ユニファイドコマースとは?オムニチャネルとの違いや、導入事例などを紹介
2024.03.27
2021.11.19
近年、スマートフォンなどのデジタルデバイスの普及や、IotやAIなどデジタル技術の発展によって、企業側が収集・利用できる消費者の購買行動データは爆発的に増えている。その中で、ECなどのオンライン上の行動データだけではなく、店舗などオフラインにおける行動データを含めて、全てのデータを統合して販売活動を行う「ユニファイドコマース」という概念がある。
ECビジネスに力を入れる企業では、現在、「オムニチャネル」や「OMO」、「O2O」といったマーケティング手法を取り入れているところも多いだろう。ユニファイドコマースは、店舗、ECサイトなどの複数のチャネルを統一化する「オムニチャネル」戦略が前提となってくる。
本記事では、ユニファイドコマースとはどのようなマーケティング手法なのか、「オムニチャネル」など他のマーケティング手法とはどういった違いがあるのか、また、実際に取り入れている企業の最新事例を紹介していく。
ユニファイドコマースとは?
ユニファイドコマースとは「統合された商取引」と訳される。何を統合したのかというと、オンライン、オフラインを問わない、顧客情報や購入履歴、商品の在庫情報といったデータだ。顧客データや商品データをすべて統一し、顧客に対してパーソナライズされたサービスをおこなうマーケティング手法のことを「ユニファイドコマース」という。
ユニファイドコマースは具体的にどのような手法なのか。例えば、店舗で購入した商品や顧客情報に基づいて、ECサイト上で、その人へのおすすめ商品を表示すること。また、ECサイトで購入した商品の履歴を店舗の販売員も把握できるようになることで、来店客が既に購入している商品をおすすめしてしまうといったことを防げる。ユニファイドコマースとは、このように個人に向けたマーケティングである、「One to Oneマーケティング」をおこなう手法である。
オムニチャネルとの違いは顧客の体験価値にある
ECビジネスにおいて大切なマーケティングとして「オムニチャネル」や「OMO」があるが、「ユニファイドコマース」は、これらとはどのような違いがあるのか。それは、顧客の利便性を重視するのか、顧客体験を重視するのかにある。
一度、オムニチャネルなどの用語の意味を確認しておこう。
・オムニチャネル・・・オンライン、オフライン問わずに販売チャネルを統一化し、顧客にアプローチすること。顧客は店舗、ECサイトなどどこで購入しても同じサービスや商品を受けられる。
(例)店舗にないがECサイトに在庫のある商品を、店舗で決済し、自宅に届くように手配する。
・OMO・・・オンラインとオフラインを一体化すること。
(例)オンライン上で決済をしてから、店舗で受け取る。そして購入の情報をデータ化する。
・O2O・・・オンラインとオフラインを切り分けて2つの往来を促すこと。
(例)顧客にECサイト上でクーポンを発行し、店舗へ誘導などができる。
購入場所を定めない、受け取り場所を選べる、お得な情報を得られるなどの活用ができる、「オムニチャネル」、「OMO」、「O2O」は全て顧客の利便性を高める。
それに対し、ユニファイドコマースは、“店舗で購入した商品がECサイト上にも反映され、おすすめ商品が表示される”など、購入前後のカスタマーエクスペリエンスを向上させる。顧客の体験価値を高めるマーケティング手法といえる。
ユニファイドコマースを実現するために必要なのはオムニチャネル化し、オンライン・オフラインの垣根を超え、販売チャネルを統一化しておくこと。例えば、“店舗で購入した商品に基づいて、ECサイト上でその人へのおすすめ商品を表示する”方法でも、ECサイトと店舗の購入履歴がそもそも連携されていないと実現できない。
ユニファイドコマースの事例
大手アパレル、「ベイクルーズグループ」
ユニファイドコマースでコミュニケーション、接客の方法を変えた
大手アパレルのベイクルーズグループではユニファイドコマースの一環として「リアルタイムパーソナライゼーション」を導入しコミュニケーションに変化を加えた。
「リアルタイムパーソナライゼーション」とは、EC、店舗での行動データ、購買データ、アプリでの行動データなどを分析して、顧客に対して最適なコミュニケーションを図ることだ。
例えば、ECサイトでお気に入りに入れた商品の在庫が少なくなったときの通知や、同じ商品を直近で複数回、閲覧し、購入していない人に在庫数が少なくなったことを知らせている。
また、買い忘れのリマインドや、類似商品の入荷通知など、個々に合わせたコミュニケーションを、リアルタイムでおこなっている。
なかでも、鍵となるのは「クロスユース」と呼ばれる店舗とECサイトの両方を利用するユーザーだ。ベイクルーズグループではクロスユースが自社アプリに集まっていることを把握し、アップデートを強化。ベイクルーズグループのアプリでは、店舗で商品のタグを読み込み、購入、自宅配送の手配ができる「手ぶらで買い物機能」を備えるなど力を入れている。
また、オンライン・オフラインの体験価値を融合したデジタルストアや、チャットでの接客、ビデオ接客、ライブコマースといったデジタルでの接客を強化したことも挙げられる。
2020年8月期には、510億円の売り上げのうち、自社EC売り上げは391憶円で前年比137%に達した。自社ECの比率は77%にまで達している。EC専門組織作りの強化や、EC購買需要が高まるなど他の要因もあるが、ユニファイドコマース戦略もこの売上増加の要因の一つである。
ユニファイドコマースを取り入れた背景
ベイクルーズグループでは、2014年にオムニチャネル戦略強化を打ち出し始めている。そして2016年には倉庫在庫や店舗とECサイトの会員情報を統合するなど、オムニチャネル化を推し進めてきた。
そして、2017年には「ユニファイドコマース」を成長戦略として掲げ、DX(=デジタルトランスフォーメーション)推進を加速させ、デジタルによる新しいビジネスモデルを作り上げてきた。例えば、従業員が簡単にデータにアクセスできる環境を作り、誰でもデータを基に意思決定できるようにした。このようなDX推進をベースとし、ユニファイドコマースに注力してきた背景がある。
TSIホールディングス(ナノ・ユニバース、マーガレットハウエルなど)
WEB試着予約サービス
ナノ・ユニバースやマーガレットハウエル、ステューシーなど55ブランドを展開するTSIホールディングスでは、2021年3月から、WEB上で予約できる試着サービスをスタートさせた。
この試着予約サービスは、あらかじめ着てみたいアイテムと、店舗、日時を指定することで、実際にお店で試着できる仕組みだ。来店する店舗だけでなく、アテンドするスタッフの指名もできるのも特徴。好みや自分に似合うかどうかを相談できるため、スタッフ指名する人も多い。試着予約サービスを申し込み、実際に試した顧客は55%ほど、そのうち購入にいたった人は80%ほどにまでなるという。
ユニファイドコマースを取り入れた背景 -ECサイトに注力
TSIホールディングスでは、2003年にZOZOTOWN出店、2013年には自社のECプラットフォームを構築。システム開発や運用、ウェブデザイン、などを内製化できるようにスタッフの教育や中途採用によってデジタル人材の育成をおこなってきた。そのうえで、自社のECサイトに注力してきた背景がある。
また、ECアプリでは、商品画像をお気に入り登録できるようにし、品番情報も連携。この仕組みにより、顧客が店頭で商品を探す際も、スタッフが品番を基に間違いなく商品を見つけるようにした。また、特定の商品について、チャットを介したスタッフへの問い合わせや、コールセンターに相談できるといった仕組みも整えてきた。
tokyobike
オンラインストアと、POSシステムをShopifyで統一
自転車の販売等をおこなうtokyobikeでは、「ユニファイドコマース」の一環としてShopifyにてECサイトを立ち上げた。また、POSシステムもShopify POSに切り替えた。
ECサイト、POSシステムのどちらもShopifyという一つのバッグエンドを使用することで、すべての店舗とECサイトが管理できるようになり、顧客に対して購入するオムニチャネルの選択肢を提供できるようになった。
例えば、自転車の試乗で来店した顧客のECサイトにショッピングカート情報がメールで送信され、ECサイトのカート内に試乗した商品が入るといったサービスだ。ECと店舗の在庫情報などデータが効果的に連携できたことで、売り上げもシステム導入から最初の半年間で前年比100%アップしたという。
ユニファイドコマースを取り入れた背景 -情報の一元化と、最終購入への課題
自転車は金額が高価なため、簡単に購入を決める人は少なく、大半が店舗で試乗してから、自宅で購入を検討するパターンだった。そのため最終的な購入に結び付けるのが難しいという問題点があった。
また、ステイホームの影響から自転車の需要が伸び、世界中から注文が来るのに対し、情報は一元化ができていないという問題点も。「ユニファイドコマース」を推進し、Shopifyで統一することで、データを一元化し、店舗とECサイトの連携させることでスムーズなやり取りと、効率的な販売を実現した。
「ユニファイドコマース」まとめ
「ユニファイドコマース」を活用するには、オンラインとオフラインのデータなどを収集・統合を行う基盤を構築する必要がある。
本記事で紹介した事例の場合は、倉庫在庫や店舗とECサイトの会員情報の統合(ベイクルーズグループ)や、ECサイト上の画像と商品番号の紐づけ(TSIホールディングス)、ECサイトとPOSシステムの連携(tokyobike)といったように、ECサイトとリアル店舗や倉庫とのデータ連携を行っている。
デジタル技術の発展によりデータ利用の利便性は高まっており、今後ユニフィアドコマースの実現ハードルは低くなっていくと考えられ、それに伴いユニファイドコマースを実践する企業は今後も増えていくだろう。