共通帳合に変えました。次が共通棚割りの問題になります。いまイオングループで取り組んでいる『カテゴリープレイブック』というカテゴリーマネジメントの新しい仕組みを入れていて、これにはU.S.M.Hの各社も参加しています。これでもう1回、カテゴリー戦略を作って、共通化できる棚割りについては共通棚割りにするとか、次は共通エンドだとか、販促商品といったように、1つ1つ優先順位を付けて詰めているところです。それでまず商品の集約とその効果を見ながら、取引先とウィンウィンになるように着手しています。まずは販売量を上げないといけません。

 調達のためには当然、情報システムと物流を変えないといけません。物流はばらばらですから、U.S.M.Hで最適な物流モデルを作っていく。それに情報システムをつなげないといけません。最優先になるのは情報システムと物流のところです。商品が一番大事ですが、そこにヒットさせるための投資と改革を行う。そこの延長線上にさらにトップバリュを拡大する、さらにイオン商品調達を拡大するということになります。

 物流については、新設もするかもしれませんが、いまのアセットを使いながらこの2年ぐらいでやらなければいけない。いまU.S.M.H八千代グロサリーセンター(千葉県八千代市、23年9月に商品供給を開始したマルエツとカスミの共同物流センター)で取り組んでいるような共同センター化です。トラックの距離を短くし、配車の数を減らせばコストが下がります。物流の効率化を図ると共に、物流は情報で動いているので情報の統一も行っていきます」

 商品調達面では、現在のところ円安傾向が続いている。どのように捉えているのか。

 「特にヨーロッパ、オーストラリア、アメリカなどからの輸入品は、われわれのような都市部(の店)にとっては、例えばワインに合う食材のチーズや生ハムなどがずっと上がっていますので、もう少し為替も含めて、われわれも買いやすくて、お客さまも買いやすい価格になってほしいと思っています。

 いま海外輸入は全般的に上がっていて、それが生鮮品にも及んできています。例えばわれわれのデリカ商品でも原材料は海外の商品を扱っていますので、それは下がってほしいなと思います。

 ただ、しばらくは、コストプッシュインフレは続くと思いますので、それにどう対応していくのかが、私たちの目の前に迫っている課題であることは事実です。その意味で統合によって、コスト構造改革にも目を向けて、いままでやれなかったことをやるということを考えていきます」

 一方で、それぞれの事業会社が独自にフォーマットやMDを展開することは「個性」にもなっていた。今後、一体化を進めることは大きな転換となるが、その面では進め方として難しい面も出てくるとみられる。

 「いまの段階では、例えばフォーマットもそれぞれでやっています。私が本当にやらなければいけないことは、店頭(フォーマット)を合わせていくことも大事ですが、もっと後ろの方で、物流、IT、組織やシステムなどで、そういったコスト構造そのものを変え、原資を作らないといけない。そちらをまず先にやってから一体感と言わないと、事業会社は納得できないでしょう。

 だから、やはり本社がやるべきことをやることが大事だと思います。まずは、U.S.M.H本社でインフラをちゃんと整えていく。共同商品もそうだと思います。生鮮デリカ強化だったら、デリカで強い単品をつくらなければいけない。他社にないような看板商品を生み出していけたら、自然と一体感が生まれてくるのではないでしょうか。

 5月に就任しましたが、収益性の低さ、もっとシナジー効果が発揮できないかといったことを考えました。イオングループ、そしてU.S.M.Hグループという大きなスケール感があるにもかかわらず、十分に生かし切れていない部分もあるし、それぞれの会社で持っている強みを相互に生かし合っていないことが課題だと思っています。

 そこで、『100日改革』ということで、私が就任してから100日間で改革プランを作るために、何回か経営幹部を集めてひざ詰めで話し合いました。その中で、構造的にやらなければいけない課題をタイムテーブルに置き、これからその実行に入っていきます。

 私の就任前に新中計(経営計画)がある程度、出来上がっていましたが、その新中計の骨格そのものはそれほど間違っていなかったのですが、あとは実行のところですね。戦略の実行のところを少し高めるために、私がそれを引っ張るということです。やはり戦略と実行、この両輪を回していくことをやりたいと思っています。

 特にコストプッシュインフレが来ていますので、そういう形でいま新中計のブラッシュアップをしています。人材交流などいろいろな制度の問題、センターや物流の再編などサプライチェーンの問題について、イオングループのアセットとU.S.M.Hグループのアセット、個社のアセットで最適化することを順番に、優先順位を付けてやるという構想です。

 あと大事なことにお客さまへのサービスもあります。マルエツ、カスミでいま強化しているWAON POINTなど、イオングループの共同サービス、共同プロモーションをもっと活用するなど、お客さまにとっても、われわれの経営効率についてもシナジーを出していきたい。細かいことはいっぱいありますが、いまレールを敷いて取り組んでいます。

 そこに投資も伴いますので、そのリターンを考えなければならないですし、金利が上がっているので、投資も慎重に実行する必要があります。ただ、私ははっきり言っていますが、いま立地と売上があるわけです。売上をゼロからつくるのであれば大変ですが、すでにあるわけですから、回収できると信じています」

DXはイオン共通を基本に、方向転換へ

 SMに限らず、小売業全般にもDX(デジタルトランスフォーメーション)の波が押し寄せている。一時期のブームのような状況からは落ち着きを見せているが、DXの重要性が今後さらに増していくことは間違いない。U.S.M.HはScan&Go ignica(スキャンアンドゴーイグニカ)アプリをベースに、スマホPOSやオンラインデリバリーなど新たな買物の形の模索を含めたDXに先進的に取り組んできた。

 今後のDXはどのような方向性を視野に入れるのか。

 「U.S.M.HのDX戦略も、実は『100日改革』の議題の1つで、見直しをしています。いまイオンのデジタルチームと、われわれのデジタル組織のチームで定期的なミーティングを行っており、そこでいったん新たな戦略と実行プランを練っているところです。そこには、それに携わる経営メンバーが入っていますが、まずはそこの部分での共有にとどまっているのが現状です。実際の現場を含めた社員へのコミットメントや意識浸透はまだ不十分だと思っていまして、それはこれからやっていきます。

 私が就任してから毎月、U.S.M.H全体朝礼というものをやっていますので、そこで少しずつ、われわれの考え方をまず共有することかなと。方向感を明確にして、最後は具体的に何をするかということがとても重要だと思っていますので、それを1つ1つ具現化していくことが先ではないかと思っています。

 先進的に進んでいる部分もあるのですが、例えばイオングループの共通サービスが使えないとか、もっともっと合理化できる部分があるのにまだ手が付けられていないとか、全体的にはまだたくさん課題があります。それはやはり改善をしなければいけませんので、『これまでのやり方が全部正しいからこれで行こう』という話にはなっていません。DXについては方向転換をいましているところです」

 U.S.M.Hはイオングループに属するが、売場でお客自身が商品を登録しながら買物ができるスマホPOSについては、前述のスキャンアンドゴーイグニカを活用している。一方で、イオンリテールなどではレジゴーを採用するなど、グループ内で異なるサービスが共存している。井出社長はイオンリテール出身だが、この辺りについては今後、どのような方針を採っていくのか。

 「まだ決まっていませんが、U.S.M.H全体では統合しようと思っています。ただ、レジゴーになるかどうかといったことは議論していません。いまはスキャンアンドゴーイグニカを続けていきますが、先ほどのようにシステム改革、DX改革をしていきますので、その中で答えが出ます。

 基本は『共通化する』です。基本、イオンが進めている共通サービスが使える、WAON(電子マネー、ポイント)が使えるとか、iAEON(イオンのトータルアプリ)が使えるとか、そういったレジ回りに関連するところはやはり合わせていかないといけない。イオングループとしての共通とU.S.M.Hの共通をミックスさせていく改革になると思います。レジゴーになるかどうかは分かりません。全体を冷静に見ていきたいと思います」

U.S.M.Hはイオングループの中にあっても、独自のDX戦略を進めてきたが、今後はイオングループ全体との連動をより強化する方向に転換していく

 U.S.M.Hは、それぞれが歴史を持つさまざまな企業の連合であるが、その意味では1企業と比べると、従業員の多様性もより大きいと見ることができる。一体化という意味でも、従業員との向き合い方も重要なテーマであるといえる。

 「私も長いイオンの人生で、マックスバリュ東北にも行ったし、山陽マルナカにも行きました。奇策はなくて、コミュニケーションだと思います。会社が何を目指して行くのか。イオンは『平和』『人間』『地域』を基本理念として重視していますから、地域を大切にするということは、地域のお客さまはもちろんのこと、地域にお住まいの従業員も大事にしなければいけないので、ES(Employee Satisfaction、従業員満足)の視点を私は常に意識しています。

 だから、できるだけ経営幹部が現場の方とコミュニケーションすることだと思います。いま経営幹部が現場を回ろうというプランを練っています。また、パート(タイマー)さんを含めた全従業員に対して、改善してほしいところや困っていることなど何でも言ってくださいと意見の募集をしました。かなりの意見が集まりましたが、これから集計して1つ1つ、本社で解決すること、事業会社で解決すること、現場で解決できることと分類していきます。

 そうやって従業員の人たちが意見を言える、会社を良くしていることに貢献できる、小さなことでも良いから経営に参画できることが大事なのではないかなと思いますし、逆にこれだけの従業員がいたら素晴らしいアイデアがあるのではないかと思います。私はいつも従業員の成長が会社の成長につながると思っていますし、こういう形で従業員が経営に参画していることと、意見が会社に上がってくることが重要だと思います。悪い情報こそ私に上がってくるようにしたいなと思いますし、そうすればきっとお互いに納得できるのではないでしょうか。会社も全部正しい判断をするかどうか分からないですし、けん制もしていただかないといけません。

 私が全従業員と話をすることはできませんので、経営幹部が行って対話するとか、アンケートを取るとか、何でも良いと思いますが、そういった相互コミュニケーションの仕掛けを幾つかつくっていくことが重要だと思っています」

デスティネーションカテゴリーをつくる

 SM業界を見渡すと、岐阜を地盤としていたバローによる関西に続く関東進出や福岡を地盤としていたトライアルによる西友買収を通じた首都圏への本格進出など、人口が減少する局面に入った日本にあって、人口が集中する首都圏を始めとした都市部に対して熱い視線が注がれていることが分かる。

 U.S.M.Hはまさに首都圏を中心とした企業グループであるが、その意味では今後、この大きな市場をめぐる競争が次第に激化することになる。

 「特に首都圏、東海、近畿圏は完全に越境して競争時代になっています。(有力企業は)皆さん、それぞれ特徴がありますね。それは学ばなければいけないなと思います。オールラウンダーというよりも、やはりデスティネーションカテゴリーをしっかりつくっていると思うので、われわれもそういうことを模索したいと思います。

 ただ、われわれは店舗数も多いですし、本当に何かに絞り込んで成功するかどうかは分かりませんが、先日、茅ヶ崎(神奈川県)でオープンしたマルエツは鮮魚強化型にしていますし、やはりデスティネーションカテゴリーをきちっとつくっていく。例えば、駅前の都市型であればデリカだろうし、郊外であれば生鮮、特に水産に加え、農産は絶対だと思いますし、そういった形でデスティネーションカテゴリーの創造をしていきます。当然、価格に対しても、トップバリュとNBについて対応しています。

 いまPoC(Proof of Concept、概念実証)段階でいろいろ実験をしていますが、売上と客数は確実に手応えがあります。やはりお客さまは生鮮の鮮度とおいしさ、そして価格を望んでいます。あとは、これは他社もわれわれもそうですが、最後はちゃんと利益モデルになるかどうか。収益モデルをどうやってつくるかということで、先ほどのサプライチェーン改革につながっていきます。やはり原資をつくらなければいけないので、イオングループの力も借りて全体でやっていきます。

 サプライチェーン改革で原資をつくりながら、PC改革によって良い商品を店に供給して、店で絶対にやれなければいけないことを明確にして、本当にお客さまに喜んでもらえるかどうか。さらにそれを一発屋ではなく、サステナブルにできなければだめなので、必ずモデル化して、そのモデルに向かって投資をしていくという循環をつくっていきます。

 もちろん、内容は場所によって変えないといけないです。例えば生鮮強化型の強い店は駐車場がパンクしないように、われわれとしてもある程度、駐車場を持った店でまずはやっていきたいですね。

 これから一番やらないといけないのは、やはりインフレなので『売上アップ』でしょうね。ある程度、収益、簡単に言うとシェアを上げていかないとサステナブルな経営はできないと思っています。やはり、モデルをつくって、サプライチェーン改革をして、いろいろなシナジーを出して、投資もしながらサステナブルな経営をしていく。これもアセットがあるからできるわけで、リモデルすれば十分に可能なわけです。いまから首都圏に新店を700店出店することは絶対にできません。

 やはりスケーラビリティの時代に入っていると思います。海外を見れば一目瞭然で、やはり大手の占拠率が高い。いまもいろんな他社の方々もM&A(企業の合併・買収)をされていますが、やはり、インフレ下になってきていることもあってスケーラビリティはなくてはならないものになっています。

 調達の面でも、本社コストの面でも、デジタル投資の面でもそうです。やはり、投資のリターンがある程度必要です。物価が上がっているだけでなく、建築コストも上がっていますし、店を改装するのにもコストが上がっています。冷蔵ケース1つとっても設備投資は全部値上がっていますので、それに対してスケーラビリティでコストを下げていくことを常に追求していかないといけない時代に入っていると思います」

マルエツが次世代旗艦店として25年11月にオープンしたBLiX茅ヶ崎店は生鮮とデリカを強化。生鮮とデリカで売上高構成比55%を目指す。特に鮮魚は地域一番店になる上でのポイントと捉え、対面販売をしっかり設け、維持継続していく

 首都圏はマーケットとして巨大である半面、競争激化が必至。その意味では首都圏を含め、今後人口が減っていく日本におけるSMは、その事業の定義、役割を明確にしつつ、かつ変化もしていく必要があるとみられる。井出社長は、今後のSMの役割をどう考えるのか。

 「イオンの基本理念の中にわれわれの使命として『地域社会に貢献する』ということが1つありますので、地域のお客さまの生活を守らないといけないですし、もう1つは、SMは災害があったときのライフラインでもあります。店の存続にはインフラとしての価値もあると思います。

 何かあったときに食材が調達できる。生きる上では『食べること』は欠かせないものですから、そういう意味でわれわれがサステナブルに成長できる、事業継続できることに尽きると思います。やはり、われわれの店がなくなってしまえば地域のお客さまにご迷惑をおかけしますし、お世話になったことの恩返しもできないですので、その意味では責任を痛感しています。それはビジネスだけでなく、社会のインフラとして地域になくてはならないものと思っていますので、これだけの売上と店舗数はちゃんと維持継続、成長していきたいと思います」

 競争が激化していくとはいえ、首都圏は日本では最もポテンシャルが高いマーケットであることは確かで、そこにすでに多数の店舗、インフラを持つことは大きなアドバンテージであることは間違いない。

 問題はその店舗、インフラという資産をいかに効率的に活用することができるか。2015年3月の設立から11年の年月が経つが、井出社長が語るとおり、現状、収益性、シナジーの面など課題が残ることも確かだ。

 3月のマックスバリュ関東の統合を経て登場する新フォーマット(3月7日オープン)はもちろん、MD、物流、DXなどイオングループとのシナジーも含めた改革によってこれらの課題が解決に向かうのか。1兆円超のスケール、さらにはイオングループの真価がどのような形で発揮されるのか。U.S.M.Hには今後ますます業界全体からの注目が集まるだろう。そして、多くの企業から熱い視線が注がれる首都圏において、同社が今後も台風の目であり続けることもまた、確かである。

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