Saasとは?意味やサービス例、メリット・デメリットや導入のポイントなどを紹介

2023.01.17

2022.12.28

昨今のビジネスシーンにおいて、IT用語の「Saas」に触れる機会が増えてきた。Saasとは「Software as a Service」の略語であるが、その意図するところからはどのような効果が望めるのか?この記事ではSaasの概念を確認し、特徴や注目を集める背景、Saasのメリット・デメリットを検証する。またSaas導入のポイントや代表的なSaasサービスも紹介するので、ビジネスにおけるSaas活用の手引きとしてほしい。

Saasとは何か

Saasと聞いてなんとなくテクノロジー関連の用語だとはわかるが、完全に理解されていない場合も多い。ここでは、Saasの概念と特徴について詳しく解説する。

Saasの概念

SaaSとは、「Software as a Service」の頭文字をとった略語である。読み方は「サース」だが「サーズ」と読む場合もある。Saasはインターネットのクラウド上でソフトウェアを展開し、ユーザーはネットに接続して必要なサービスを利用する

Saasと似た意味をもつIT用語に「ASP(アプリケーションサービスプロバイダ)」がある。ASPもクラウド上にあるソフトウェアのプログラムを、インターネット経由で提供する仕組みをさしている。

どちらも同じような意味合いをもつが、厳密にはSaasはクラウド上から提供されるソフトウェアやアプリケーションサービスそのものをさしている。対してASPは広義でのサービス全体やサービスの提供をする業者をさす。

Saasの特徴

Saasは、インターネットのクラウド上で展開されるサービスである。クラウドとは英語で雲の意味をもち、サーバーの所在地に縛られないネットワーク経由でつながるデータやソフトウェアのことを指す。

クラウドサービスのひとつであるSaasは、ソフトウェアの購入やデバイスへのインストールの必要がなく、インターネットに接続すればすぐに使用できる特徴がある。

Saasが注目される背景

Saasが近年注目を集める背景には、サブスクリプションサービスの普及がある。

サブスクリプションサービスとはソフトをパッケージ販売するのではなく、ユーザーが必要なときだけ料金を支払うビジネスモデルで、定額で課金をしていく形態が一般的である。クラウドからインターネット経由でサービスを提供しているSaasも、サブスクリプション型のビジネスに分類される。

Saas利用者は初期費用を抑えてサービスを導入でき、常にアップデートされた最新版にアクセスできる。Saasの提供者側も継続的な収益が期待できる。Saasのサービスは、インターネット技術の向上と共に多くの人に受け入れられ急速に普及している。

Saas Paas Iaas の違い

「Software as a Service」の頭文字をとった略語がSaasだが、Saasと並んでよく使われるIT用語に「Paas」と「Iaas」がある。これらの用語も解説しておこう。

Paasとは

PaaSとは、Platform as a Serviceを略したIT用語で「パース」と読み、インターネット経由でプラットフォームを提供するサービスのことを指す。ここでいうプラットフォームとはソフトウェアの構築・稼働を目的とした土台となるシステムで、デバイスに搭載されたOS(Operating System/オペレーティングシステム)などがこれにあたる。

Paasはユーザーの所有するシステムをインターネット上で稼働させる仕組みなので、低コストでのシステム開発が可能となっている。

Iaasとは

IaasはInfrastructure as a Serviceを略したIT用語で「イアース」や「アイアース」と読む。Iaasはインターネットを経由して、仮想マシンやネットワークなどのシステムを構築、稼働させるための基盤を提供する。

Iaasを利用すれば物理的なサーバーよりもコストを抑えてCPUやメモリ、ストレージなどから自由な環境の構築が可能となる。

PaaS・IaaSとSaasの違い

SaaS・PaaS・IaaSの違いは、提供されるレイヤー(階層)で分類できる。Iaasはシステム構築に必要なインフラ、Paasはインフラに加えてOSやミドルウェアまでを提供する。Saasは、それらをすべて包括した完全なソフトウェアであると考えられる。

Saasのメリット・デメリット

ビジネスにSaasのサービスを導入すると、さまざまなメリットがある。また、Saasのシステムにはデメリットも存在する。ここからはSaasのメリットとデメリットについて解説する

Saasのメリット

ビジネスにおけるSaasの導入には以下のようなメリットがある。

利用開始までがスピーディー

導入の容易さはSaasのメリットとしてあげられる。基本的にSaasのサービスの利用を開始するにはソフトを購入したり、端末にインストールしたりする必要がない。

サービスのWebサイトにアクセスしてアカウント登録さえすれば、Saasのソフトウェアやサービスを使用できる場合がほとんどだ。この利用開始までのスピーディーさは、Saasならではのメリットといえる。

導入コストの低さ

導入コストの低さもSaasのメリットのひとつだ。多くのSaasサービスは、利用料金のみで登録料がかからないものが多い。初期費用が低く抑えられることはSaasの大きなメリットといえるだろう。

またSaasのサービスならソフトウェアのアップデートも自動で行われるので、特別な費用がかからず、いつでも最新版を利用できることもメリットとして数えられる。

汎用性が高い

従来の買い切り型のパッケージソフトは、決まった端末にダウンロードして、決まった場所でしかサービスを利用できなかった。しかしSaasの場合はクラウド上で展開されるため、インターネット環境があれば基本的にどこにいてもサービスにアクセスできる。

また、サービスを利用できる端末もパソコンやタブレット、スマートフォンなどマルチに対応していることが多く、利用者は自分の使いやすいデバイスでの運用が可能だ。昨今のテレワーク推進や場所に囚われない働き方にもマッチしており、汎用性の高さはSaasのメリットのひとつといえる。

Saasのデメリット

ビジネスにおけるSaasの導入には以下のようなデメリットもある。

カスタマイズが難しい

Saasのデメリットとして、カスタマイズが難しい点も挙げられる。システムやソフトを一から開発する場合は、自社の業務体系にあわせた構築ができる。

あるいは買い切り型のパッケージソフトであれば、ユーザー企業にあわせたカスタマイズに対応してもらえることもある。しかし複数のクライアントで共有することの多いSaasの場合は、そのような細かいカスタマイズはほとんどできないと考えていいだろう。

ただ、APIを介した既存システムとの連携など、徐々に企業ごとに細かいカスタマイズができるSaasサービスも増えてきており、今後よりカスタマイズの柔軟性は高まっていくと考えられる。

セキュリティーの組み直しが必要になることも

Saas導入のデメリットとして、セキュリティー体制の組み直しが必要なケースがある。社外からの不正アクセスなどを遮断するため、企業ではネットワークセキュリティーが組まれていることが多い

Saasを導入するためにセキュリティガイドラインを変更して、外部ネットワークへのアクセス許可が必要になることもある。このようなケースではセキュリティー体制の変更が必要となり、そのために労力や時間がとられてしまう。

Saas導入のポイント

Saasの普及に伴ってビジネスでのSaas利用は増えている。ここからはSaas導入に際して押さえておきたいポイントを紹介する。

ベンダーの発展性を考える

Saasを導入する際に気をつけておきたいポイントが、Saasの提供元であるベンダー企業の発展性だ。導入するSaasが将来的に利用拡大しそうか、ベンダー企業の技術的展望などをふまえて確認しておきたい。

また、提供するSaas事業が経済的に成功しなければ、ベンダーによってはサービスの提供を停止することもあるだろう。一度業務に適応させたSaasを変更するのは簡単な作業ではない。そのためにも導入するSaasに関しては、ベンダーの将来性をしっかりと見極める必要がある。

サーバーについて確認しておく 

導入を検討しているSaasに関しては、サーバーについて確認しておくことも重要だ。Saasのようなクラウドサービスはサーバーを経由しているが、そのサーバーには一つの顧客が占有できる「シングルテナント」と、複数のクライアントで共有する「マルチテナント」の方式がある。

シングルテナントの場合はサーバーのカスタマイズが容易だが、コストは高くなる。対してマルチテナント方式であれば金額は安く済むがカスタム性には劣る。

多くの企業にとってマルチテナントのコストの低さは魅力的だが、セキュリティーポリシーや業務内容によってはシングルテナントが望ましいケースもある。Saasを導入する際には、そのサービスが採用しているサーバーの種類にも着目しておきたい。

セキュリティーやサポートも大切

近年のクラウドサービスはセキュリティー対策もしっかりされている傾向にあり、Saas利用に関して大きな懸念点ではないといえる。

しかし、大型の災害が頻発する昨今では、データセンターの所在地やシステムのバックアップ体制も気になるところだ。

基本的にクラウド事業者は侵入などのリスクからデータセンターの場所は公表していないが、大体のエリアや災害・停電時の対策については明示していることが多い。業務上停止することが許されないSaasを導入するのなら、セキュリティー対策やもしものときのサポート体制にも気を配っておくべきだろう。

Saasサービスの例

現在では世界中で個人利用からビジネスまで、さまざまな分野でSaasが利用されている。ここからは代表的なSaasのサービスを紹介する。

Dropbox

出所:www.dropbox.com/

Dropboxは、インターネット上にデータを保存する場所を提供するオンラインストレージだ。DropboxにはUSBメモリのような物理媒体がなく、利用者はインターネット経由でクラウドのデーターボックスにアクセスする。

Dropboxはバックアップデータの保管場所にも最適で、さらにドキュメントやショートカットなどを一箇所にまとめての作業も可能だ。また、ストレージ内のファイルやフォルダーはユーザーごとにカスタマイズもできる。

国内外に多くの利用者を持つDropboxは、オンラインストレージ分野のSaasを代表するサービスといえるだろう。

Slack

出所:slack.com

Saasのコミュニケーションツールを代表するサービスのひとつが「Slack」だ。Slackではチャンネルとよばれるワークスペースを自由に作成して、社内やプロジェクトのメンバーとさまざまなやりとりができる。基本的なコミュニケーションはインターネットを介したチャット形式だが音声通話にも対応しており、よりスピーディーな連絡も可能となっている。

ビジネスチャットとしてSlackには多くの利用者がおり、ベンチャーから大手企業まで幅広い業種で採用されている。

Yappli

出所:yapp.li

株式会社ヤプリが提供する「Yappli」は、プログラミング不要でアプリケーションを作れるノーコードアプリ開発プラットフォームだ。ノーコードとはプログラミングの知識が少なくてもソフトを開発できる技術で、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進の鍵として近年注目を集めている。

Yappliは大手企業を含む600社以上での導入実績があり、ノーコードの開発プラットフォームを代表する存在といえるだろう。

Adobe Creative Cloud

出所:www.adobe.com

アメリカのAdobe社は、クリエイティブデザインソフトの世界的トップ企業である。Adobe社を代表する製品には画像編集ソフト「Photoshop」やデザインツールの「Illustrator」、動画編集ソフト「Premiere Pro」などがあるが、どれも優れた機能をもち世界中のクリエイターに支持されている。

Adobe社はもともとソフトウェアを個別でパッケージ販売していたが、近年ではクラウドベースの「Creative Cloud」として提供し、Saas型のビジネスモデルに転換した。

弥生会計ONLINE

出所:www.yayoi-kk.co.jp

「やよい会計オンライン」は経理業務の会計ソフト、やよい会計シリーズのSaas版である。日々の取引の入力から帳簿や確定申告書の作成まで、経理・会計業務を幅広くサポートしている。企業向けのプランから個人事業主に適したプランまでさまざまなプランがあり、インターネット環境があればどこでも使用可能だ。さらに法改正時には自動的にシステムがアップデートされるなど、利用者に寄り添った設計には定評がある。

Evernote

アメリカのIT企業Evernote Corporationが開発・提供しているノートアプリが「Evernote」だ。Evernoteはテキストやメモを作成保存する基本機能に加え、画像や動画、位置情報などもアプリ上に記録できる。Evernoteのすべてのデータはクラウドで管理され、複数種類のデバイスで同じ内容を確認が可能だ。

Evernoteには FREE、 PERSONAL、PROFESSIONAL からなる3つのプランがあり、個人利用から法人での運用まで幅広く対応している。Evernoteは仕事において、さまざまなタスクを進める手助けとなる便利なSaasサービスだ。

Saas導入の注意点

ビジネスにおけるSaasの利用にはいくつか注意するべきことがある。ここからはSaas導入の際に気を付けたい点を解説する。

自社の業務とのマッチングに注意する

Saasを導入する際には導入を検討しているサービスと、自社の業務とのマッチングに注意したい。SaasはIaaS、PaaSなどのクラウドサービスと比較してカスタマイズ性が低い。そのため導入後に、自社の事業とあまりマッチしていないことに気づくケースも少なくない。しかし自社業務と導入したいSaasとの相性は、実際に運用させてみるまでわかりにくい要素も多い。

一般的に多くのSaasサービスでは利用に一定のトライアル期間を設けている。このお試し期間を最大限活用し、自社事業とSaasサービスの相性を徹底的に分析してから本採用に進むことをおすすめしたい。

総合的なコストパフォーマンスを重要視する

Saasのサービスには月額で少しずつ利用料を払うことも多く、安く使えるイメージが強い。だが実際に運用してみたら、それほど大きなコストダウンにはつながっていないこともある。また、運用期間が長くなればそれだけ支払う料金も膨らみ、金額だけを見ると買い切り型のパッケージソフトのほうがローコストなことも珍しくない。

だが、Saasで提供されるサービスには料金以外のメリットも多い。時間や人的コストを加味した総合的なコストパフォーマンスから、サービスの良し悪しを判断すべきである。

Saasとはビジネスを最適化するツール

近年インターネット関連のテクノロジーは、驚異的な進化を遂げてきた。それに伴って多くのビジネスでサブスクリプションモデルが浸透し、Saasの市場規模は拡大を続けている。

Saasは新規ユーザーの獲得が比較的容易であり、継続的な収入も見込める。ユーザー側にも導入コストの低さなどメリットが多く今後もSaasの利用機会は増えていくだろう。上手にSaasを提供・利用することで、ビジネスの最適化を心がけていきたい。

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