RFM分析とは?やり方や手順、活用方法、メリット・デメリットなどを解説

2023.01.12

マーケティング施策で必須となる顧客分析において、基本となる手法が「RFM分析」だ。多くの業種や製品での顧客分析に有効な手法として、多くの企業で導入されている。

さまざまな有効性がある一方、RFM分析に向いていない顧客分析もある。その場合は、ほかの分析方法を取り入れるなどの対策も必要だ。この記事ではRFM分析の概要や手順、活用方法、メリット、デメリットと対処法を解説する。

RFM分析の概要と3つの指標

RFM分析とは、以下3つの指標に基づいて顧客をグループ分けし、分析する手法だ。RFMとは、以下の各指標の頭文字から由来している。

・Recency(最終購入日)
・Frequency(購入頻度)
・Monetary(購入金額)

RFMが示すそれぞれの指標について解説する。

Recency(最終購入日)

最終購入日は、顧客データより抽出した顧客が商品やサービスを、最後に購入したのはいつかを算出したものだ。最終購入日が現在より近ければ近いほど、優良顧客と評価する。なおどのくらいの期間で分けるかは、商品の特徴や特性によって異なる。

Frequency(購入頻度)

購入頻度によって顧客をグループ分けし、購入頻度が高ければ高いほど優良顧客と判断できる。どれくらいの期間での購入頻度を評価するかは、商品の特徴や特性によって異なっている。購入頻度を分析すると、以下のことがわかる。

・購入頻度が高い顧客が多い…常連客が多い商品
・購入頻度が低い顧客が多い…商品に満足せずリピーターができていない商品
・購入頻度が高い顧客が多く、低い顧客が少ない…新規顧客が少ない商品

Monetary(購入金額)

購入履歴から顧客の購入総額を算出し、金額が高ければ高いほど優良顧客と判断できる。どういった期間の購入総額を評価するかは、商品の特徴や特性によって判断する。

RFM分析の手順

RFMの3つの指標を活用した、RFM分析の進め方を流れに沿って解説する。

現時点での課題と仮の解決方法を把握する

まずは現時点で抱えているマーケティング上の課題を把握する。たとえば「新規顧客が定着しない」「通年の安定した売上が上がらない」などが、自社の持つ課題として上がるだろう。課題を把握したうえで「なぜそうなったのか」の原因を考え、仮の解決方法を立てる。

データを収集する

仮の解決方法を検証するためのデータと、RFM分析の指標となるデータを収集し整理する。たとえば「新規顧客が少ない」という課題に対して「ターゲットとしている顧客への施策が適切でない」という仮の解決方法を立てた場合は、顧客の年齢や職業、性別などの属性データが必要になるだろう。

RFM分析の指標となる最終購入日、購入金額、購入頻度のデータ収集に役立つのがPOSレジだ。各指標のデータのほか顧客属性がすでに蓄積されているため、再度収集する手間が省ける。RFM分析にぜひ活用しよう。

データをグループ分けして分析する

収集したデータを元に顧客のランクづけとグループ分けをする。グループは多すぎると分析に時間やコストがかかるため、3~5グループほどがいいだろう。どの数値を基準にランクづけとグループ分けをするかについて、事業や商品の特性への理解も必要となる。

グループ分けをしたあとにデータを分析し「優良顧客」「新規顧客」「休眠顧客」などに分類をする。データ分析に時間がかかるとデータ分析そのものが目的となるため、ツールを利用するなどして効率的に分析を進めることが重要だ。

分析結果と仮説を照らし合わせる

次にデータの分析結果と、最初に立てた課題解決のための仮説を照らし合わせる。分析結果と仮説が合っていれば、仮説の課題解決方法が有効であることがわかる。異なっていた場合はほかの解決方法が適していることとなるので、新しい仮説を立てて分析のやり直しを行う。

なお分析結果と仮説が合っていても、課題には別の原因が存在していることもある。そのため、別の角度から何度も仮説→データ収集→データ分析の工程を行うことで、より効果的な施策がわかるだろう。

施策を実行しPDCAサイクルを回す

RFM分析によって、有効と判断したマーケティング施策を実行する。実行後は効果を検証し、必要に応じて施策の調整を行う。その後また最初のステップである課題と仮説に戻り、PDCAサイクルを回していくことが重要だ。

RFM分析の活用方法

RFM分析を踏まえた、マーケティングでの活用方法を解説する。

RFMすべてのスコアが高い顧客への施策

最終購入日が近く、購入頻度や購入総額が高い顧客は「優良顧客」へグループ分けする。「お得感」よりも「特別感」を持たせることがマーケティング施策として有効とわかるため、顧客ロイヤルティを高めるための以下のような施策を行おう。
・限定セールや限定商品の案内
・購入回数や総額に応じたランク制の会員制度の提案
・新商品体験会やイベントなどへの正体

FまたはMのスコアが低い顧客への施策

購入頻度または購入総額が低い顧客は、優良顧客への休眠顧客へ移行する可能性がある。施策としては、潜在ニーズやくわしい顧客感情を掘り起こすために、アンケートやインタビューを行うのもいいだろう。

上記に加えて、購入頻度が低い場合はポイント制や複数回利用で割引になるクーポンの発行など、リピートにつなげる施策が有効だ。購入総額が低い顧客へはセット売りやリコメンドの表示など、お得感の出る企画や取り組みを行う。

Rのスコアが低い顧客への施策

最終購入費が現在より遠く直近での購入がない顧客は「休眠顧客」にあたる。休眠顧客は購入頻度や総購入数ではそこそこのスコアである過去の優良顧客であったり新規顧客からのパターンであったりすることがあり、パターンによって有効となる施策が異なってくる。

優良顧客から休眠顧客となった場合は、転居やライフステージの変化によって自社から足が遠のいている可能性もある。近況の伺い挨拶とともに、別店舗やオンラインサイトへの案内などを行う。

新規顧客から休眠顧客となった場合は、新規顧客からリピーターへの醸成を失敗している可能性が高い。RFM分析により課題と解決策の洗い出しを行い、新しいマーケティング施策を行う必要がある。

RFMすべてのスコアが低い場合

RFMすべてのスコアが低い顧客が多い場合、新規顧客はいるものの顧客の定着化ができていない状態と判断できる。初回購入後のアフターフォロー、SNSフォローやメルマガ登録など、リピーターに醸成するための施策が必要だ。

RFM分析のメリット

RFM分析がもたらすマーケティングへのメリットを解説する。

マーケティング施策の効果を可視化できる

RFM分析を行うと、顧客のグループの分布を確認することで自社の状況を可視化できる。たとえば優良顧客が多ければ、現在のマーケティング施策は効果を発揮していることがわかる。逆に休眠顧客が多い、常連顧客が少ないといったときには、別のマーケティング施策を行う必要があると把握できる。

属性に合わせた具体的な施策がわかる

RFM分析によって顧客をグループ分けできるというメリットもある。顧客のニーズを把握できるため、属性に合わせた具体的な施策がわかる。さらに適切なタイミングで施策を出せるため、より効果が出しやすい。

マーケティング施策を効率化できる

RFM分析によって分けたグループに、施策をするための優先順位もつけられる。施策の効果を期待できないグループにリソースを使わず、効果が見込めるグループにリソースを集中することもできる。資金や人材などの限られたリソースを効率よく配分できるため、マーケティング施策における無駄を省ける。

RFM分析のデメリットと対処法

RFMは有効性の高い顧客分析手法である一方、課題やデメリットも存在する。RFMの課題やデメリット、さらに有効な対処法を解説する。

商品の特性や性質が考慮されない

RFM分析の指標には、購入した商品そのものがない。よって、顧客のこまかいニーズにあった提案や施策は、RFM分析では導き出せないだろう。RFM分析の指標に商品(Item)を追加した「MRFI分析」を行うことが有効だ。

データに持続性がない

RFM分析では、ある一時点における顧客分析を行う。最終購入日や購入頻度に影響が出る季節性の高い商品や、ベビー用品や子ども用品などの一過性の高い商品に対する分析には向かないことがある

たとえばベビー用品は第1子誕生時に「新規顧客」から「常連顧客」となり、子どもが成長した後は「休眠顧客」第2子が誕生したため「復帰」というパターンとなることがあるだろう。

「季節」や「時期」などの分析項目を増やしてRFM分析では補えない指標を補完する、またはRFM分析以外の分析方法を取り入れる方法が有効だ。

コストが多くかかることがある

RFM分析に必要なデータの抽出、分析には多くの手間と時間がかかる。予想以上の人的リソースやコストが発生する可能性も高い。ツールなどを導入して、RFM分析にかかる作業を効率化し、コストを削減するのが重要だ。

RFM分析を行い、顧客へ最適なアプローチを行おう

RFM分析の概要や分析を行う手順、活用方法、メリットとデメリットへの対処法を解説した。RFM分析を行うことで、自社の持つ課題と対処法が把握でき、マーケティングの効果を最大化できる。さらに商品や顧客の属性に応じてほかの分析も併用すれば、顧客へのアプローチ方法の最適化にもつながるだろう。

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