マテハンの意味とは?業務フローと機器の例やメリット、デメリットについても紹介

2023.01.06

2022.12.16

「マテハン」とは「マテリアルハンドリング」の略で、原材料から半製品、製品などのモノの移動に関連した取り扱いのことをいう。

近年の製造・物流業界では生産性向上とヒューマンエラーの削減を図るため、マテハンの機械化が進んでいる。この記事ではマテハンの意味についてと業務フロー、マテハン機器について詳しく解説する。

「マテハン」とは「マテルアルハンドリング」の略

「マテハン」とは「マテリアルハンドリング」の略で、原材料と部品、完成品すべての移動に関わる取り扱いのことをいう。製造や物流現場でのモノの運搬がマテハンであり、包装や保管、出荷などの工程が該当する。マテハンは「運搬管理」と訳されることもある。

マテリアルハンドリングの原則4つ

モノをできるだけ効率的に、コストを抑えて運ぶマテハンの原則は以下の4つである。この4つの原則を踏まえて、マテハンのオペレーションを構築するのが望ましい。

自重軽減の原則:運搬のための容器などの重量はできるだけ少なくする
重力化の原則:電力や人力よりも重力の活用を優先する
活性荷物の原則:モノを容易に動かせるように保つ
継ぎ目の原則:モノの移動手段が切り替わるタイミングでムダが出ないようにする

マテハンに使われる機械が「マテハン機器」

近年は効率的なマテハンを実現するには機械が不可欠なため、「マテハン」が「マテハン機器」を指すことも多い。商品の短命化や多種化によってロジスティクスは短サイクル化を求められており、人間だけでは対応しきれない。

また、IT技術を活用したマテハン機器を活用すれば、人件費の削減も可能だ。特に物流業界においてはこれからもマテハン機器は進化し続け、マテハンの効率化がさらに進んでいくと考えられる。

なお、マテハンの自動化関連の市場規模は2016年時点の推計で283億ドルであり、2023年には483億ドルにまで成長するとの予測もある。

参考:自動化マテリアルハンドリング(AMH)の世界市場:製品タイプ別、需要家別、2023年予測

製造業・物流業でのマテハンの業務フロー

マテハンの業務フローは大きく5つに分類される。多量の原材料や製品などを扱うには人力だけでは非効率的で、ミスが増えるのが難点である。

(1)保管のための積み込み

「積み込み」は、保管のための作業である。生産現場に入荷した原材料や部品は、使われるまでラックやパレットにまとめて置かれ、保管される。加えて完成した商品も、出荷するまでは同様に保管する。積み込み作業では重いモノを多く扱うため、人力では扱えなかったり時間がかかりすぎたりする。そのため、マテハン機器が業務の大半を担っている。

(2)工場や倉庫内での搬送

「搬送」とは、工場や倉庫内でモノを運ぶ業務をいう。一般的には台車などに載せたモノを人力で搬送するが、それには作業者の時間と人件費がかかる。近年はマテハン機器の導入により、作業時間短縮と作業者数削減によりコストを減らす取り組みが増えている。

(3)保管と在庫管理

「保管」とは倉庫内などにモノを置いておき、保持する業務である。ただ置いておくだけではなく、在庫の保管場所と数の正確な管理も求められる。人間だけの管理ではミスが起きやすいのに加え、大きな労力が伴うのが難点だ。

(4)仕分け

原材料や部品を製造現場ごとに分別する、完成した製品を出荷先ごとに分ける作業を「仕分け」という。少量なら人力でも問題なくこなせるが、多量になると長い時間と多くの作業者が必要になるため効率が落ちる。加えて、ヒューマンエラーも起きやすくなる。

(5)ピッキング・取り出し

出荷する製品を保管場所から見つけ、集めてくる業務が「取り出し(ピッキング)」である。人力で多くの在庫の中から目的の製品をいち早く見つけるためには、あらかじめ倉庫内の製品配置を把握している必要があり、経験を積んだ熟練作業者でないと難しい。結果、作業の効率性が作業者の能力に左右され、非効率的になってしまう。

マテハン機器の種類

近年では多くの種類のマテハン機器があり、業務フローのあらゆるシーンで活用されている。最初は人の作業を補助する機械・システムが主であったが、IT技術の進化により全自動ロボットや倉庫そのものが自動化されたタイプが登場した。

運搬用の搬送ロボット

搬送業務では多くの場合、コンベアを敷設して搬送ラインが構築される。だがコンベア整備のためには広いスペースが要り、後から場内のレイアウトを変更しようにも融通が効きにくいのがデメリットだ。

近年注目されている「AGV(無人搬送車)」は、工場内を自由に動き回って搬送業務を行うマテハン機器である。AI(人工知能)が搭載されているものは自律運転をし、人を必要とせずにモノを目的の場所まで運んでくれる。

搬送前の積み込み時において、以前は人が操縦するフォークリフトが主流であったが、近年は自動運転式のものも登場。加えて自動で積み込み作業をこなせるロボット「パレタイザ」が、多くの企業で活用され始めている。

仕分け用のソーター

ソーター」は、製品を品種別や搬送先別に仕分ける作業を自動で行えるマテハン機器である。カメラ識別または製品に付けられたバーコード読み取りにより、人力とは比べものにならない速さでかつ正確に多量の仕分け作業をこなせる。

ソーターの多くは分岐点に到達したモノを棒(シュー)で押し出す「スライドシュー方式」である。高い仕分け能力を有し、製品への衝撃が少ないのがメリットだ。

また、アパレルなど袋に入った製品向けには袋が機械に噛みこまない「パン式」が選ばれるなど、複数の方式がある。導入時は扱う製品の形状や重量、包装形態、求めるべき仕分け能力に合った方式を採用するとよいだろう。

保管のための自動倉庫

保管するモノの情報と倉庫内での位置をシステム管理し、入出庫から在庫管理に至るまでを自動でこなせる倉庫が「自動倉庫」である。モノを納めたパレットなどにICタグやバーコードを付けて管理、前後走行と昇降が可能な「スタッカークレーン」により、自動で搬入・搬出作業が行われる。

不定形の製品をバゲッドに入れて収納、保管する「バゲット自動倉庫」や、パレット単位で保管する「パレット自動倉庫」、保管するモノの形状を問わない「フリーサイズ自動倉庫」など方式はさまざまだ。

自動倉庫は倉庫内作業を丸ごと自動化できるため、大幅な人員削減と効率化が実現可能。加えて人間がモノを扱う場合と違って保管場所の高さ制限をなくせるため、スペースを最大限に使えるメリットがある。一方で導入コストがかなり大きく、大規模な設備投資が必要な点がデメリットだ。

取り出しのためのピッキングシステム

「ピッキングシステム」とは、取り出し(ピッキング)するモノの場所と数を、作業者が持つデジタル表示器に表示させるマテハン機器をいう。

またはラックに付けた表示器を光らせ、作業者に目的のモノが入っていることを知らせるタイプもある。作業者はピッキング時に目的のモノをすぐに探し出せ、経験や熟練度は必要ない。

さらに近年は人に代わってピッキングをする「ピッキングロボット」が登場し、大規模な物流倉庫などで運用されている。モノが入っているパレットやラックごと移動させる、モノを直接探し出して持ってくるタイプなどさまざまだ。ピッキングのための人員を削減でき、作業効率が飛躍的に向上する。

マテハン機器導入のメリットとデメリット

マテハン機器の導入により、省人化によるコスト削減と効率化が一度に実現するのが最大のメリットだ。通販を主とするある事業者ではピッキングにマテハン機器を導入し、1日あたりの出荷処理数がそれまでの1.8倍ほどに伸びた事例もある。

反面、マテハン機器がトラブルを起こして止まってしまうと、業務が進まず損害がでる恐れがある。また、季節や時期により出荷数が大きく変わる事業者では、システムを少ない出荷数に合わせると繁忙期に業務が追いつかなくなってしまう。そして多い出荷数に合わせると、閑散期の稼働率が落ちてコストが割高になるのがデメリットだ。

マテハン機器の導入で物流業務の効率化を

マテハンとは、製造・物流業界でのモノの移動に関する取り扱いを意味している。コスト削減と効率化のために人力よりもマテハン機器に頼るシーンが増えており、マテハン機器による業務の自動化が進んでいる。物流に課題を感じている企業は、マテハン機器が解決の一助になるかもしれない。

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