PaaSとは?意味や代表的なサービス例、導入のメリットとデメリットなどを紹介
2023.01.06
2022.12.28
PaaS(Platform as a Service)とは、クラウドにあるプラットフォームが利用できるサービスのことを指す。この記事ではPaaSの概要と現在までの歴史について解説する。
また、よく似た性質を持つとされるIaaS・SaaSの違いについても紹介したい。PaaS導入を検討する際には、メリットとデメリットを事前に把握しておくべきである。PaaS導入のステップと導入例を参考に、自社の利益を最大化できるサービスの導入を検討しよう。
目次
PaaSとは
PaaSという単語を目にしたことがあっても、具体的にはどのような意味を持つのかはわからない人もいるだろう。ここでは、PaaSについて意味と概要、歴史を紹介しよう。
PaaSとは、「Platform as a Service」の略称で、クラウドサービスの形態のひとつを指す言葉である。クラウド上にあるプラットフォームが利用できるサービスで、ITインフラの開発の手間がかからないため、近年広く導入されてきているのが特徴である。まずは、PaaSの特徴と歴史について解説していこう。
PaaSの概要
クラウドサービスの範囲は広く、サービスによって提供している範囲が異なる。そのため、PaaSという言葉は知っていても、具体的にどのようなサービスを指すのかは知らないこともあるだろう。
PaaSは、アプリケーション開発のための環境をクラウド上に提供するサービスである。OSやハードウエア、データベース、また、プログラムが実行できる環境をクラウドで使用できるのだ。アプリケーションの開発や動作環境であるプラットフォームをネットワーク経由で利用できるサービスではあるが、アプリなどのソフトウエアはサービスには含まれない。
PaaSの歴史
そもそもクラウドサービスとは、インターネット経由でクラウド上のサービスを利用できるものを指す。かつてクラウドサービスが登場する前の時代には、企業が自社内のサーバールームにサーバーを設置し、自社のインフラを用いてシステム開発を行っていた。
だがクラウドサービスの台頭により、PaaSをはじめとする、インターネットがあればどこからでもアクセス可能な仕組みが浸透していったのである。自社内のオフィスだけではなく自宅や出先からでもアクセス可能なので、リモートワークなどの自由な働き方の拡大を支えてきた側面もある。
PaasとIaaS・SaaSの違いは
クラウドサービスは、サービス内で提供されるシステムの構築がどこまでなされた状態でパッケージングされているのかによって名称が異なる。今回紹介しているPaaSのほかにIaaSとSaaSがあり、言葉自体は聞いたことがある人も多いだろう。だが、それぞれの違いを正確に把握している人は意外と少ないのではないだろうか。
そこで、PaaSとIaaS、SaaSの違いを紹介しよう。すでに多くの企業への導入実績があるクラウドサービスについての理解を深めるために、ぜひ参考にしていただきたい。
PaaSとIaaSの違い
PaaSとは、ネットワークとハードウエア、オペレーティングウエア、データベースなどのミドルウエアがクラウド上で使用できるサービスのことを指す。一方のIaaSは、ネットワークとハードウエア、オペレーティングウエアのみが提供されているサービスのことを指す言葉である。
IaaSは、クラウドサービスを提供している事業者が簡易する範囲が最も小さい。そのため、利用する側としては、システムの構築やカスタマイズ面における自由度が高いサービスだといえるであろう。
PaaSとSaaSの違い
SaaSもPaaSと同様にクラウド上で利用できるサービスであるが、ネットワークとハードウエア、オペレーティングウエア、データベースなどのミドルウエアにプラスして、ソフトウエアもパッケージ商品として提供されているのが特徴である。
SaaSはすべてパッケージングされた状態で提供されるサービスなので、システム開発は不要である。クラウドサービスを契約するだけですぐに利用開始できるのが、SaaSの眼一途だといえるであろう。SaaSはソフトウエアも提供されるので、バージョンアップの対応などもサービス提供者が対応し、管理や更新の必要がないのが特徴である。
PaaS導入のメリット
クラウドサービスを活用したITインフラは、今やあらゆる業種・業態の企業にとって導入が欠かせないものとなった。
だが、自社への導入による業務改善や利益アップが感じられなければ、クラウドサービスを利用する必要性を実感するのは難しいだろう。そのため、PaaS導入を検討している場合には、導入によるメリットとデメリットを事前に把握しておくべきである。
まずは、PaaS導入のメリットを紹介したい。PaaSには、導入が容易であることと、運用コスト・工数削減の効果が期待できるというメリットがある。それぞれについて詳しく解説するので、自社にPaaS導入をすべきかどうかの判断をする参考にしてほしい。
導入が比較的容易
PaaSは、クラウド上にインフラが準備できた状態で利用開始できるパッケージサービスである。
そのため、自社内でインフラの構築や管理をする必要などがなく、導入が容易なのがメリットのひとつだ。導入からすぐに開発がスタートでき、データベースといったミドルウエアのインストール工程は必要ない。開発者がアプリ開発に専念できるのは、PaaSの大きな魅力だといえそうだ。
また、インフラ構築にかかる工数が削減されるため、システム移管に必要な日数が短縮でき、開発者の初期負担も軽減できる。
ただし、これまでインフラを自社管理していた場合には、PaaSが既存システムとの互換性があるかどうかに関して導入前に確認しておくべきだ。
運用コスト・工数削減
PaaS導入は、導入の初期だけではなく、毎月の運用コスト・工数削減の面でも大きなメリットが期待できる。PaaSは、サービスの提供側が、クラウド上でサーバーなどの管理を一括で行う。そのため、導入企業がサーバー管理などの工数をかける必要がなく、日々の運用にかかるコストと工数が削減できるのだ。
また、月々の利用料金は従量課金制で設定されていることが多い。ライセンス数はもちろん、機能面でも自社に本当に必要なもののみを選択して利用が可能なので、この点でも運用コスト削減の実現が期待できるであろう。
PaaS導入のデメリット
どこからでもアクセスでき、複数のメンバーが同時に操作可能なクラウドシステムは、企業内のITインフラとして非常に有益な存在である。
PaaSは導入企業の事業運営によい効果が期待できるクラウドサービスであるが、もちろん導入のデメリットがあることも現実だ。自社にPaaS導入を検討しているなら、メリットだけではなくデメリットも把握した上で決断すべきである。
ここでは、PaaSのデメリットとして代表的な、開発の自由度が低めである点、セキュリティレベルに注意が必要である点に関して詳しく紹介する。
開発の自由度は低め
SaaSのデメリットとしてまず挙げられるのが、開発の自由度が低めである点だ。SaaSを導入すると、ソフトウエアのカスタマイズに制約が出るケースがあるためである。クラウドサービスが提供しているサービスの範囲内での利用となるからだ。
これまで自社管理の完全オンプレミス体制であった場合や、機能のアドオンなどカスタマイズが多い企業では、SaaS導入による制約で、運用変更などが発生することが考えられる。この場合、メリットとデメリットのどちらが自社に与える影響が大きいかを判断した上で、SaaS導入に踏み切るべきであろう。
セキュリティレベルに注意
PaaS導入時に注意したいポイントに、セキュリティレベルがある。各企業が求めるセキュリティレベルは異なるものだが、PaaSはクラウドサービス提供企業が設定したレベルにしたがって管理される。そのため、セキュリティレベルに不安がある場合には、導入に踏み切れないケースが発生することも想定できる。
また、PaaSはクラウドサービスなので、複数人での同時使用や管理が可能であり、自社以外の場所からもアクセスできる。そのため、使用するメンバーに高いセキュリティ対策の意識が求められる。PaaS導入時には、社員へのセキュリティ研修の再実施が望まれる。
PaaS導入のステップ
PaaSを導入する際のステップを確認しておきたい。PaaSの導入と運用には、システム構築やプログラミングの知識があるメンバーが必要である。
各スキルを持ったメンバーをアサインしてPaaS導入プロジェクトを作るべきだ。プロジェクトは、導入・開発スケジュールとセキュリティ対策、コストについて、自社での導入に最適なクラウドサービスを比較検討するところから開始する。
導入後の運用面に関しては、万が一トラブルなどが発生した場合でもリカバリーが可能なスケジュールを組んでおくのがおすすめだ。
また、クラウドサービスを新規導入する場合には、サービス提供企業と導入企業の間で、「SLA(Service Level Agreement)」いわゆるサービス品質保証契約を結ぶべきである。
代表的なPaaS
続いては、すでに多くの企業で広く導入実績がある、代表的なPaaSサービスを見ていこう。PaaSサービスにおいて世界的なシェアの上位を占めるのは、Microsoft社「Azure」、Google社「Google Cloud Platform(GCP)」、Amazon社の「Amazon Web Services(AWS)」。
ここでは、それぞれのPaaSサービスの特徴を紹介する。自社に導入するPaaSについて、どのサービスが希望する条件を満たしているかを確認する際に、ぜひ参考にしてほしい。
Microsoft社のAzure
「Azure」はMicrosoft社が提供するPaaSサービスである。ITシステム運用のコスト削減に効果が高いとの声が高く、近年、全世界でシェアを伸ばしている。クラウド データベースを使用して移行と最新化が実施できる「Azure SQL Database」、仮想マシンの「Azure Virtual Machines」、自動化された操作で IT関連の管理が簡素化できる「Azure Automanage」などの機能が特徴である。
関数の定義のみでプログラムの実行が可能であり、Java・Pythonなどが使用可能だ。また、Amazon S3からデータインプットもできる点に注目したい。
Google社のGoogle Cloud(GCP)
Google社の「Google Cloud(GCP)」は、世界中の幅広い業種の企業だけではなく、官公庁への導入実績も多いPaaSである。迅速にアプリ作成ができ、ビジネスの意思決定がより簡単になる機能を備えているのが特徴だ。また、アプリケーションの開発が容易な点に定評がある。
提供している機能は、ビッグデータが高速処理可能な「Google Cloud SQL」、ストレージ機能の「Google Cloud Storage」、メッセージサービスの「Google Cloud Pub/Sub」などがある。いずれも、世界はもとより、日本国内の企業でも導入が進んでいる。
AWS
「Amazon Web Services(AWS)」は、世界最大の通販サイトを運営するAmazon社が提供しているクラウドサービスである。クラウドサービス提供分野に早い時期から参入しており、実績があるのが特徴だ。クラウドサービスの分野では世界最大のシェアを誇り、安定したサービスに定評がある。
PaaSで提供しているのは、アプリが利用できる状態を容易に作る「Elastic Beanstalk」と、プログラム実行のための「Lambda」である。AWSは、コスト面とパフォーマンスのバランスに優れているので、初めてPaaSを導入する企業にもおすすめだ。
自社の利益を最大化できるPaaSサービスの導入を検討しよう
クラウドサービスは、企業のITインフラをより快適に、しかも効率よく稼働させるために最適である。近年では、アプリケーション開発の現場で広く活用されているPaaSを導入する企業が増えてきている。従来のオンプレミス方式よりも、より低コストで短い工期での開発を可能にさせるのが、ミドルウエアを提供するPaaSなのである。
PaaSについて詳しく知ることは、自社に最適なPaaSサービスを選択するための指標となる。PaaS導入のメリットとデメリット、PaasとIaaS・SaaSの違いなども確認しながら、自社の利益を最大化するためにふさわしいPaasサービスの導入を検討してほしい。”