エンゲージメントとは?ビジネスにおける意味や向上のメリットやポイントなどを解説

2023.01.06

2022.12.12

ビジネスにおいてのエンゲージメントとは、企業と顧客とのつながりや企業と従業員との絆を意味する。顧客エンゲージメントが高い企業にはリピーターが増え、利益安定や企業・商品の成長が期待できる。

従業員エンゲージメントを向上させると社員のモチベーションが上がったり離職率が低下したりして、組織の利益や業績の増加につながる。エンゲージメントを向上させるには顧客体験を向上させたり、良い職場環境を構築したりする必要がある。エンゲージメントを向上させれば企業の競争力が高まり、更なる成長が見込めるだろう。

ビジネスにおけるエンゲージメントの意味とは

エンゲージメント(engagement)は、英語で「約束」「契約」「婚約」などを意味する言葉である。一般的によく使われる言葉だが、ビジネスシーンにおいても、二者の深い関わりやつながりなどについて指し示す言葉として使われる。

特に企業と顧客、企業と従業員との間の関係性について、エンゲージメントという言葉を使って言及されることが多い。ここでは、ビジネスシーンにおけるエンゲージメントの意味を詳しく解説していく。

企業と顧客とのつながり

企業と顧客とのつながりのことを「顧客エンゲージメントカスタマーエンゲージメント)」などという。主に顧客が企業に対して抱く良いイメージや信頼など、ポジティブな関係性を指し示す。特にSNSで企業やサービスに関する投稿について、顧客がいいねやシェアなど、能動的にアクションを起こした度合いを、エンゲージメント率として指標化する。

近年はインターネットやスマートフォンの普及によって、商品やサービスの購入を検討している顧客が自ら情報を収集するようになり、顧客の知識量も増大している。コモディティ化が進み競合他社との差別化が難しくなっているなか、顧客エンゲージメントは企業やブランドを選択してもらう動機付けにもなる。

企業と従業員との絆

企業と従業員の関係に着目した「従業員エンゲージメントエンプロイー・エンゲージメント)」という言葉がある。企業と従業員とが双方向に強い絆で結びついていて、従業員が「この企業で働きたい」「この企業に貢献したい」という気持ちを持っていることが特徴である。同様の意味を持つ言葉には、「愛社精神」などがある。

似た言葉に「従業員満足度」という言葉があるが、従業員満足度は給与や福利厚生など、物質的な面に左右されることもあり、精神的な結びつきと関係がない場合も多い。従業員満足度やエンゲージメントを高める概念として、従業員体験(従業員エクスペリエンス/エンプロイーエクスペリエンス/EX)という考え方があり、近年注目が集まっている。

人事用語としてのエンゲージメント

人事の領域において、エンゲージメントとは従業員エンゲージメントからさらに踏み込んだ、企業と従業員との信頼関係や互いに貢献しようという考え方のことをいう。従業員のエンゲージメントを測るために、人事部門がエンゲージメントサーベイをおこなって、ワークエンゲージ指標やエンゲージメントドライバー指標を調査することもある。

しかし、従業員エンゲージメントを適切に評価するためのエンゲージメントサーベイをおこなうには、調査の方法や形式を工夫しなければならない。人事部門の担当者が専門的なスキルを持っていない場合には、専門のコンサルタントに依頼するのも1つの選択肢である。

顧客エンゲージメントを向上させる重要性

スマートフォンやSNSが普及し、顧客が企業からの情報を一方的に受け取るだけではなく、自らも気に入ったサービスや製品の情報を検索したり、サービスや製品に関するレビューなどを発信したりという行動がとりやすくなった。

現代においては、顧客エンゲージメントは顧客による企業や商品・サービスに対する評価という一面もある。顧客エンゲージメントの向上は企業の業績に直結するため、重要な指標として注目されている

ここからは、顧客エンゲージメントを向上させる重要性についてピックアップする。

リピート率の向上による利益の安定

顧客エンゲージメントが高まり顧客が企業のファンになると、顧客は競合他社の類似品があったとしても目移りせず、その企業のサービスや製品を選んでくれる可能性が高まる。

また、何度も利用・購入するリピーターになる可能性も向上する。リピーターの絶対数、リピート率が向上すると安定的な利益を得られるため重用視されている。顧客が自分の会社の商品やサービスを選ぶことによって市場でのシェアが増加し、競合他社との差別化も図れる。

良質なフィードバックによって企業や商品が成長する

エンゲージメントが高い顧客は、商品やサービスにたいして「より良いものに成長させたい」「自分の意見を商品開発に反映させてほしい」という気持ちを持つため、良い部分や改善が必要な部分について率直な意見を述べてくれる。

これらの良質なフィードバックは、企業の製品やサービスをより良いものに成長させるために非常に重要である。顧客からのフィードバックを受け入れて適切に反映させることは、顧客に「自分の意見が聞き届けられた」という印象を与えられるため、顧客体験や満足度の向上にもつながる。

新規顧客獲得につながる

既存の顧客のエンゲージメントが高まると、顧客が自発的に好意的な口コミやおすすめを発信してくれるようになる。それらに触れた潜在的な顧客が興味を持ち、商品を購入したりサービスを利用したりするため、顧客エンゲージメントの向上は新規顧客獲得にもつながる。さらに新規顧客のエンゲージメントを高めていけば、リピーターとなって継続的な利益を生み出せるのだ。

従業員エンゲージメントを向上させる重要性

年功序列の給与体系や終身雇用制度が当たり前だった時代が終わり、人材の流動性が高まった。さらに労働人口の減少も相まって、優秀な人材を確保することは企業にとって重要な課題となっている。

そんななかで、従業員エンゲージメントを向上させることは従業員に対して企業ができる効果的な働きかけの1つである。ここでは、なぜ従業員エンゲージメントの向上が重要なのかや、従業員エンゲージメントを向上させることで得られるメリットについてチェックしていく。

離職率の低下

従業員エンゲージメントが高いと、従業員は「この会社で働き続けたい」「この会社に貢献したい」という気持ちを強く持つようになる。近年は終身雇用制度を採用する会社も減り、スキルアップ転職などという言葉もよく聞かれるようになった。優秀な人材が他社へ転職してしまうことは、企業にとっては大きな損失である。

企業と従業員の絆が強く従業員エンゲージメントが高いと、離職率が低下し、従業員が給与や待遇などの単純比較のみによって他社に流出してしまうリスクも低減する。また、社員が知人や身内にたいして自らの企業をポジティブに紹介するため、就職や転職を考えている優秀な人材を確保しやすくなることもメリットである。

社員のモチベーション向上

従業員エンゲージメントが高い社員は、企業のために貢献したいという気持ちを持つため、高いモチベーションを保って働く場合が多い。さらに会社から期待されているものについて従業員がしっかり理解しており、自らの成長も実感できるので、モチベーションアップの好循環が生まれる。

企業への貢献意欲や仕事に対する積極性がある社員は、意欲的にスキルアップを目指したり課題を解消したりしようとする。これにより、製品やサービスのブラッシュアップはもちろんのこと、職場環境が改善されたり組織が成長したりする。モチベーションが高い社員が能動的に自らのスキルを向上させることで、企業も成長できるのだ。

組織の利益や業績の増加

優秀な人材の流出を食い止めたり、社員のモチベーションが向上して積極的に業務をおこなったりする結果、組織の利益や業績が増加する。また、従業員エンゲージメントが高い従業員は自らの仕事にやりがいを見出し、目標の達成のために工夫をしたり製品やサービスの更なる改善に力を入れたりする。それにより、製品やサービスの質が向上したり顧客満足度が上昇したりして企業の成長が見込める。

これらの成長は、企業が常に目標として掲げているものだが、経営陣から発信されるよりも従業員側が自発的に行動する方が効果が高くなりやすい。

顧客エンゲージメントを向上させる方法

顧客エンゲージメントを高めると、安定的な利益を得られたり新規顧客獲得につながったりと、さまざまなメリットがあることがわかった。

近年は誰もがインターネットを使って自由に情報を発信できるため、口コミやSNSによるプロモーション効果も大きい。そのため、顧客エンゲージメントの向上は企業戦略の面でも非常に重要である。ここからは、実際に顧客エンゲージメントを向上させるにはどうしたらよいのかについてチェックする。

現状の顧客エンゲージメントを評価する

顧客エンゲージメントを向上させる前段階として、現状の顧客エンゲージメントについて正しい理解が必要不可欠だ。顧客の信頼度や愛着度を客観的な数値を用いて評価すると、顧客エンゲージメントを高めるための課題も見えてくるだろう。

顧客エンゲージメントを評価する指標としては、顧客満足度やサービスの解約率、NPSなどがある。NPSは、商品やサービスについてのおすすめ度を0から10の11段階で顧客に評価してもらい、0〜6と答えた批判者、7・8と答えた中立者、9・10と答えた推奨者に分類して推奨者から批判者を差し引いた数値を求める指標である。

顧客体験を向上させる

顧客体験を向上させることは、顧客満足度を上昇させることにつながり、結果として顧客が企業に抱くイメージの向上や顧客エンゲージメントの向上につながる。

顧客体験は顧客が商品やサービスを購入した瞬間にだけ発生するものではなく、顧客が目にするテレビや雑誌などの広告、SNSの投稿、商品を購入する店舗やショッピングサイトなど顧客と企業が接する全てのタイミングで発生する。

質の良い広告を掲載することや店舗スタッフの接客技術向上、アフターフォローの充実など、さまざまな施策で顧客体験の向上を目指すことが可能だ。顧客の行動や思考を時系列に沿って分析するカスタマージャーニーマップを作成して、顧客目線で企業との接点を洗い出すことも効果的である。

従業員エンゲージメントを向上させるための施策

企業の成長や継続的な発展、製品やサービスの向上などにとって従業員エンゲージメントの向上は非常に重要な役割を果たす。

従業員エンゲージメントの向上には、従業員が企業や仕事に満足しているか、理念やビジョンに共感しているか、自らの成長を実感できているかという要素が重要になってくる。働き方が変化している現代では、従業員が企業に一方的に奉仕するという従来の関係性ではなく、双方向的にメリットがある関係性を構築していかなければならない。

ここからは、従業員エンゲージメントを向上させるための具体的な施策について考えていく。

企業の理念や理想とするビジョンの浸透

従業員は、企業の経営方針や理想とするビジョンに共感することで企業を信頼し、「この会社に貢献したい」という気持ちを抱く。そのため、企業が掲げている理念や理想としているビジョンを社員に浸透させ、理解させることが重要になる。

従業員エンゲージメントが高い社員は、企業の発展に貢献するだけではなく、自分自身も成長していきたいと考える。そのため利益だけを追及して従業員の労働力を搾取するのではなく、共に成長していけるようなビジョンを明確に描いて提示することが必要だ。

職場環境の改善

従業員エンゲージメントは、給与や福利厚生などの待遇面だけではなく、仕事のやりがいや職場の人間関係など、さまざまな要素によって決定される。

居心地の良い職場であると従業員に感じさせて帰属意識を高めるために、従業員同士のコミュニケーションを活発化させたり、従業員同士が互いを認め合い、称え合えるような施策をおこなうことも効果的である。

もちろん、ワーク・ライフ・バランスの実現や従業員の適材適所の配置など、従業員がストレスなく働けるような労働環境の整備も必要となる。

企業が自社の従業員に対してどのようなスキルや技術を求めているのかや、人事に関する評価指標などをオープンにすると、従業員と経営陣の間でビジョンの共有がなされる。その結果、意思の疎通がとりにくいイメージのある経営陣に対して、信頼関係を構築しやすくなる。

ビジネスにおけるエンゲージメントを向上させて企業の競争力を高めよう

ビジネスシーンで使われるエンゲージメントは、顧客エンゲージメントや従業員エンゲージメントがあるが、どちらも企業との信頼関係に関する言葉である。これらのエンゲージメントを向上させることは、顧客や従業員の利益になるだけではなく、企業の利益増大や成長につながる。

商品やサービスそのものだけでなく、顧客や従業員との関係性についてもチェックして改善していくことは、競合他社との差別化をおこなうポイントになり、市場での競争力を高めることにもなる。企業・従業員・顧客の三者がそれぞれ利益を享受できるようにするため、エンゲージメントの向上は積極的に取り組むべきである。”

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