さとり世代とは?行動や価値観の特徴、ゆとり世代やつくし世代との違いも解説

2023.01.19

さとり世代とは、1980年代後半から2004年頃までに生まれ育った人を指している。不景気の時代背景もあり、さとり世代は他の世代とは違い独特の考えを持っている。この記事では、比較的よく言われるさとり世代の特徴や、ゆとり世代やつくし世代との違いについて、さらにビジネスでさとり世代とコミュニケーションするポイントなどを解説していく。

さとり世代とは

生まれた年代や育った頃の時代背景などによって、それぞれの世代に特徴が出る。人口が多く競争意識や仲間意識が強い団塊の世代、高度経済成長やバブル期を経験したベビーブーム世代などはよく耳にする世代である。

その後も、団塊ジュニア世代やゆとり世代などが生まれている。そして現在、新入社員や社会人となっている世代がさとり世代だ。さとり世代は、これからの経済社会を担い日本の未来を支える世代なのである。

さとり世代の年齢

さとり世代の具体的な年齢は一般的には1990年前後から2000年代前半生まれの人を指す。しかし明確な定義や線引きがあるわけではなく、氷河期世代の1980年代後半や、2005年に以降に生まれた人を含める場合もある。さとり世代の人口は約120 万人で、その多くはすでに社会人になっている世代である。

さとり世代の時代背景

さとり世代のさとりとは、悟りのことをいう。さとり世代が育った時代は、バブルが崩壊しリーマンショックなど経済が不安定で低迷していた時期である。多発するリストラなども目の当たりにしており、幼い頃から社会の厳しい現実を見て育っているため、悟りを開いているように見えることからさとり世代と名付けられた。

また経済だけではなく、東日本大震災、地球温暖化による大きな自然災害を幼少期に体験している世代である。さらに、受験や就職で困難な思いをしていることもあり、堅実な生き方をする傾向があるといえるだろう。

さとり世代と他の世代の違い

それぞれの世代のネーミングは、その世代の特徴を象徴している。各世代の特徴を他の世代と比較すると、世の中の流れを振り返ることができて面白い。またその世代の人々の性格や傾向は、彼らが育った時代背景が強く影響していることがよくわかる。

さとり世代とゆとり世代

ゆとり世代は、さとり世代の少し前の世代で、一部さとり世代と重複している。具体的には、1987年生まれから2004年生まれとされている。ゆとり世代は、教育指導要綱が改訂になったため週休2日で義務教育を受けた人たちになる。

個々を大切に育むことを目的としたゆとりある教育を受けて育ったゆとり世代は、ストレス耐性があまりない点が特徴といえる。ビジネスシーンでは自分から動くのではなく上司の指示を待つ、失敗を恐れるなどの傾向があるといわれている。

さとり世代は、そのような政治的な取り組みに強い影響を受けたゆとり世代を見て育ったため、人に左右されずにシビアな視点でものを見られるところがある。

さとり世代とつくし世代

つくし世代は、1980年代の後半以降に生まれた人を指し、これも一部がさとり世代と重複する。尽くす、つまり献身的で周囲に気を配り尽くす傾向がある世代である。周りの人に尽くすことが自分の喜びであり、一緒に楽しみたいと考えるため、SNSやコミュニティとの繋がりを大切にする。

また地元志向が強い点も特徴といえるだろう。幼なじみや同級生など気心の知れた仲間と楽しく過ごせる場所は、つくし世代にとってかけがえのないものなのである。つくし世代は、合理的で自分で物事を判断するさとり世代とは対照的といえるだろう。

さとり世代の特徴

さとり世代の特徴について詳しく紹介する。育った時代の影響を受けたさとり世代らしさが理解できるだろう。

ブランドにこだわらない

さとり世代は、ブランドや高級品、外車などにこだわりがない。バブル世代の人は、ハイブランド品や高級外車などをステータスと捉えて所有したがる傾向があった。しかしさとり世代は、経済が不安定な時期に育っていることもあり、ブランドではなく実用性に優れたものやコストパフォーマンスがいいものに価値を見出す

ただしさとり世代のノーブランド志向は、不景気で高級品を買えない諦めやお金がないことを無意識に正当化しているとの見方もある。

安定性を大切にする

さとり世代は、安定した生活を送ることを重視する傾向がある。不安定で先が見えなくても夢を追いかけ、結局は失敗に終わるといったことはさとり世代は好まない。有名企業に入社したり、会社で出世したりすることはさほど重要ではなく、安定した生活ができるよう堅実な将来の選択をしたいと考えている。

やはりさとり世代が育ってきた不景気な世の中や大規模な自然災害、困難な受験や就職活動などが、このような思考を生み出したといえるだろう。

インターネット世代

さとり世代は、インターネットが常に身近にあった世代である。デジタルネイティブとも呼ばれる。子どもの頃からすでにスマートフォンが身の回りにある環境で育ったため、インターネットから情報を得たりアプリの操作をしたりすることは日常的に行ってきた。

日本だけではなく世界とつながるインターネットと共に成長してきたため、グローバルな社会に適している、さまざまな情報を抵抗なく受けいれられるなどの傾向があるといえるだろう。また、常にインターネットから情報を仕入れているため、嘘やフェイクニュースに敏感な一面もある。

合理主義

さとり世代は現実的で合理主義である。ハイブランド品に興味がないことでもわかるように、さとり世代は見栄を張る傾向が低い。過剰な物欲は浪費と捉え、無理しなければ手に入らないものは手に入れなくていいと割り切れる。

バブル崩壊後の不景気な時代に育ったさとり世代は、現実社会の厳しさを知っている。そのため、身の丈を知って、必要なものをだけを所有して堅実に生活したいと考えるようになったと推測できる。

また無駄なお金を使わないためにインターネットを駆使し、欲しいものの口コミや他商品との比較などをしてから商品を手に入れる。さらに使わなくなったものはフリマアプリで売るなどして、合理的な消費ができる世代といえるだろう。

好きなものにエネルギーを注ぐ

さとり世代は合理的で、コストパフォーマンスを重視したうえでお金を使う。ただし、自分の興味のあるものや関心があることに関してはお金を惜しみなく使う傾向がある。

これもやはり不景気の時代背景が関係しているといえるだろう。不景気でお金があまりない中でうまくやりくりしなければいけない。他の出費を抑えて、好きなものを楽しみたいと考えるのである。

ビジネスシーンにおけるさとり世代

さとり世代はすでに社会人になっている世代である。ビジネスにおけるさとり世代の特徴も見ていこう。さとり世代の仕事に対する意識や傾向がわかると、彼らとうまくコミュニケーションが取れるようになり、さとり世代の強みを活かせる仕事を与えられるだろう。

会社への帰属意識が低い

さとり世代は帰属意識が低いため、働いている会社に対しての愛着や執着はあまりないのが特徴だ。さとり世代が育った時代は、すでに終身雇用制度が崩壊していた。そのため定年まで勤め上げる、会社のために仕事をするといった意識がない。

さとり世代にとっての会社とは、社会人になって社会に貢献するための場であり、仕事をすることで報酬をもらって生活するためのツールである。残業や仕事終わりの上司や部下との付き合いなどは、無駄な時間とお金とエネルギーを消費する、不要なものでしかないのだ。

プライベート優先

さとり世代は、仕事よりもプライベートを充実させたいと考える傾向がある。また合理主義の考えが仕事にも表れるので、コストパフォーマンスよく働きたいと思っている。つまり残業して残業代を稼ぐ発想はなく、仕事が終わったらすぐに帰って自分のプライベートの時間を大切にしたいと考える。

与えられた仕事に情熱を注いだり、出世するためにがむしゃらに働いたりはしない。安定した生活に必要なお金を稼げれば、あとはプライベートを充実させることに力を注ぎたいのだ。公私の区別をはっきりさせたい人も多く、会社の忘年会や同僚との飲み会などもそれほど熱心に参加しない。また、プライベートを詮索されることを嫌う傾向も強い。

効率性重視

さとり世代は、インターネットやパソコン、スマートフォンが幼い頃から身近に存在していた世代である。電子機器を使う生活が当たり前なので、仕事面でも効率性を重視してタスクをこなす能力が高い。一方で、業務を行う過程で他の可能性を探ったり気づいたりしにくい点がある。

また、仕事の指示に対しては忠実にこなそうとするが、指示された以上のことはしない傾向もある。さとり世代は任務には忠実で、効率よく仕事をこなすが、与えられた業務以上のことを自主的に行うことは少ないといえるだろう。

自己投資する

さとり世代は仕事はきちんとこなすが、会社のために仕事をしているという意識はあまりない。しかし仕事を通して自分のスキルを上げる、経験を積むという認識は強い。

これは不景気で不安定な時代に育ったため、安定した生活を得るために自己投資や自己成長しようという意識が働くからである。仕事は自分のキャリアアップのための手段と捉えている傾向があり、それが帰属意識の低さやプライベート重視の働き方などに反映されていると考えられる。

さとり世代と仕事をするときのポイント

さとり世代と仕事を円滑に進めるためのポイントをお伝えしよう。

命令ではなく提案を

さとり世代に仕事を任せるときには、命令されたと感じさせないようにするとよいでしょう。さとり世代は、やらされている、強制されていると感じてしまうとモチベーションが下がってしまう可能性も

合意主義で効率的に仕事を進めるさとり世代が受け入れやすいよう、この業務を行う必要性や、作業する手段などについて理論的に説明するといい。さとり世代が命令ではなく提案と捉えられるような形で仕事を依頼しよう。

合理性を意識して伝える

さとり世代にアドバイスをするときも、精神論や熱血的な指導はあまり適していない。物事を合理的に判断し、論理的に考えるさとり世代にとっては、精神論や熱血指導は、理解できず意味のないものに捉えられてしまう。自身の体験談をもとにしたアドバイスをしても、さとり世代は「自分のケースではない」と考えてしまうだろう。

さとり世代へのアドバイスは論理的に説明できるようにしよう。エビデンスがあれば、さらに効果的だろう。

マニュアルを作る

合理主義で効率的に仕事をこなすさとり世代にとって、上司や先輩のやり方を見て学ぶ、まずはとりあえずやってみるなどは苦手なやり方である。合理的なマニュアルを作り、はっきりとした指示を与えよう。また明確な評価基準があれば、さとり世代は積極的かつ効率よく業務を遂行してくれる可能性が高い。

この仕事にはどんな意味があるのか、目的は何かなどをしっかり理解してもらうことが大切だ。

成果主義ではなくプロセス重視

さとり世代には、成果ではなくプロセスを重視していることを伝えよう。たとえ仕事の結果が失敗に終わったとしても、さとり世代が業務を通して成長している点や努力している点に着目してほしい。

結果だけではなく過程も見て評価してくれているとさとり世代が感じれば、自己肯定感も高まる。さらにモチベーションアップにもつながるだろう。

指導・教育はやる気を削がない

さとり世代は、小さい頃からSNSに慣れ親しんできている。「いいね!」を集める投稿を上げるために熱心になる傾向がある反面、受け入れられない相手は簡単にブロックする。

仕事の指導や教育に関しても同様のことがいえる。そのため、拒否されないようにさとり世代に指導する術を身につけよう。

PNP法のように、最初にいい点を上げて褒めてから改善して欲しい点などを伝えるといい。最後に「君ならできるよ」「一緒に取り組んでいこう」などともう一度ポジティブな言葉をかけると、さとり世代のやる気を削がずに指導・教育ができるだろう。

プライベートを詮索しない

さとり世代は、合理的で帰属意識が低い。また公私の区別をはっきりする人が多いので、自分だけではなく相手のプライベートも大切にしていて干渉しない傾向がある。そのためさとり世代のプライベートを詮索するのはNGである。

さとり世代と仕事をするときは、仕事上だけの関係であることをしっかり意識しよう。教育や指導をする場合でも、プライベートな部分には極力足を踏み込まないようにしたい。例えば、さとり世代を社内の飲み会に誘って断われた場合、しつこく誘ったり詮索したりするのはやめよう。

さとり世代の伸び代を活かすコミュニケーションを

さとり世代は、合理的で安定志向、公私を分けて働く傾向がある。デジタルネイティブでもあるため、業務を効率よくこなす術に長けている点も特徴といえるだろう。

さとり世代の傾向を把握して、彼らの伸び代をさらに活かせるようなコミュニケーションを取れば、より円滑に仕事ができる。プライベートに干渉しすぎず、モチベーションが上がるような言葉をかけるとよいだろう。

お役立ち資料データ

  • 2023年 下半期 注目店スタディ

    2023年下半期注目のスーパーマーケット7店舗を独自の視点でピックアップし、企業戦略を踏まえた上で、出店の狙い、経緯、個別の商品政策(マーチャンダイジング)まで注目点を網羅。豊富な写真と共に詳しく解説しています。 注目企業における最新のマーチャンダイジングの取り組みや、厳しい経営環境と向き合うスーパーマーケットのトレンドを知ることができ、企業研究、店舗研究、商品研究などにご活用いただけるほか、店舗を訪問するときの参考資料としてもお勧めです。 <掲載店舗一覧> ・オーケー/銀座店 ・ヨークベニマル/仙台上杉店 ・ベイシア/Foods Park 津田沼ビート店 ・ヤオコー/松戸上本郷店 ・カスミ/…

  • 2023年 上半期 注目店スタディ

    2023年上半期注目のスーパーマーケット5店舗を独自の視点でピックアップし、企業戦略を踏まえた上で、出店の狙い、経緯、個別の商品政策(マーチャンダイジング)まで注目点を網羅。豊富な写真と共に詳しく解説しています。 注目企業における最新のマーチャンダイジングの取り組みや、厳しい経営環境と向き合うスーパーマーケットのトレンドを知ることができ、企業研究、店舗研究、商品研究などにご活用いただけるほか、店舗を訪問するときの参考資料としてもお勧めです。 <掲載店舗一覧> ・ ヤオコー/トナリエ宇都宮店 ・ サミットストア/川口青木店 ・ 原信/紫竹山店 ・ ライフセントラルスクエア/ららぽーと門真店 ・ …

  • 有力チェーントップ10人が語る「ニューノーマル時代のスーパーマーケット経営論」

    有力スーパーマーケットチェーンの経営者10人にリテール総合研究所所長の竹下がインタビューを実施し、そのエッセンスをまとめています。 インタビューを通じ、日本を代表する有力トップマネジメントのリアルな考えを知ることができ、現在の経営課題の主要テーマを網羅する内容となっています。 変化する経営環境において、各トップマネジメントによる現状整理と方向性を改めて振り返ることは、これからの新しいスーパーマーケットの在り方形を模索する上でも業界にとって大変有用と考えます。 ぜひ、今後のスーパーマーケット業界を考える材料としてご活用ください。 ■掲載インタビュー一覧 ライフコーポレーション 岩崎高治社長 ヨー…