エシカル消費とは?消費の具体例や企業の取り組み事例交えて解説

2023.01.04

2022.10.27

「エシカル消費」というワードを聞いたことはあるだろうか。エシカル消費とは、人や社会、環境に配慮した消費行動のことだ。国際目標であるSDGs、「持続可能な開発目標」の17のゴールのうち、12番目の「つくる責任 つかう責任」と大きく関係している。

本記事では、エシカル消費とはどのような消費行動なのかの具体例や、求められる背景、エシカル消費に繋がる製品かが分かる認証ラベル、エシカル消費に取り組む企業の事例を紹介していく。人や環境、社会により良い消費行動をしたいけれど、どうしたらいいか分からないと感じる方は一読してほしい。

エシカル消費 とは

「エシカル」は倫理的という意味で、エシカル消費とは「人や社会、環境に配慮した消費行動」のこと。

私たちは生活をする中で、買い物、食事など様々な「消費行動」をしている。この消費行動が環境に良い影響を与えるものなのか、誰かのためになっているのか一歩立ち止まって考え、人や地域、社会、環境にとってより良い選択をしていくことがエシカル消費だ。

例えば、買い物をするときに、プラスチックを使用せず作られた製品を選ぶことや、マイバッグを持参して買い物をすることは環境への配慮に。フェアトレードの製品を購入することは社会への配慮に。地元で作られたものを購入することは地域への配慮に繋がるエシカル消費となる。

エシカル消費が求められる背景

2015年9月に国連で「持続可能な開発目標」のSDGsが採択された。気候変動、貧困、飢餓、エネルギー、ジェンダー、教育、環境など、地球の様々な課題に対し、先進国と途上国が共に解決を図るための国際目標だ。

SDGsには17のゴールが掲げられており、エシカル消費はその中で12番目の「つくる責任 つかう責任」の実現に繋がる。

SDGsのゴールにはさらに具体的な目標の「ターゲット」が定められている。「つくる責任 つかう責任」のターゲットは例えば次の項目である。

12-3「2030年までに、お店や消費者のところで捨てられる食料(一人当たりの量)を半分に減らす。また、生産者からお店への流れのなかで、食料が捨てられたり、失われたりすることを減らす。」

12-5「2030年までに、ごみが出ることを防いだり、減らしたり、リサイクル・リユースをして、ごみの発生する量を大きく減らす。」

公益財団法人日本ユニセフ協会「SDGs CLUB」より引用

本来食べられるはずが捨てられてしまう「食品ロス」を半分に減らすこと、リユース・リサイクルによりゴミを減らすことなど、持続可能な社会を実現していくためには行政や、企業だけでなく消費者の行動や意識が重要となる。

実際に、食品ロスは、日本で令和2年度に家庭では約247万トン、事業者からは約275万トンの合わせて約522万トン発生(※)していると推計されている。

※:参考 環境省 食品ロスポータルサイトhttps://www.env.go.jp/recycle/foodloss/general.html#EN1

エシカル消費の具体例

エシカル消費は具体的にどのような消費者の行動を指すのか、例を挙げてみる。この中に少しでも意識しているものはあるだろうか。

・マイバッグ・エコバッグ持参して買い物をする

・リサイクル素材、省エネ製品など環境に配慮した製品を購入する

・必要な量を購入する

・食べ残しをしない

・エシカル消費に関連する認証ラベルやマークのついた商品を購入する

・3R(リユース・リデュース・リサイクル)を意識する

・省エネ・節電に繋がる行動をする

・フェアトレードの商品を購入する

・福祉施設で作られたものを購入する→障害者支援に繋がる

・地元産のものを購入する→地産地消に繋がる

・被災地のものを購入する→被災地支援に繋がる

エシカル消費に関連する認証ラベル

エシカル消費をしたいと考えても、どの商品が環境や社会に良いものなのか、見ただけではなかなか判別がつかない。そこで判断の一つとして「エシカル消費に関連する認証ラベル」がある。

これはマークを発行する団体ではない第三者機関が、マークの基準を守って運営しているかを監査し、認定をしたものだ。例えば次のような認証ラベル・マークがある。

・エコマーク

生産から廃棄までのライフサイクル全体で環境への負荷が少なく、環境保全に役立つと認められた商品に付いている環境ラベル。「資源採取」「製造」「流通」「使用消費」「リサイクル」「廃棄」の各段階で、「地球温暖化の防止」、「省資源と資源循環」、「有害物質の制限とコントロール」、「生物多様性の保全」の4つの評価項目で検討がされる。リサイクルだけという一部ではなく、ライフサイクル全体で環境への影響を判断している。

・MSC認証 海のエコラベル

水産資源や環境に配慮していると認証された持続可能な漁業で獲れた水産物の証。「資源の持続可能性」、「漁業が生態系に与える影響」、「漁業の管理システム」の3つの原則に基づいて審査がされる。

・FSC®認証

森の動植物や地域の人々の権利を守り、配慮し、適切に生産された製品であることを認証するラベル。森林から製品になるまでの生産、加工、流通に関わる全ての組織が認証を受けないといけない。

・国際フェアトレード認証

原料が生産されてから、輸出入、加工、製造の全ての工程で国際フェアトレードの基準が守られている証。開発途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することで、途上国の労働者や生産者の生活改善、自立を促し、貧困のない持続可能な社会を目指す。

・有機JAS

JAS法で定められた有機生産基準で生産・加工された食品である証。農薬や化学肥料をなるべく使用せず、自然循環機能を活用して生産されたもの。

・GOTS(オーガニック・テキスタイル世界基準)

ウール、コットン、絹などの原料繊維がオーガニックかつ、収穫・加工・製造・流通の全過程で、環境や社会に配慮した方法が取られている証。原料の70%がオーガニック繊維であることや、遺伝子組み換え技術を使用しないこと、毒性のある薬剤を使用しないこと、搾取や差別のない労働条件を満たしていること、などの様々な要求事項がある。

エシカル消費に関する企業の取り組み事例

消費者がエシカル消費できるよう、企業でもエシカル消費に関連する取り組みが行われているのでその一部を紹介する。

イオンリテール株式会社

出所:PR TIMES

イオンではエシカルファッションブランドの「セルフ+サービス」を2000年より展開している。環境に配慮した素材を使った洋服や、リサイクルへの協力、カーボンオフセット、被災地への寄付などを行っており、洋服を楽しみながら気がつけば環境保護に参加しているとなるファッションブランドだ。「セルフ+サービス」では例えば次のような取り組みを行っている。

・カーボンオフセット

製造、運搬で排出するCO2をできるだけ減らすように取り組んでいるが、どうしてもかかってしまう運搬のCO2は、国が認証したCO2削減事業から生まれた排出権であるJ-クレジットを購入している。

・衣料品回収

お客様から回収した衣料品を、定期的に提携回収事業者(ナカノ株式会社)より選別工場に送り、まだ着られるものはリユースされ海外に輸出。リサイクルされるものは素材に戻し、新しい資材や商品に生まれ変わっていく。

・「むすびえ×ORGABITS(オーガビッツ)」プロジェクト

「むすびえ×ORGABITS」プロジェクトは、NPO法人全国こども食堂支援センターのむすびえと、豊島株式会社によるプロジェクトだ。対象の商品1点購入につき10円が、むすびえのこども食堂への支援に役立てられる。

三菱地所株式会社

出所:PR TIMES

・エコファニ

三菱地所では、「エコファニ」というリユース家具の販売サービスを行っている。まだ綺麗で使えるオフィス家具は廃棄されてしまうことが多いが、廃棄ではなく循環できるよう、リユースオフィス家具を安く販売。ショールームを有楽町駅前に構えている他、楽天市場でオンラインの販売も行っている。

セブンーイレブンジャパン

出所:www.sej.co.jp

・エシカルプロジェクト

セブンーイレブンでは、食品ロスを削減するための「エシカルプロジェクト」を全国で展開している。販売期限の近いおにぎり、パンなどの対象商品を電子マネーのnanacoで購入したお客様に、税抜販売価格の5%分のボーナスポイントを付与。該当の商品には、「エシカルプロジェクト」のシールが貼られている。

・てまえどり

2021年6月から消費者庁、農林水産省、環境省、日本フランチャイズチェーン協会が連携して、購入してすぐに食べる場合は販売期限の近い商品を選ぶ「てまえどり」を推奨している。セブンーイレブンでもてまえどりポップを設置し、お客様に賞味期限が近いもの購入していただくよう、てまえどりの呼びかけを行っている。

コープ 日本生活協同組合連合会

・エシカルなお買い物

購入する方が、環境に配慮した商品なのか分かりやすいように、シリーズ商品やロゴマークを付けて販売をしている。

例えば、持続可能で適切に管理された水産物を選んでもらうための「水産認証ラベル・ロゴ」。森林資源を守るため、適切に管理された木材や再生紙を使用した製品には「FSC®認証」のマーク、など様々なマークで消費者が分かりやすいようにしている。

そごう・西武

そごう・西部では2050年までに売上100万円あたりの食品廃棄物の発生量を、2013年度比で75%減、食品廃棄物のリサイクル率を100%にすることを目標にしている。

・生ごみの有機肥料化

西武池袋本店ではレストラン、社員食堂で発生した生ごみを有機肥料化している。肥料は契約農家で利用してもらい、生産された野菜を西武池袋で販売。食品リサイクルループを行っている。

・西武所沢S.C.・西武東戸塚S.C.

「フードバンクキャンペーン」を定期的に開催している。家庭や職場で余っている食品や食材を集め、必要な方に届ける取り組みだ。例えばお米やレトルト食品、調味料やお菓子、お茶などの常温保存ができるもので、賞味期限が一か月以上のものを対象としている。

榮太樓總本鋪

・No!食品ロス

榮太樓總本鋪では「No!食品ロス」という会員限定のサイトを開設している。品質や味に問題がなく、美味しく食べられるのに様々な理由で正規では販売できない食品を集め、会員限定で販売を行う特別サイトだ。例えば、季節限定商品や、賞味期限が近い商品などは店頭では並ばないが、そういった商品を「食品ロス提供価格」で販売をしている。

一人一人の行動が大切な「エシカル消費」

環境に良い製品かどうかが分かるための認証ラベル・マークや、食品ロスを避けるために賞味期限が近い商品を割引しながら販売する企業、衣料品の回収を行う企業など、消費者がエシカル消費できるよう、企業側で様々な取り組みがされていた。

私たち消費者は、そういった取り組みがあることや、エシカル消費に関連する認証ラベルがあることをまずは知り、一人一人が「これは環境に良いものなのか?」と一歩立ち止まって考えることがSDGs12番目のゴール「つくる責任 つかう責任」の達成に繋がっていく。毎日の消費行動で少しでも意識を変えていけたらいいのではないだろうか。

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