ダイナミックプライシングとは?メリットやデメリット、導入事例を交えて解説
2022.10.27
2021.12.23
需要と供給の状況に併せて、価格を変動させるダイナミックプライシング。近年AIなどの最新のデジタル技術を活用することで、導入の幅が広がっている。
本記事では、ダイナミックプライシングのメリットやデメリットを、最新の導入事例を交えて解説する。
ダイナミックプライシングとは?
ダイナミックプライシングとは、サービスや商品の価格を、一律固定にするのではなく、その時々の需要と供給の状況によって決める価格戦略のことを指す。
例えば、ホテル業界や航空業界など、閑散期と繁忙期で需要に大きな差がある業界で用いられてきた価格戦略である。ホテルの宿泊料金は、休日・祝日に比べて、平日の宿泊料金が大幅に下げられていることが多いが、これがダイナミックプライシングの一例である。
また、スーパーマーケットでは、売れ残っている商品や消費期限が迫っている商品に対して値下げが実施されることが多いが、これもダイナミックプライシングの一種。
ダイナミックプライシングで期待できるメリット
以下では、ダイナミックプライシングを導入することで期待できるメリットを解説する。
収益性の向上
ダイナミックプライシングでは、需要が高まるタイミングに合わせて価格をあげることで、収益性の向上が期待できる。適正な値上げ幅を算出するには、データの収集や分析など、一定のコストが必要になるが、価格を一定にしているよりも、合理的に収益を伸ばす効果が期待できる。
在庫・廃棄の減少
オフシーズンなど需要が下がるタイミングでは、値下げを実施することで、在庫数や廃棄の減少が見込める。オフシーズンに値下げをしたとしても、需要が増えるオンシーズンに値上げをすることでトータルの収支を合わせにいくこともできる。
顧客満足の向上
顧客は、オフシーズンなど、穴場を狙うことで通常よりも安価で商品やサービスを享受することがでるため、お得感が増して満足度の向上に繋がる効果も期待できる。一方で、販売価格に差がありすぎる場合などは、不公平感が生まれて、反感を招くリスクもあるため、価格設定は慎重に行う必要があるだろう。
ダイナミックプライシングで生じ得るデメリット
以下では、ダイナミックプライシングを導入することで生じうるデメリットを解説する。
顧客の反感を招くリスクがある
前述の通り、顧客は安価で商品を手に入れられる機会がある一方で、需要が高まる時期では、高い金額を支払う必要性が生じ得る。値上げ幅や値下げ幅が大きい場合には、顧客からの反感を招く可能性がある。そのため、適正な価格を設定するためには、データの収集と分析が必要になってくる。
導入に当たってコストが発生する
ダイナミックプライシングを実施するには、前述の通り、価格設定のためのデータ収集や分析が必要になる。近年では、AIを活用して需要を予測して価格を設定するようなシステムやサービスも登場しているが、導入には一定のコストが発生する。
また、実店舗で価格を変更する場合にも値札を張り替えるための人的リソースが必要になる。電子棚札を導入して自動化する場合にも、導入のためのコストが発生する。ダイナミックプライシングの導入には一定の初期投資が求められるのである。
ダイナミックプライシングの事例
ローソン
ローソンでは、賞味期限間近の商品を値下げして販売を行っている。その中で、2021年に東北地区の一部店舗で、AI活用の値引き販売の実験を開始している。
社会課題の一つである食品ロスの削減に向け、店舗ごとの天候、販売などのデータを元にAI(人工知能)で算出した商品ごとの値引き推奨額を提示する。
消費期限が短く、比較的食品ロスの発生リスクの高い弁当、おにぎり、寿司、調理パンカテゴリーにおいて、店舗ごとにその日の在庫数などの状況に応じた値引き額をAIが推奨。2023年度中の全店導入を目指す方針だ。
京王電鉄バス
京王電鉄バス株式会社は、2020年12月からハルモニア株式会社が提供するダイナミックプライシングシステム「MagicPrice」を利用して、手作業で行っていたダイナミックプライシングをシステム化させた。
システム化の背景には、人力で運賃変動を行っていたが、運賃設定担当者の負担増加や業務の属人化や、新型コロナウイルスの拡大により営業施策が打ちにくい状況下で、変動運賃の価格適正化・自動化が急務になっていたという課題があった。
ハルモニア株式会社のリリースによると、一部路線において月次収益が数%向上
、データ分析などを社内で行える人材育成などの効果があったという。
クィーンズ伊勢丹
2021年8月に、株式会社ジェイアール東日本都市開発が、ゴールデンバーグ株式会社のAI搭載型無人販売機「SMARITE(スマリテ)」を利用した、無人販売サービス「EKIPICK MART(エキピックマート)」をクイーンズ伊勢丹に導入した。
「EKIPICK MART(エキピックマート)」では、クイーンズ伊勢丹の厳選した食品が販売された。
AI搭載型無人販売機「スマリテ(SMARITE)」は、ショーケースから取り出した商品を自動で識別し、ドアを閉めてQRコードで決済できる無人販売機。在庫管理、消費期限管理、売価の変更などが遠隔で可能で、ダイナミックプライシング機能も搭載されており、リアル店舗でありながら、決済や価格の変更も無人で可能になる。
ダイナミックプライシングのまとめ
AIなどデジタル技術の発展で、活用の幅が拡がるダイナミックプライシング。まだまだ課題はあるものの、今後のデジタル技術の発展が、ダイナミックプライシングの精度や有用性を高めて、その導入の幅を広げていくと考えられる。