粗利ミックスとは?計算方法、メリット、活用方法を解説

2024.03.27

2023.07.11

小売業や流通業では、原価率の異なる商品を取り扱って利益を出す必要がある。原価率の異なる商品をトータルで管理し、利益を出すために有効な手法が「粗利ミックス」だ。今回の記事では、粗利ミックスの概要や計算方法、活用するメリットとデメリット、業種別の粗利ミックスの活用例を解説する。

粗利ミックスの概要と計算方法

粗利ミックスの概要や計算方法を解説する。

粗利および粗利ミックスとは

粗利とは売上高から仕入原価・製造原価を差し引いた利益だ。売上総利益とも呼ばれ、「売上高−(仕入れ原価+製造原価)」で算出できる。

粗利ミックスとは、粗利益率の高い商品と低い商品を組み合わせた商品グループを構成し、商品全体での最終的な粗利率を一定額確保する、または向上するための手法だ。セルフ式のスーパーマーケットの生みの親である、マイケル・カレンによって考えられた販売戦略と言われている。

スーパーマーケットをはじめとした小売業や飲食業では、利益率の異なる商品を取り扱う。無計画にただ商品を並べて販売するだけでは、安定した利益を出すことはできない。そのため粗利ミックスを活用して利益をコントロールすることで、トータルで利益を出すことができる。

たとえば集客目的の利益率が低い商品と、利益は出せるがやや手に取りにくい利益率が高い商品を組み合わせることで、集客しつつ利益率の高い商品も手に取りやすい状況を作り、トータルでの利益率を確保できる。

粗利ミックスと相乗積

粗利ミックスを活用する上で重要な指標となるのが「相乗積」だ。相乗積とは、構成した各グループの商品の利益の貢献度を可視化したもので「商品の売り上げ構成比×商品の粗利益率」で算出できる。

相乗積を算出すると、粗利ミックスの売上の構成比や粗利率のコントロールに役立つ。粗利率を下げて売上構成率を上げる、または粗利率を高めて売上構成比を下げるといったように、相乗積の貢献度によって粗利率額が最大化できる方法を探ることができるだろう。

たとえば店舗で商品構成を考えるときに、相乗積が低く低粗利率の商品があっても、相乗積が高い「稼げる」商品群を伸ばせれば店舗全体の粗利率をアップできる。売れ行きの良い商品の利益で店舗全体の売上をカバーできるため、売れ行きの悪い商品への施策のみに注力する必要もなくなるだろう。

粗利ミックスのメリットとデメリット

粗利ミックスを手法として導入することで、メリットが得られる一方デメリットもある。粗利ミックスにおけるメリットとデメリットを解説する。

粗利ミックスのメリット

粗利ミックスのメリットは、「利益の最適化」ができることだ。「とにかく売り上げを上げれば良い」といった売上一辺倒の営業・販売スタイルを、粗利ミックスを取り入れることで売上や利益のバランスを考えながら、効率よく販売戦略を考えられる。

利益率の低い商品と高い商品を適切にミックスすることで、売上高に対する粗利益の合計を増やすことができ、また、一部の商品群だけに依存せず、幅広い商品から利益を得ることで、特定の市場動向や消費者の嗜好の変化によるリスクを分散を期待できるだろう。

また、併せて、利益率に応じてプロモーションや割引セールを戦略的に行うことで、売上は維持しつつ、全体的な粗利益を最大化するといったことも考えられる。

現在売上一辺倒のスタイルを採用していて利益が頭打ちになっている場合、粗利ミックスを取り入れれば売上アップへの打開策となる可能性もあるだろう。

ただし営業や販売スタイルを根本から変えなければいけないこともあるため、新しい施策やスタイルが浸透するのには時間がかかる場合もある。粗利ミックスを取り入れる際には、現在の店舗の状況を把握したうえで、必要に応じて段階的に導入するなどの工夫をする必要があるだろう。

粗利ミックスのデメリット

粗利ミックスのデメリットは、「相乗積ばかり見るとリスクが発生する」ことだ。

相乗積の高い商品がもっとも利益を出せる商品とは限らないケースがある。相乗積や粗利益率だけを見るのではなく、トータルの粗利益額が確保できているかを意識しながら取り組む必要がある。

業種別の粗利ミックスの活用例

業種別の粗利ミックスの活用例を解説する。

小売店の活用例

小売店での基本的な粗利ミックスの活用方法は、顧客に対して「安さ」をアピールするグループで顧客を誘引し、付加価値などで「高利益」が狙えるグループ商品の購入へ誘導する戦略だ。

たとえばスーパーマーケットなら生鮮品など売り上げ構成比の高い商品の粗利益率を下げて「目玉商品」として集客し、お惣菜など付加価値を付けたグループへ誘導し、粗利益率を上げる方法がある。

飲食店の活用例

飲食店では、メニュー単品では粗利益が低い場合がほとんどだ。そのため「ハンバーガー+ポテトとドリンク」や「パスタ+サラダとドリンクバー」など、メニュー+セットをおすすめする粗利ミックスの手法を取り入れていることが多い。

粗利ミックスを活用し利益を最大化する戦略を取り入れよう

粗利ミックスの概要やメリット・デメリット、業種別の粗利ミックスの導入事例を解説した。

粗利ミックスは、売り場や商品ラインナップの企画段階で重要な役割を果たし、効率的な売り場運営を実現し、企業の財務状態を改善に導く鍵となる。また、売れ行きの良い・悪い、利益が高い・低いのみで商品構成や販売スタイルを考えるのではなく、商品全体での最終的な売れ行きや利益のバランスを見て戦略を立てられるだろう。

現在売り上げが伸び悩んでいるときや、商品の構成で悩んでいるときには、粗利ミックスを活用し利益最大化につなげよう。

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