POSレジとは? 仕組みやメリット、POSシステムとの違いや代表的なサービスを紹介

2022.10.28

2022.02.07

コンビニ、スーパーマーケット(SM)、百貨店、アパレルなどの小売業界から、飲食業界、美容業界など、多様な店舗で導入されているPOSレジ。従来のターミナル型やパソコン型のレジPOSに加え、近年ではタブレット型タイプも広まりつつあり、データドリブンな店舗運営を行う上で重要な役割を果たしている。

本記事では、POSレジの基本的な概要やメリットをまとめた後、代表的なサービスも紹介していく。

POSレジとは?

POSレジのPOSとは、「Points of Sales」の略称であり、日本語では「販売時点情報管理」を意味する。販売した商品情報(商品名、日時、店舗、個数、価格など)をリアルタイムで取得し、管理できるシステムを搭載したのが、POSレジだ。

POSレジの仕組みとしては、商品のバーコードを読み取ることで、購買情報を取得。コンビニやSMなど、主に小売店において、POSレジは採用されている。

POSレジはスムーズな商品読み取りで、顧客を待たせないオペレーションができるのもさることながら、客観的なデータ分析にも役立つ。売上分析、在庫管理など、幅広い用途で活用され、昨今では店舗のデータドリブン経営に必要不可欠な存在となっている。

POSレジの歴史

世界初のレジスターは、1878年(明治11年)にアメリカのカフェ経営者により生まれたとされる。置き時計の形状で、長針でセント、短針でドルを表示する単純な設計であったが、時代と共に機能は変化。1890年には営業記録付きレジスター、1892年にはレシート発行機能も搭載された。

そして、1970年代にはアメリカのSMが、利幅減少対策としてPOSレジを開発。日本においては、82年にセブン-イレブン・ジャパンがPOSシステムを導入し、世界で初めてマーチャンダイジングにPOS情報を活用した。その影響力は大きく、百貨店、SMなど多様な店舗へ広がりを見せる。

また、POSレジが普及した背景には、手作業による在庫管理の効率性の悪さも、要因として挙げられる。従来、小売店はメーカーから商品を100個ずつなど、単品ではなくセット単位で仕入れていたが、売れ残りや破棄も頻繁に発生していた。

しかし、POSレジの導入で在庫管理、発注予測が容易となり、細かい単位で商品の仕入れが可能になった。旧型のレジから、POSレジへのリプレイスも進んだ。

現在のPOSレジは、会計処理や売上管理にとどまらず、顧客管理、勤怠管理、予約システム、オーダーエントリーシステムなど、活用の幅が広がっている。さらに、軽量、小型化が進み、タブレット型のPOSレジも登場。経営方針や店舗形態に合わせた仕様のPOSレジを、利用可能となっている。

POSレジとPOSシステムの違い

POSレジと同じ意味合いで使用されることも多いのが、POSシステムだ。確かに、POSレジとPOSシステムの意味合いは似ているが、完全に同義ではない。

まず、POSシステムとは、商品情報や売上情報などをデータベース化し、分析に活用する仕組みをいう。POSシステムはレジに限らず、パソコンやタブレットでも利用可能。端末に専用アプリケーションをインストール、もしくはクラウドサービスに接続し、POSシステムを使用することもできる。

一方、POSレジは、POSシステムを組み込んだレジをいう。しばしば同義とされるPOSレジとPOSシステムだが、仕組みを指すPOSシステムと、仕組みを導入したものを指すPOSレジという認識を持っておきたい。

POSレジの種類

POSレジは大別すると、パソコン型POSレジ、ターミナル型POSレジ、タブレット型POSレジの3種類が存在する。それぞれの特徴を見ていこう。

パソコン型POSレジ

パソコン型POSレジとは、パソコンに専用アプリケーションをインストールし、POSレジとして活用できるタイプだ。先述の通り、近年のPOSレジは商品管理、分析機能に加え、勤怠管理などの付加機能も登場しているが、やはり機能は限定的。しかし、パソコン型POSレジであれば、パソコン本来の汎用性の高いソフトウェアを利用でき、さまざまな業務を1台で行える。

さらに、特別高スペックなパソコンは必要なく、家電専門店などで売られている端末でも問題なく利用可能。別途、レジ本体を用意する必要がないため、初期費用を抑えられるメリットがある。

ただし、レジ機能を持たせる場合、レシートプリンター、キャッシュドロア、キャッシュレス決済端末など、パソコン以外に機器の購入が必要となるため、注意が必要。また、POSシステムの月額利用料が発生するのも、留意したいポイントだ。

パソコン型POSレジは、所有するパソコンへ導入できる手軽さから、小規模店舗で利用されるケースが多い。

ターミナル型POSレジ

ターミナル型POSレジとは、コンビニやSMなどで見られるPOS専用のレジだ。レジ機能が充実しており、自動釣銭機、レシートプリンター、キャッシュドロアなどを搭載。導入実績が一番豊富なタイプであり、多くの顧客対応が必要な大規模店舗でも活用されている。

ターミナル型POSレジはオーダーメイドタイプも多く、店舗の業務内容に合わせ、機能を細かくカスタマイズできるのが大きなメリット。POSレジの導入と同時に、大幅な業務効率化も図りたい店舗に、お勧めのタイプだ。

デメリットとしては、初期費用の高さが挙げられる。高性能な機能を搭載するターミナル型POSレジは、初期費用が50万〜100万円となるケースも。サポートやカスタマイズの保守費用なども考慮し、見合った費用対効果を得られるか計算しながら、慎重に導入を進めたい。

タブレット型POSレジ

タブレット型POSレジとは、タブレット端末に専用アプリケーションをインストールすることで、POSレジとして利用できるタイプだ。iPadを専用デバイスに指定するPOSシステムも多いが、パソコン型やターミナル型より初期費用は安価となっている。

タブレット型POSレジの最大のメリットが、システムを導入するデバイスが小型設計であること。携帯性に優れているのはもちろん、コンパクトでスペースを取らず、設置場所も選ばない。移動販売で商品を提供する場合や、小規模店舗の省スペースへレジを設置したい時にも最適。

また、高い視認性により、操作しやすいのも特徴。画面タッチ式で、直感的にPOSレジを操作可能だ。

POSレジのメリット

POSレジを導入することには、さまざまな利点が存在する。従来採用されていたレジにはない、POSレジのメリットを見ていこう。

データを集積して商品分析を行える

POSレジでは、商品の売上情報を集積し、多種多様な商品分析を行える。例えば、POSレジで得られたPOSデータを活用することで、下記のような分析を実施可能だ。

  • ABC分析
  • バスケット分析
  • トレンド分析

順番に詳細を解説していく。

ABC分析

商品を売上高、コスト、在庫数などの指標でランク付けし、分類、管理するフレームワークがABC分析だ。別名、重点分析とも呼ばれている。

例えば、POSレジで集積した売上情報をもとに、一例として下記のように商品をランク分けする。

  • ランクA:売上高が高く、重点管理して在庫切れさせないグループ
  • ランクB:現状維持で毎月、在庫切れ時に発注するグループ
  • ランクC:在庫切れ時に発注するグループ

単純な売れ筋商品、死に筋商品を把握するだけでなく、優先度を決め、利益性の高い商品を分析。現状の商品売上を可視化することで、企業の経営力を高められる。ABC分析はシンプルなフレームワークであるが、実態に即した店舗戦略を企画する上では、非常に重要な分析手法だ。

バスケット分析

特定の商品に対し、一緒に購入されやすい商品の関連性を導き出す手法が、バスケット分析だ。代表的な例が、アメリカのドラッグストアで実施された「おむつとビール」のバスケット分析で、「金曜の夕方は、おむつとビールを一緒に購入する30代~40代男性が多い」という分析結果が得られた。

本結果から、家庭を持つ男性が仕事帰りに、店舗へ寄っていると仮定できる。ベビー用品売場の近くに、ファミリー向け商品コーナーや晩酌セットコーナーなどを配置すれば、関連購買も見込める。

一緒に購入された商品をPOSデータで管理し、消費者行動の相関性を分析。商品間の関連性を導き出せれば、さらなる売上向上を期待できるだろう。

トレンド分析

POSレジでは、商品の購入日を取得できるため、どの時期に商品の売上げが向上、低下しているのか、トレンド分析を行える。例えば、家飲みの機会が増える年末年始において、酒の需要が増すということは簡単に想像できるだろう。

一方、夏場は漬物が売れるというデータもあるが、季節と漬物の規則性を導き出すのは容易ではないだろう。商品のトレンド性を分析し、売上向上や在庫管理などに、POSレジは役立つと考えられる。

業務効率化を図れる

POSレジでは、商品のバーコードを読み取り、会計を行うのが基本。金額を手入力する必要がなく、シンプルなバーコードスキャンだけで済むため、業務の効率化を図れる。

クレジットカード端末や電子マネー端末と連携し、現金以外の決済に対応することも可能。レジ業務にかかる時間を短縮しつつ、接客に集中できる。

また、在庫管理を自動化できるのも、大きなメリット。商品を販売すると、在庫情報も更新されるため、リアルタイムで在庫数のチェックを行える。発注業務とも連携すれば、大幅な業務効率化を見込めるだろう。

人件費を削減できる

依然、小売店などさまざまな業界において、人手不足が深刻な課題として挙げられている。しかし、簡単な操作を行えるPOSレジで、従業員のレジ業務の負担を軽減しつつ、業務時間も短縮。人件費の削減につなげられる。

近年では、セルフのPOSレジを導入する店舗も増加してきた。レジに当たる従業員を完全に無人とするのは難しいが、レジの人時削減を見込める。

ヒューマンエラーの防止

テンキーによる商品金額の打ち込みが不要なPOSレジでは、入力間違いなどのヒューマンエラーを防止できる。商品金額がキャンペーンやセール時に変更される場合も、管理者側で金額を調節可能なため、誤入力を防止可能だ。

また、自動釣り銭機を導入すれば、釣り銭の受け渡しミスが発生せず、レジ締め時間の短縮にも繋がる。

複数店舗の売上データを一元管理できる

複数店舗を構える際、非常に有効であるのが、売上データの一元管理だ。多店舗展開は売上向上や認知度拡大など、多様な利点が存在するが、経営者視点では管理が煩雑になる。

しかし、POSレジでは、各店舗のPOSデータを連携し、リアルタイムでチェック可能。グループ全体で売上管理を行い、一部店舗には本部から方針の見直しを要求するなど、売上げの改善につながる施策も打ち立てられる。

顧客満足度の向上につながる

簡易操作で業務に従事できるPOSレジでは、スピーディな会計処理で、レジの回転を早められる。従来のレジより、顧客のレジ待ち時間を短縮可能だ。

また、商品代金の多彩なキャッシュレス決済サービスや、ポイントカードの提供も行える。さまざまなニーズに対応できるPOSレジは、顧客満足度を向上させ、リピーターの創出にもつながると言えるだろう。

POSレジの代表的なサービス

今や不可欠な存在となっているPOSレジは、さまざまな企業がサービスを提供している。ここでは、代表的なPOSレジのサービスを4社紹介していく。

ユビレジ

iPad専用のPOSレジを提供しているのが、ユビレジだ。タブレットで会計処理を行えるのはもちろん、商品の一括登録やレシートのカスタマイズ、周辺機器との連携などにも対応している。

キャッシュレス決済連携では、7種のサービスから選択可能。Suica、PASMOなどの交通系ICカードに対応した「STORES 決済」や、PayPay、メルペイ、au Payといったスマホ決済も行える「StarPay」など、顧客層に合わせたキャッシュレス決済サービスを選べる。

また、店舗運営を補助するサービスも充実。オーダーエントリー、在庫管理、カスタマーリレーションシップマネジメント(CRM)、店舗管理など、多彩な連携システムがそろっている。

タブレット型POSレジながら、店舗の売上向上げにつながる豊富な機能をそろえ、導入前後には安心サポートも提供。利用継続率は99%となっており、飲食店、小売店、マッサージ店、大学生協など、さまざまな店での導入実績を持つサービスだ。

スマレジ

iPad、iPhone、iPod touchアプリを利用し、高性能なクラウド型のPOSレジを展開しているのが、スマレジだ。レシートプリンター、ラベルプリンター、バーコードリーダー、自動釣り銭機など、幅広い周辺機器に対応。圧倒的な使用性の高さを実現している。

スマレジは、拡張性が高いのもポイント。スマレジAPIを用意することで、CRMやERPなど外部のアプリケーションと連携し、利便性、生産性の向上を図れる。

スマレジはクラウドの特徴を生かし、常に最新のPOSシステムを利用可能。アカウントを作成するだけで、POSレジをすぐに導入できる手軽さや、アプリを使用するため、高価な専門機器が不要であるのも魅力だ。

さらに、スマレジの導入は、新型コロナウイルスの感染症対策にも効果的。セルフレジ、キャッシュレス決済、セルフオーダーの導入により、接触、対面の機会を減らし、感染リスクを低減できる。

2021年12月時点で、10万5000店舗以上がスマレジを利用。業種、業態、規模を問わず、高い支持を集める人気のPOSレジだ。

Square POSレジ

設定、m操作性の簡単さをセールスポイントに置いているのが、タブレット型のSquare POSレジだ。売上状況がひと目で分かる画面設計、視認性の高さで、初めてPOSレジを使用する人や、機械操作に不安のある従業員でも容易に扱えるとされる。それでいて、商品登録、在庫管理、顧客管理、従業員管理など、経営に必要なPOS機能が備わっている。

POSレジの利用開始方法としては、オンライン上でアカウントを登録するのみ。複雑な手続きは一切不要で、最短申し込み当日からPOSレジを導入可能だ。

また、Square POSレジは料金も特徴的。決済端末を利用する場合は、別途初期費用が発生するが、POSレジのアプリ自体は無料。登録手数料や月額料金は不要で、キャッシュレス決済が発生した時のみ、決済手数料も必要となる仕組みだ。

サービス提供元のSquareは、アメリカに本社を構える企業。13年に三井住友カードと業務提携し、日本へ上陸した。世界中で利用されるSquare POSレジは、各国200万以上の事業者が導入し、3億4000万以上のクレジットカードが取引に使用されている。実績面で言えば、トップクラスのサービスだろう。

Airレジ

株式会社リクルートが提供するPOSレジアプリが、Airレジだ。レジの基本機能や売上集計、分析、キャッシュレス決済など、他のサービスでも見られる機能は搭載。

特徴的なのが周辺機器を除き、初期費用、月額費用、保守費用が0円である点。基本レジ機能は無料となっており、イニシャルコスト、ランニングコストを抑えられるため、中小規模店舗にとっては、特に大きなメリットだ。

また、Airレジはfreee会計、弥生会計、マネーフォワードクラウド会計といった、人気の会計ソフトと連携できる。売上データを会計ソフトと自動連携することで、日々の帳簿入力の手間を削減可能。店舗経営など、本業に集中できるといえるだろう。

Airレジのアカウント数は、21年9月末時点で59万7000件を突破、利用者数は増加している。

POSレジのまとめ

POSレジは商品の購買分析に欠かせないものとして、多種多様な業界で導入されている。データ収集や分析にとどまらず、予約システムや勤怠システムなど、活用の幅も広がりを見せている。

消費者のニーズが多様化する昨今においては、経験則に基づいた店舗運営方針だけでなく、客観的なデータで経営していくことも重要だ。POSレジを用いた分析で、消費者のニーズを的確に捉えつつ、競合他社に負けない戦略を組み立ててほしい。

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