デジタルサイネージとは?仕組みや活用メリット、最新の活用事例などを交えて解説

2023.01.05

2022.12.05

デジタルサイネージとは、ディスプレイなどの電子機器を使用して情報発信を行うシステムである。従来のポスターや看板に変わる新しい広告媒体として活用されている。

デジタルサイネージの活用方法には、情報の提供や広告の配信、空間の演出などがある。この記事では、企業がデジタルサイネージを利用するメリットや活用事例を紹介する。自社のサービスとニーズにマッチするデジタルサイネージを導入してほしい。

デジタルサイネージとは?

デジタルサイネージという名前を耳にしたことがあっても、どのような機能を持つ機器なのかについては詳しく知らない方もいるだろう。「サイネージ」とは、「標識」「看板」などの意味を持つ言葉だ。

つまり、デジタルサイネージとは、電子看板という意味である。駅の構内や該当、店舗内で、デジタルのディスプレイなどの電子機器に情報が表示されているのを見かけたことがある方は多いはずだ。その名の通りデジタルサイネージは、電子機器を活用した看板・掲示板なのだ。

大都市では街中の大型ビジョンが広まってきているが、これもデジタルサイネージの一種だ。また、病院や役所、公共施設などの案内板などにもデジタルサイネージの導入が進んでいる。

デジタルサイネージの仕組みとタイプ

デジタルサイネージについての理解を深めるなら、仕組みとタイプについても確認しておこう。デジタルサイネージは情報提供ツールとしての有用性の認知が高まり、幅広い業種・施設での導入が著しい。自社での導入を検討している場合には、自社にマッチするデジタルサイネージの方式を事前に確認しておくべきであろう。

デジタルサイネージで情報を表示させる場合に必要なのは、一般的に、ディスプレイとディスプレイスタンド、インターネット環境、デジタルコンテンツ、コンテンツを受信する端末である。

なお、ディスプレイが壁掛けタイプなどの場合には、ディスプレイスタンドは不要となる。また、デジタルコンテンツの情報を表示させる仕組みには、ネットワーク型のほかにも、スタンドアロン型がある。

ここでは、デジタルサイネージの構築方法の、ネットワーク型とスタンドアロン型についてそれぞれ詳しく解説していきたい。

スタンドアロン型

スタンドアロン型のデジタルサイネージは、「独立」の名前通り、ネットワークに接続していないタイプである。スタンドアロン型ではネットワーク経由ではなく、コンテンツ情報を記憶させた電子機器であるSDカードやUSBメモリーを使用するのが特徴だ。ディスプレイに内蔵されたメディアプレイやーなどの装置を利用してデータを読み取り、デジタルコンテンツをディスプレイに表示させる。

スタンドアロン型の場合、ディスプレイに表示させるデジタルコンテンツの内容を変更する場合には、差し込むSDカードやUSBメモリー内の情報を更新する必要がある。

ネットワーク型

ネットワーク型のデジタルサイネージでは、ネットワークを経由してデジタルコンテンツを受け取って表示させる。そのため、デジタルサイネージ機器がインターネットなどのネットワークに接続していることが必須だ。Wi-Fiや有線でネットワークに接続し、受信したデジタルコンテンツをディスプレイに表示させる。

また、ネットワーク型のデジタルサイネージには、オンプレミス型とクラウド型がある。

オンプレミス型とは、デジタルサイネージ専用のサーバを準備する方式だ。一方クラウド型とは、クラウド環境に格納したデジタルコンテンツをネットワーク経由で取得して配信する方式である。

デジタルサイネージを利用するメリット

デジタルサイネージの導入を検討するなら、自社サービスにおいて、デジタルサイネージをどのように利用するとメリットが大きいかを確認しておきたいものだ。デジタルサイネージは単に看板を電子化するだけではなく、紙媒体ではなし得なかった訴求効果を実現できる可能性を秘めているためだ。

また、デジタルサイネージを導入するメリットを把握することは、自社のサービスや商品の魅力をより顧客にアピールする場を創造することにも直結する。

ここでは、デジタルサイネージを導入するメリットをいくつかの観点からみていきたい。差し替え工数の削減を実現、視認性が高い、訴求力が高い、情報配信が容易という4つのポイントについて、詳しく解説していこう。

差し替え工数の削減を実現

デジタルサイネージ導入のひとつ目のメリットは、差し替え工数の削減を実現できることだ。紙媒体の広告の場合、新しい情報に差し替えるタイミングで古い紙をすべて撤去して、新たに準備した広告を貼り付けるという実作業が発生する。新たな紙媒体の広告の作成には、元データの作成の後に印刷をする工程も必要なので、リアルタイムでの差し替えは現実的ではないといえる。

また、紙媒体の撤去・廃棄・印刷・配送などの各工程でそれぞれ費用が発生するだろう。しかし、デジタルサイネージを利用すると、デジタルコンテンツの差し替えまたは新規作成をするだけで、ネットワークを通じて新たな情報を瞬時にディスプレイに表示させることが可能である。デジタルサイネージの導入により工程が大幅に削減できるため、手間と費用の削減に直結することがイメージできるだろう。

視認性が高い

デジタルサイネージ導入のふたつ目のメリットは、視認性が高いことだ。視認性とは、視覚的にアピールする力のことである。従来の紙媒体では、写真とイラスト、文字の情報のみしか使用できなかった。しかし、デジタルサイネージはデジタルコンテンツの配信が可能である。つまり、静止画と文字だけではなく、動画やアニメーションの配信が実現するのだ。

また、デジタルサイネージの設置場所にもよるが、音声付きの情報配信もできる。文字と静止画だけのコンテンツに比べて、デジタルコンテンツのほうがより視認性が高いことは、一目瞭然だろう。ふと通りがかった消費者にも、よりインパクトを与えて興味を持ってもらえる可能性をアップさせるのが、デジタルサイネージの大きなメリットといえる。

訴求力が高い

デジタルサイネージを導入する3つ目のメリットは、訴求力が高いことだ。視認性の高さとも関連する点であるが、デジタルサイネージはデジタルコンテンツを配信できる仕組みのため、紙の広告に比べてより多くの情報を一度に提示できる点が優れている。また、タイムリーに情報提供ができるのも、デジタルサイネージの訴求力の高さにつながる。

紙の広告は、一度掲示すると一定期間常に同じ情報のみを提示するにとどまっていた。しかし、デジタルサイネージを利用すれば、時間帯ごとに異なるデジタルコンテンツの配信も簡単に行える

つまり、訴求対象が時間帯によって異なる場所で情報を提供する場合、年代や属性によってよりヒットすると思われる情報をピンポイントに提供できるのだ。これは、サービスの利用や店舗・施設への集客に、非常に有益な訴求を可能にすると考えてよいだろう。

情報配信が容易

デジタルサイネージを導入する4つ目のメリットは、情報配信が容易なことである。リアルタイムで発信する情報を更新できるデジタルサイネージでは、店頭でのタイムセールや、期間限定でのお得な情報を簡単に提供できる

紙の広告の場合には都度紙そのものを差し替える必要があるが、デジタルサイネージでは配信したいデータを選択するだけなので、事前にデータを作成しておけばは情報配信自体はリアルタイムで変更できる。

また、夜間など暗い場所での情報配信が容易なことも、デジタルサイネージ導入の大きなメリットだ。デジタルサイネージはディスプレイに情報を表示するため、明度も必要に応じて調整できる。

夜間や暗い店内など、紙の情報では提示しにくかった場所でも導入のメリットが実感できるであろう。画質がよい大型のディスプレイを利用すれば、遠くからでも情報を確認することが可能だ。

デジタルサイネージの活用方法

続いては、デジタルサイネージの活用方法をみていこう。デジタルサイネージは、設置する場所や施設、どんなコンテンツを配信するかにより、さまざまな活用法が想定できる点が魅力的だ。

代表的な使い方には、情報を提供すること、広告を配信すること、空間を演出することなどがある。工夫次第で、ユーザーに刺さる商品・サービスのアピールを幅広く実現できる。機能やコンテンツの提供方法は、年々多様化してきているのが特徴である。

すでに利用されているデジタルサイネージの主な使い方についてそれぞれ紹介するので、自社におけるデジタルサイネージの利用法や活用法を想定しつつお読みいただきたい。

情報を提供する

デジタルサイネージの活用法としては、情報を提供することがある。店舗を訪れたユーザーへの情報提供はもちろん、店舗周辺エリアにデジタルサイネージを設置し、有益な情報を提供することにより来店誘導をすることも可能だ。

また、タッチパネル式のデジタルサイネージを設置することで、ユーザーが自ら不明点を解決することを促す仕組みの構築もできる。さらに訪日外国人への対策として、複数言語でのインフォメーションの提供も、デジタルサイネージなら容易となる。

タッチパネルの利用情報を蓄積・解析することで、ユーザーの動向を分析してマーケティングに活かすことも可能なのが、デジタルサイネージ導入の大きなメリットのひとつだといえるだろう。

広告を配信する

広告を配信することも、デジタルサイネージの広く採用されている活用方法だ。提供しているサービスや商品についての理解を促し、またイベントやセールなどの情報を提供する広告を配信する。

イベント情報は、実施までの間に広告をタイムリーに配信していくことで、認知度をアップさせることが可能になる。また、各イベントに興味を持つ属性のユーザーにアプローチしやすい場所やタイミングでの広告配信をすることで、より認知度を上げることにつながる。

セールやフェアの広告配信は、ユーザーの目につきやすい場所にデジタルサイネージを設置することで、効果が倍増するだろう。また、ショッピングセンターなどでもセール情報やポイントアップ情報、キャンペーンの告知をすることで、商業施設全体の活性化を狙える。

空間を演出する

空間を演出する方法でデジタルサイネージを利用している例もある。テーマパークなどでキャラクターが登場するアニメーションを流したり、施設や店舗の雰囲気にあう映像や音楽を配信したりする活用方法だ。

デジタルサイネージ単体での演出だけではなく、プロジェクションマッピングなどと併用することで、よりその場の雰囲気に入り込める空間を創造することも可能である。その場にいるユーザーへのアピールはもちろん、演出を録画した動画などがSNSで拡散されることでの集客効果も狙える。デジタルサイネージは、話題性のある空間作りの演出にも大きく役立つデジタルツールなのだ。

デジタルサイネージの活用例

ここからは、実際にデジタルサイネージを広告やマーケティングに活用している各社の実例を紹介していく。業種によってさまざまな活用方法があるのが、デジタルサイネージの魅力だ。各事例を参考に、自社で今後展開を予定している商品・サービスやマーケティングに活かす方法を検討する際に、ぜひ役立てていただきたい。

イオンモール

出所:PR TIMES

イオンモールでは、ピーディーシー株式会社、株式会社バニッシュ・スタンダードと協業して、アプリケーションサービス「スタッフ・スタート」を館内のデジタルサイネージで配信する取り組みを開始した。SNSで活躍するインフルエンサーや全国のイオンモールで働く専門店スタッフが、おすすめ商品やコーディネートの提案を配信する。

「スタッフ・スタート」には、よりショッピングが楽しくなる独自の機能が搭載されており、ECサイトやSNSへの投稿を通じて、ユーザー参加型のコンテンツが多いのも特徴である。コンテンツ管理プラットフォームを通じてイオンモール館内のデジタルサイネージで配信されるため、ショッピングしながら参考にすることが可能だ。

購買につながる施策として注目されており、全国3店舗での導入を皮切りに、順次拡大していく。

バカン

出所:PR TIMES

株式会社バカンは、東京ミッドタウン八重洲において、飲食店の空き情報をデジタルサイネージでリアルタイムに配信するサービス「VACAN」の提供を開始した。大型商業施設の飲食店では、ピークタイムは混雑による待ち時間の発生が避けられないものである。「VACAN」は予期しない混雑による待ち時間を回避する有用なサービスであると注目されている。

導入時には、東京ミッドタウン八重洲地下1階の飲食店3店舗の空き状況を、施設内に設置されたデジタルサイネージに表示。混雑状況は、各店舗内に設置されたAIカメラを用いて情報収集と判定がおこなわれ、自動更新される仕組みだ。

店舗まで直接足を運ばなくても混雑情報を確認できるのがメリットで、密が避けられるために新型コロナ対策にも一役買うことが期待されている。

ファミリーマート

出所:PR TIMES

ファミリーマートでは、店舗内に設置された大型デジタルサイネージ「FamilyMartVision」で配信する情報を、店舗に近い屋外ビジョンでも同時配信する取り組みを行った。FamilyMartVisionを運営する企業など3社が、実証実験を経て立ち上げた企画で、東京・神奈川・千葉・埼玉の首都圏に設置された1012面のデジタルサイネージで実施された。

取り組みは、送客効果や購買行動の促進が目的だ。また、直前に視聴した広告が購買行動にどのように影響を与えるかのデータを収集し分析することも目的としており、マーケティング面の施策としての一面も持つ。

西伊豆町

出所:PR TIMES

デジタルサイネージ関連事業を手掛けるアビックス株式会社では、西伊豆町の観光プロモーション推進のためにデジタルサイネージを活用している。西伊豆町では観光人口のマイナス推移が課題となっている。そのため、西伊豆の魅力を発信するためのツールとしてデジタルサイネージとWeb、SNSを複合的に活用する施作を実施した。

町内の観光施設40か所にデジタルサイネージを導入して観光コンテンツを配信し、ホテルや飲食施設などでも利用できるようにした。また、公式観光WebサイトやSNSとも連動させ、効果の最大化を図る。街の魅力を伝える動画コンテンツの作成にも力を入れ、独自性の高い魅力の発信に注力している。

デジタルサイネージを導入して自社のサービスに活用しよう

紙による広告よりも、対象に深くアピールできるのが魅力のデジタルサイネージは、幅広い場所での活用が可能なデジタルツールである。ユーザーに向けた販促行動やキャンペーンの告知だけではなく、工場や施設内など、社内での情報共有・社員教育にも活用できるだろう。タッチパネルのログを取得することで、利用者のニーズの収集も容易である。

安価なデジタル機器の流通により、気軽にデジタルサイネージを導入することが可能となった今、デジタルサイネージを新規導入して、自社の商品・サービス拡大のために最大限に活用してほしい。

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