GMS(総合スーパー)とは?ショッピングセンターやスーパーマーケットとの違いなどと併せて解説

2024.02.08

2023.06.01

食料品から衣類、住関連品まで多種多様な商品を取り扱い、消費者の幅広いニーズに応えている小売業態の「GMS(総合スーパー)」。大規模な敷地面積を保有し、駐車場を備える店舗も多いGMS(総合スーパー)だが、定義が曖昧で、同じ小売業態のSCやSMなどと混同する人もいるのではないだろうか。

本記事では、GMS(総合スーパー)の概要から他の小売業態との違い、GMS(総合スーパー)の代表企業例まで解説していく。

GMS(総合スーパー)とは

GMSとは、「General Merchandise Store(ゼネラルマーチャンダイズストア)」の頭文字を取った用語。「General」は「全般的な」、「Merchandise」は「商品」という意味を持つ単語で、日本語では「総合スーパー」を指す。

食品から衣料品、生活雑貨、家電製品といった様々な商品群を一つの店舗で取り揃えて販売する店が特徴的だ。これにより、顧客はさまざまな種類の商品を一箇所で購入することができる。1箇所で買い物をすませることができる「ワンストップショッピング」に最適な業態となる。

総合スーパーはある程度の店舗面積が必要になるため郊外に位置することが多く、広い駐車場を持ち、ファミリー向けの買い物に便利な設計がされることが多い。また、近年では価格競争力を生かした割引商品やプライベートブランド商品の提供も多く見られるようになっている。

GMSの店舗例としては、イオン・西友・イトーヨーカドー・ダイエーなどが挙げられる。

GMS(総合スーパー)の定義

総合スーパーの定義は少々曖昧な部分も多いが、経済産業省が「商業統計調査」を実施する際に利用する「業態分類の定義」では、総合スーパーおよび百貨店が下記の通り定義されている。

  • 衣食住にわたる各種商品を小売し、そのいずれも小売販売額の10%以上70%未満の範囲内にある事業所
  • 従業員者が50人以上の事業所

また、GMSの売場面積の大きさによっても、下記の通り呼称が変わる。

  • 大型総合スーパー:3000㎡以上(都の特別区及び政令指定都市は6000㎡以上)
  • 中型総合スーパー:3000㎡未満(都の特別区及び政令指定都市は6000㎡未満)

GMSは基本的に、衣食住に係る幅広い商品を展開する大衆向けの小売業態と言えるだろう。

セルフサービス方式を採用

GMSでは、セルフサービス方式という販売形態を採用しているのも一つの特徴。経済産業省の「商業統計調査」に基づく用語説明によると、セルフサービス方式は下記のように定義されている。

  • 商品が無包装、あるいはプリパッケージされ、値段が付けられていること
  • 備え付けの買物カゴ、ショッピングカートなどで客が自由に商品を取り集められる形式
  • 売場の出口などに設けられた勘定場で客が一括して代金の支払いを行う形式

上記条件に該当する売場面積を50%以上保有し、実際に販売を行っている事業所が「セルフサービス方式採用事業所」と称される。少々複雑な表現にも感じられるが、消費者の中では一般化している小売店の販売形態と言えるだろう。

GMS(総合スーパー)の特徴

GMSの大きな特徴として挙げられるのが、集客力の高さ。食品から衣類まで多種多様な商品を取り扱っているため、消費者は複数の店舗を訪れる必要なく、欲しい商品の購買が可能。その優れた利便性から、集客率の向上につながっている。

商品を大量に仕入れ、コスト低下に成功しているのもGMSの特徴。単品で注文するより、大量に商品を仕入れたほうが単価が安くなるケースも多く、利益の最大化を期待できる。その他、仕入れ業務を本部で集中化し、販売を店舗が行って運営の標準化を図るチェーンオペレーションも実現可能と考えられる。

また、近年では自社で商品を企画・生産し、販売するプライベートブランドの拡大に乗り出すGMSも多い。GMSのプライベートブランドとしては、下記のような例が挙げられる。

  • イオン:トップバリュ
  • イトーヨーカドー:セブンプレミアム
  • 西友:みなさまのお墨付き

プライベートブランドは消費者のニーズを取り入れやすく、加えて仕入れ原価も抑えられるため、一層利益率の高い店舗運営につながると言えるだろう。

GMS以外の業態(SCやSM、HC、CVSなど)との違い

GMS以外にも、小売業界ではSC・SM・HC・CVSといった形態が存在する。ここでは、GMSと各形態の違いを解説していく。

GMSとSCの違い

SCとは、「Shopping Center(ショッピングセンター)」を略した用語である。一般社団法人日本ショッピングセンター協会によると、SCは下記の通り定義されている。

  • 小売業の店舗面積は、1,500㎡ 以上であること
  • キーテナントを除くテナントが10店舗以上含まれていること
  • キーテナントがある場合、その面積がショッピングセンター面積の80%程度を超えないこと
  • 但し、その他テナントのうち小売業の店舗面積が1,500㎡以上である場合には、この限りではない
  • テナント会(商店会)等があり、広告宣伝、共同催事等の共同活動を行っていること

SCは核となるGMSの他、専門店・レジャー施設・映画館・旅行代理店といったサービス業の店舗もテナント出店しているのが大きな特徴。複合型商業施設として、消費者は小売業以外の店舗も利用でき、ショッピングだけではなく、食事や娯楽も楽しめる場となっていることが多い。

事業者視点では、他社ブランドの力を借りて自社の弱みを補いつつ、テナント出店するブランドもSCの高い集客力で消費者に商品・サービスをアプローチ可能。相互補完の関係を作り出せる店舗業態と言えるだろう。

つまり、GMSは一つの店舗が多様な商品を提供しているのに対して、SCは多数の独立した店舗が集まって形成されるショッピングの複合体という点が大きな違いとなる。

日本におけるSCの代表例としては、イオンモール、ららぽーと、三井アウトレットパークなどが挙げられる。

GMSとSMの違い

SMとは、「Super Market(スーパーマーケット)」を略した用語である。経済産業省の業態分類によると、SMは下記の通り定義されている。

  • 衣食住の商品いずれかの取り扱いが70%以上であること
  • 売場面積が250㎡以上であること
  • セルフサービス方式を採用していること

構成する商品によって呼称が変わるケースもあり、食品を70%以上取り扱っていれば「食料品スーパーマーケット」、衣料品を70%以上取り扱っていれば「衣料品スーパーマーケット」、住関連品を70%以上取り扱っていれば「住関連スーパーマーケット」と呼ばれる。厳密には、GMSと取り扱い商品の構成比および売場面積が異なるが、チェーンオペレーションの実現による低コスト化など、GMSと類似する部分も多い。

GMSとHCの違い

HCとは、「Home Center(ホームセンター)」を略した用語である。同じく経済産業省の業態分類によると、HCは下記の通り定義されている。

  • 住関連スーパーのうち、金物・荒物・種・種子の取り扱いが0%超え70%未満であること
  • 売場面積が250㎡以上であること
  • セルフサービス方式を採用していること

HCは住関連スーパーマーケットの一種であり、加えてセルフサービス方式を採用。GMSと販売形態は類似しているが、HCは日曜大工用品・住宅設備・園芸用品などをメインに取り扱っているため、GMSと展開する商品が大きく異なる。

GMSとCVSの違い

CVSとは、「Convenience Store(コンビニエンスストア)」を略した用語である。同じく経済産業省の業態分類によると、CVSは下記の通り定義されている。

  • 飲食料品を扱っていること
  • 売場面積が30㎡以上250㎡未満であること
  • 営業時間が14時間以上であること

実際に取り扱う商品は食品・飲料品・日用品など幅広いが、売場面積がGMSより限定されている故、商品の種類としてはGMSに及ばない。一方で、CVSは店舗が全国に数多く点在しており、GMSに比べて利便性は非常に高い。

また、営業時間に関しては14時間以上と定義されているが、終日営業が一般化している。GMSとは同じ小売店だが、顧客層自体も大きく異なると言えるだろう。

GMSの代表例

ここでは、日本の代表的なGMS例を紹介していく。

イオングループ

イオングループはイオンリテール株式会社、イオン北海道株式会社、トップバリュコレクション株式会社など13のグループ会社を設立し、GMS事業の展開を進めている。GMS事業の営業収益に関しては、2021年2月期の3兆3,604億円に対し、2022年2月期は3兆3,004億円と1.8%減。

しかし、2023年2⽉期第3四半期決算によると、前年からの損益改善は140億円とコロナ前の損益水準を上回る結果に。成長カテゴリーやトップバリュの取り組みを強化するH&BC、および食品関連がGMS事業をけん引した。

また、コスト面に関しても見直しを実施。在庫削減を目指した構造改革により、GMS事業のライン別在庫回転日数は下記の通り改善された。

2019.3Q累計2022.3Q累計
衣料117.7日92.0日
食品11.2日8.6日
住居余暇122.8日102.8日
HBC67.4日61.3日
会社計46.0日32.7日

その他、固定費の圧縮による大幅増益や、昨今の電気代単価の上昇に関しても、使用量の削減および販管費総額をコントロールすることで吸収。直営売上総利益率は2021年3Q累計の27.6%から、2022年3Q累計の28.0%まで伸長している。

小売業界のトップ企業ならではの最適化された販促手法や、顧客の暮らしにソリューションを提案し続けるトップバリュをはじめ、コスト削減も積極的に推進し、GMS事業の成長につなげている。

イトーヨーカドー

イトーヨーカドーは食料品・衣料品・住居関連商品・医薬品などを扱うGMSを展開している。2023年6月時点における店舗数は126店で、主な展開地域は関東。現在は都市型小型食品スーパーである「イトーヨーカドー食品館」の拡大にも力を入れており、上質・手軽さ・安全・安心をコンセプトとして、顧客の囲い込みを図っている。

イトーヨーカドーでは、プライベートブランドのセブンプレミアムを取り扱っており、毎日食べたいと思える上質な食品を販売。さらに、Free Wi-Fiを設置している店舗が多いのも魅力だ。外出先でもデータ量を気にせず通信できるだけでなく、訪日旅行者に対しても買い物しやすい環境を整えている。

イズミ

中国・四国・九州を中心に店舗を展開するイズミも、GMS事業を手掛ける企業の一つだ。地域の生活基盤となるため、有力テナントとの協業や百貨店ニーズの取り込みなど、機能・サービスの強化を図っている。その他、商品力と提案力を強化することで多様なライフスタイルに対応し、LTVの向上・新規顧客層の拡大につなげている。

現在はGMS事業だけでなく、SM事業の展開およびデジタルコマースも実現。GMS事業だけに頼らず、リスクを分散して経営の安定性向上も目指している。

GMSのまとめ

巣ごもり需要の増加やEC市場の拡大なども影響し、売上が低迷したGMSは少なくない。しかし、GMSに対する消費者からの信頼感は非常に厚く、生活インフラとする人も多いと考えられる。

とは言っても、消費者行動が多様化する現代においては、既存の施策だけでなく新たな戦略を打ち出すことも重要。GMS事業に限らず、大きな変革が進む小売業界に身を置く企業は常に消費者の目線に立ち、ニーズに応えていく必要があると言えるだろう。

編集長竹下の視点

GMSはもともと米国のシアーズやJCペニーなどをグルーピングした呼称で、日本でも総合的な品揃えの大型店をそのように呼ぶようになったが、米国のGMS企業はプライベートブランド主体、かつ食品は取り扱わないため、ナショナルブランド主力、食品も取り扱う日本のGMSとは異なる。そのため、日本のGMSを「日本型GMS」と呼ぶこともある。

日常生活に必要な商品を1店に集約したGMSはその利便性によって日本でも大きな存在感を持つに至ったのは承知のとおり。

かつては小売業の大手企業は百貨店で占められていたが、ダイエーを始めとしたGMS主力企業が続々と売上高上位企業に名前を連ねるようになり、結果として現在でも小売業グループトップのイオン、セブン&アイを始め多くの企業が売上高上位企業にランクインしている。

こうした総合小売業が売上高上位を占めるのは世界的にも共通といえ、例えは米国ではかつてはGMS、現在ではその変化形ともいえるウォルマートが売上高のトップであるし、欧米でも同様に総合品揃えの大型店のハイパーマーケットを展開する企業が上位を占める構図がある。

ただし、消費の多様化、あるいはネット企業の台頭などによって、次第に総合品揃えのGMSが支持を失いつつあることは確かで、そのため各社、多くのテナントと合わせた大型ショッピングセンターとしての出店、あるいは総合ではない専門店の出店、食品を主力にしたより日常消費に特化したフォーマットの出店など、より支持の高い業態、効率的な運営の模索を続けている。

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