センターフィーとは?意味や計算方法、物流における問題点などを解説
2023.01.06
2022.12.26
小売店に商品が並ぶまでに、商品を製造したメーカーや卸売業者が「物流センター」にまず納品を行うことがある。
その際に小売業者とメーカーや卸売業者との間で、物流センターの利用料として「センターフィー」という料金が発生している。物流センターを利用することで納品までの流れが効率化されるというメリットがあるが、その反面、料金についての問題点もあるのが現状だ。
本記事では、センターフィーとはそもそもどのような料金なのか、センターフィーの計算方法や抱える問題点について解説をしていく。
センターフィーとは?
センターフィーとは小売業者が所有する物流センターの利用料のことである。小売業者が卸売業者やメーカーに対して請求をする。
卸売業者やメーカーなどの納入業者は製造等をした商品を物流センターへ配送し、そこから小売店が各店舗へ配送をしていく。その際に利用される物流センターに対する費用ということだ。
物流センターとは?
各店舗までの納品の仕組み
卸売業者やメーカーは、従来、スーパーや百貨店、ホームセンター、100円ショップなどの小売店の各店舗に直接配送を行っていた。そのため各店舗にはメーカーAのトラック、卸売業者Bのトラック、メーカーCのトラック・・・と複数の配送車が商品を納品していて、非効率的であった。
そこで、小売業者側は、煩雑化した納入を効率化するために物流センターを作り、納入業者には物流センターへ納品してもらうようにした。各店舗までの納品の流れは次の通りだ。
各メーカー、各卸売業者は物流センターへ商品を納品する
↓
小売店側は納品された商品のピッキングや仕分け、流通加工などの作業を行う
↓
小売店側が各店舗に複数のメーカーの商品を一度に納品する
このように今までメーカーごとに別々のトラックで納品を行っていたのを、一つの店舗に対してまとめて配送されるようになった。これを共同配送という。
共同配送のメリット
・小売店側のメリット
これまで小売店の各店舗に複数のメーカーの配送車が来ていたのが、物流センターから一台の配送車で済むようになる。
・納入業者側のメリット
従来の各店舗に直接納品する方法では、納入業者が配送に関しての入庫スケジュールの調整やピッキング作業、受発注照合などの作業を各店舗ごとに行っていた。だが、納品先が物流センターの一か所になるため、このような作業負担が減るというメリットがある。
・CO2削減に繋がる
納入業者が直接、各店舗に納品する従来の方法では、トラックの数がどうしても増えてしまい、CO2の排出量の問題にも繋がる。共同配送を行うことで、物流センター以降の配送が一括され、トラックの台数が減少し、結果としてCO2排出量が削減されるというメリットがある。
センターフィーの計算方法
物流センターの運営や維持、メンテナンスをしているのは小売業者側である。その費用を全て小売業者が負担しているのではなく、センターフィーとしてメーカーや卸売業者にも支払ってもらうことで、運営にかかる費用を賄っている部分がある。
センターフィーの計算方法は、「物流センターを通過する商品代金×設定料率(%)」だ。この設定料率は、商品のカテゴリーや、業態、業種によって変わってくる。例えば、物流センターを通過する商品代金が200万円で、設定料率が2%の場合、200×0.02=4万円のセンターフィーとなる。
また、何をセンターフィーとして徴収するかも決まりはない。センター使用料や入出庫料、店舗別の仕分け料や情報システム使用料などが内訳となる場合がある。
センターフィーの問題点とは?
センターフィーの2つの問題点
公正取引委員会の「大規模小売業者との取引に関する納入業者に対する実態調査報告書」によると、納入業者に対し主要取引先から協賛金等の要請を受け、その要請に応じた4555取引のうち、14.3%が「センターフィーについて貴社の事業経営上のメリットに応じた合理的な負担分を超える額の要請」であったと回答している。
物流センターができたことにより、配送効率は上がったものの、センターフィーについては金額の点で問題視されているケースがあるということだ。問題の内容は大きく2点ある。
算出根拠が不明確なケース
センターフィーは設定料率と物流センターを通過した商品代金によって金額が変わる。問題となるのは納入業者が、小売業者側から一方的に設定料率を提示され、どうしてその料率になったのか算出根拠を説明してもらえないケースだ。
納入業者は取引の条件として物流センターの利用を提示されているため、物流センターを使用しないわけにいかないが、料金の交渉もできず、提示された金額を支払わざるを得ないという事例もある。
金額の高さ
センターフィーの金額の高さも問題視されている。同業他社に比べてセンターフィーが高いケースや、これまでよりも高い料率に変更させられてしまうケースが発生している。さらに自社で各店舗に配送するコストに比べてセンターフィーが高い場合もあり、納入業者に金銭的な負担がかかっていることが見受けられる。
優越的地位の問題となり得る行為は取引先への依存度・取引年数に比例する傾向
公正取引委員会の「大規模小売業者との取引に関する納入業者に対する実態調査報告書」では、センターフィーだけでなく、返品や買いたたき、従業員等の派遣の要請など優越的地位の濫用規制上問題となり得る行為について調査されている。
その中で、こういった問題となり得る行為のある取引は、取引先への依存度が高いほど行われやすいという傾向にあった。また、取引年数の長さも同様で、年数が長いほど問題となり得る行為のある取引が行われる割合が大きい。
なぜ高額なセンターフィーや買いたたきといった問題のある取引先との取引を継続してしまうのか。これに関しても市場のシェア率が高く有力な業者のため将来の売上増加が期待できるといったポジティブな理由は少ない。取引を継続しないと売上の減少に繋がってしまうというネガティブな理由から取引が継続されていた。
どういったことが問題へ発展するのか?
具体的にはどのようなセンターフィーの取引が問題となり得るのか。事例を見ていこう。
・合理的な算出根拠がなく、高額なセンターフィーを徴収された
・センターフィーとは別に、センター通過に対し根拠の明確でない手数料などの支払いを求められた
・小売業者に交渉をし、センターフィーの額が下がったが、販売額への協賛金を一方的に引き上げられて、支払額がセンターフィーが下がる前と同程度になった
・物流センターに納品するか、各店舗に直接納品するかの選択の機会を与えず、下請代金の単価改定もせず、センターフィーを徴収するため下請け業者に支払う代金を減額した
このように算出根拠が明確でないことや、著しく高額なセンターフィーを徴収すること、一方的に代金をコントロールすることは、問題となってしまう。
納入業者にとって発注量の多い小売業者は立場が強くなりがちだが、上記で挙げた問題は下請法第4条第2項第3号の「不当な経済上の利益の提供要請」や、の「不当な経済上の利益の提供要請」に該当する可能性があると留意しておこう。
センターフィーを徴収する際の望ましい取引
では、小売店側と納入業者の間で、センターフィーが発生する場合、どういった取引が望ましいのだろうか。
・十分に協議をする
納入業者と小売業者の間で十分に協議をした上で、料率を設定していく。その際、下請代金の本体価格とは混同しないようにすべきである。また、どのように料率を算定するのかや算出根拠を明示して協議をしていく。
・契約書を交わす
小売業者からの説明を受けた上で、契約書面で料率を決定していく。
・データに基づいた説明
納品先を物流センターではなく、直接配送にする場合など、どれぐらい効率が良いのかデータに基づいた説明を行う。
・商品原価を維持する
センターフィーの値上げをお願いされた場合、納入業者側は商品原価を踏まえて小売業者と交渉をする。センターフィーが値上げしたことで、実質値下げされているということがないようにしたい。
センターフィーの算出根拠をまずは明確に
物流センターの利用には、配送の効率化や、納入業者の作業負担が減ること、CO2の排出量削減に繋がるといったメリットがある。しかし、納入業者と小売業者の間でセンターフィーの取引が不透明になっている問題もあり、下請法に該当してしまう可能性も。
取引年数が長くなるとセンターフィーの交渉がしづらいケースや、納入業者側は金額の交渉をしたくても、そもそも算出根拠が明確でないと交渉ができないこともあるだろう。まずは小売業者側がどうしてそのセンターフィーの料率なのか、算出根拠を明確にし、両者が納得のいく取引ができるのが望ましい。