チェーンストアとは?概要とメリット、スーパーマーケットとの違い等を解説
2024.03.15
2021.12.22
チェーンストアは、多店舗展開に用いられる経営手法のひとつである。広い地域で複数の店舗を展開する際に有効で、日本でも小売業界で多数採用されている。
この記事では、チェーンストアの特徴とスーパーマーケットとの違い、チェーンストアの種類を紹介する。チェーンストアの運営を検討する場合、メリットを理解しておくことが重要だ。
目次
チェーンストアの概要
チェーンストアは、多店舗展開において用いられる運営形態だ。アメリカで誕生した「チェーンストア理論」に基づくチェーンストアは、日本でも小売業界や飲食業界で広く浸透している。
チェーンストアは企業活動を本部に集約し、現場である店舗では統一された基準に基づくオペレーションを実施するのが特徴。多店舗経営にチェーンストア方式を導入することで、経営効率のアップと費用削減が図れるの。チェーンストアについて理解するには、チェーンストアの特徴とスーパーマーケットとの違いについて理解することが大切なので、まずはそれぞれ詳しく紹介する。
チェーンストアの特徴
まずは、チェーンストアの特徴からみていこう。チェーンストアとは、単一資本の小売・飲食業で、11店舗以上を本部が直接管理している経営形態を指す。1900年代にアメリカで広まったのが、チェーンストア理論。
日本におけるチェーンストアの導入で有名なのが、経営コンサルタントの渥美俊一氏。渥美氏はチェーンストア理論を学ぶための教育機関「ペガサスクラブ」を設立。現在チェーンストアとして国内で広く事業展開する小売業の企業経営者が、渥美の教えを受けて、日本にチェーンストアを広める役割を担った。
チェーンストアの特徴の一つが、「マスマーチャダイジング」の手法を取り入れていることだ。マスマーチャダイジングとは、不特定多数の消費者に対して、いかに効率的かつ効果的に品物を大量に売るかを重要視するビジネスモデル。
多店舗経営の難しさとされる店舗ごとの品質を均一化し、迅速で効率的に事業展開の規模を拡大できるメリットがある。国内ではチェーンストア理論が1960年代以降の小売・飲食業の多店舗経営を推進に効果を発揮し、現代日本の小売・飲食業におけるチェーンストア業態が一般化してきた。
チェーンストアとスーパーマーケットの違い
チェーンストア(チェーン店)は日本でも一般的に広く知られる多店舗経営の形態だが、チェーンストアとスーパーマーケットがどのように異なるのかは、意外と知られていない。チェーンストアは、他店舗経営を実現するためのビジネスモデルのこと。
一方でスーパーマーケットは、古くからの小売業態である「マーケット=市場(いちば)」を超えるという意味から「スーパー(超える)」+「マーケット」と呼ばれる。セルフサービス形態の小売業態を指し、消費者が日々の生活の中で特によく消費する日用品や食料品を販売する。特定の品目に特化せず、幅広い品目の商品を取り扱うのが一般的だ。
経済産業省によるスーパーマーケットの定義は、販売額の70%以上を食料品が占め、250m2以上の売り場面積を有すること。また、セルフサービス方式であることもスーパーマーケットと定義される条件だ。つまりチェーンストアはビジネスモデルの一種で、スーパーマーケットは小売業態の一種。意味と用法を混同しないよう覚えておきたい。
チェーンストアの種類
続いて、チェーンストアの種類を確認していこう。チェーンストアは経営形態の特徴から主に3つに分類される。レギュラーチェーン、ボランタリーチェーン、フランチャイズチェーンだ。一般的にチェーンストアというと、どの経営形態も区別されないで扱われることが多い。
しかし、チェーンストアの種類により、実はそれぞれのタイプで違いが見られる点がある。実際に多店舗経営で事業拡大を目指す場合には、自社のビジネスに最適なチェーンストアの形態を選択する必要が出てくるのだ。タイプごとのチェーンストアの違いやメリットを知り、効果的な安定経営に役立てて欲しい。
レギュラーチェーン
レギュラーチェーンは、コーポレートチェーン、直営店とも呼称されるチェーンストア方式だ。本部を運営する企業の単一資本で事業展開を行い、チェーンストアは全店舗が本社直営。現場の各店舗は本部が統制を実施し、提供するサービスの均一化がもっとも図れるのがレギュラーチェーンのメリットだ。雇用する人員も本社管理で採用するため、従業員は本部を運営する企業の一員である。
レギュラーチェーンではブランド構築や売り上げ管理、店舗向けマニュアルを本部がすべて担当。オペレーションの均一化はブランド価値の向上にもつながるため、ブランド価値を重視する業種に向いているのが特徴だ。店舗ごとのオペレーションを独自に変えることはできないため、エリアごとのニーズに合わせた施策に柔軟に対応しにくい点がデメリットとして挙げられる。
また、レギュラーチェーンの各店舗の売上はすべて本社企業の収益となるが、売り上げが伸び悩んだ場合には、複数店舗を単一資本で経営するための資金繰りが苦しくなるケースが想定される。
フランチャイズチェーン
フランチャイズチェーンは、本部を運営する企業が加盟店とそれぞれ契約を締結する方式のチェーンストアだ。日本ではコンビニエンスストアの90%以上がフランチャイズチェーン加盟店。
ほかにも幅広い業態で採用されている実績がある。フランチャイズ加盟店は、資本的には独立している。本部から運営ノウハウの提供を受けられるため、店舗経営が軌道にのりやすいのがメリットだ。
ただし、加盟店の経営者と店舗経営に従事する人員は、加盟店が採用・管理を行ため、本社従業員ではない。また、店舗経営は本部の指示に従って行い、商品のプロモーションを独自に決定することはできないため、自由度はやや低い。
しかし、加盟店は運営ノウハウの提供を受けて店舗経営にのみ専念できるので、複数の加盟店を運営することも可能だ。本社からの経営指導が期待でき、ブランド力を活かして安定運営しやすいので、初めて挑戦する業種の場合には、フランチャイズチェーンに加盟するのがおすすめである。
ボランタリーチェーン
ボランタリーチェーンは、チェーンストアのなかで唯一、本部機能の考え方が異なる。ボランタリーチェーンでは、独立した複数の店舗が、ひとつの組織としてチェーンストアを経営するためだ。個人経営では難しい経費の削減などを実現し、経営の効率化を目的としている。
仕入れの集中化による仕入れと流通コストの低減が期待でき、経営ノウハウを複数の経営者が共有することで安定経営が図れるメリットがある。独立した単一店舗では実現が難しいコスト削減を希望するなら、ボランタリーチェーンが適用になりやすい。
ボランタリーチェーンの本部と店舗には上下関係はないため、独自の経営方針に基づいた店舗運営がしやすいのも特徴。それぞれ独立した事業者が市場分析データの共有をすることで、より効率的な事業戦略に基づいた店舗経営が実現する。ただし本部機能が強力ではないため、オペレーションの不均一化が発生しやすい。ボランタリーチェーン方式を活用して安定経営と売り上げの向上を目指す場合には、トラブルが発生した際の対応方法なども含めて、事前に綿密な計画を立てておくことが欠かせない。
チェーンストアのメリット
チェーンストア方式を採用して多店舗経営を実現するなら、チェーンストアのメリットを把握しておきたい。チェーンストア方式を導入した場合の主なメリットとしては、コスト削減の実現、サービスの安定化の実現、情報の一元化の実現が挙げられる。
11店舗以上の複数店舗を経営する場合には、いずれかのチェーンストア方式を検討することになる。チェーンストアのメリットを正確に理解し、多店舗経営を効率的に実施するために役立てよう。
コスト削減が実現できる
チェーンストアのメリットの1つ目は、多方面におけるコスト削減が実現できること。まず、チェーンストアでは単一店舗よりも一度に大量の仕入れを実施するため、価格交渉が可能になる。
これにより、仕入れコストの大幅な削減が期待できる。仕入れ価格が抑えられることで販売価格も下げられるので、顧客へのアピールと競争力アップも期待できる。また、チェーンストアでは、仕入れ以外にもあらゆる面での集中化を行う。店舗開設には設備や人員の確保が必要だが、集約することでコストを抑えられる。
さらに、店舗運用のノウハウの蓄積や売り上げ管理、目標数値の設定管理といったバックオフィス的な業務もすべて本部が集約して管理することで、工数と運営費用が削減可能。ある店舗で不要になった既存設備をほかの店舗で活用することもできるので、さらなるコスト削減が実現する。多店舗展開で自社の事業拡大を目指すなら、チェーンストア方式の導入の検討がおすすめだ。コスト削減の面で大きなメリットが期待できる。
サービスの安定化が実現できる
サービスの安定化が実現できるのも、チェーンストア方式導入のメリットだ。チェーンストアでは、本部からの一括指示を受けて、各店舗が均一なサービスを行うためのオペレーションを実施する。
店舗ごとにサービス内容にばらつきがあると売り上げへの影響も考えられるが、チェーンストアだと本部が徹底した統制を実施することで、この点の懸念が払拭される。
店舗の人材管理や運営方法はチェーンストアの種類によって異なるので、自社の課題解決に最適なタイプのチェーンストア方式を採用するとよい。チェーンストアでは本部が作成した店舗運営、人材育成、サービスに関するマニュアル化が適正な店舗運営の精度を左右するので、マニュアルの整備が大切だ。各マニュアルは随時アップデートし、常に最適な店舗オペレーションの担保をするとより効果的。
各店舗で同レベルのサービスが提供できれば、顧客からの信頼感アップが期待できる。サービスの安定化を目指す企業でも、チェーンストアの導入はメリットが大きいといえる。
情報の一元化が実現できる
チェーンストア導入には、情報の一元化が実現できるマーケティング手法だ。単一店舗で取得した店舗運営や売り上げ、顧客に関する情報は、地域性などの要素が強く反映される。
一方、多店舗経営のチェーンストアでは、複数の店舗の情報を集約。本部が集約した情報を的確に分析することで、企業経営の向上と品質改善に役立てることが容易になる。単一店舗経営の場合、現場が情報分析まで担うケースもあるが、チェーンストアでは本部と現場がそれぞれの機能を分担することで、より専門的な情報分析を実現。
店舗は店舗運営のオペレーションに注力することで、顧客からの評価の向上にも役立つ。チェーンストアでは、店舗ごとのPOSデータを活用した戦略の立案も可能。複数店舗のデータを取得し、一元管理して素早く分析することで、チェーンストアならではの戦略立案ができる。一元管理した情報を分析することで、顧客動向の把握も可能となる。
広告を展開する媒体の決定や、クレームになりやすい案件の傾向を素早くキャッチすることは、企業経営するうえで非常に重要だ。情報の一元管理が可能となるチェーンストアのメリットもしっかりと確認し、売り上げとサービス品質の向上に活かしたい。
チェーンストアのまとめ
チェーンストアは日本において、コンビニエンスストアや飲食業界で広く浸透してきた経営システムだ。近年ではさらにブランド戦略を重視する美容業界などでも積極的に導入されている。
複数店舗に対する本部統制が可能になることで、店舗運営とオペレーションの最適化が図りやすいことが最大の特徴だ。複数店舗では従来コントロールが難しいとされてきたコスト削減とサービスの安定化、情報の一元化が容易に実現できるのがチェーンストア導入の魅力。
チェーンストアには大きく3つの種類があるので、自社の提供するサービスに最適なタイプのチェーンストアを採用することで、最適な多店舗運営が実現する。本部が複数店舗をコントロールすることで企業や商品のブランド価値を上げられるチェーンストア。本部の統制機能がチェーンストアの運営状況を左右するので、導入するチェーンストアのタイプの選定を考慮する必要がある。
編集長竹下の視点
小売業がお客に商品を販売しながら成長していく場合、物理的な店舗の場合、1店舗の売上げを高めていくことには自ずと限界がある。結果として店舗を複数出店することが有効な手段となるが、それを効果的に実践するための工夫を集約したものがチェーンストア経営であるといえる。
漫然と出店を重ねているだけでは店舗数を2桁、3桁、さらには4桁と増やしていくことは難しい。そこには多店舗を出店し、運営していく特別なマネジメント手法が求められることになる。実際に、多店舗を出店し、マネジメントすることができれば、1店舗では決して実現できないような、数倍、数十倍、数百倍、数千倍、コンビニなどに至っては数万倍の売上高を達成することができる。そしてその規模自体が、仕入れ、あるいは設備投資などにも生きることになる。