NFT(非代替性トークン)とは?国内企業の取り組み事例を交えて解説
2022.10.27
2021.12.16
NFT(非代替性トークン)とは、ビットコインなどで使用されるブロックチェーン技術(分散型台帳)を用いて作られる、代々不可能な送信権が入った唯一無二のデータ単位のことを指す。
近年、デジタルアートやネットゲームの領域を中心に活用される機会が増え、ジワジワと注目を集め、Twitter創業者ジャック・ドーシー氏の最初のツイートがNFTとして3億円で取引されたことでも話題となった。
NFTが生み出す変化は、今後のビジネスを大きく変革していく可能性を秘めている。本記事では、今話題のNFTについて、言葉の意味から実現している技術、具体的な事例までを解説していく。
NFT(非代替性トークン)とは?
なぜNFTを使えば、ただのツイートやデジタルデータが取引できるのか?具体的に説明していく。
ブロックチェーン技術を用いて生み出された固有のデジタルデータ
NFTとは、Non Fungible Tokenの略。Fungibleは代替可能性の意味で、直訳して非代替性トークンと呼ばれる。
NFTでは、デジタルデータに紐づけられたブロックチェーン上に、鑑定書や所有証明書を記録を残すことで、替えの効かない、固有のデジタルデータとすることができる。
NFTによって固有性を付与されているため、ジャック・ドーシー氏の最初のツイートは、固有のデジタルデータとなって価値が生まれ、またその所有権を他人移すことも可能になる。
このNFTには、製造者名、所有者名、過去の所有者の履歴のような情報が含まれる。つまり、誰が、いつ、どのようなNFTをもっていたかということまで特定できるように作られているのである。
NFTが注目された経緯
NFTを使用した最初のプロジェクトとされているのが、2017年にイーサリアムブロックチェーン上で誕生した「CryptoPunks(クリプトパンク)」のデジタルアートだ。CryptoPunks上では、小さな帽子をかぶった宇宙人の24×24ピクセルのポートレートが作成され、2017年当時は無料で配布されていた。
2021年3月に、この小さな帽子をかぶった宇宙人の24×24ピクセルの1組のポートレートがそれぞれ約750万ドル(約8億2000万円)で販売されて大きな注目を集めた。
また、同時期に、1枚のNFTアートが史上最高額の75億円で落札され話題となった。落札された作品は、beepleという名前のデジタルアーティストの作品で、beeple氏は毎日1枚のデジタルアートを作成する「Everyday」というプロジェクトを13年以上継続し、そのプロジェクトで作成された5000枚の画像をまとめて1つの作品とし、オークションにかけたのだ。
上述のTwitter創業者のツイートが高額取引されるなど、NFTを活用したデジタルアートの高額取引が広く世間の注目を集めるきっかけになったといえる。
NFTのもたらすメリットとは
NETには、次のようなメリットがある。
データの唯一性を生み出す
前述の通り、ブロックチェーン技術を活用することで、唯一性を証明する情報を付与するために非代替性が備わる。
ブロックチェーンは、ネットワーク上で発生した取引データがチェーン上に連続して記録される。ブロックチェーン上の特定のデータを改竄するには、過去に生成されたチェーン上の全ての情報を改竄する必要があり、この改竄は事実上不可能とされている。
NFTがデジタルアート市場で利用されているのも、このブロックチェーンのセキュリティ性の高さが背景にある。
取引・移動可能な資産になる
NFTは、所有者を明確化することができるため、取引によって所有者を移すことができる。NFTはデジタル資産の売買で利用されるのは、この取引可能性があるからこそだ。
また、NFTの規格が同じであれば、異なるゲーム間でのデジタルアイテムの売買も理論上可能とされている。ゲームAで購入したアイテムをゲームBで売却するといったことができるようになる。
誰でも作成が可能
NFTの作成に制限はなく、誰でも特定のサイト上から作成が可能になっている。そのため、個人がデジタルアートなどのコンテンツを作成して、それを売買することも可能だ。参入障壁の低さもNFTの盛り上がりの一因になっているといえる。
日本企業におけるNFTの活用事例
それでは、企業においては、NFTをどのようにビジネスに活かしているのか、事例を整理していく。
LINEのブロックチェーン技術をDeNAの「プレイバックナイン」に導入
DeNAと横浜DeNAベイスターズが、がというサービスを開始し、LINEの独自開発したブロックチェーン「LINE Blockchain」を採用した事例だ。
「PLAYBACK 9」では、横浜DeNAベイスターズの試合の名シーンを集めたデジタルアイテムをNFTにして提供を行う。
国内8,900万人がもつLINEアカウントからすぐに登録できる「LINE BITMAX Wallet」を利用することで、NFTアイテムを扱いやすいのが特徴だ。
LINE社自身も、NFTを活用したデジタル景品(動くデジタルトレーディングカード)を取り扱っている。企業の販促キャンペーンにおける初の事例として、CDG社のイベント景品に使われた。
「LINEで応募」というサービスでデジタル景品を提供する仕組みとなっており、様々なキャラクターやコンテンツとコラボレーションすることでオリジナル性の高いデジタル景品を展開している。
その他の特徴としては、LINEのユーザー同士であれば、景品のNFTトレーディングカードを交換したり、取引することも可能という点だ。
LINE社のブロックチェーン技術により、NFTが身近になっていくかもしれない。
テレビ朝日・テレビ朝日メディアプレックスがNFT事業に本格参入
テレビ朝日およびテレビ朝日メディアプレックスも、LINEの「LINE Blockchain」を活用してNFT製品の提供に進出する。
報道・スポーツ・アニメ・ドラマ・アート・料理・音楽など様々な分野において、テレビ番組などの映像から静止画までをNFTコンテンツにしていく方針だ。
具体的には、「超電磁ロボ コン・バトラーV」などロボットアニメシリーズ6作品を使用したデジタルトレーディングカードの販売を予定している。
実際に放映された名シーンをNFTデジタルカードにする。
Youtubeなどの台頭で事業展開が難しくなりつつあるテレビ業界にとっての突破口となるか注目だ。
NFTマーケットプレイスにおける総合格闘技連盟 RIZINが提供するNFTコンテンツ販売
音楽アーティストのファンサイトを運営するFanplusは、RIZIN FIGHTING FEDERATIONと業務提携しNFTコンテンツ販売をしていく。
具体的には、Fanpla Ownerという独自のNFT取引所において、所属選手の肖像、映像、音声データなどを用いて、NFTコンテンツにしていく方針だという。
ここで利用されるFanpla Ownerの特徴は以下のようなものだ。
- エンターテインメント領域におけるNFTを購入できる取引所
- Fanplus独自のNFTはアーティストなどの公式なものに絞り一次流通商品の質を担保
- アーティストへの収益還元を目的としたロイヤリティ機能を予定
- 暗号資産決済に「Polygon(MATIC)」を採用予定
- クレジットカードも利用できる予定(Ethereumネットワーク上で管理)
さらに今後は、Fanpla Ownerは以下のような事業展開を狙っているという。
- 音楽アーティストの肖像・イラスト・映像・音源素材を用いたNFTコンテンツ創出
- スポーツ領域でもデジタルトレーディングカードなどのNFTコンテンツの提供
エンターテイメントの中でも幅広い領域でNFT関連サービスを実現していくFanpla Ownerの今後の展開に期待だ。
手塚プロダクション初の原稿アート公式NFTプロジェクト「From the Fragments of Tezuka Osamu(手塚治虫のかけらたちより)」
手塚プロダクションからは、手塚治虫氏の原稿を使ったNFTアートが発表される予定だ。
モザイクアートNFTとジェネレーティブアートNFTの2形態で展開予定となっており、シリーズ第一弾は「鉄腕アトム」からリリースされる。
さらに「ブラック・ジャック」や「火の鳥」も展開予定となっており、往年のファンにはたまらない企画になりそうだ。
また、この企画で創出した純利益の20%をユニセフや日本の子供たちに寄付する方針を決めているという。
それでは、展開するNFTアートの2つの形態について確認する。
【モザイクアートNFT】
モザイクアートNFTは、カラー原画840枚を配置し、 手塚治虫が生み出した多様なキャラクターや作品を一望できるように製作される予定だ。
原画本来の風合いを残し、定番の名シーンから、雑誌の扉絵やレア画まで多様なものが使用されている。
遠くから1枚の絵として観れるだけでなく、1枚1枚を懐かしの1シーンや思いがけないレア画として鑑賞することのできる圧巻の作品だ。
【ジェネレーティブNFT】
ジェネレーティブNFTは、モザイクアートNFTで使用した画像素材をもとにランダム生成されたアート作品だ。
1050点制作され、うち1000点が販売・50点はマーケティングに利用予定だという。
販売期間中に購入されなかった作品は、もう購入できないということで、希少性の高い作品となりそうだ。
NFTが生み出す新たな世界に注目
NFTは、唯一性の証明・移動可能・価値の可視化・誰でも作れる・プログラマビリティがあるなどのメリットをもっており、今まで難しかったデジタルデータの資産化に成功した。
こうしたNFTは、ジャック・ドーシー氏の最初のツイートのように高額な取引がされはじめている。
さらに、ゲームやアート、スポーツなど多くの業界でNFTコンテンツの作成・販売が始まっており、今後のビジネスシーンを大きく変革させる可能性があるだろう。