粗利とは?利益との違いや計算方法、粗利率を上げる方法を解説

2022.11.08

2022.07.28

個人や企業の事業利益を計算する際に出てくる利益のなかでも、もっとも重視すべき利益が「粗利」だ。粗利および粗利率は、商品やサービスの魅力や企業としての競争力を測る指標にもなる。ほかの利益の指標も参考にしながら、企業や事業所としての安定的な経営につなげよう。

この記事では粗利の意味や概要、営業利益や経常利益などほかの利益や売上との違いや比較、計算方法、さらに粗利率を上げるための方法を解説する。利益の計算をするときから、利益を上げる戦略を練るときまで、ぜひ参考にしてほしい。

粗利の概要と計算方法

粗利の概要と計算方法、粗利の割合を示す粗利率について解説する。

粗利とは

粗利とは個人や企業の利益を表す「損益計算表」に記載される、5つの利益区分の内のひとつだ。読み方は「あらり」。損益計算表内では「売上総利益」と示される利益が、粗利にあたる。粗利は名称の通り、商品やサービスによるシンプルな利益を示した数字を指す。

粗利の計算方法

粗利は「売上高-売上原価」というシンプルな計算方法で簡単に算出できる。売上高とは、商品サービスの売上の総計だ。

売上原価とは「期首在庫+当期仕入高-期末在庫」で計算され、売れた商品やサービスに対してかかった直接的なコストを指す。損益計算表には売上高、売上原価、売上総利益(粗利)の順番に記載する。

たとえば材料費150円、500円で販売している弁当の粗利を出す場合、「500円(売上高)-150円(売上原価)=350円」が粗利となる。

粗利には、売上までにかかった経費や税金、経済活動による損失などは考慮されない。商品やサービスのみでもたらした利益に当たるため、粗利が高ければ高いほど商品やサービスそのものの魅力や価値観が高いといえるだろう。

粗利率とは

粗利率とは、売上高に対して粗利がどのくらいの割合を占めているかを表した数値だ。粗利率は「粗利÷売上高」で算出でき、粗利率が高ければ高いほど商品やサービスからの直接的な利益が多い、つまり商品やサービスに付加価値や魅力がある、ということがわかる。

目指すべき粗利率の目安や平均は、業種によって異なる。たとえば製造業は原材料費を主とした売上原価が多くかかるため粗利率は低くなる傾向にある。

サービス業やIT業は物理的なモノを提供するのではなく、接客や施術、コンサルティングなどのサービスを提供する業種のため原材料費はあまりかからず、売上原価が低くおさえられる。そのため製造業とは異なり粗利は高くなる傾向にあるだろう。

粗利とほかの利益との違い

損益計算表には、粗利である「売上総利益」に加えて「営業利益」「経常利益」「税引前当期利益」「純利益」の5つの利益区分が存在する。粗利とほかの利益との違いを比較する。

営業利益とは

営業利益とは、個人および企業が本来の事業によって稼ぎ出した利益のことだ。たとえば弁当の販売を行っている店舗なら、弁当の売上による利益が営業利益となる。

営業利益は「粗利-販売費および一般管理費」で算出され、販売費および一般管理費とは広告費、人件費、店舗や事務所の家賃、光熱費などの経費が該当する。弁当そのものの売上が粗利であるのに対して、売上から人件費などの諸経費を引いて算出した利益が、営業利益となる。

経常利益とは

経常利益とは、個人および企業の本来の事業に加えて、株の売却益、本業以外の事業で稼ぎ出した利益の総計の内、いつも通り(経常)の活動で稼ぎ出した利益を指す。経常利益は「営業利益+営業外収益-営業外費用」で算出される。営業外収益とは受取利息や配当金により利益を指し、営業外費用とは支払利息やそのほかの営業活動費用を指す。

商品やサービスそのものの売上だけでなく、利息や株などによる利益も含まれている点が粗利と経常利益との違いだ。ただし、経常利益は「経常」の名称通り、本業以外の事業や臨時収入などの利益や損失は含まれていない。

税引前当期利益とは

税引前当期利益とは、該当する時期に支払う税金を差し引く前の利益を指す。「経常利益 +特別利益-特別損失」で計算される。特別利益とは固定資産売却益など、特別損失は災害損失などを指し、異常な原因および臨時的な利益や損失を含んでいるのが特徴だ。

純利益とは

純利益とは、ひとつの決算期において企業の収益全体から費用や法人税などの税金をすべて差し引き、最終的に残った利益を指す。「税引前当期純利益-法人税等の税金合計額」で算出できる。

粗利が注目、重要視される理由

粗利はほかの利益区分よりも経営上、収支計算上重視される傾向にある利益だ。粗利がなぜ注目、重要視されるかの理由を解説する。

商品やサービスの価値の指標になる

粗利は売上高から売上原価を引いて算出されるため、商品やサービスそのものの価値の指標となる。粗利の目安や平均は業種によって異なるものの、粗利が高ければ商品やサービスの付加価値や魅力が高く、逆位粗利が低ければ逆に商品やサービスに付加価値や魅力がない、ということは共通しているといえるからだ。

他社との競争力を測れる

粗利は商品やサービスの魅力や付加価値の指標ともなるため、個人や企業の本業に競争力があるかの目安にもなる。粗利が高ければ競合への充分な競争力があることを表し、逆に粗利が低ければ競合との競争に負ける可能性が高い。本業や臨時的収入をはじめ、事業内容や取り扱い商品、サービスの入れ替えや見直しなどの判断材料としても粗利は使われる。

経費が粗利を超えなければかならず利益が発生する

粗利は粗利以下の営業利益、経常利益などのほかの利益区分が算出される元にもなる利益であり、「会社の儲けの源泉」とも呼ばれている。つまり、粗利から人件費、広告費、家賃や光熱費などのほかの経費が支払われるため、総経費が粗利を超えなければ、かならず利益が発生することになる。個人や企業の利益を把握するための基礎となることも、粗利が重視されている理由のひとつだ。

粗利率や収益率を上げる方法

会社の儲けに直結するだけでなく、商品やサービスの付加価値、企業や事業者としての競争力とも関わる粗利は、事業を安定的に継続するためにも重要な指標だ。

経費が粗利を超えなければかならず利益が発生するため、できるかぎり粗利を高くしたいと考える事業者も多いだろう。売上のなかで粗利がどの程度の割合を示しているかを表した粗利率とともに、儲けである収益率を上げるための方法を解説する。

商品やサービスの単価を上げる

商品やサービスそのものの単価を上げれば、当然粗利率は上がる。ただし、ただ価格を上げただけでは逆に売れ行きが悪くなる、売れなくなる可能性も高い。単価を上げても売上を確保するためには、商品やサービスの魅力や付加価値を見直してみるのが重要だ。

たとえば商品やサービスの品質を上げる、競合他社では提供していない付加価値を付けて差別化するなど、価格が高くても消費者に選ばれる商品やサービス作りが必要になる。

売上原価を下げる

粗利は売上から材料費などの売上原価を引いて算出されるため、売上原価が下がれば売上を粗利が占める割合が高くなり、粗利率が上がる。

売上原価を下げるには、材料費に無駄がないか見直す、製造や加工などの工程数を見直す、製造方法や加工方法を見直すなどの取り組みが有効だ。ただし、売上原価を下げることに注視するあまり、商品やサービスの品質や付加価値を下げることにならないように注意しよう。

粗利以外の収益区分を見直す

粗利は個人や企業の収入を決める重要な要素だが、かならずしも粗利が高ければ儲けが大きいとは限らない点も注意が必要だ。粗利から人件費や広告費、家賃や光熱費などの経費を差し引いたものが、最終的な利益となる。

たとえば売上高200万円、売上原価100万円、粗利100万円のA社と売上高150万円、売上原価100万円、粗利50万円のB社があるとする。

A社の方が粗利は高いが、A社が都市部などで家賃が高い、営業時間が長いため光熱費や人件費が高いなどの理由で販売費や一般管理費が70万円だったとすると、営業利益は100万円-70万円で30万円。

B社はEC事業中心で人件費を安くおさえられたことなどで販売費や一般管理費が10万円だった場合、営業利益は50万円-10万円で40万円と、粗利の低いB社の方が営業利益は高くなる。

粗利を高くするのはもちろん、販売費や一般管理費などの経費をおさえることや、本業による収入だけでなく状況に応じて臨時的な事業を行う方法なども利益率を上げることにつながるだろう。

たとえばふだん対面での弁当販売をしている店舗が、デリバリーやケータリングサービスにも対応する、店舗で提供している弁当の冷凍食品を販売する、などの取り組みを行うことで、本業以外の利益を上げられる。

粗利を上げて事業の安定的な経営を目指そう

粗利の概要やほかの利益との違い、粗利が重視される理由や粗利率、収益率を上げる方法を解説した。粗利は企業や事業所として基礎となる儲けの指標でもあり、利益があるかないか、商品やサービスに付加価値があるか、競争力はあるかなども測れる。

ただし粗利が高ければ儲けは十分と考えるのではなく、売上原価や販売費、一般管理費などトータルでの経費も考えたうえで利益を算出するのが重要だ。粗利率や収益率を上げる取り組みを取り入れることで、事業の安定的な経営にもつながるだろう。

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