サーキュラーエコノミーとは?国内企業の取り組み事例などを交えてわかりやすく解説

2022.10.28

2022.03.08

「サーキュラーエコノミー」は廃棄物ではなく新たな富を生み出すという循環型経済モデル。温室効果ガスの排出量ゼロの「脱炭素社会」の実現に向けてさまざまな取り組みがなされているが、「サーキュラーエコノミー」は脱炭素社会の実現への貢献に加えて、利益を生むとして世界的に注目されている。

日本でも、2022年4月にプラスチック利用に関する新法である「プラスチック資源循環促進法(プラスチック新法)」が施工され、プラスチック資源循環の高度化に向けた環境整備・サーキュラーエコノミーへの移行を促進されている。

本記事では、サーキュラーエコノミーとはどのような経済構造なのか、リニアエコノミーや3Rとの違い、ビジネスモデル、さらに企業の取り組み事例を紹介していく。

サーキュラーエコノミーとは?

サーキュラーエコノミーとリニアエコノミーの違い

サーキュラーエコノミーとは、循環型経済のこと。私たちが普段使っているモノは、さまざまな資源から作られ、不要になると廃棄される。

しかしサーキュラーエコノミーでは不要になっても廃棄せず、新たな資源として活用していくことで、廃棄物を生み出さず、新たな富を生み出す。環境と経済の両側面で利益を追求できるという大きな特徴がある。

サーキュラーエコノミーとよく比較される言葉にリニアエコノミーがあるが、リニアエコノミーとの違いは何だろうか。

リニアエコノミーとは直線型経済のことで従来の経済構造である。サーキュラーエコノミーが円を描くように資源を循環させていくのに対し、リニアエコノミーは資源から製品を作り、不要になればそのまま廃棄するという一方通行で完結する。

リニアエコノミーでは大量生産、大量消費がおこなわれ、確かに利益は産まれるが、大量廃棄もおこなわれる。大量廃棄が繰り返されることで、処理しきれない廃棄物による環境汚染や、資源の限界といった課題が生じており、サーキュラーエコノミーへの取り組みが必要になっているのだ。

サーキュラーエコノミーの3原則

では、サーキュラーエコノミーを取り入れるにはどのようなことに着目すればいいのだろうか。サーキュラーエコノミーを推進するエレン・マッカーサー財団はサーキュラーエコノミーの3原則を設けている。

廃棄物を生み出さないデザイン(設計)をおこなう

製品と原料を捨てずに使い続ける

自然システムを再生する

消費者が不要になったとき製品の一部を廃棄、一部を資源として活用するのではなく、製品作りの段階で廃棄物を生み出さない設計をあらかじめおこなうことが重要だ。サーキュラーエコノミーは「バタフライダイアグラム」という図で表されており、技術的サイクルと生物的サイクルの2つの側面で資源の循環をとらえている。

技術的サイクルでは、石油や金属、鉱物といった枯渇資源を再利用やリサイクルなどにより循環できる設計に。生物的サイクルでは、動物や植物などの再生可能資源を自然界で再生できるように有害な化学物質などが入らない設計作りをする必要がある。

3Rとサーキュラーエコノミーの違い

資源を循環させるサーキュラーエコノミーと近い考え方に3Rがある。3Rとは、Reduce(リデュース)、Reuse(リユース)、Recycle(リサイクル)のこと。

Reduce(リデュース)・・・廃棄物の発生を少なくすること

Reuse(リユース)・・・製品を繰り返いし使用すること

Recycle(リサイクル)・・・廃棄物等を資源として有効活用すること

特にリサイクルは、資源として再利用するためサーキュラーエコノミーと似ている。しかしサーキュラーエコノミーは廃棄物が出ない前提で設計されているため、そのまま資源として循環できる。

一方で、リサイクルは設計段階で廃棄物については考慮されていない製品もあり、製品の一部を廃棄、一部を資源として活用していくといった違いがある。

3Rは、リニアエコノミーによる大量生産や大量廃棄と関連した環境保護活動であり、サーキュラーエコノミーでは環境保護に加えて利益創造という両方を目指しているという点も違いがある。

サーキュラーエコノミーが注目される理由とは?

どうしてサーキュラーエコノミーが注目されているのだろうか。その理由は大きく2つある。

地球環境を守ることに繋がる

地球環境を守ることに繋がる

世界的に人口が増加していく中、リニアエコノミーの直線型経済のままでは大量生産、大量廃棄が起こり、廃棄物により環境汚染が進んでしまう。

異常気象や地球温暖化による環境問題といった課題があるが、廃棄せず循環させるサーキュラーエコノミーでは、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの排出量をゼロにする「脱炭素社会」にも貢献する。

限りのある資源

世界人口の増加や、新興国の成長により資源への需要は高まると考えられる。しかし資源には限りがあり、価格の高騰も懸念される。特に代替の効かず、供給不安のある「クリティカルメタル」などの希少資源は供給量の確保が必要になるため循環しての利用が必要になる。

サーキュラーエコノミーの5つのビジネスモデル

ビジネスではどのようにサーキュラーエコノミーを取り入れていけばいいのか。世界最大のコンサルティングファームであるアクセンチュアは、サーキュラーエコノミーの5つのビジネスモデルを提唱している。

①サーキュラー型サプライチェーン

リサイクル可能な原材料をリサイクル使用し、供給リスクを軽減。循環型サプライ材料の利用によってコスト削減と環境負荷軽減を両立。

②回収・リサイクル

本来の用途としての寿命を迎えた製品を回収する。回収した製品から、素材や部品などを取り出し、再利用する。また製造段階で生じた廃棄物を再利用するなど、廃棄物とされるものを資源に戻す。

③製品寿命の延長

製品の一部が使えなくなったことで廃棄してしまうのではなく、部品の交換や、修理をすることで製品を長く使えるようにする。

④シェアリングプラットフォーム

デジタル技術・SNSの進展を背景に、使用していない製品や使用頻度の少ないものを、シェアリングプラットフォームを活用し、他の人と共同利用や共同所有する。

⑤サービスとしての製品

製品の所有権を企業が持ち、製品の切り売りではなく、サービスビジネスに転換して再利用、長寿命化、信頼性の向上に注力して顧客価値と事業収益を向上を図る。

サーキュラーエコノミーの企業の取り組み事例

セブン&アイグループ

出所:7andi

①ペットボトルの再資源化

ペットボトル等プラスチックの処理には海洋汚染や天然資源の枯渇、温室効果ガス排出などが問題となっている現状があり、セブン&アイグループでは使用済みのペットボトルの再資源化に取り組んでいる

「一(はじめ)緑茶一日一本」はボトルtoボトルの商品で、飲み終わったペットボトルを飲料用ペットボトルとして100%再利用する。

これにより1本あたり約25%のCO2の削減が可能。購入者は飲み終わった後、ラベルとキャップを外し、ボトルを洗浄してからセブン&アイグループの各店舗に設置される回収機に入れる。

回収機に入れられたペットボトルは投入後すぐに圧縮される。集められたペットボトルは民間の回収業者や地元の清掃組合などが収集。

ペットボトルのリサイクラー「遠東石塚グリーンペット」により使用済みのペットボトルを再資源化し、日本コカ・コーラの「コカ・コーラシステム」により新たに製品が製造される仕組みだ。ペットボトル回収に協力した消費者にはnanacoポイントが付与される。

②リサイクルグリーンダウン

羽毛原料が不足する中、羽毛のリサイクルの必要性が高まっている中で、イトーヨーカドーでは2020年11月から約70店舗で、再生資源を利用したダウンを販売している

「GALLORIAリサイクルグリーンダウン」と「Kentリサイクルグリーンダウン」という商品名で、使わなくなった羽毛布団やダウンジャケットを回収し、再資源化し、新しい商品として生まれ変わった。

参考:セブン&アイグループが目指す循環型社会

ライオン株式会社

ライオン株式会社は、公益財団法人世界自然保護基金ジャパンが提唱した「プラスチック・サーキュラー・チャレンジ 2025」に参加。

「プラスチック・サーキュラー・チャレンジ 2025」では、2025年までに容器包装、使い捨てプラスチックについて、可能な限りリユースへの切り替えや、持続可能性を考慮した代替素材への切り替えなど5つの取り組みをおこなうことをコミットメントしている。

①容器、包装材料

洗濯用粉末洗剤などの容器、包装材料に古紙パルプを配合した再生紙を使用。「廃糖蜜」というサトウキビから砂糖を作るときに残る蜜や、植物由来のプラスチックであるバイオマスプラスチックも容器、包装材料に使用するなど、持続可能な資源の活用に取り組んでいる。

②詰替えパック等の分別回収実証実験

イトーヨーカドー曳舟店では、使用済み詰替えパックなどのフィルム容器の分別回収実証実験をおこなっている。店頭に専用の回収ボックスを設置し、洗浄した洗剤などの詰替えパックを回収している。

③ハブラシ・リサイクルプログラム

テラサイクルジャパン合同会社と共同で、2015年から使用済みハブラシを回収し、リサイクルにする取り組みをおこなっている。学校や自治体などに参加してもらい、不要となった使用済みハブラシを回収し、プランターなどのプラスチック製品に再生する。

参考:持続可能なサーキュラー・エコノミーの社会実装 WWFジャパン「プラスチック・サーキュラー・チャレンジ 2025」に参画

花王株式会社

花王グループでは2019年にEGS戦略「Kirei Lifestyle Plan(キレイライフスタイルプラン)」を策定し、19個の取り組みテーマを設定。

その一つである「ごみゼロ」の取り組みとして、使用済みプラスチック回収実証実験「MEGURU BOX(めぐるボックス)プロジェクト」や、兵庫県神戸市ふたば学舎のプラスチック資源の回収ステーションのプラスチック資源の回収に関する取り組みに参加した。

「MEGURU BOX(めぐるボックス)プロジェクト」は、2021年7月9日より北九州市でおこなわれている使用済みプラスチック回収実証実験で、花王グループが加盟する、サーキュラーエコノミーの実現をめざす企業連合「ジャパン・サーキュラー・エコノミー・パートナーシップ(J-CEP)」の前身である「九州サーキュラー・エコノミー・パートナーシップ(K-CEP)」が実施した。

参考:北九州市の使用済みプラスチック回収実証実験「MEGURU BOX(めぐるボックス)プロジェクト」に参加

住民の方に、福岡県北九州市内の小売店舗や公共施設などに設置された回収ボックスへ使用済みプラスチックボトルやパウチを入れてもらう。回収したプラスチックボトルを同じ用途の製品に再生する「水平リサイクル」をおこなう。

また、兵庫県神戸市ふたば学舎に設置されるプラスチック資源の回収ステーションは、2021年11月4日から約3か月間設置され、プラスチックなどの資源をリサイクル後の利用目的に応じて品目別に回収。

資源回収量に応じた寄付や、地域住民の交流スペースを設置し、プラスチック資源の回収だけでなく、互助・共助のコミュニティづくりがおこなわれた。

参考:サーキュラーエコノミー実現に向けたパートナーシップの加盟企業として
神戸市の地域活性化拠点にてプラスチック資源回収に参加

株式会社ファーストリテイリング

①商品を届けるタイミングを分析

ユニクロなどのブランドを展開する株式会社ファーストリテイリングでは、製品作りの段階で、長く愛用してもらえるよう、顧客の意見を分析。商品改良や、生産数量の予想制度の改善などにより最適なタイミングで商品を届けられるようにしている。

②商品のリユース、リサイクル

2006年から顧客が着なくなった服を回収し、リユース、リサイクルをおこなっている。回収した服は難民や国内避難民など世界の人々にリユース。リユースできない服は、燃料や防音材として加工している。

また、2020年9月からは「RE.UNIQLO」の活動をおこなっている。「RE.UNIQLO」では資源の有効活用のため顧客から不要となったユニクロの服を回収し、新たな製品を作る。例えば「リサイクルダウンジャケット」はダウンとフェザーの100%が回収されたダウン商品から作られている。

③店舗、オフィスにおける資源リサイクル

店舗やオフィスでは段ボールを廃棄せず、100%リサイクルする目標を掲げ、ロードサイト店舗にて2017年に目標数値を達成した。また、商品パッケージとショッピングバッグには再生紙を使用。プラスチック製のショッピングバッグやパッケージを再生紙など環境に配慮した素材に代替している。

参考:廃棄物管理と資源効率の向上

企業・消費者の両者がサーキュラーエコノミーに意識を向ける

企業側は、サーキュラーエコノミーの取り組みとして不用品をリサイクルするだけではなく、製品設計の段階から資源を循環させる視点が大切だ。また、消費者側は、使わなくなったから捨てるのではなく、リサイクルの視点を持ち、回収していないかを考えることで有限である資源の循環に繋がるだろう。

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